シンプラル法律事務所
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ドラフト・メモ2

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

必要なもの @消費プロセスへの好奇心
A業界常識にとらわれない観察眼
B異業種にも広く関心をよせる洞察力  

プロセス改革型

α既存の儲けの仕組み
α既存の市場        
 価値連鎖(バリューチェーン)再評価のアプローチ @やめる  
A強める  スタジオアリス  
スルガ銀行  
 B混ぜる
(異なる商材を組み合わせて競争の軸をずらす) 
 ヴィレッジヴァンガード  
クスリのアオキ   
 C単純化する  ベアーズ
ブックオフ
ガリバー
 
合せ技   俺のシリーズ 
スーパーホテル
ヴィレッジヴァンガード  
視点      顧客視点で発想
(供給者の論理を排斥)
 スーパーホテル 低コスト
顧客の「快眠」
 合わせ技を使う   俺のシリーズ  一流の料理(強める)
立食スタイル(やめる) 
 スーパーホテル フロント業務をなくす(やめる)+快眠(強める) 
ヴィレッジヴァンガード  新刊書やベストセラーに依存しない(やめる)+書籍以外の商材(強める) 
 サービスの担い手を変える 
(担い手を変えることでボトルネックを解消)
スタジオアリス 一般社員がカメラマン 
 俺のシリーズ 一流のシェフ
 ビジネスの型を変える
(有機的に機能するよう整える) 
ヴィレッジヴァンガード 売り場の編集力維持・向上のためのノウハウ
権限を現場に委譲
 スタジオアリス 衣装デザイン開発生産、供給のための子会社
社員研修 
市場創造型

α既存の儲けの仕組み
β新しい市場  
具体例  

(@利便性の向上・A不便の解消 )
 家庭用ビデオカメラ⇒アクションカメラ(@)  GoPro  
 番組受信⇒映像出力 テレビ  
 視力矯正⇒目の保護 JINS PC  
 スーパー、個人商店⇒コンビニ  セブンイレブン  
 飲料、サプリ⇒健康食的機能飲料 トクホ   
固定電話、携帯電話⇒スマホ アップル  
 ライブ講義⇒映像講義(A)  東進ハイスクール A  
紙の書籍や雑誌⇒電子書籍  キンドル  
 新たな戦い方を事業連鎖で読み解く   @省略
不便の解消(β)
既存市場にとってかわる
  VOD DVD、レンタルを省略
電子書籍   
A束ねる
利便性(α)
既存市場にとってかわる
 スマホ 通信+通話を束ねる
B置き換え
(事業連鎖の一部を置き換え)
不便の解消(β)
新しい需要
 東進ハイスクール 教室+講義⇒映像講義に置き換え 
C選択肢の広がり サプリメント
トクホ
当初のコンビニや宅配便
 
D追加
(これまでになかった要素がじぎょ連鎖に追加) 
利便性(α)
新しい需要
アクションカメラ 「発信」という要素「
 JINS PC  新しい価値(ブルーライトから目を守る)
秩序破壊型(第2章)

β新しい儲けの仕組み
α既存の市場   
具体例      販売⇒課金や広告料 LINE、スマホゲーム  
 販売⇒消耗品で課金 ネスカフェ・アンバサダー  
 融資による利子⇒ATMサービスの手数料  セブン銀行  
販売⇒ライセンス収入  ハローキティ   
 広告掲載料⇒成功報酬 リブセンス、じゃらんネット   
事業連鎖を組替える視点    @川上、A川中、B川下、C消費者
消費者が位置する「右側」から、事業の川上にあたる「左側」に向かって機能や活動の流れを見ていく。  
@Who(主体=自社の立ち位置)を変えることでWhat(提供価値)を変える。   セブン銀行のATM(銀行と消費者の間)
iPad魚屋さん(小樽の鮮魚店と消費者の間)
LINE(携帯電話会社と消費者の間) 
 AHow(方法)を変えることでWhat(提供価値)を変える。   サンリオのハローキティ(直販⇒ライセンス)
コアとなる資産や資源⇒提供方法を変えることで事業連鎖を組み替えて収益を高める。 
ネット専業の保険会社(ITやスマホを用いて、従来掛っていたコストを下げる)
新たな戦い方を事業連鎖で読み解く  @省略  スマホゲーム  アイテム課金
ネット専業の保険会社  
 A束ねる  トリップアドバイザー  
 B置き換え
(ある要素が別の要素に置き換わる)
 LINEの無料通話サービス
(電話回線による通話⇒ネット回線による通話)
アイテム課金 
 C選択肢の広がり  ネスカフェ・アンバサダー 詰替えパック 
 D追加
(新しい要素が事業連鎖に加わる) 
セブン銀行のATMサービス
(新たなATMサービス拠点を追加)
 ATMサービス手数料
 iPad魚屋さん  
その他  ハローキティ  直販モデル⇒ライセンスモデル 
 ビジネス創造型 

β新しい儲けの仕組み
β新しい市場
      
例   カーシェアリング   固定費がかからない
短時間×低価格×高回転
大和ハウスのDプロジェクト 「箱」⇒「運営」 
 カカクコム 広告出稿料・消費者移動による手数料 
起点  A:シーズ起点  アップルストア:半販売プラットフォーム×アプリ販売手数料  
B:ニーズ起点  MOOCs(無料オンライン教育×修了証の発行手数料)
ゴルフダイジェストオンライン(ゴルフの代行予約×送客手数料)
 
ビジネスを創造する4つの要素    新しい
@製品/サービス、
A儲けの仕組み、
B経営資源、
C顧客層
D提供価値  

防衛戦略ごとの打ち手     
   プロセス改革型 市場創造型  秩序破壊型  ビジネス創造型 
プロセス改革型 そのまま真似するのはやめるべき ◎   やめるべき  
市場創造型  効果的  やめるべき  
秩序破壊型  やめるべき  ありうるが高リスク  
ビジネス創造型 やめるべき  ありうるが高リスク  


 ゲーム・チェンジャーの競争戦略
★   ★第1章 新たなゲームのはじまり・・・激化する異業種競争
■競争の土俵、相手、ルールが変わる 
■B2Bでも起きているゲームチェンジ 
■新しい競争の台頭 
●ゲーム・チェンジャーの4類型 
競争の土俵が変わる
競争の相手方変わる
競争のルールが変わる
◎プロセス改革型α既存の儲けの仕組み×α既存の製品/サービス
既存のバリューチェーンを見直す
・アマゾン
・セブンカフェ
・ゾゾタウン 
◎秩序破壊型β新しい儲けの仕組み×α既存の製品/サービス
既存の儲けの仕組みを無力化する
・スマホゲーム
・リブセンス
・コストコ
◎市場創造型α既存の儲けの仕組み×β新しい製品/サービス
・JINS PC
・東進ハイスクール
・青山フラワーマーケット 
◎ビジネス創造型β新しい儲けの仕組み×β新しい製品/サービス
・価格.com
・オキュラスリフト
・カーシェアリング
●新しい製品やサービスを提供しているか 
ex.
パソコンや携帯電話の登場
電子書籍や電気自動車:既存の製品やサービスとよく似た機能や価値をまったく異なる手段で実現した製品やサービス
●新しい儲けの仕組みを持ち込んだか 
ex.
レコード販売⇒レコードレンタル
iTunesのようなネット決済の仕組み
毎月定額で聞き放題のSpotify(スポティファイ)
スマホゲームや地図サービスの無料化
で儲ける
■ゲーム・チェンジャーの4類型 
秩序破壊型(α×β)
これまでとほぼ同じ製品やサービスが、異なる儲けの仕組みで提供
@製品やサービスが同じでも、新儲けの仕組みを導入することで新たな価値を生み出す。
Aそれを顧客に提供することで既存の儲けの仕組みを無力化するとともに、新しい儲けの仕組みが、既存企業にとって真似したくても真似できない参入障壁になっている。
◎スマホゲーム 
ハード不要
ソフトはネット配信
広告とアイテム課金で稼ぐ。
ゲームが無料の方が多くのユーザーが集まる。
◎リブセンス 
求人をする企業が採用にまで至らなければ掲載料を払わなくてもよいという、成功報酬型
応募者がジョブセンスでアルバイトを見つけた場合にお祝い金⇒応募者が求人の成否を教える
◎コストコ:会員制ホールセラー
年会費4000円
営業利益に匹敵する会費収入が利益の源泉
市場創造型(β×α)
儲けの仕組みがこれまでと同じでも、まったく新しい製品やサービスを提供
これまで満たされていなかった潜在ニーズに着目して新市場をつくり出している。
@儲けの仕組みは変えずに、新たな製品やサービスを生み出すことで新市場を創造し、競争のルールを変える。
A成功のカギは、顧客自身も気づいていないニーズの具体化。
◎JINSのパソコン用メガネ 
◎東進ハイスクール 
◎青山フラワーマーケット 
ビジネス創造型(β×β)
これまで世の中に存在しなかった製品やサービスを、新しい儲けの仕組みで提供
@これまでになかった製品やサービスを、新しいビジネスモデルで世の中に提供
A成功のカギは、妄想を立体化する。すなわちイマジネーション(想像力)とイノベーション(創造力)をむすびつけ、まったく新しいビジネスをつくり出す。
◎価格・com 
◎オキュラスリフト 
◎カーシェアリング 
プロセス改革型(α×α)
@これまでと同じ製品やサービスでも、それらの提供方法を変えることで新たな価値を生み出す。
A成功のカギは、既存のバリューチェーンを見直すこと。
◎アマゾンによる書籍のネット通販 
◎セブンカフェ 

