シンプラル法律事務所
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イノベーションと企業家精神(ドラッカー)

◆    編訳者まえがき:
ドラッカーは、ほとんど物心ついた頃から、物ごとには方法論があることを察知していた⇒それらの方法論を探求し続けた。
★第1部 イノベーションの方法   
☆第1章 イノベーションと企業家精神   
  ◆企業家の定義 
    意思決定の本質は不確実性にある。
企業家精神とは気質ではなく行動。
その基礎となるのは、勘ではなく、原理であり、方法である。
  ◆変化を利する者 
    企業家精神の原理:
変化を当然のこと、健全なこととすること。

企業家精神:
すでに行なっていることをより上手に行うことよりも、まったく新しいことを行なうことに価値を見いだすこと。

権威に対する否定の宣言
企業家とは、秩序を破壊し解体する者。
企業家の責務は「創造的破壊」
企業家および企業家精神の定義:
変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する。 
◆    ◆企業家精神のリスク
    企業家精神は、単なる最適化よりもはるかにリスクが小さい。

@企業家は至言を、生産性が低く成果の乏しい分野から、生産性が高く成果の大きい分野に動かす。
A多少なりとも成功すれば、その成功はいかなるリスクをも相殺して余りあるほど大きい。
    AT&Tのベル研究所の例
IBMの例
P&Gの例
☆第2章 イノベーションのための7つの機会  
  ◆イノベーションとは何か 
    イノベーション:
富を創造する能力を資源に与える。
イノベーションが富を創造する。
人が利用の方法を見つけ経済的な価値を与えない限り、何ものも資源とはなり得ない。
    ペニシリン
割賦販売:供給主導型⇒需要主要型
コンテナ―船
教科書
日本の社会的イノベーション:学校、大学、行政、銀行、労組のような公的機関の発展
技術的イノベーションは模倣
創造的模倣は、極めて成功の確率の高い立派な企業家戦略
  ◆イノベーションの体系 
    イノベーションの理論を構築していない
but
イノベーションの機会をいつ、どこで、いかに体系的に探すべきか
成功の確率と失敗のリスクをいかに判断すべきか
を知る。
輪郭だけではあるが、イノベーションの方法を発展させるうえで必要な知識もある。l
    「発明」の発明:
発明は、開発研究、すなわち目的とする成果と実現可能な成果について計画を立てる体系的な活動。
イノベーションも同じ発展が必要⇒体系的にイノベーションを行なう。
    企業家として成功する者:
価値を創造し社会に貢献。
価値と満足を創造し、単なる素材を資源に変える。あるいは、新しいビジョンのもとに既存の資源を組み合わせる
この新しいものを生み出す機会となるものが「変化」。
イノベーション:
意識的かつ組織的に変化を探すことであり、
それらの変化が提供する経済的、社会的イノベーションの機会を体系的に分析すること。
成功したイノベーションの圧倒的多数が、そのような変化を利用。
実際には、成功したイノベーションのほとんどが平凡で、単に変化を利用したもの。

イノベーションの体系とは、
具体的、処方的な体系。
変化にかかわる方法論、企業家的な機会を提供してくれる典型的な変化を体系的に調べるための方法論。
◆    ◆7つの機会 
    企業や公的機関の組織の内部、あるいは産業や社会的部門の内部の事象
⇒内部にいる人達にはよく見えるが、それは表面的な事象。
but
すでの起こった変化や、たやすく起こすこのできる変化の存在を示す事象。

@予期せぬことの生起:
予期せぬ成功、予期せぬ失敗、予期せぬ出来事

Aギャップの存在:
現実にあるものと、かくあるべきものとのギャップ

Bニーズの存在

C産業構造の変化
企業や産業の外部における事象

D人口構造の変化

E認識の変化:
ものの見方、感じ方、考え方の変化

F新しい知識の出現

それぞれが異なる性格をもち、異なる分析を必要とする。
いずれが重要であり生産的であるかはわからない。

さして意味の内製品の改善や価格の変更によって生じた変化を分析することによって、偉大な科学的発見による新しい知識を華々しく応用するよりも大きなイノベーションが行なわれることがある。
but
信頼性と確実性の大きい順に並べている。
   
☆第3章 予期せぬ成功と失敗を利用する(T)
  ◆予期せぬ成功 
    これほど、イノベーションの機会となるものはない。
リスクが小さく苦労の少ないイノベーションはない。
but
予期せぬ成功はほとんど無視される。
    メイシーの例(予期せぬ成功の拒否)
ブルーミングデイルの例(予期せぬ成功の利用⇒ニューヨークの百貨店として第2位の座を確保)
    マネジメントが報酬を支払われているのは、判断力に対してであって、無謬性に対してではない。
自らの過誤を認め受け入れる能力に対しても報酬を支払われている。
特にそれが機会に道を開くものであるとき、このことが言える。
    動物用医薬品業界の例
病院用機器メーカーの例
  ◆イノベーションへの要求 
    予期せぬ成功がもたらすイノベーションの機会を利用するには、分析が必要。
    予期せぬ成功は、兆候
but
何の兆候か?
単にマネジメントの視野、知識、理解の欠如を示しているにすぎない場合もある。
    ●医薬品メーカーの多くが動物用医薬品市場での成功を拒否:
世界の畜産市場の規模と重要性に対する認識の欠如
第二次世界大戦後における動物性タンパク質の需要の伸びに対する読みの甘さ
農民の知識や能力の変化に対する理解の欠如
●家電の予期せぬ成功

