シンプラル法律事務所
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逐条解説会社法

 
 
     
     
     
     
     
     
     
     
★★第4巻 機関・1  
★第4章 機関  
☆☆第1節 株主総会及び種類株主総会   
☆第1款 株主総会  
     
     
     
◆317条(延会又は続行の決議)  
  ◇1 沿革 
  ◇2 制度趣旨
    会議体においては、議事に入らないまま後日に延期したり、議事に入ったが審議が終わらないまま後日に継続することができるのは当然。
    延期・続行の決議に基づいて後日開催される総会⇒継続会。
延期の決議によるもの⇒延会
続行の決議によるもの⇒継続会
ということもある。
    継続会は、初めの総会と同一の総会。
それを株主総会の決議で決めた場合には、継続会について招集の決定および召集の通知の手続きをあらためて採らなくてよいことを規定。
     
  ◇3 解釈上の問題点、実務上の問題点 
    延会・続行は総会に諮って決すべきで、議長が独断で決めることは許されない。
    取締役会設置会社⇒継続会においても新たな議題を追加できない(309条5項)。
    継続会の開催日は、初めの総会から相当の期間内であることを要する。
間があく⇒あらためて招集手続をとる必要がある。
「相当の期間」の目安としては、招集手続を採るのに必要な期間と考えるのが適切。
     
    継続会は初めの総会と同一⇒
初めの総会で議決権を行使できた者が、継続会においても議決権を行使できる。
書面投票・電子投票や委任状も、撤回されない限り、継続会で効力を有する。
議決権行使の基準日を定めている場合(会社法124条)、初めの総会の会日が基準日から3か月以内⇒継続会の会日が3か月を超えても差し支えない。
     
     
     
     
     
     
     
★第9巻  
     
     
     
☆859条
    第八五九条(持分会社の社員の除名の訴え)
 持分会社の社員(以下この条及び第八百六十一条第一号において「対象社員」という。)について次に掲げる事由があるときは、当該持分会社は、対象社員以外の社員の過半数の決議に基づき、訴えをもって対象社員の除名を請求することができる
一 出資の義務を履行しないこと。
二 第五百九十四条第一項(第五百九十八条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反したこと。
三 業務を執行するに当たって不正の行為をし、又は業務を執行する権利がないのに業務の執行に関与したこと。
四 持分会社を代表するに当たって不正の行為をし、又は代表権がないのに持分会社を代表して行為をしたこと。
五 前各号に掲げるもののほか、重要な義務を尽くさないこと。
  ◆1 沿革 
     
     
  ◆2 制度趣旨・内容 
    合名会社などでは、社員間の人的関係が強く、信頼遭関係を前提とする⇒それらの信頼関係が失われたような場合には、当該社員の意思にかかわらず、他の社員の利益のために退社させることができるとされてきた。
    @個々の社員の信用が会社全体の信用を左右するといった人的会社の特殊性
Aいずれの社員にも業務執行権および会社代表権のはく奪を正当化するような事由が認められない場合、対立する社員の数が等しい事例において、業務執行を正常化するための手段の1つ
B対立関係にある者を社員としてとどめておくならば、重要事項についての意思決定が妨げられたり、監視権などにより業務妨害をされる可能性や競業行為による妨害を打開する機能⇒対外的信用だけでなく社員相互間の信頼関係を維持することが、除名における重要な保護法益。
     
    業務を執行するに当たって不正の行為をし、又は業務を執行する権利がないのに業務の執行に関与したこと」(3号)の「不正の行為」
当該社員による会社金銭の横領などや、
会社の行為として法令に反する行為を行うこと。
     
    「前各号に掲げるもののほか、重要な義務を尽くさないこと。」(5号)における「義務を尽くさないこと」:
「義務を尽くさないこと」:
社員の故意または過失を要する。
「重要な義務を尽くさないこと」:
客観的に重大な義務違反があるときと解されるが、義務の客観的軽重だけでなく、主観的情状をしん酌して、過失の軽重を裁判所が判断して適用すべき。
     
     
  ◆3 解釈上の問題点(p344) 
     
  ◆4 実務上の問題点
     
    一部社員の除名により事態が打開できるならば解散判決はなされないが、
その除名が不公正・不相当な場合には解散を認める(833条2項)。
    第八三三条(会社の解散の訴え)
2やむを得ない事由がある場合には、持分会社の社員は、訴えをもって持分会社の解散を請求することができる。
    会社法833条2項における「やむを得ない事由」:
客観的な要因により、会社の営業目的の追行が不可能ないしはそれに近い状況であって、営業の廃止ないしはそれに近い状況になる場合、
社員は退社による持分払戻請求が認められ、さらには退社による持分払戻請求では自己の利益を守ることができない場合には、解散請求をすることができる。
    @社員間の不和のような主観的な理由によって、意思決定ができない、出資が履行されないなどの業務執行がなされない状況
A特定社員に重大な義務違反に由来するような場合
⇒当該対象社員の除名が優先され、当該社員からの会社の解散請求は認められない。
but
会社の存続を欲しない他の社員からの解散請求は認められる。
     
     
☆860条  
    第八六〇条(持分会社の業務を執行する社員の業務執行権又は代表権の消滅の訴え)
 持分会社の業務を執行する社員(以下この条及び次条第二号において「対象業務執行社員」という。)について次に掲げる事由があるときは、当該持分会社は、対象業務執行社員以外の社員の過半数の決議に基づき、訴えをもって対象業務執行社員の業務を執行する権利又は代表権の消滅を請求することができる。
一 前条各号に掲げる事由があるとき。
二 持分会社の業務を執行し、又は持分会社を代表することに著しく不適任なとき
     
     
  ◆2 制度趣旨・内容 
    定款で別段の定めがない限り、原則として持分会社の社員全員に業務執行権・代表権がある(590条、591条、599条)⇒業務執行権等の変更は、原則持分会社の定款の変更となる⇒定款に特別の定めがない場合「総社員の同意」が必要となる(637条)。
⇒業務執行権または代表権を消滅させることが事実上困難になる
⇒当該業務執行社員以外の社員の過半数の決議によって訴えを提起できる。
     
    法定消滅事由:
前条の法定除名事由(本条1号)に加え、
持分会社の業務を執行し、または持分会社を代表することに著しく不適任なとき(本条2号) 
    この訴えを本案として当該社員の業務執行の停止または職務代行者の選任の仮処分を求めることができる(民保23条2号)。
仮処分は、登記事項(会社法917条)。
     
    業務執行権または代表権消滅判決⇒対象業務執行社員の業務執行権または代表権が消滅(会社法937条1号ヲ)
対象社員が代表権ある業務執行社員⇒業務執行権の消滅により代表権も同時に消滅(会社599条1項)。
     
  ◆3 解釈上の問題点 
   
    「著しく不適任」:精神的・肉体的理由によってその任に堪えないことをいう。 
     
☆861条  
    第八六一条(被告)
次の各号に掲げる訴えについては、当該各号に定める者を被告とする。
一 第八百五十九条の訴え(次条及び第九百三十七条第一項第一号ルにおいて「持分会社の社員の除名の訴え」という。) 対象社員
二 前条の訴え(次条及び第九百三十七条第一項第一号ヲにおいて「持分会社の業務を執行する社員の業務執行権又は代表権の消滅の訴え」という。) 対象業務執行社員
     
     
     
☆862条  
    第八六二条(訴えの管轄)
持分会社の社員の除名の訴え及び持分会社の業務を執行する社員の業務執行権又は代表権の消滅の訴えは、当該持分会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。