  ★第2章 相手の儲けの仕組みを無力化する(秩序破壊型) :
β新しい儲けの仕組み×α既存の製品/サービス
■新たな戦い方で秩序を破壊する 
●LINEの無料通話・・・市場に持ち込まれた新しい戦い方 
LINEの利用者同士が無料で通話できる「無料通話機能」
〜電話回線ではなく、インターネット回線によるパケット通信を利用。
●新しい儲けの仕組みで業界秩序を破壊する 
LINEの利益:アイテム課金
LINEの音声通話無料〜多くの利用者を集めて有料アイテムの課金収入を得るための手段
NTTドコモは、一定料金を支払えば話し放題というプラン

LINEはアプリメーカーのひとつbut彼らが生み出した新しい競争のルールに、大手業者でも乗らざるを得ない。
●スマホゲームが持ち込んだ儲けの仕組み 
スマホにアプリをダウンロードし、基本的な機能のなかで遊ぶ限り料金は発生しない。
but
ゲームを有利に進めるためのアイテムに課金
ハードやソフトを売って(あるいはライセンス収入で)稼ぐゲーム専用機メーカーの儲けの仕組みを無力化
スマホ利用者が増えるにつれ、「ライトユーザー」と呼ばれる多数のゲーム初心者がスマホゲームに流れる。
●IT関連にとどまらない 
ネスカフェ・アンバサダー

ネスカフェ・アンバサダーに申込み⇒オフィスにコーヒーメーカーが届けられる⇒インスタントコーヒーの詰め替えパックをセットすれば、淹れたてのコーヒーが飲める。
コーヒーメーカーは無料but詰替パックは有料。
●秩序破壊型が持ち込んだ儲けの仕組み 
@販売⇒課金や広告料、基本サービスは無料(LINE、スマホゲーム)
A販売⇒消耗品で課金、本体は無料(ネスカフェ・アンバサダー)
B融資による利子⇒ATMサービスの手数料(セブン銀行)
C販売⇒ライセンス収入(ハローキティ)
D広告掲載料⇒成功報酬(リブセンス、じゃらんネット)
■新たな戦い方を事業連鎖で読み解く 
●5つのアプローチ・・・事業連鎖で業界全体をとらえる 
@省略・・・中抜きする(ex.スマホゲーム)
A束ねる・・・結合する(ex.トリップアドバイザー)
B置き換え・・・代替する(ex.LINEの無料通話サービス)
C選択肢の広がり・・・選択肢を増やす(ex.ネスカフェ・アンバサダー、セブンカフェ)
D追加・・新しい要素が事業連鎖に加わり、新しい機能や価値を付け加える(ex.セブン銀行のATMサービス)
●「省略」で既存プレーヤーの収益源を奪う 
〜事業連鎖の一部が無くなること。
省略⇒「販売」という儲けの仕組みを「課金」に変えることができる。
◎スマホゲーム
企業にとっての儲けの仕組み:
ハードやソフトの販売⇒(無料あるいは比較的安い値段で提供した後の)アイテム課金や広告課金に
既存ゲーム:@ゲームソフト、Aパッケージ、B流通・販売、C専用機
スマホゲーム:@ゲームソフト、AB省略、Cスマホ
事業連鎖の一部を省略して、新たな儲けの仕組みを導入⇒既存プレーヤーの収益源を奪うことができる。 
●「束ねる」ことで手数料や広告料を得る 
〜それまで2つ以上に分かれていた要素をひとつに束ねてしまうケース。
◎世界最大の旅行クチコミサイト「トリップアドバイザー」
利用者は、旅行に関する世界中の情報やクチコミを閲覧できるだけでなく、航空券やホテルの最安値を確認して、そこから各旅行会社のサイトに飛び、予約や購入の手続きをすることもできる。
さまざまな情報や関連サイトを「束ねる」ことで自社サイトの魅力を高め、より多くの情報や人を呼び込む。
利用者にとっても、ワンストップで料金を比較したり、多数のクチコミを閲覧したりすることができるため、使い勝手が良い。
@宿泊情報、A交通情報、B観光情報、Cクチコミ情報、Dオンライン予約サイトを束ねる。
束ねることで儲けの仕組みを変える事例には、ネットを活用して既存の情報やサービスを束ねてしまうものが多い。 
●「置き換え」で既存プレーヤーに取って代わる 
〜ある要素が別の要素に置き換わってしまうケース。
◎LINEの無料通話サービス
「電話回線による通話」を「ネット回線による通話」に置き換える。
通話できる相手がかぎられるというデメリットはあるが、料金がかからないというメリット。
儲けの仕組み:通話料金⇒基本サービスを無料としたうえでの課金や広告収入へ。
技術革新によって生じることが多い。
●「選択肢の広がり」で既存顧客を奪う 
〜これまでひとつしかなかった要素が、いくつにも分かれていくケース。
より利便性の高い新たな選択肢(となる製品やサービス)を提供⇒既存の要素に取って代わることで顧客を奪うことができる。
ネスカフェ・アンバサダー
アンバサダー制度でオフィスに入り込む⇒既存のオフィス・コーヒー市場の顧客を奪っている。
@ネスカフェ・アンバサダー、Aオフィス内自販機〜社内解決型
Bセブンカフェ、
Cドトールコーヒー
Dスターバックス
E喫茶店
BCD:持ち帰り型
CDE:滞在型
●「追加」で手数料収入を得る 
「追加」では、これまでなかった新しい要素が事業連鎖に加わる。
既存プレーヤーと消費者のあいだに新たに入り込むことができれば、手数料収入を得ることが可能になる。
セブン銀行
利便性の高いATMのサービス拠点として他の金融機関と消費者のあいだに入り込むことで手数料収入を得ることに成功。
■既存の儲けの仕組みを無力化するには 
●2つの視点・・・事業連鎖を組み替える 
@川上、A川中、B川下、C消費者
消費者が位置する「右側」から、事業の川上にあたる「左側」に向かって機能や活動の流れを見ていく。
@Who(主体=自社の立ち位置)が変わればWhat(提供価値)が変わる(ex.セブン銀行のATM、LINEの無料通話サービス)
AHow(方法)が変わればWhat(提供価値)が変わる(ex.サンリオのハローキティ、ネット専業の保険会社)
●Who(主体)を変える 
主体とは、どこでビジネスをするかとい自社の立ち位置(ポジション)
自社の立ち位置をできるだけ消費者に近いポジションに置く
そこを戦略の起点として考える、その先にいるのはどのような消費者?
ex.セブン銀行:
「金融機関のサービスを受けたいが、わざわざ支店を探すのはわずらわしい。多少の手数料がかかっても、すぐ近くでサービスを受けたい」という消費者」に絞り込む
⇒他の銀行とは異なるWhatを提供するため積極的にATMの設置台数を増やしていく。
事業連鎖で消費者の手前に入り込む⇒「販売代理店」として手数料収入を得ることができる。
「追加」の事例。
ex.「iPad魚屋さん」
小樽市城内の鮮魚店から販売額の15%を販売手数料として受け取る。
ex.LINEの無料通話サービスも、携帯電話会社と消費者の間に入り込んだ。
携帯電話会社の通話を「置き換え」ることで消費者の手前に入り込み、販売代理店にとどまらず、携帯電話会社の儲けの仕組みを無力化。
「追加」や「置き換え」以外にも「省略」や「束ねる」「選択肢の広がり」といったアプローチで、より消費者に近いポジションをつかむことができる。
●How(方法)を変える 
ex.サンリオの「ハローキティ」
2009年を境に高収益体質に。
直販モデルからライセンス・モデルへの転換⇒109カ国でハローキティの商品が販売。
デザイン変更に大きな柔軟性。
各地域に商品の企画販売や著作権の許諾・管理を任せる関連会社を設立し、積極的な拡大策。

限定感のある地域商品の「ご当地キティ」や「コラボキティ」
文化が異なる海外でも受け入れられやすい多数のキャラクターや商品。
世界中のファンに愛されるキャラクター商品のライセンス・ビジネス展開。

事業連鎖の川上に位置していても、コアになる資産や資源を持つ場合は、その提供方法を変えることで事業連鎖を組み替えて収益を高めることが可能
ブランドやキャラクター、秘伝のレシピや技術など、模倣困難な資産や資源であるほど有効。
ネット専業の保険会社。

支店の維持・運営費や人件費をまかなう必要がない⇒その分保険料の安さを武器にすることができる。
既存プレーヤーは、これまで築き上げてきた全国支店網やインフラ網が足かせとなり、反撃できない。 
ITやスマホを用いて従来かかっていたコストを下げる方法も、Howを変える戦い方。
■秩序破壊型はどこからやってくるか
●秩序破壊が発生する2つのパターン 
来襲型:ex.セブン銀行、LINE、リブセンス
変身型:ex.ネスカフェ・アンバサダー
●来襲型の秩序破壊 
既存市場で必要な経営資源を「持っていないこと」を最大の利とし、それを武器とする。
セブン銀行:グループ企業の店舗数が武器
LINE:
リブセンス:
既存プレーヤーは、それぞれの業界で「KSF」となる莫大な経営資源を有しており、それこそが競争優位性の源泉。
●変身型の秩序破壊 
「持っているもの」を新たな視点で活用することで、新しい競争のルールを生み出す
ネスカフェ・アンバサダー
〜もともと家庭用に開発・販売されていたマシンをオフィス市場に転用
オフィスコーヒー市場の2つのニーズ:
@時間があるときにおいしいコーヒーを適切な価格で飲みたい:スターバックス、タリーズ、コンビニの挽きたてコーヒー
A短時間に高頻度で飲みたい:自販機等
インスタントコーヒーが敗者に⇒ネスカフェ・アンバサダーのモデル
●秩序破壊のインパクトを生むメカニズム 
来襲型:持っていないことを最大の利として、スピード展開する
変身型:持っちいる物を新たな視点で組み合わせて高い優位性を構築する
  ★第3章 顧客が気づいていない価値を具体化する(市場創造型):
α既存の儲けの仕組み×β新しい製品/サービス
  ■新たな価値を提案し、競争のルールを変える 
  ●台頭するアクションカメラ市場 
背面液晶やズーム機能などを捨てて小型化
耐衝撃性や防水機能を高める