消費者の行動、期待、価値観が基本的に変化

百貨店の顧客:
特定の社会的、経済的階層、特定の所得階層の人たち(戦前)⇒
特定の生活様式の人達(戦後)
●テスト機器の予期せぬ成功:
科学機器の使用者間における目的、要求、期待の境界が急速に消滅。
病院市場というニッチ市場の終わり。
自らを病院用機器の設計、生産、販売に携わる者と規定⇒テスト機器一般のメーカーとして規定し直し、かつての市場よりも大きな市場を相手として、製品の設計、生産、販売、サービスのための能力を発展させなければならなくなっていた。
but
気付いた時には、市場の大きな部分は永久に失われていた。
    予期せぬ成功:
@イノベーションのための機会であるだけでなく、
Aイノベーションに対する要求
予期せぬ成功⇒自らの事業と技術と市場の定義について、いかなる変更が必要かを問うことを強いる⇒それらの問いに答えた時、予期せぬ成功が最もリスクが小さく、しかも最も成果が大きいイノベーションの機会となる。
    ●デュポン
火薬メーカー⇒他の分野に進出すべく、組織的開発⇒ポリマーの開発
バーナーの火の消し忘れ⇒繊維状に凝結したポリマー
●IBM
1930年代初め、倒産寸前。
大恐慌⇒銀行は新しい事務機を購入せず
ニューヨークの公立図書館の官庁

15年後、科学計算用のコンピュータ
but
給与計算など世俗的な仕事に⇒直ちに応じた
     
  ◆予期せぬ成功が意味するもの 
    予期せぬ成功が必ず目にとまる仕組

提示された予期せぬ成功について
@これを機会として利用することは、わが社にとっていかなる意味があるか
Aその行き着く先はどこか
Bそのためには何を行わなければならないか
Cそれによって仕事の仕方はいかに変わるか
    予期せぬ成功は機会であり、要求でもある。
正面から真剣に取り上げられることを要求。
優秀な人材が取り組むことを要求。
機会の大きさに見明日取り組みと支援を要求。
     
  ◆予期せぬ失敗 
    多くは、単に計画や実施の段階における過失、貪欲、愚鈍、●雷同、無能の結果。
but
慎重に計画し、設計し、実施したものが失敗
⇒失敗そのものが変化とともに機会の存在を教える。
製品やサービスの設計、マーケティングの前提となっていたものが、もはや現実と乖離
顧客の価値観や認識の変化
同じものを買ってはいるが、違う価値を買っている
かつては1つの市場、1つの最終用途⇒まったく異質の2つ、あるいはそれ以上の市場や最終用途

これらの変化はすべてイノベーションの機会
    ベビーブーマー世代、不況、インフレも悪化、住宅の値上がり

小さな安い住宅を売出し(て失敗)。
vs.
若い夫婦が求めるもの
@数年雨露をしのげるもの
A数年後大きな立派な家をもつための足がかりになるもの

最初の家、欲しい家への第一歩として販売
2つ目の浴室や寝室、地下室を建て増ししたモデルハウスも見せられた。
5年ないし7年後に大きな家を自社から購入してくれる際の下取り価格まで提示
(少し手を加えるだけで、かなりの利益を上乗せして売れる新品同様の中古住宅が、安定的に手に入るようになった)
    予期せぬ失敗

トップマネジメント自身が外へ出て、よく見、よく聞くこと。
常にイノベーションの機会の兆候としてとらえなければならない。
トップ自身が真剣に受け止めなければならない。
    消費者だけでなく、取引先に起こる予期せぬ事態にも注意を払う。
マクドナルド創業者のレイ・クロックの事例
    分析するだけでは不十分。
調べるために出かけなければならない。
     
  ◆分析と知覚の役割 
    緻密な分析も、基礎となるのは、あくまで変化、機会、現実、現実と認識のギャップなどに対する知覚。

「分析できるほどはまだわからない。しかし、必ず見つけ出す。外に出かけ、観察し、質問し、聞いてくる」と言わなければならない。
予期せぬものは、通念や自身を打ち砕いてくれるからこそイノベーションの宝庫となる。
現実が変化した原因を知る必要はない。
何が起こったかがわかれば、イノベーションに成功することができる。
    1957年のフォードのエドセルの失敗
「中流の上」市場を狙ったエドセルの失敗

外へ出て調べた結果、
1920年代にアルフレッド・P・スローンがGMの成長の基礎としたアメリカの自動車市場の区分の仕方、「一般」「中流の下」「中流の上」「上流」という区分が、全く新しい市場区分、すなわち今日ライフスタイルといわれているものに変わりつつあることを知った。

サンダーバードの開発

GMの模倣者としての地位を脱し、強力な競争相手として再登場。
    成功にせよ、失敗にせよ、予期せぬことが起こったことを知るだけで、イノベーションの機会とするには十分。
     
  ◆外部の予期せぬ変化 
    外部の予期せぬ変化を利用してイノベーションの機会とすることに成功した例
    IBM:メインフレーム分野に集中
⇒パソコン市場へ 
「起こるはずもない無意味なことと信じていただけに、ショックだった。当たり前のように信じていたことがすべてゴミ箱行きになってしまった。そこで、外へ出て、起こるはずがないのに怒ってしまったものを調べて、利用することにした」
    外部の予期せぬ変化をイノベーションの機会として利用するための条件は、その機会が自らの事業の知識と能力に合致すること。
外部の予期せぬ変化といえども、既存の能力の新たな展開の機会としてとらえなければならない。
自らの事業の性格を変えてはならない。
多角化ではなく展開でなければならない。
     
  ☆第4章 ギャップを探す(U)
    ギャップ:現実にあるものと、あるべきものとの乖離
ギャップの存在はイノベーションの機会を示す兆候
定量的ではなく定性的
すでに起こった変化や起こりうる変化の兆候
    予期せぬ事象と同じように、1つの産業、市場、プロセスの内部に存在⇒内部あるいは周辺にいる者は認識することができる。
but
当然のこととして受け止めてしまいがちな内部の者が見逃しやすいもの。
    @業績ギャップ
A認識ギャップ
B価値観ギャップ
Cプロセスギャップ
     
