シンプラル法律事務所
〒530-0047 大阪市北区西天満2丁目6番8号 堂島ビルヂング823号室 【地図】
TEL(06)6363-1860 mail:
kawamura@simpral.com 


批判的言論の威嚇を目的とする訴訟と違法訴訟(我妻学)

T はじめに  
  ◆1 制定の経緯
  ◆2 制定後の法改正の経緯と概要
     
U 訴えの提起と違法訴訟  
    昭和63年1月26日最高裁判例
法的紛争の当事者が当該紛争の終局的解決を裁判所に求めうることは、法治国家の根幹にかかわる重要な事柄⇒裁判を受ける権利は最大限尊重されなければならなず、不法行為の成否を判断するにあたっては、いやしくも裁判制度の利用を不当に制限する結果とならないよう慎重な配慮が必要とされる。

法的紛争の解決を求めて訴えを提起することは、原則として正当な行為であり、提訴者が敗訴の確定判決を受けたことのみによって、直ちに当該訴えの提起をもって違法ということはできない。
but
訴えを提起された者にとっては、応訴を強いられ、そのために、弁護士に訴訟追行を委任しその費用を支払うなど、経済的、精神的負担を余儀なくされる
⇒応訴者に不当な蓋を強いる結果を招くような訴えの提起は、違法とされることのあることもやむをえない。
民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において、右訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、
当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法令津関係(以下「権利等」)が事実的、法律的根拠を欠くものであるうえ、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られる。

訴えを提起する際に、提訴者において、自己の主張しようとする権利等の事実的、法理的根拠につき、高度の調査、検討が要請されるものと解するならば、裁判制度の自由な理由が著しく阻害される結果となり妥当でない、。
     
     
    加藤新太郎:
@被侵害利益の存在(訴訟に関与させられ生活の平穏を余儀なくされる事態を将来しない利益)
A権利侵害の事実=違法性(訴えの提起等が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くこと)
B故意・過失
CAとDの間の因果関係
D損害発生の事実とその数額
上記最判が明らかにしたのは違法性の内容A。
これは規範的要件⇒その評価を根拠づける具体的事実が主要事実になる。
A:提訴者主張の権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものであること(=客観的違法要素)
B:提訴者のAに対する認識又は認識可能性があること(=主観的違法要素)

評価根拠事実として位置付けられ、その相関的評価によって、訴えの提起等が「裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く」か否かが判断される。
主観的違法要素が強度の場合、例えば、提訴者に害意や不当な目的(嫌がらせの目的、他の懸案事項の交渉の圧力)がある場合には、権利がある場合にも、違法性が肯定される余地が認められている。

前訴提起について事後的に不法行為を問題としている事例であり、当事者の裁判を受ける権利をはく奪する権利濫用の問題とは性質を異にしている。
     
V 批判的言論の威嚇を目的と宇sる訴訟  
(1) (1) 東京地裁H13.6.29
    X1は、主に批判的言論を威嚇する目的をもって、7億円の請求額が到底認容されないことを認識した上で、あえて本訴を提起したものであって、このような訴え提起の目的及び態様は裁判制度の趣旨に照らして著しく相当性を欠き、違法なもの⇒慰謝料100万円を認容。
     
(2)   (2) 東京地裁H17.3.30 
     
   
(3)    (3) 青森地裁弘前支部H20.3.27 
     
(4)   (4) 最高裁H21.10.23 
     
(8)    
     
W スラップ訴訟と違法訴訟