これまで撮影できなかった角度からの撮影や、スポーツなどの動きのある映像の撮影を可能に
  ●新市場が既存市場を侵食 
消費者を取り巻く環境や生活スタイルの変化
消費者がこれまで当り前だと思って無意識に我慢していた潜在ニーズや、それを可能にする技術的なブレークスルー
@消費者の価値観の変化:
SNSの浸透⇒写真や映像は、「保存するもの」から「共有するもの」へ
映像や画像を媒介にしたコミュニケーション
A小型・軽量化といった技術の進歩
撮影した映像を低コストでアップできるようにしたウェブ技術
B業務用カメラなどのハイエンド市場にもGoProの影響
C普及&低価格化⇒放送以外の業務での撮影にも利用
  ●新たな市場を創造して、競争のルールを変える
「市場創造型」儲けの仕組みは従来と同じだが、既存の製品やサービスにはない新しい機能や価値を提供するプレーヤー
既存プレーヤーの強みが通用しない新たな市場を創造することで、競争のルールそのものをつくり変える
×最先端かつ高機能
〇いかに機能を絞り込んで小型化するか、耐衝撃性や防水機能を高めるか
  ●電子書籍が提供する新しい読書体験 
「本を売って稼ぐ」という「儲けの仕組み」はこれまでと同じ。
電子化
⇒@何冊でも持ち歩ける、Aいつでもダウンロードしてすぐ読めるという「新しい価値」を提供。
  ●固定電話⇒携帯電話⇒スマホ 
@固定電話
A携帯電話:いつでもどこでも通話ができるといった利便性
Bスマホ:携帯性を維持しながら「通話」だけでなく「通信」(インターネットを通じた通信サービス)
テレビでも、本来の機能とは異なる競争軸をもった新市場の登場:
@放送番組の「受信機」⇒さまざまな映像コンテンツの配信手段⇒Aいつでも自分の好きな時間に好きなコンテンツを選んで再生する「出力デバイス」
  ●IT関連に限らない 
特定保健用食品(トクホ):
〜運動するよりも手軽な手段で同様な機能を享受できるという利便性⇒新市場
JINS PC:
「視力矯正」⇒「(パソコンなどのデジタル機器から発せられる)ブルーライトから目を守る」という機能⇒パソコン用メガネという新市場。
東進ハイスクール:
「映像講義」⇒部活が忙しかったり、地方に住んでいたりする受験生でも、時間や場所を気にすることなく有名講師の授業が受けられるという新市場
  ■図表3−2 市場創造型がつくり出した新たな市場 
家庭用ビデオカメラ⇒アクションカメラ(GoPro)
番組受信⇒映像出力(テレビ)
視力矯正⇒目の保護(JINS PC)
スーパー、個人商店⇒コンビニ(セブンイレブン)
飲料、サプリ⇒健康食的機能飲料(トクホ)
固定電話、携帯電話⇒スマホ
ライブ講義⇒映像講義(東進ハイスクール)
紙の書籍や雑誌⇒電子書籍(キンドル)
  ■市場創造の起点はどこか 
  ●利便性の向上か、不便さの解消か ●●
市場創造の起点:
@利便性の向上による市場創造(=プラスをさらにプラスに):
ex.スマホ、電子書籍
A不便さの解消による市場創造(=マイナスをゼロ(あるいはプラス)に):
ex.東進ハイスクール
  通塾という制約をなくした東進ハイスクール 
予備校ビジネス:
入試突破に必要な知識を得るとういニーズを起点に、
@教材、A講師、B講義、C模試という事業連鎖。
主なターゲットは浪人生。
東進ハイスクール:
@教材、A講師、BC映像講義

講義の質を維持しつつ、時間的・物理的な「制約」を解消。
生徒は、自分のレベルや目標に合わせて講義を選択し、好きな時間に受講。
繰り返し見たり、複数回分をまとめて受講も可。
  ●制約をなくして、潜在的なニーズを取り込む 
映像講義⇒@大教室不要、A講師の数不要
フランチャイズで、同じ質の講義を全国展開することで、地方の現役生のニーズを満たす。
  利便性を向上させたアクションカメラ 
ハンディカメラの事業連鎖:
@撮影、A保存・鑑賞
スマホの登場⇒
@撮影、A発信
「A発信」の新しい利便性の追求に対応したのが、アクションカメラ
  ●ニーズかシーズか 
利便性の向上も、不便さ(制約)の解消も、消費者が抱えている潜在的なニーズに対応。
コンピューター技術や、インターネット、クラウド・サービスなどの通信技術といった「シーズ」を活用し、瀬品やサービスが実現することによって、ニーズが顕在化
(ex.電子書籍やスマホ)
情報検索を可能にする技術(シーズ)
⇒地図情報+店舗情報を組み合わせた新サービスが可能に。
  ■新たな戦い方を事業連鎖で読み解く 
  ●顧客が知らない価値をとらえる5つの視点 
事業連鎖の5つのアプローチ
@省略・・・中抜きする(ex.VOD)
A束ねる・・・結合する(ex.スマホ)
B置き換え・・・代替する(ex.東進)
C選択肢の広がり・・・選択肢を増やす
D追加・・・新しい機能や価値を付け加える(ex.アクションカメラ、JINS PC)
  ●「省略」で不便さを解消する 
事業連鎖の一部を「省略」⇒消費プロセスの不便さを解消できれば、新たな市場をつくり出せる。
@映像⇒ADVD⇒Bレンタルサービス⇒Cテレビ・パソコン
VOD:@映像⇒AB省略⇒Cテレビ、パソコン
⇒店舗型レンタルビデオ店は窮地に。(ex.米のブロックバスターは経営破綻)
  ●「束ねる」ことで顧客の利便性を高める 
事業連鎖における複数の要素をひとつに「束ねる」⇒顧客の利便性を高めることができれば、新たな市場をつくり出せる。
スマホは@通話とA通信を束ねる。その他、時計や電卓、デジタルカメラ、携帯音楽プレーヤー、スケジュール帳などを束ねる。

既存のプレーヤー(ex.ガラケー)は窮地に。
利便性を高められなければ意味がない。
ex.NTTドコモの「iモード」は接続できるサイトが限定的でダメ。
  ●「置き換え」で不便さを解消する 
事業連鎖の一部を「置き換え」る⇒消費プロセスの不便さを解消できれば、新しい市場をつくり出せる。
予備校:@教材、A講師、B教室、C講義
東進:@教材、A講師、BCを映像講義に置き換え