  ◆業績ギャップ 
    製品やサービスに対する需要が伸びているのに、業績があがっていない⇒何らかのギャップが存在。

1つの産業全体あるいは社会部門全体におけるマクロ的な現象であることが多い。
イノベーションの機会として利用するのは中小の専門企業で、長期にわたってその利益を享受できる。
    鉄鋼業界:
@需要の増加に応じた生産量の増加の最小単位がきわめて大きい
A製鉄プロセスが不経済
電炉

一貫製鉄所の6分の1から10分の1
1度加熱するだけ
減量として鉄鉱石の代わりに鉄屑
オートメ化が用意
生産コストは高炉の半分以下
    @解決すべき問題を明確に
A既知の技術と既存の資源を利用してイノベーションを実現
B
イノベーションは複雑であってはならず単純でなければならない
華々しいものではなく、当たり前のものでなければならない。
     
  ◆認識ギャップ 
    産業内部の者が物事を見誤り、現実について誤った認識⇒その努力は間違った方向に向かい、成果を期待できない分野に集中。
それに気づき利用する者にとって、イノベーションの機会となる。
    ×船舶の高速化、省エネ化、省力化。
×海上での経済性を追求。
コンテナ―船の例。
船舶は資本財であり、資本財にとって最大のコスト要因は遊休時間。
その間、利益を生まないものに対し金利を払わされる。
    真剣な努力が事態を改善せず、むしろ悪化させる⇒努力の方向性が間違っていることが多い。
⇒単に成果のあがることに力を入れるだけで大きな成果が簡単に得られる。
解決策は、通常、的を絞った単純で小さなイノベーション。
     
  ◆価値観ギャップ 
    日本の経済界の大物のテレビ発言の例:
テレビは単なるモノではなく、新しい世界との接触であり、新しい生活と人生。
    フルシチョフの車発言の例:
車が単なる輸送手段ではなく、自由、移動、力、ロマン。
    米国の証券会社の例:
もっぱら自分達が「賢明な投資家」と呼ぶ人達を顧客にしている。
利殖をしない。
株の売買に精を出す顧客を求めない。
財産を守りたいという彼らの心理に働きかけている。
商品は、株式、公社債、年金、パートナーシップ投資、不動産信託等。
提供するものは安心感。
    価値観ギャップ

傲慢と硬直、独断
「貧しい人たちが何を買えるかを知っているのは、彼ら貧しい人たちではなく私である」という考え方。
あらゆるギャップのうちで最も多くみられるのが、この価値観ギャップ。

イノベーションを行う者が価値観ギャップを利用しやすい。
しかも彼らは、邪魔されずの放っておかれる。
「消費者は不合理であって品質に対し金を払おうとしない」
〜生産者が顧客の価値としているものと、顧客が本当に価値としているものとの間にギャップが存在。
     
  ◆プロセス・ギャップ 
    老人性白内障の手術の例:
筋肉組織を瞬時に溶かすことのできる酵素。
酵素の効力を失うことなく保存期間を延ばす保存薬。

世界中の眼科手術医がコナーの会社アルコン・ラボラトリーズの酵素を使用。
    O.Mスコットの例:
一定量の肥料や殺虫剤を均等に散布するための器具としてのスプレッダー。
    コナー:
手術のプロセスの中で不安になる部分がないかを医師に聞いて回った。
O・Mスコット:
何か困っていることはないかをディーラーや消費者に聞いて回った。
プロセス・ギャップは、消費者がすでに感じていること。
欠けていたものは、それらの声に耳を傾けることであり、真剣に取り上げること。
「製品やサービスの目的は消費者の満足にある」ことの理解⇒プロセス・ギャップをイノベーションの機会とすることは容易で効果的。
but
プロセス・ギャップをイノベーションの機会として利用できるのは、その世界の中にいる者だけ。
     
☆第5章 ニーズを見つける(V)  
    イノベーションの母としてのニーズは、限定されたニーズ。
具体的でなければならない。
企業や産業の内部に存在。
@プロセス上のニーズ
A労働力上のニーズ
B知識上のニーズ
  ◆プロセス・ニーズ 
    状況からスタートするのではなく、課題からスタート。
状況中心ではなく、課題中心。
知的発見によって、すでに存在するプロセスの弱みや欠落を補うためのイノベーション。
    白内障の手術に欠かせない酵素の保存薬の開発の例。
    (プロセス)ニーズを明確にすることが直ちに問題の解決につながった。 
  ◆労働力ニーズ 
    電話交換手不足⇒自動交換機。
日本の少子化⇒労働力不足の認識⇒ロボット先進国に。
  ◆知識ニーズ 
    科学者の「純粋研究」に対置される
「開発研究」を目的としたニーズ。
明確に理解し明確に感じることのできる知識が欠落⇒その知識ニーズを満たすには知的な発見が必要となる。
写真の発明⇒1880年代にイーストマン・コダックの創立者が新しい知識を利用しカメラを軽量化⇒世界の写真業界でトップへ。
    プロセス・ニーズ満たすうえでも、この開発研究が必要。
ニーズを知り、何が必要であるかを明らかに⇒必要な知識を生み出すことができる。
エジソンの例:
電力産業に必要なものは電球⇒実用電球の発明。
    成功を収めているものの多くは、目標が明確な小さなプロジェクト。
開発研究は、的を小さく絞るほどよい結果が出る。
日本の自動車事故を3分の1に減らした視線誘導標の例。
  ◆5つの前提と3つの条件 
    視線誘導標の例⇒
ニーズ(特にプロセス・ニーズ)に基づくイノベーションが成功するには5つの前提。
@完結したプロセスについてのもの
A欠落した部分や欠陥が1か所だけ
B目的が明確
C目的達成に必要なものが明確
D「もっとよい方法があるはず」との認識が浸透(=受け入れ態勢がある)
    ニーズに基づくイノベーションの3つの条件:
@何がニーズであるかが明確に理解されていること
Aイノベーションに必要な知識が手に入ること
B問題の解決策がそれを使う者の仕事の方法や価値観に一致していること
    ニーズによるイノベーションの機会は体系的に探すことができる。
ex.
エジソンが電気に関して行ったこと
ウイリアム・コナーが行ったこと