不便さ(通塾という制約)をなくし、現役生のニーズをとらえた。
時間的、物理的な制約を解消。
予備校ビジネスでの競争優位が「都心に大型教室を持つこと」から「講師や講義の質」に変化。
⇒既存プレーヤーにとっては模倣困難。これまでの強みが弱みになる恐れ。
  ●「選択肢の広がり」として新たな市場を創造する 
事業連鎖の一部において、これまでと同じ機能を異なる手段で提供するケース。
選択肢のひとつとして消費者の支持を得ることができれば、新たな市場をつくりだすことができる。
ex.サプリメント、特定保健用食品(トクホ)
コンビニや宅配便も、誕生したときは、選択肢のひとつであった。
コンビニ⇒買い物をする場所の選択肢の1つでありながら、「遅い時間でも、すぐ近くで買い物ができる」といった利便性を武器に、小売業の競争ルールを一変させた。
ヤマト運輸⇒個人が小荷物を送る際の選択肢のひとつとして、「電話1本で集荷、翌日配達」といった利便性を武器に新市場を作り上げた。
「かぎられた目的や予算のなかで消費者が何を選ぶか」とうい視点が重要。
←選択肢のひとつとして比較検討する対象のあいだによほどの差がなければ、既存のもので十分。
必ずしも既存の機能と同等のものが得られなくても、消費者に代替物として認知される場合がある。
ex.エステ、マッサージ、旅行、雑貨〜「癒しの手段」として求められる。
  ●「追加」で新たな価値を提供する 
 「追加」は、これまでになかった要素が、事業連鎖に追加されるケース。
ex.
アクションカメラ:「保存・鑑賞」に加えて「発信」という要素が追加
JINS PC:事業連鎖が提供する価値(視力矯正)に新しい価値(ブルーライトから目を守る)を追加して新市場を切り開く。
「追加」においては、模倣が容易だと、既存プレーヤーが次々と参入。
  ■市場創造による価値の獲得に向けて 
  ●いかにして利便性を高めるか 
利便性を高める「束ねる」「追加」が有効。
@複数の要素をひとつに束ねたり(ex.スマホ)、Aこれまでになかった要素を事業連鎖に追加(ex.視力矯正とブルーライト対策を同時に実現するパソコン用メガネ)
⇒新しい価値や機能を提供。
「これと一緒に何が使えると便利か」(束ねる)
「どんな用事を一緒に済ませられると助かるか」(束ねる)
「これを使って同時実現したいことが他にないか」(追加)
「新たに提供する価値や機能は、本当に顧客が望んでいるものなのか」
「それは、顧客が求めるレベルにまで達しているか」
という問いも重要
  ●いかにして制約をなくすか 
不便さを解消「省略」「置き換え」が有効。
@事業連鎖の一部を省略したり(ex.電子書籍)、A他の要素に置き換えたりすること(ex.映像講義)で、今抱えている制約を解消できる。
「消費者はどこに不便を感じているか」
「どうすればもっと手軽に利用できるようになるか」
いかにして消費プロセスを見直すか、事業連鎖を見直すか
欠かせないのは、
@消費プロセスへの好奇心、A業界常識にとらわれない観察眼、B異業種にも広く関心を寄せる洞察力。
  ●新市場vs既存市場 
市場創造型がつくり出した新市場:
@それが既存市場に取って代わる場合
A既存市場と食い合うことがない、まった新しい需要を発掘する場合
「省略」(ex.VODサービス)、「束ねる」(ex.スマホ)〜事業連鎖の一部をなくしたり、複数の要素をひとつにまとめてしまう
既存市場に取って代わろうとする破壊力を持つ場合が多い
スマホユーザーの増加⇒デジカメ市場は縮小⇒メーカーは高機能にシフト
「置き換え」(ex.映像講義)、「追加」(パソコン用メガネ)〜事業連鎖の一部を他の要素に置き換えたり、新たな要素を追加⇒既存市場と食い合うことがない、新しい需要を発掘する傾向
but
新市場が主流になると、既存市場を脅かす
⇒既存プレーヤーが持っているこれまでの強みが、弱みに転じてしまうことがある。
  ●新市場での仕組みの構築 
新市場が魅力的⇒多くのプレーヤーが新規参入(ex.アクションカメラ市場、パソコン用メガネ市場、トクホ市場)。
新市場の創造者が、仕組みを築く⇒他社は容易に真似できない(ex.セブンイレブン、ヤマト運輸、アマゾン、東進ハイスクール)。
市場創造では、
@新しい市場をつくり出すだけでなく、
Aその市場において提供する価値や機能を仕組みとして構築するとともに、
B仕組みを磨き続ける必要
  ★第4章 新たな事業モデルをつくり出す(ビジネス創造型) :
β新しい儲けの仕組み×β新しい製品/サービス
  ■これまでにないビジネスをつくる 
経営者の思いから生み出された新しい製品やサービス+新しい儲けの仕組み⇒ビジネス創造型
@顧客が気づいていない価値を具体化しつつ(市場創造型)、A既存の儲けの仕組みを無力化する(秩序破壊型)
⇒既存企業にとっては、対抗しづらい存在。
  ●カーシェアリングが生み出した新市場 
従来:所有orレンタカーを借りる
カーシェアリング:
会員組織をつくり、大勢の人で車をシェアして使う
15分単位からの利用を提供
保険料やガソリン代もすべて含んで、数百円単位からの利用が可能
  ●「もっとドライバーに価値を提供できる」 
タイムズ24の社長「時間貸し駐車場をベースにもっとドライバーに価値を提供できるのではないかと考えた」
車両保有台数:トヨタレンタリース(10万台)>タイムズ24(9400台)
拠点数:タイムズ24(5600)>トヨタレンタリース(1200)
レンタカー:
@保有台数とA店舗を確保することで成長
半日単位の貸し出しが基本で、出払った車両はすぐに帰ってこない
⇒いかに保有台数を増やして機会損失を防ぐかが、事業を行う上でのポイント
カーシェアリング事業:
1拠点あたりの保有台数を増やしたり、大きな敷地の店舗を確保したりする必要がない
⇒固定費がかからない。
短時間で低価格の貸し出しを高回転させて収益を得るという、新しい仕組。
  ●物流施設建築をバンドルサービスに・・・大和ハウス工業の「Dプロジェクト」 
大和ハウスの「Dプロジェクト」:
大和ハウス工業が顧客企業の物流施設の開発に資本参画し、さまざまな提案をすることで収益をあげる事業。
@ネット通販(流通総額11兆円超)⇒物流施設市場の伸び
A工場の海外移転や閉鎖⇒遊休不動産
B東日本大震災⇒耐震性に優れた大型物流施設への評価が高まる
大和ハウス工業:
顧客企業に対するフルサポート・サービス
顧客企業の物流戦略に合わせ、拠点として最適な土地を提案、施設の建設や維持管理などをきめ細かくサポート
施設完成後の運営にシステム会社や人材派遣会社が必要⇒その分野の専門家と協力体制を結んで顧客企業のニーズに応える
借地事業での提案〜顧客企業にとっては、固定資産を持たずに最新の物流施設を活用でき、運営もサポートしてもらえる。
バンドルサービス⇒財務部門や経営層が検討できる。
自社で不動産を取得する体力のない企業にもサービスを提供できる⇒新しい顧客層の開拓
物流施設の建築をバンドルサービスに変えたことで、新しいビジネスをつくり出した。
  ●賃貸住宅と物流倉庫の共通点 
大和ハウス工業:
@建設業者だけでなくA不動産業者やB金融業者、C倉庫運営者としての側面を持つことでバンドルサービスを提供し、中期的に儲ける仕組みを構築。

ハウスメーカーとしての強み。
住宅事業で培ったネットワークを活かして全国から優良な土地情報を集め、交渉⇒用地取得
既存の建設業者:「設計・調達・建設」で、いかにして低コストかつ高品質な「建屋」を納品するかが決め手。⇒建設会社の競争優位性の源泉は、設計技術やプロジェクトマネジメント力、下請けネットワークなどの知識やノウハウ。
〜オフィスビル、分譲マンション、大型商業施設などの建築物で発揮
but
物流施設建築で求められているのは、物流倉庫という「箱」ではなく、効率的な「運営」。
大和ハウスは、土地情報から建設、運営までトータルソリューションで提供することで、新しいビジネスを作り上げた。
  ●カカクコムが生み出した新市場 
サービス:価格比較情報とユーザーのクチコミ
収入源:
小売店からの広告出稿料と、同サイトからそれぞれ小売店のサイトへの消費者が移動した場合の手数料。
価格比較リストに載せる手数料、メーカーへの商品企画提案コンサルティング料。
価格比較サイトの登場⇒小売店で確認した商品をその場では買わず、ネット通販によって店頭より安い価格で購入⇒ヤマダ電機が2013年9月中間連結決算で23億円の赤字。
消費者からの支持⇒この先も成長。
  ■ビジネス創造の起点は何か 
ニーズやビジネスモデルがはっきりしないなかで、いかにビジネスを形づくるかがポイント。
@創業者の思いつきや熱い思い⇒新製品や新サービス⇒儲けの仕組みは後からついてくる場合
A技術や仕組を先に思いつく⇒それを活用できる市場(ニーズ)を後から見つける場合
@イマジネーション(想像力)とAイノベーション(創造力)の両方を結びつける。
成り立ちにはいくつかのパターン。
「ニーズかシーズか」
  ●App Storeによるシーズ起点のビジネス創造
シーズ起点の市場創造:
タイムズ24のカーシェアリング事業「時間貸し駐車場をベースに、もっと多くの価値をドライバーに提供できないか」
操作性に優れたインターフェースを持つ革新的な端末⇒スマホ市場を一気に拡大
App Store:
端末を通じてさまざまなアプリケーションを販売
そこで販売するアプリケーションの開発者から販売手数料をとる
世界中に数百万人といわれるサードパーティに自社の基本ソフト「iOS」のコードを後悔し、「アプリ販売プラットフォーム」という新しいビジネスを拡大。
  ●セールスフォースト・ドットコムによるシーズ起点のビジネス創造 
セールスフォース・ドットコム:CRMソルーションを中心としたクライドコンピューティング・サービスを提供。
追加が容易な拡張機能とそのための開発言語をサイトで公開⇒ユーザーが外部ベンダーは、アプリケーションを自由にカスタマイズすることができ、それを商品としてセールスフォース・ドットコム上に登録し、販売できる。
〜ユーザーの、ユーザーによる、ユーザーのためのビジネス
カスタマイズしたアプリケーションの開発者から販売額に応じた手数料をとっている。
既存:「自社で開発したソフトをユーザーに販売」
セールスフォース・ドットコム:「恒常的にアップデートされるアプリケーションビジネス」という新しいビジネスを創造
  ●MOOCsによるニーズ起点のビジネス創造 
有名大学の授業をインターネットを通じて無料で受けられるサービス
講義はインターネット配信を全体につくられ、15分程度の長さで映像を区切るなど、スマホでの視聴も意識。
誰でも視聴可能。
〜いつでも、誰でも、無料で、世界で最も上質な授業を手軽に受けられる⇒教育の機会を拡大。
いまのところ、財団からの寄付や大学間の連携などによって運営。
優秀な学生の獲得、修了証の発行手数料や企業への人材マッチングサービスなど、どのようにビジネス化していくかは発展途上。
  ●ゴルフダイジェスト・オンラインによるニーズ起点のビジネス創造 
ゴルフダイジェスト・オンライン:
ゴルフ場予約のプラットフォームを運営
それまで各ゴルフ場が単独で行っていた予約受付と、インターネットを組み合わせた。
それまでのゴルフ業界:
売り手目線のビジネス。
料金がわかりにくく高額で、会員の紹介がないと予約しづらい状態。
ゴルフダイジェスト・オンライン:
国内の約60%のゴルフ場についてインターネット上で予約できる。
予約するユーザーに対して、さまざまなサービス:
会員権やゴルフギア、アパレルなどの販売
中古品の買い取り・販売
〜業界内の各事業者が別々に行っていたビジネスをほぼすべて統合。 
ゴルフ場にとってほとんどの経費が固定費⇒稼働率向上が生命線⇒安くない手数料を支払ってでもゴルフダイジェスト・オンラインと組む価値がある。
社長の石坂氏:
商社に勤めていたとき、ゴルフコンペの仕切りが憂鬱。
参加者の希望が叶うのか、費用はいくらかなど、いろんなゴルフ場に電話しなければ比較できない。
but
米国留学でゴルフ場のクチコミサイトを見たとき、こんな便利なものがあるのかと驚いた。
利用者のクチコミ情報が的確で、役立った。
ユーザーのニーズを起点として生まれたビジネス。
  ●ビジネス創造型の事例まとめ 
◎シーズ起点 
アップルストア:アプリ販売プラットホーム×アプリ販売手数料
セールスフォース:アプリ販売プラットホーム×アプリ販売手数料
◎ニーズ起点 
MOOCs:無料オンライン教育×修了証の発行手数料
ゴルフダイジェストオンライン:ゴルフの代行予約×送客手数料
  ■新しいビジネスを創造する4つの要素 
4つの要素が結びついて顧客に提供する価値が生まれる
@新しい製品・サービス
A新しい儲けの仕組み
B新しい経営資源
C新しい顧客層
  ●自家用車のような手軽な近隣利用
タイムズ24のカーシェアリングサービス
  ◎経営資源 
駐車場の機器メーカー⇒自社で駐車場運営⇒全国各値約15000か所(2014年10月)に展開する時間貸駐車場(タイムズ)
2009年にマツダレンタカーを買収
  ◎製品・サービス 
駐車場機器+駐車場+車両
⇒無人駐車場で車を貸し出す
会員証でドアロックを解錠、社内に設置された装置に差し込んで利用者認証⇒クルマ利用
  ◎顧客層 
既存のレンタカー利用とは異なるユーザー
  ◎儲けの仕組み 
 会員費+15分200円
  ◎提供価値 
「自家用車のような感覚で手軽に近隣利用」
〜@新しいサービス、A新しい儲けの仕組み、B経営資源(駐車場)、C新しい顧客層(シェアする会員)が強く結びついている。
  ●蓄積してきたノウハウを活かすトータルソルーション
大和ハウス工業の「Dプロジェクト」
  ◎製品・サービス 
自社で流通倉庫⇒用地の選定や取得、建物の設計や建築など膨大な費用が発生
そうした費用負担に耐えられない中小企業のニーズ、過度な固定資産を持たずに物流業務を行いたい企業にとって、大和ハウス工業が提供するサービス・・・土地や施設を保有し、顧客が賃借する形態・・・は非常に使い勝手が良い
  ◎顧客層 
@投資余力があまりない事業者にも顧客企業の裾野が広がる
A(建築知識や経験のない)財務部門や経営層にも投資判断ができる
  ◎儲けの仕組み 
既存:設計や建築、施工にかかる経費を請求
建物の賃貸料や倉庫の運営費、特別目的会社(SPC)の配当など、景気の浮き沈みによって大きく変動することがない収益を長期にわたって計上できる。
  ◎経営資源 
@建築業者、A不動産業者、B金融業者、C倉庫運営者としての資源やノウハウ。
家を建てるだけでは競争に勝てない⇒土地探しもサポートしたり、アパートなどの不動産を持つ顧客から受注するために「一括借り上げ」という提案⇒さまざまなノウハウの蓄積。
  ◎提供価値 
顧客が求めているのは、物流センターという「箱」ではなく、そうした箱から得られるサービス。
できるかぎり物流業務を軽減して本業に専念したい。

大和ハウスは、土地情報から建設、運営までのトータルソルーションで、そうした顧客企業のニーズに応える。
  ●資源と活動が同期すると模倣されづらい 
いかにして資源と活動が強く連携し合うか。
各要素が同期し、強く連携⇒他社が模倣しづらい持続的競争優位性を生み出すことができる。
  ●パンドラの箱を開ける
自ら持ち込んだ新しい競争ルールが、さらに新しいゲーム・チェンジャーの参入を招く危険。
カーシェアリング市場で競争優位性のもととなる経営資源は、「生活に近い拠点数」
⇒コンビニによる同事業への参入
EVの普及による充電ステーションのコンビニ設置⇒カーシェアリング事業に本腰を入れる可能性
物流バンドルサービス:
アマゾンなど、すでに巨大物流センターを多数抱える専門業者が、格安で自社の物流センターを貸し出す事業を開始。
異業種からの新規参入者でも、自らが既存プレーヤーになった途端、自分がその危険にさらされる。
新しいビジネスを創造した後は、先手を打って他社が模倣しにくい仕組みをアップデートする必要。
  ★第5章 バリューチェーンを見直す(プロセス改革型)
α既存の儲けの仕組み×α既存の製品/サービス
  ■業界の常識を打ち破り、競争のルールを変える 
  ●プロセス改革で新たな価値をつくり出す 
競争のルールを変えるには、必ずしも儲けの仕組みや製品・サービスを変える必要があるとは限らない。
既存のビジネスプロセスに着目し、それを改善することで、競争優位を生み出している事例。

製品やサービスを顧客に届けるまでの「プロセス」を変えることで新たな価値を生み出し、それまでの競争ルールを変える。
  ●「俺のシリーズ」が生み出した価値 
@一流のシェフたちによる
A一流(高級)の食材を使った料理を提供する一方
B価格を低く抑えている
  ●回転数を上げて高原価をまかなう 
「立ち飲み」スタイル⇒@収容人数を通常のレストランの3〜4倍に増やし、A客の滞在時間を短くする。
「予約不可」⇒空き時間をつくらず、どんどん客を店に入れる。
「16時から営業」⇒より多くの客に入店してもらう。
高級レストランのようなサービスを求められない⇒人件費を抑えられる。
大量の高級食材を一括して仕入れる⇒仕入れコストが抑えられる。
  ●ドミナント出店が築く好循環 
さまざまな経験を積んだシェフたちが、それぞれの得意な料理を提供。
⇒店によってメニューも異なり、「次はあそこの店に行ってみよう」という客の循環。
同地域で多数の店舗を展開⇒シェフ同士が切磋琢磨
店ごとに違うメニューを提供⇒料理の質で競争するという健全な競争
銀座という一等地に多店舗を構える(ドミナント戦略)⇒大きな広告効果
  ●プロセス改革で業界の常識を打ち破る 
「高級レストランで、客の回転数を高める」という非常識な仕組み。
@顧客に提供すべきもの(価値や機能)は変えない(むしろ強化)
A@を実現するために、商品やサービスの提供方法(プロセス)を変える。
それは、業界の常識を打ち破ることでもある。
B提供方法(プロセス)を変えることで、新たな価値を生み出す。
俺のシリーズ:@料理という一番重要な部分では競争相手に負けないものを持ちつつ、A業界の常識を打ち破るこすと優位を実現し、圧倒的な競争優位を築く。
  ■いかにしてプロセスを変えるか・・・・4つの戦い方 
  ●「事業連鎖」ではなく「価値連鎖」を再評価する 
プロセスを変える=バリューチェーン(価値連鎖)を構成する個々のプロセスを再評価する。
バリューチェーン:ひとつの企業の活動を、付加価値を生み出すプロセスごとに分解したもの。
既存の高級レストラン:@予約、A仕入れ、B調理、Cサービス提供
俺のシリーズ:@予約不可、A仕入れ(基本商材は大量一括仕入れ)、B調理(一流シェフが高級食材を調理)、Cサービスなし
@秩序破壊型、A市場創造型、Bビジネス創造型では、バリューチェーンを業界全体にまで広げた「事業連鎖(ビジネス・チェーン)」を組み替えることで、新しい戦い方を構築し、競争のルールを変える。
Cプロセス改革型〜儲けの仕組みや製品・サービスを変えない〜バリューチェーンを構成する個々のプロセスに着目、再評価することで、新しい戦い方を作り上げる。
バリューチェーン再評価の4つのアプローチ:
@やめる
A強める
B混ぜる
C単純化する
  ●やめる・・・引き算発想で低価格を実現する 
業界慣例的なサービスやプロセスを見直し、その一部を思い切ってやめることで、新たな価値を生み出す。
余剰を省き、本当に必要な部分だけに特化する「引き算」発想で、バリューチェーンを再構築。
◎スーパーホテル:@安全、A清潔、B快眠を売りに全国でビジネスホテルを展開
客室稼働率90%
顧客のリピート率70%
2014年の顧客満足度調査でビジネスホテル部門1位
快眠にかかわるグッズや朝食付き、天然温泉付きといったサービスを提供しつつも、
宿泊料金を低価格(1泊4980円〜)に抑える。
「引き算」の発想:
チェックインがセルフサービス(自動チェックイン機でチェックイン⇒部屋番号と暗証番号が発行⇒暗証番号を客室の扉のテンキーに打ち込むと解錠)
ルームキーなし⇒宿泊者と鍵の受渡不要⇒チェックインに従業員不要
客は支払済み⇒出発時にフロントに立ち寄る必要もない
  ●チェックアウトをなくす「引き算」発想 
電話機なし⇒料金精算の手間や、課金装置など不要
冷蔵庫があるが、中は空っぽ⇒追加料金も精算手続きも不要
チェックイン後に追加料金が発生する要素なし⇒チェックアウト業務不要
既存のビジネスホテル:@客室準備、Aチェックイン、Bサービス提供、Cチェックアウト
スーパーホテル:@客室準備、Aセルフサービス完全前払制、Bサービス提供(追加料金が発生するサービスなし)、Cチェックアウト不要
不要なプロセスを廃し、必要なプロセスのみに特化する他の事例・・・・QBハウス
カットだけに特化し、他を「やめる」ことで低価格を実現。
既存プレーヤーにとってきわめてやっかい