ニーズに基づくイノベーションはまさに体系的な探求と分析に適した分野
ニーズを発見

5つの前提に照らし
3つの条件に合致しているかを調べる
ことが不可欠。
☆第6章 産業構造の変化を知る(W)  
◆    ◆産業構造の不安定性 
    現実には、産業や市場の構造は脆弱。
小さな力によって簡単に、しかも瞬時に解体する。
    DLJ証券会社の例:
年金基金の運用責任者という新しいタイプの顧客が急速に大きな存在に。
単に新しいことを1つ求めているだけ。
⇒DLJは、その顧客に的を絞り「調査サービス」を行なう証券会社に。
「賢明な投資家」
病院の庶務的な仕事を組織的に行う会社。
費用はコストの削減額の一部で賄う。

イノベーションを行なった者が、もともと機会の存在を知っていた。
最小のリスクのもとに成功することを確認していた。
     
  ◆産業構造の変化が起きるとき 
  イノベーションの機会としての産業構造の変化は、次のようなとき、ほぼ確実に起こる。
@最も信頼でき、最も識別しやすい前兆は急速な成長
ある産業が経済成長や人口増加を上回る速さで成長⇒遅くとも規模が2倍になる前に、構造そのものが劇的に変化する。
仕事の仕方は確実に陳腐化し始める。
A産業の規模が2倍に成長する頃とほぼ時を同じくして、それまでの市場のとらえ方や市場への対応の仕方では不適切になってくる。
  DLJや「賢明な投資家」を顧客とする証券会社の例
病院の管理業務の例
  Bいくつかの技術が合体したときも産業構造の急激な変化が起こる。 
PBX(構内交換機)、すなわち大口の電話利用者が車内に設定する交換機の例
AT&Tは、コンピュータの市場や顧客を自分たちンは無縁の異質な存在と見ていた⇒PBRの設計と導入を手がけながら、販売に力を入れなかった。
  C仕事の仕方が急速に変わるときにも、産業構造の変化が起こる。 
自分で開業⇒共同で働く医師へ
事務所の設計、マネジメント、さらには経営管理者の訓練を行う会社。
  産業構造を利用するイノベーションは、その産業が1つあるいは少数の生産者や供給者によって支配されているとき、効果が大きい。
「非ピリン系アスピリン」
UPS、FedEx
リーダー的な生産者や供給者は市場の中でも成長しつつある分野の方を軽く見て、急速に陳腐化し、機能しなくなりつつある仕事の仕方にしがみつく
⇒イノベーションを起こした者は放っておかれる。
     
☆第7章 人口構造の変化に着目する(X)
    @予期せぬ成功や失敗、Aギャップの存在、 Bニーズの存在、C産業構造の変化などのイノベーションの機会〜企業や産業、あるいは市場の内部に現れる。

産業や市場の外部に現れるイノベーションの機会
〜D人口構造の変化、E認識の変化、F新しい知識の出現
〜社会的、形而上的、政治的、知的な世界における変化。
  ◆人口構造の変化 
    人口の増減、年齢構成、雇用、教育水準、所得など人口構造の変化ほど明白なものはない。
それらの変化がもたらすものは、予測が容易。
リードタイムまで明らか。
20年後の労働力:すでに生まれている。
45年後に退職年齢に達する人:現在すでに労働力になっている。
多くの場合、現在と同じ職種で働いている。
現在20代の前半から半ばの人達が働く今後40年間の職種も、これまで彼らが受けた教育によってほぼ規定されている。
    人口構造の変化⇒いかなる製品が、誰によって、どれだけ購入されるかに対し大きな影響を与える。
アメリカの
10代女性:安い靴をたくさん買う。基準は耐久性ではなくファッション。
10年後:あまり靴を買わなくなる。17歳ころの2割程度に減る。ファッション性は重要でななくなり、履き心地や耐久性が基準。
先進国:
60代、70代の退職後間もない人たちが、旅行や保養の市場において中心的な世代となる。
10年後には、この同じ人たちが高齢者コミュニティの客となる。
共働き夫婦:
金はあるが時間がない。そのような人間として消費する。
若いときに高等教育、特に高度の技術教育を受けた人⇒卒業の10年後20年後には、高度の再教育コースの受講者となる。
欧米や日本などの先進国:
オートメ化せざるを得ない。
少子化と教育水準の向上という人口構造の変化⇒先進国の製造業における伝統的なブルーカラーの雇用が減少することは間違いない。
    人口構造の変化そのもは予測が不可能かもしれないが、
すでに起こった人口構造の変化が現実の社会に影響をもたらすにはリードタイムがある⇒予測可能。
新しく生まれた赤ん坊⇒
幼稚園児となり、幼稚園の教室や先生を必要:5年
消費者として意味をもつ存在:15年
成人の労働力:19〜20年以上
    人口構造の変化が、企業家にとって実りのあるイノベーションの機会となる