@ひとつのプロセスに特化⇒これまで構築してきた経営資源を否定するばかりか、他の既存顧客のニーズと相反することになりかねない。
Aあるプロセスに特化した組織能力の構築は、容易に真似できない。
  ●強める・・・プロセスの一部を強化して差異化する 
プロセスの一部を強化することで、新たな顧客価値をつくり出す。
スタジオアリス:
「子ども専門」の写真館
約500着の衣装を用意、小物も用意
着付けやメイク、ヘアセットも無料
訓練を受けた社員がアシスト
撮影枚数に制限なし
基本料金:衣装を何着借りても、撮影が何パターンでも3000円
プリント:6つ切りサイズで4900円
割安で明瞭な価格体系(2014年12月現在)
「子ども専門」ならではの際立ったサービス展開⇒そのための仕掛けが必要
豊富な衣装を揃えるために、衣装のデザイン開発から生産、供給までを一括して行う子会社
素人である社員が撮影、着付け、メイク、子ども達に機嫌よくポーズを取らせるための研修設備
  ●常識にとらわれない発想が新たな価値を生む 
スルガ銀行:
個人向けサービスに特化し、ホテルの「コンシェルジェ」をイメージした個人金融のサービス・カンパニーを志向
銀行がローンを提供してこなかったスポーツ選手や働く女性、外資系企業の社員、外国人などに、信用リスクを分析・管理したうえで、通常の銀行より高めの金利でローンを提供。

他行が貸したくない個人に、他行にはない基準でお金を貸し出すことで、ニッチな個人向けの商品開発と営業のプロセスを強化。
業界常識とは異なるプロセスを強化したプレーヤーに対抗するのは、既存プレーヤーにとって困難

@既存顧客のニーズをミスマッチを起こす
A既存の経営資源では対抗できない
Bプロセス強化には仕掛けが必要⇒キャッチアップも容易ではない
  ●混ぜる・・・異なる商材を組み合わせて競争の軸をずらす 
「混ぜる」:
異業種や異業態の製品やサービスを混在させることで売り場などの魅力を高め、顧客の購買意欲を刺激
提供方法を工夫することによって新たな価値を生み出す。
「遊べる本屋」をコンセプトに全国展開するヴィレッジヴァンガード
書籍、CD、雑貨
異なる利益率の商材を組み合わせることで高い粗利を実現
特定のジャンルの既刊書や雑誌を中心に、関連する雑貨やCDが並ぶ
書籍とそれ以外の商材がきわめて高いレベルで融合
ex.「海外旅行」というキーワードを起点にした「連想ゲーム」のような発想で売り場がつくられている。
手書きのPOPにも力
ワクワク感やドキドキ感といった既存書店とは異なる価値で売っている。
常に顧客の期待値を超える存在であり続けられるかどうかが生命線
既存の書店:書籍 @仕入、A売り場づくり、B販促、C販売
ヴィレッジヴァンガード: 書籍・CD・雑貨 @仕入、A売り場づくり、B販促、C販売
  ●競合と異なる軸を打ち立てる 
ドラッグストア「クスリのアオキ」:
医薬品+生鮮食品
食品を低価格で提供⇒顧客を引きつけ、利益率の高い医薬品などを同時に購入してもらうことで収益を確保
ヴィレッジヴァンガード・クスリのアオキ
〜業界常識に反した商材を売り場に持ち込み、競合と異なる競争軸を打ち立てている
ヴィレッジヴァンガード:店舗の立地や規模ではなく、売り場の楽しさやおもしろさで勝負
クスリのアオキ:非医薬品で客数と来店頻度を高める
競争の軸をずらされている⇒真正面から反撃しづらい相手
  ●単純化する・・・プロセスを標準化して事業規模を拡大する 
「単純化する」:
専門的で小規模な仕事を標準化したうえで、事業規模を拡大させる戦い方
プロセスを標準化することで、新しい価値を生み出す。
働く女性が安心して頼めるメイドサービスのベアーズ:
家事代行、ハウスクリーニング、ベビーシッター、キッズシッター、高齢者サポート、ビジネスユーザー向けサポートも提供
提供するサービスを、@質を高めるとともにA標準化し、B価格体系を明瞭化
⇒既存の家族代行サービスでは実現できなかった価値を提供
既存の家事代行サービス:@スタッフ教育、A広告、B契約、Cサービス提供
ベアーズ:@スタッフ教育(=マニュアルによるトレーニング)、A広告(=マス広告)、B契約(=明瞭化されたサービス内容と価格)、Cサービス提供(=安定したクオリティ)
サービスの質を管理するために、詳細な基準が設定。
パッケージプラン化したサービスの内容と価格をわかりやすく示している
20〜70代の幅広い年齢層の専任スタッフをそろえる
社員満足度を重視し、社員が抱える不満や課題への対応を徹底⇒高い社員満足度を保つことでホスピタリティ向上はもちろん、スタッフの退職リスク低減をはかっている。
  ●分散型事業を規模型事業へ 
ブックオフ:
古書の外見がきれいかどうかで判断
状態の良い本⇒原則定価の10%で買い取る
販売価格:古書にクリーニングをかえたうえで定価の半額。言って期間経過⇒100円で販売。
業務が簡素化・標準化
マニュアルによって運営
⇒チェーン店化
サービスを標準化して規模拡大をはからないことには、そのサービスが与える安心感や信頼感を不特定多数の顧客に感じてもらうことができない。
  ●まとめ 
やめる
強める
混ぜる
単純化する:ベアーズ、ブックオフ、ガリバー、公文
  ■どこにフォーカスするか 
  ●プロセスを変えるために何をすべきか 
「やめる」「強める」「混ぜる」「単純化する」の4つのアプローチ
このようなアプローチのもとでバリューチェーンを再評価し、新しい戦い方を手に入れるには、どのような視点に立てばいいか?
@顧客視点で発想する
A合わせ技を使う
Bサービスの担い手を変える
Cビジネスの型を整える
  ●顧客視点で発想する 
顧客目線で既存のプロセスを見直す。
 「いまあるプロセスは顧客ニーズを満たしているか」
「供給者の論理や都合が優先されていないか」
といった視点が大切。
かつて有効だったプロセスが、外部環境の変化によって機能不全を起こしている場合もある。
いかにして既存のプロセスを顧客ニーズに合わせた再構築したか。
スーパーホテル:
低コストオペレーションを実現するためにムダを徹底的に排除する一方
顧客の「快眠」のための仕掛けも多数用意
ex.大きなベッドや選べる枕、徹底した防音構造、「ぐっすり研究所」を立ち上げて快眠のための研究も行う。

根底にあるのは「顧客視点」
寝ている時間が圧倒的に多い⇒睡眠に関する満足度をとことん高めようとしている。
既存のプロセスを顧客視点で見直すことが、プロセス改革のポイント。
当り前とされてきた既存のプロセスに非効率な点やムダがあれば、そこがビジネスチャンスになる。
「あったらいいな」という顧客視点の発想が原点。
  ●合わせ技を使う 
複数の「合わせ技」と用いるのも有効。
俺のシリーズ:
一流の料理を出す(強める)+
フルサービスでない立食スタイル(やめる)
スーパーホテル:
フロント業務をなくしてセルフサービスにする(やめる)+
利用者が心地よく眠れるようにするためのサービスを強化(強める)
ヴィレッジヴァンガード:
新刊書やベストセラーに依存せず(やめる)+
書籍以外の商材の充実化をはかる(強める)
  ●サービスの担い手を変える 
専門性を必要とするプロセスにあえて素人を配置する。
超一流の人材を配置することで、バリューチェーン全体を再構築する。
スタジオアリス:一般社員がカメラマン
俺のシリーズ:一流のシェフを配置
担い手を変えることで既存のビジネスのボトルネックを解消できれば、新たな価値を生み出すことができる。
  ●ビジネスの型を整える 
ビジネスの「型」を整えることも重要。
新たに構成したプロセスがバリューチェーン全体で有機的に機能するように全体を整える。
ヴィレッジヴァンガード:
売り場の編集力を維持・向上させるためのノウハウの伝達や人材育成に多くの時間を割く。
仕入れを含めた権限を現場(各店舗)に委譲し、現場発意で機動的に動ける環境を整える。