既存の企業や公的機関の多くが、それを無視してくれる。
人口構造の変化は起こらないもの、あるいは急速に起こらないものであるとの仮定にしがみついている。
アメリカの大学の教育学部の例(p63)
退職年齢延長の予測(ドラッカー)
    専門家たちが、自分達がい自明としていることに合致しない人口構造の変化を認めようとせず、あるいは認めることができいない⇒企業家にイノベーションの機会をもたらす。
誰もそれを機会とするどころか、単なる事実としてさえ受け入れようとしない⇒通念を捨てて現実を受け入れる者、さらには新しい現実を自ら選んで探そうとする者は、長期にわたり競争にわずらわされることなく事業を行うことができる。
←通常、競争相手が人口構造の変化を受け入れるのあh、その次の変化と現実がやってきた頃。
     
  ◆人口構造の変化はイノベーションの機会 
    人口構造の変化をイノベーションの機会としてとらえることに成功した例:
ベビーブームという現実を受け入れた、靴のチェーン店メルビル
ラテンアメリカの都市化に気付いたシアーズ・ローバック
    人口構造の変化をイノベーションの機会としてとらえ、生産性の高い優れた労働力を手に入れることに成功した例
70年代を通じて積極的に女性を採用したシティバンク
子育てのために退職し労働力人口から脱落した既婚女性をパートタイムの正社員として強力な戦力とすることに成功した貯蓄貸付組合

統計によってではなく、外に出かけて観察することによってこの現実を受け入れた。
     
  ◆人口構造の変化の分析 
    人口の総数そのものにはあまり意味はない。
年齢構成のほうが重要。
特に重要な意味をもち、かつ確実に予測できる変化が、最大の年齢集団の変化(=人口の重心の移動)。
それが時代に空気となる。
    教育水準による人口区分んも重要。
ex.
百科事典の販売、専門職再訓練コース、休暇旅行マーケティング等
    人口構造の変化には
就業者と失業者の別もあれば
職業別の区分もある。
所得階層、特に可処分所得による区分もある。
共働き夫婦の貯蓄性向はどのようなものになるのか?
必要なことは、問いを発すること。
統計は出発点にすぎない。
メルビル:
統計から出発して、ティーンエージャーの爆発的な増加がファッション製品の小売りにとっていかなる機会を意味するのかを自問した。

2人の若者は、何カ月もの間ショッピング・センターに通い、見て、聞いた。
買い物客たちにとっての価値を探った。
若者たちの買物の仕方や店の好みを調べた。
若者たちに、実際に勝った品物のどこに価値を認めたかを聞いた。
シアーズ・ローバック:
統計から出発して、潜在的市場としてのラテンアメリカに目を向けた。

会長のロバート・E・ウッドは、1975年までにメキシコシティやサンパウロがアメリカのどの都市よりも大きくなるという記事を読んだ⇒
興味をひかれた彼は自らラテンアメリカに行った。
各都市で1週間をすごし、街を歩き、店をのぞいた。

いかなる層を客とし、いかなる場所に立地し、いかなる店をつくり、いかなる商品を用意すべきかを知った。
    現場に行き、見て、聞く者にとって、人口構造の変化は信頼性と生産性の高いイノベーションの機会となる。
     
☆第8章 認識の変化をとらえる(Y)  
  ◆半分空である 
    世の中の認識が
「半分入っている」⇒「半分空である」に変わる時、イノベーションの機会が生まれる。
    この20年間においてアメリカ人の健康に関して悪化したものがあるとすれば、それはまさに健康と体形に対する関心の異常な増大であり、
加齢、肥満、慢性病、老化への恐怖。
健康雑誌「アメリカン・ヘルス」は創刊2年足らずに100万部に達した
1960年代末にヒッピーが始めたハーブの該当販売⇒15年後、セレスティアル・シーズニングスは年間売上数百万ドルに達し、大手食品メーカーに2000万ドルを超える金額で買収された
健康食品チェーンも高収益を誇っている
ジョギング用品も大きな産業に
1983年、米国で最も急成長したのは、ある屋内運動器具メーカー
    かつて:
一般人は簡単な夕食をとり、
金持ちは晩餐を楽しんだ

今日、同じ人間が夕食をとり晩餐も楽しむ。 
ファストフード、簡易食品、マクドナルド、ケンタッキー・フライドチキンの出現
他方で、グルメ食品の流行:
テレビのグルメ番組が人気で行使料率
料理本はベストセラーに
グルメ食品のチェーン店
売上げの90%が食材だったスーパーマーケットがグルメコーナーを設け利益を上げている
     
◆    ◆女性、中流階級意識 
    米国の女性運動家:1930年代と40年代を、女性の社会的役割を認めなかった最悪の暗黒時代として位置づけ
but
1930年代と40年代こそ、存在感のある女性の花形たちが活躍した時代。
エレノア・ローズヴェルト(大統領夫人)
フランセス・パーキンス(初の女性閣僚として労働長官に)
アンナ・ローゼンバーグ(メイシーの人事担当副社長)
クレア・ブース・ルーウ(大学学長、下院議員、駐イタリア大使)
リリアン・ヘルマン(大学学長)
ヘレン・タウシッグ(チアノーゼの幼児の手術を行い、史上初の心臓手術に成功)
自らの業績と名声、重要さを自覚する誇り高い人たち
but
自らの「女性の代表」とは考えなかった。
自らを女性と考えるより、人間として考えていた。
女性の代表ではなく、むしろ例外として考えていた。
1970年代以降、社会で活躍する女性はもはや特別視される存在ではなくなった。
むしろ、職業をもたない女性の方が特殊であって、例外とされる。
シティバンクは極端な男社会⇒野心的な有能な女性を多数雇い入れて活躍させることに成功。
他の企業と競争することなしに彼女たちを雇うことができた。