魅力ある売り場は、店舗への権限移譲や人材育成とセットで機能。
スタジオアリス:
衣装のデザイン開発から生産、供給までを一括して行う子会社や、社員研修のための設備を有している。
〜バリューチェーン全体を支える仕組みと合わせてビジネスの型を整える。
  ★第6章 既存プレーヤーはどう対抗するか 
  ■なぜうまく防御できないのか 
2つの理由
@顧客ニーズの変化をとらえられなかった
A自社の儲けの仕組みを脅かす存在にうまく対応できなかった
  ●顧客ニーズの変化をとらえられない 
代ゼミ:
浪人生を主な対象に大規模な教室を全国展開
but
少子化や社会情勢の変化⇒浪人生が激減し、多くの学生が現役で大学受験⇒学校生活を送りながら大学受験のために予備校にも通いたいという、現役生のニーズにマッチしない。

浪人生全体をすくい取ろうとしたマス型の代ゼミが競争から脱落
スーパーマーケット:
専門店の台頭にうまく対応できなかった。
顧客のニーズがより安くて使いやすいものと、個性にあふれた自分だけの商品といったかたちに二極化
but
店舗政策や品揃え、価格帯の設定などが中途半端に。
  ●自社を脅かす存在にうまく対応できない 
スマホゲームの台頭を許した任天堂:
無料で提供して課金や広告で稼ぐというスマホゲームのビジネスモデルへの対抗手段が見出せなかった。
NTTドコモ:
iPhoneのビジネスモデルがドコモのビジネスモデルと相容れなかった⇒iPhoneの導入に後れをとった。
「iモード」という独自のアプリケーション販売モデル(プラットフォーム)〜アプリケーションの売上はいったんすべてドコモを通る仕組み。
〜すべて「App Store」を通すというアップルの仕組みと相容れなかった(←アップルの仕組みを受け入れてしまうと、自分たちが単に回線を使わせるだけの存在になってしまう。)。
  ●新興勢力に対抗する手段は何か 
既存企業が既存ビジネスを守る場合も、4類型が通用する。
but
新興プレーヤーと同じやり方ではうまくいかない。
相手の戦い方と同じボックスに入るのは得策ではない。
  ■プロセス改革型で対抗する 
  ●強みを活かしてバリューチェーンを見直す・・・野村證券 
プロセス改革型:自社の強みを失わずに新しいバリューチェーンを再構築するという戦い方。
ex.
顧客サービスを強化するためにコールセンターだけでなくウェブ上でも問い合わせを受けるようにする。
いまあるサービスをよりきめ細かなものにする。
野村証券:
×ネット証券と同じように手数料を安くする。
〇デイトレーダーのような安い手数料を求める人はネット証券に任せ、自社の優良顧客が離れないように工夫。
←優良顧客が求めるものは、必ずしも手数料の安さだけではない。

基本は支店や営業担当者が対応するが、それではできない追加的なサービスをネットで行う。
ex.土日や夜間でも株価を見たり、取引したり。
  ●相手が真似できない仕掛けをつくる・・・コマツのコムトラックス 
コムとラックスから送られてくる車両の稼働状況や機械部品の使用状態などといった情報を無償で顧客に提供。

低価格で攻勢をかけてくる新興国の競争相手に対して、彼らが真似できない付加価値で勝負。
顧客の建機の使用状況を遠隔監視⇒建機の使い方や消耗品の状態を予測し、故障する前に整備や部品交換を勧めたり⇒故障が減り、稼働率があがる⇒多少価格が高くてもコマツ建機を使ったほうがコストパフォーマンスがよい。
  ●プロセス改革で顧客ニーズに応える・・・TTNコーポレーション(畳屋)
畳市場は減少
but
「夜中に畳替えをしてくれるなら注文したい」という顧客のニーズに耳を傾け、生き残りに成功。
2002年以降、分業による大量生産を実現するため設備投資を行い、24時間いつでも納入できる仕組みを確立。
⇒飲食店や居酒屋などから大口の注文を受け、高成長。
自社の生産体制、@製造プロセスを見直し、短納期で大量生産できるようにしたこと、A深夜でも畳替えができるように販売・施工プロセスを変更したことが成功の理由。
  ●既存事業に踏みとどまってプロセスを見直す・・・カメラのキタムラ 
デジカメ用のDPEサービスを取り入れる。
簡単な操作で写真をプリントできる装置を店頭に大量に導入し、デジカメでもDPEショップが便利という仕組みを作るのに成功。

簡単な転倒プリントを好む、あるいは大量にプリントしたいといった人たちによって、成功。
  ■市場創造型で対抗する 
市場創造型の対抗策:
@既存のビジネスモデルを活かしながらも環境変化に対応して新しい製品やサービスを提供する方法
A新たな競争者と同じ土俵で戦わないように、市場そのものをずらしてしまう方法
  ●既存のビジネスモデルを進化させる・・・JR東日本のエキナカビジネス 
東日本旅客鉄道:
流通事業を大きく成長させ、それを企業全体の成長につなげている。
従来:駅構内のキオスク、駅ビル事業などで小売り事業
but人口減少⇒付帯サービスとしての小売業や、駅前立地を利用したテナント依存事業では限界

駅ナカ事業(エキュート)と呼ばれる駅構内ショッピングモール。

通り過ぎるだけだった駅の構内に長時間滞在してもらい、そのあいだにお金を落としていってもらう。
若い女性に人気がある有名ブランドを誘致したり、デパート並みのエクステリアやインテリアを設置したりすることで、消費者のハートをつかむことに成功。
キオスクをコンビニとして生まれ変わらせたり、託児所事業を展開

製品やサービスを販売するという儲けの仕組みは従来と同じだが、利用者を駅に呼び込むという意味で新しい市場をつくり出した。
  ●既存のサービスを進化させる・・・ヤマト運輸のクール宅急便 
日本通運や佐川急便、日本郵便など多数のプレーヤーが参入し、宅急便市場が価格競争に。
⇒「クール宅急便」の開発。

集荷から貯蔵、配送といったすべてのプロセスで温度を管理⇒設備投資が多額⇒他社にtって参入障壁。

新しい製品やサービスを提供することで、新しい市場をつくり出している。 
  ●新しい顧客層を開拓する・・・ユニ・チャームの大人用紙オムツ 
出生率の減少⇒紙オムツは衰退市場
⇒大人用の紙オムツ市場に舵を切った
それまでの違ったチャネル・・・・病院や介護施設、通信販売といったチャネルの開拓
販売促進でも、テレビ広告ではなく、地道な活動
⇒大人用紙オムツ市場という新市場をつくり出す
  ●土俵をずらす・・・ベルリッツのビジネス教育 
インターネットを利用した月額制低価格語学教室から価格訴求型の攻撃
⇒まったく新しい事業を展開
語学そのものというより、英語を題材にグローバルビジネスマンを育成しようというビジネス教育
ユニ・チャーム:主要顧客層の縮小⇒新たな顧客層を開拓
ベルリッツ:既存顧客が新たなプレーヤーを奪われる⇒新顧客を見つけて新しい価値を提供

市場創造型の対抗策は、逃げの戦略。
本業の防衛が難しいとき、既存事業に新たな製品やサービスを付加。
既存の経営資源にどれだか価値を見出せるかがカギ。
  ■秩序破壊型で対抗する 
自社のビジネスモデルを否定して新しい儲けの仕組みを構築。
既存プレーヤーにとって自社の儲けの仕組みを否定する可能性が高い⇒劇薬となる。
  ●ブリジストンのリトレッド事業 
試用期限が近づいたタイヤの表面のゴムだけをはがし、そこへ溝付きのゴムを新たに貼り付ける、再生タイヤを販売するビジネス。
〜新興プレーヤーに対する対抗戦略
  ●ブラウザを無料にしたマイクロソフト 
ネットスケープの地位を奪うため、ブラウザを無料にしたうえでOS(基本ソフト)に組み込んでしまう
〜秩序破壊型で成功。
but
今は、ネット上で多くのアプリケーションソフトが無料で使える⇒オフィスソフトの戦略は迷走。
ex.グーグルドキュメント
アプリケーションソフトを自分のパソコンにインストールしないでサーバー上に置き、必要なときだけ使うといったタイプの仕組み。 
料金も無料。
ex.OpenOfficeやKINGSOFTなど、自分のパソコンにインストールするが料金が格安あるいは無料
  ●ベンツが始めたカーシェアリング事業 
ダイムラー:
他のカーシェアリング会社に市場を奪われるくらいなら、自分で市場をつくってやれと考えた?
EVを中心としたより効率的な車利用を推進するというPR効果
「スマート」という小型車を利用→自社が持つ高級車とはカニバリゼーションを起こさないようにしている。
  ●富士フィルムのデジカメ事業 
カメラ用フィルムメーカー⇒デジカメの製造販売
「自社の主力事業であるフィルムの需要が減ってもいい。新しい分野でリーダーになる。」
フィルム事業:フィルムのはんばいより、その後の現像関連のほうが収益が大きい。
デジカメ:カメラ単体で収益をあげる純粋なハードウェア製造販売事業。
エレクトロニクスメーカーの前にその地位を落とす。
butフィルム事業依存体質からの脱出という点では成功。
@自社の現在の事業がどれくらい脅威にさらされているか(数年内に売上げが激減したり、事業そのものが消滅したりしてしまう可能性がどれくらいあるか)
A新しい儲けの仕組みを採用した際に、どれくらいの利益が得られるか
  ■ビジネス創造型で対抗する 
  ●ビジネス創造型では本業を守れない 
既存事業の防衛戦略として活用するのは実際には難しい。
新規事業がうまくいっても、既存事業とは関係ない⇒既存事業の防衛にならない。
DHC:
もとは「大学翻訳センター」but今は通信販売の化粧品事業として成功。
非関連事業多角化
落下傘型の新規事業
DeNA:
スタートアップはオークションサイトの「ビッダーズ(現DeNAショッピング)」
今は「モバゲー」など携帯ゲームの世界で成功
オークション事業の防衛には役立っていない。
製品やサービスが自社にとって新しい領域であり、儲けの仕組みも従来と異なる