認識の変化をイノベーションの機会としてとらえる者も、長期にわたって独占的に行動することができる。
    1950年代の初め、アメリカ人の圧倒的多数が、所得や職業の如何にかかわらず自らを中流階級として考えるようになった。
広告代理店の役員ウイリアム・ベントンは、中流階級への意識変化は何を意味するか?を考えた。
中流階級=労働者階級とは異なり、自分の子どもが学校の成績次第で出世していけると信じる人達

倒産寸前だったエンサイクロペディア・ブリタニカを買い取り、
主として高校の先生を通じ、
一家の中から初めて子どもを高校へ行かせるようになった親たちに百科事典を売り込んだ。
「中流のご家庭のお子さんの勉強にはブリタニカの百科事典が必要です」

ブリタニカを3年で立ち直らせ、10年後には日本でも同じ売方で成功。
    認識の変化が起こっても実態は変化しない。
コップに「半分入っている」か「半分空である」かは、実体ではなく認識が決定する。
体験が決定する。
認識の変化は、きわめて具体的。
明らかにし、確かめることができる。
そして何よりもイノベーションの機会として利用することができる。
     
  ◆タイミングの問題 
    いかなる分野にせよ、イノベーションに成功する人たちは、そのイノベーションを行なう場所に近いところにいる。
彼らが違うのは、イノベーションの機会に敏感なところだけ。
    最も売れているグルメ専門誌の1つは、航空機の機内誌の食べ物欄を担当していた若者が創刊。
ある日、新聞の日曜欄で3つの矛盾する記事を読み、認識の変化を知った。
@冷凍食品やケンタッキー・フライドチキンなど調理済み食品が食品消費量の2分の1を超え、数年後には4分の3に達する
Aテレビのグルメ番組の視聴率が高くなっている
Bグルメ料理の本の普及版がベストセラーになった

「何が起こっているか」を考え、1年後、グルメ専門誌を創刊。
シティバンク:
採用担当者から、金融とマーケティングで成績のよい男子学生を採用せよという指示に応えられないという報告を受けたとき、女性の社会進出が大きな機会をもたらしていることに気付いた。
報告によれば、それらの分野で最も成績のよい学生は女性ばかり。
    認識の変化をイノベーションの機会としてとらえるうえで、模倣は役に立たない。
自らが最初に手をつけなければならない。
but
認識の変化が、一時的なものか永続的なものかはなかなか見極めがつかない。

認識の変化に基づくイノベーションは、小規模に、かつ具体的に着手する必要。
     
☆第9章 新しい知識を活用する(Z)  
  ◆知識によるイノベーションのリードタイム 
    知識によるイノベーション:
その基本的な性格、すなわち
@実を結ぶまでのリードタイムの長さ、
A失敗の確率、
B不確実性、
C附随する問題
などが他のイノベーションと大きく異なり、気まぐれでマネジメントが難しい。
    第1の特徴:リードタイムが長い
新しい知識が出現⇒技術として応用⇒市場において製品やサービスに
    実用化までのリードタイムが短縮されるのは、外部から危機がやってきたときだけ。
1906年にデ・フォレストが発明した三極管⇒第一次大戦で米国政府が開発開発推進
ペニシリンと第二次大戦
コンピュータと第二次大戦
    科学や技術以外の知識によるイノベーションも長いリードタイム
銀行の例
マネジメントの例
学習理論の例
知識が技術となり、市場で受け入れられるようになるには、25年から35年を要する。
リードタイムの長さは人類の歴史が始まって以来さして変わっていない。
眼鏡の例
水車の例
印刷術の例
知識がイノベーションとなるまでのリードタイムは、知識そのものの本質に由来するかのよう。
理由はわからない。
     
  ◆知識の結合 
    第2の特徴:科学や技術以外の知識を含め、いくつかの異なる知識の結合によって行われる
ハイブリッド・コーン
←@雑種の成長力の発見+Aメンデルの遺伝学の再発見
ライト兄弟の飛行機
←@ガソリンエンジン+A空気力学
コンピュータ
←@二進法、Aパンチカード、B三極管、C記号論理学、Dプログラムとフィードバックの概念
    1852年、ぺレール兄弟が企業家向けの最初の銀行を創設
but数年でつぶれた
←1つの知識しかもたなかった
(ベンチャー・キャピタルに特有の企業家的な投資の考え方は理解but商業銀行についての知識はなし)

その後、3人の若者がベンチャー・キャピタルの概念に商業銀行の知識を結合させた
J・P・モーガン
ゲオルク・ジーメンス
渋沢栄一
ベネット:
近代新聞の基礎である2つの知識、@電信とA高速印刷⇒安いコストで新聞を発行。
B高速植字機
C識字率の向上
but
D独立性を保つうえで必要な収入源としての広告を見逃した。
⇒社会において指導的な地位を得ることも、財政的な安定を得ることもなかった。

20年後の1890年頃、広告の意味を理解し利用した3人の男。
ナイロンのはつめいとそれに続くプラスチックの発明
やj理宇市
@有機化学+Aレントゲン解析とそれによる結晶構造の分析+B高度の真空技術+Cドイツ政府のポリマーの研究
but
ナイロンが市場に出るにはさらに20年を要した。
    知識によるイノベーションは、そのために必要な知識のすべてが出そろうまでは行なわれない。
それまで死産になる。
すべての知識が結合するまでは、知識によるイノベーションのリードタイムは始まりさえしない。
ex.
蒸気エンジン(=重すぎる)にこだわったサニュエル・ラングレー
     
  ◆知識によるイノベーションの条件 
    知識によるイノベーション⇒3つの固有の条件を伴う。 
◇    ◇分析の必要性 
    第1:知識そのものに加えて、社会、経済、認識の変化などすべての要因を分析する必要。
    その分析によっていかなる要因が欠落しているかを明らかにする⇒
ライト兄弟が数学的な理論の欠落を自ら補ったように、それを手に入れることがdけいるか、あるいは時期尚早としてイノベーションそのものを延期させるべきかを判断。
ライト兄弟:
@原動機による有人飛行機をつくるうえでいかなる知識が必要であるかを分析
A情報を集め、理論的に検証し、実験を行なう⇒補助翼や主翼の形を定めるうえで必要な理論を得た。
渋沢栄一:
自らが利用できる知識と必要な知識を分析したうえで、政府におけるそれまでの経験を捨てて銀行を設立。
ピューリッツァー:
必要な知識を詳細に分析⇒新聞には広告が必要であり、それが可能であるとの結論に達した。
ドラッカーのマネジメント:
1940年代の初め、
必要な知識の多く、例えば組織論や、仕事と人のマネジメントについての知識は、すでに手に入るようになっていた。
分析⇒
@それらの知識はちらばっており、いくつかの異なる分野に放置されたままであることが明らかに
Aいかなる重要な知識が欠落しているかも明らかに。
欠落は、事業の目的、トップマネジメントの仕事と構造、今日企業戦略と呼ばれているもの、目標管理などの知識。

それらの欠落した知識のすべてを生み出すことができるとの結論に。
    分析を行わなければ、欠落している知識が何かはわからない
⇒分析を行なわないことは、失敗を運命づけるに等しい。
    知識によるイノベーションの成果をなかなか手に入れることができなかったイギリスの経験:
ペニシリンを発見・開発butその成果を手にしたのはアメリカ
←ファイザーが製造技術(=培養の技術)を開発
イギリス企業のデハビランドは、ジェット旅客機を構想し、設計し、製造
but
何が必要であるかを分析せず
⇒2つの重要な要素を見落とした。
@飛行機の大きさ(=ジェット機が航空会社に最大の利益をもたらす飛行距離と積載量の算出)
A航空会社が購入できるようにするための融資の方法

アメリカのボーイングとダグラスがジェット機市場を獲得。
    実際には、技術的なイノベーションを起こそうとする者が、イノベーションのための分析を行うことは稀。
科学者や技術者は自分がすべてを知っていると思い込んでいる⇒そのための分析を行おうとしない。

知識による偉大なイノベーションの多くが、科学者や技術者よりも素人を父とし、あるいは少なくとも祖父とする結果となっている。
GEは財務畑の人物によりつくられた。
GEを大型蒸気タービンの世界的リーダー企業、すなわち電力会社への世界的供給者につくりあげることになった戦略を構想したのも技術の素人。
IBMをコンピュータのトップ企業につくりあげたのは、2人の素人、トマス・ワトソン・シニアとその息子のトマス・ワトソン・ジュニア
デュポンで、ナイロンという知識によるイノベーションを成功させるために必要な要因を分析したのは、経営委員会の経営幹部。
ボーイングは、航空会社や旅客のニーズを理解するマーケティング志向の人たちのリーダーシップのもとに、ジェット機の生産で世界のトップ企業に。
    科学や技術の素人が主導権をとることは必然ではない。
それは意思と自己規律の問題。
科学者や技術者の中にも、エジソンのように知識によるイノベーションに必要なものを徹底的に分析した人は数多くいる。
     
  ◇戦略の必要性 
    第2:戦略をもつ必要がある。
    大反響を呼び、人を引き付ける⇒スタートを誤ってはならない。
チャンスは1度しかない。
多くの者が寄って来る⇒1度つまずくだけで押しつぶされる。
    あるのは3つの戦略のみ。
    @システム全体を自ら開発し、それをすべて手に入れる戦略。
〜エドウィン・ランドがポラロイドカメラについてとった戦略。
IBMがその初期の時代に、コンピュータの販売ではなくリースを選択したときに採用した戦略。
ソフトウェア、プログラム、プログラマーに対する教育、顧客に対する教育など、もろもろのサービスを提供。
GMが大型蒸気タービンという知識によるイノベーションによって、トップの地位を確立したときの戦略。
    Aシステム全体ではなく、市場だけを確保しようとする戦略。
知識によるイノベーションは市場を創造する。
デュポン:ナイロン製のストッキング、女性用下着、自動車タイヤの市場を創造し、それを確保。
ナイロン需要を自ら創造し、ナイロンを使うメーカーに対しナイロンを供給、。
アルミニウムメーカー:
アルミ還元法の発明⇒フライパンや鍋や棹などアルミ製品の市場を確保。
アルミ・メーカーの場合は、自ら最終製品まで生産し販売。
競争相手など生まれようのない市場を確保。
    B戦略的に重要な能力に力を集中し、重点を占拠。
〜イノベーションを行った者が産業内部の激動から超然としていられる場所はどこか。
ファイザー:ペニシリンの培養技術の開発に力を入れ、製造でトップの地位。
ボーイング:マーケティング、すなわちジェット機の設計と融資について航空会社と旅客のニーズを把握することに全力をあげた⇒旅客機メーカーとしてトップの地位。
コンピュータの鍵たる部品、すなわち半導体メーカーの何社かも、トップの地位を確保。
ex.インテル。
    @システム全体:
ゲオルク・ジーメンスと渋沢栄一
A市場:
デュポン
B重要な能力:
ダウ・ケミカル(デュポンの競争相手)
J・P・モーガン
    戦略に威力:エジソンの成功
エジソン:技術的なニーズを研究しただけではなく、その後の戦略についても考えていた。
ガラス球、真空、密閉、フィラメントなどの技術的研究に着手する前から、システム全体の構想を描いていた。
電力会社の電力に合った電球を考え、利用者に電気を引く権利や、電球の流通システムまで構想。