自社の経営資源が活用できるほうが不思議
成功要因も異なる
さらに、ビジネス創造型で対抗する場合は別途、既存事業も守らないといけない
⇒中途半端になる。
  ●CCCのTポイントカード事業 
TSUTAYAによるCD・DVDレンタル事業
butインターネットで入手
⇒ネットで申し込んでDVDを郵便で送付するサービスや、ネットで動画を提供するサービスなど、さまざまなレンタル事業を展開。
書店とCD・DVDの複合店を進化させて、くつろげる書店。
TSUTAYAで培った会員情報分析を活用したTポイントカード事業:
従来より会員の購買履歴を細かく管理することで、プロモーションを展開
⇒Tポイントカード事業へ:
参加企業が顧客囲い込みのために行っていた、あるいは行おうとしていたポイントサービスをTポイントが代行し、ポイントを共通化する仕組み。
参加企業:自社で顧客管理システムを持たなくても、ポイントシステムで競合他社と差異化できる。
ユーザー:1社ごとよりも共通ポイントのほうが早くたまるし、ポイント利用の幅が広がる。
⇒共通ポイントの仕組みは急速に普及。
Tポイントでは、顧客解析で培ったCCCのノウハウを活用して会員の購買行動分析を行い、その結果を会員各社にマーケティング情報として販売。
会員数4800万人、20代ではその7割がTポイント会員⇒かなり正確な属性に基づく消費傾向が把握できる。
CD・DVDレンタル事業からみれば、サービス内容も儲けの仕組みも異なる。
but
顧客情報を活用して本業のマーケティングに活かすという点では密接につながっている。
(全くの新規事業が本業にも+になるという、数少ない事例)
  ●ネスレのドルチェグスト事業
レギュラーコーヒーの普及、ドトールやスターバックス等のコーヒーショップ
⇒家庭用インスタントコーヒーは押され気味
⇒ネスレでもレギュラーコーヒーを販売して市場を守り、拡大。
豆を売るのではなく、レギュラーコーヒー専用のコーヒーマシン(ドルチェグスト)を売り、それに使うコーヒー豆をカプセルで売る。
@専用マシン⇒他社のコーヒーカプセルは利用できない⇒自社で豆の需要を独占でき、価格も自由に設定できる。
A
コーヒーマシンは「撒き餌」⇒安い価格で消費者に提供。(インクカートリッジでかせぐプリンター事業と同じ)
B消費者:カプセル方式⇒一人ひとりが好みの豆・好みの飲みかたで楽しめる。

他社と差別化されたビジネスモデルを生み出すとともに、家庭における新しいコーヒーの飲みかたを提案し、市場を拡大することに成功。
Cインスタントもレギュラーもその原料はコーヒー豆⇒「世界一コーヒー豆を購入して使用しているメーカー」という立場をさらに強固にすることにもつながり、既存事業の防衛にも役立つ。
CCCとネスレは、本業で培ったノウハウを横展開しながらも、従来とは異なる市場に乗り出し、新しい儲けの仕組みを採用して成功している、稀な事例。
  ■まずは、相手の戦い方を見極める
自社の事業領域への侵入者がどの戦い方で攻め込んできたか・・・@プロセス改革型、A秩序破壊型、B市場創造型。Cビジネス創造型・・・を考察したうえで、自分たちがどの戦い方を選ぶのが最も効率的かを考える必要。
ビジネス創造型は、既存企業の直接の防衛策にはなりにくい。
  ●相手が、自社とは異なるプロセス(プロセス改革型)で攻めてきた場合 
最も手堅い対抗手段は、自らの強みを活かしながら、周辺領域で新しい市場(製品や顧客)を探す「市場創造型」。
「秩序破壊型」は自らの得意技を手放すことになりかねない⇒やめた方がいい。
  ●相手が、新市場をつくって(市場創造型)攻めてきた場合 
こちらも「市場創造型」で攻める。
←同じ分野で対抗できる経営資源を持っている場合が多い。
but
相手のつくった新市場が自社の需要を奪っていく可能性がある場合、自社の事業プロセスを見直す必要がある。
⇒コストダウンや業務改革を行い、「プロセス改革型」で被害を最小限にとどめるやり方も効果的。
  ●相手が、新しい稼ぎ方で(秩序破壊型)で攻めてきた場合 
大変やっかいでできれば戦いたくない競争相手。
but自社の事業を奪っていく可能性が高い⇒なんらかの防衛戦略が必要。
×「プロセス改革型」で乗り切る
vs.相手はこちりの仕組みを無力化⇒現在の自社のビジネスモデルのままでた戦えない。
もっとも安全なのは、土俵をずらし、別の市場で戦う「市場創造型」
but
どうしても守らなければならない市場の場合、敵と同じ戦い方(=「秩序破壊型」)で臨む方法もある。
ex.ブリジストンのとったリトレッジ事業への進出。
  ●相手が、まったく新しい事業で(ビジネス創造型)攻めてきた場合 
秩序破壊型で攻められた場合と同じ。
←これまでと同じ儲けの仕組みで戦っていても不利。
市場創造型。
できるだけ、これまでの事業経験で培ったノウハウが活かせる分野に進出するのが望ましい。
  ■リスクをとって、勝ち目のある戦いを目指す 
攻める側には失うものがないという強み⇒攻め込まれる側の「守り方」は難しい。
@無視する
A正面から戦う
B搦め手で戦う
C逃げる
  ●無視する 
極めてリスクが高い(ex.任天堂)。
←競争のルールが変化してしまったフィールドでは、これまでと同じような戦い方で同じような収益をあげることが困難。
ヨーロッパの自動車メーカーも無視によりハイブリッド車の開発に出遅れた。
←電気自動車や燃料電池車こそが究極のエコカーであり、ガソリンを使う、ハイブリッド車はそれまでの「つなぎ」の技術にすぎないと考えられてきた。
but
内燃機関と蓄電池の組み合わせからなるハイブリッド車の技術は、燃料電池と蓄電池の組み合わせからなる燃料電池車にそのまま活用できる。
  ●正面から戦う 
ex.ブリジストンのリトレッド事業
どうせ他社にとられるぐらいなら、自分たちでやってしまおう(≠放置)
@タイヤを「単品売り」で終わらせるのではなく、タイヤの「トータル・マネジメント」にまでつなげる
A新タイヤの販売本数を減らすことになっても、トータルでの利益を増やすことができる可能性
ex.富士フィルムのデジタルカメラ事業
〜一時は成功したが、その後は苦戦。
無視や放置や様子見よりも現実的な対応。
butリスクも高い戦い方。
  ●搦め手で戦う 
正面突破ではなく、自社の強みをそこに活かしていく。
ex.野村証券のネットトレード、コマツのコムとラックス
野村証券のネットトレード:
ネットを活用したサービスの充実ははかっているが、現在のビジネスモデルにおいて抱えている優良顧客のフリンジ(周辺サービス)として展開することをねらいとする。
コマツは、コムとラックスから得た情報を建設機械のアフターサービスや部品交換などに役立てている。
他社が簡単には真似できないだけでなく、顧客にとっても付加価値が高い。

価格競争に陥っていた業界のなかで「非価格競争」に挑んでいる。
今後さらに、建設機械のIT化を高めようとする。
  ●逃げる 
ex.ベルリッツ
低価格プレーヤーからの攻撃をかわすため、戦いの場を、語学教育からビジネス教育に移そうとしている。
ex.イオンのミニスーパー「まいばすけっと」

コンビニエンスストア事業で出遅れ、スーパーマーケット(GMS)の不振を抱えているイオンにとって、戦いの場をずらすことで、市場を手に入れようとしている。
「搦め手で戦う」「逃げる」といった方法が現実的。
  ★おわりに・・・変化しない者は生き延びられない
何でもありの時代。
変化すれば生き残れるかというと、それほど甘くないかもしれない。
but「変化しない者は生き延びられない」のは確か。
顧客視点で、既存企業の矛盾や消費者の潜在的なニーズ(アンメッツニーズ)に着目することが必要。
顧客の不満は宝の山。
企業視点で考えるときには、「ゲーム・チェンジャーの4類型」の横軸か縦軸のどちらかひとつ(あるいは両方)を動かしてみる。
@顧客への価値提案は明確か(横軸に注目する)
A現行のビジネスモデルを出発点としてどのような稼ぎ方が考えられるか(縦軸に注目する)
Bどちらも動かさずに、自社のビジネスプロセス(バリューチェーン)に着目する方法。
攻め込まれている場合は、相手の攻め方を冷静に分析し、違う打ち手で戦うことが有用。
←相手と同じ戦い方をすると、既存企業のほうが失うものが多く、不利。 
攻め手に対して逆襲する場合は、彼らの戦い方を理解したうえで、彼らが嫌がる戦い方で攻めるべき。
一時的に成功したとしても、変化し続けなければ長続きできない。
⇒常に自分たちの事業モデルを見直すことが重要。 
激変の時代だからこそ、チャンスがある。
一歩、踏み出す企業や個人にこそ、可能性がある。
  ★謝辞 
「本当の発見の旅とは、新しい土地を探すことではなく、新しい目でみることだ」