スワン:科学者として製品を生み出した
エジソン:産業を生み出した
スワンが自らの技術的な成果に関心をもつ人を探している頃、すでにエジソンは電力を売っていた。
    3つの戦略はいずれも大きなリスクを伴う。
but
明確な戦略をもたないことや、同時に2つ以上の戦略をもつことはさらに大きなリスクが伴う。
致命的に大きなリスクが伴う。
     
  ◇マネジメントの必要性
    第3:マネジメントを学び実践する必要。
    リスクが大きい⇒マネジメントと財務についての先見性をもち、市場中心、市場志向であることが大きな意味をもつ。
but
ほとんどマネジメントが行われていない。
    新しい知識によるイノベーションが失敗するのは企業家自身に原因がある。
高度な知識以外のもの、特に専門領域以外のことに関心をもたない。
顧客にとっての価値よりも技術的な高度さを価値する。
but
ハイテクを含め知識によるイノベーションにおいても、マネジメントを意識的に行うことによってリスクを大幅に小さくできる。
ホフマン・ラロッシュ
ヒューレット・パッカード
インテル
知識によるイノベーションには特有のリスクが伴う⇒企業家としてのマネジメントが必要とされ、大きな効果をあげる。
     
  ◆知識によるイノベーションに特有のリスク
    本質的に乱気流の世界。
リードタイムの長さと異なる知識の結合という特有のリズムをもつ。
いまにもイノベーションが起こりそうでありながら何も起こらないとうい期間が長期間にわたって続く⇒突然爆発が起こる⇒数年にわたり解放期が始まり、興奮と乱立が見られ、脚光が当てられる⇒5年後には整理期が始まり、わずかだけが生き残る。
1856年、ドイツのヴェルナー・ジーメンスが、25年前にマイケル・ファラデーが発展させた電気理論を応用して、最初の電気モーターを設計⇒やがて電機産業が生まれ、大きな産業になることが確実に、butその後22年は何も起こらなかった。
マクスウエルによるファラデーの理論⇒1878年エジソンが電球を発明し、レースが始まる。
その後5年間に欧米の主要な電気メーカーのすべてが設立。
but
1859年から1900年にかけて、それらの新規企業のほとんどが姿を消し、撤退し、倒産し、あるいは吸収された。
自動車産業においても、1910年当時、米国だけで200社のメーカーがあった
but
30年代には20社となり、60年代には4社となった。
ラジオ:
1920年代にはラジオ局が数百局、ラジオ・メーカーが数百社あった。
1935年:ラジオ放送の主導権は3大ネットワークに握られ、メーカーの数も1ダースほどに。
新聞:
1880年から1900年にかけて、創刊ブーム。最大の成長産業の1つ。
but
第一次大戦後、主要国のすべてにおいて、新聞社の数は減る一方。
銀行:
米国でも爆発的な銀行設立ブーム
but
わずか20年後の1890年前後には銀行の集約化で、廃業や合併
第一次大戦が終わる頃には、あらゆる主要国において、全国規模の銀行はわずかな数に。
    but
いずれの場合も、生き残った企業は例外なく初期のブーム時に生まれたもの。
ブームの後での新規参入は事実上不可能。

知識に基づく産業には、数年間にわたって新設のベンチャー・ビジネスが逃してはならない解放期がある。
今日、この解放期が短くなってきたと見られているが、そのような味方は、リードタイムが短くなってきたという見方と同様、誤り。
イギリスでは、1830年にジョージ・スティーヴンソンのロケット号が初めて営業用の列車を引いた後の数年間に、100社以上の鉄道会社が設立。
but
1845年頃、突然鉄道産業の解放期が終わり、爾後、イギリスで鉄道会社は全く設立されていない。
50年後には、1845年当時100社にのぼっていた鉄道会社は、5,6社に減った。
    家電、電話、自動車、化学でも同じ周期。
新規参入のための開放期が長かったことなど1度もなかった。
but
今日、開放期が混み合ってきた。
1830年代の鉄道ブーム:イギリス国内に限られていた。
どこの国でも、鉄道ブームは近隣諸国とは関係なく起こった。
but
その後の電機ブーム:
その25年後の自動車ブームと同様、国境を越えて広がった。
それでも、当時の先進国の枠を越えることはなかった。
but
今日:
先進国の数がはるかに増えている。
しかも通信は瞬時に行われ、旅行も簡単に速くできる。
きわめて多くの国が、100年前ににはごくわずかな国しかもたなかったもの、
すなわち知識をもつ人たち、特に科学や技術によるイノベーションのために直ちに働き始める用意のある訓練された人材をもっている。
     
  ◇時間との闘いと生存確率の減少 
    ⇒2つの意味をもつ。
    第1:科学や技術によるイノベーションを行なおうとする者にとっては、時間が敵。
他のイノベーション:
予期せぬ成功と失敗、ギャップの存在、ニーズの存在、産業構造の変化、人口構造の変化、認識の変化に基づくイノベーションでは、イノベーションを行う者は放っておかれる。
間違っても、修正する時間があるし、新しいベンチャーに着手するチャンスも数回はある。
but
知識、特に科学や技術によるイノベーション:
新規参入が可能な開放期は短い。
チャンスは2度とない。
最初から失敗しはならない。
環境は厳しく仮借ない。
開放期がすぎれば、チャンスは永遠に失われる。
but
知識産業の中には、最初の開放期が終わって20年、30年後に再び開放期が始まるものがある:コンピュータがその1例。
コンピュータ産業の最初の開放期:1945年〜55年:
世界の電機メーカーのほとんどすべてがコンピュータ産業に入ってきた。
but1970年には、それら大手電機メーカーはすべて不名誉な撤退を余儀なくされた。
残ったのは、1949年には存在さえしていなかったような企業であり、あるいは限界的な存在だった中小の企業。

1970年代末、ワープロ、ミニコンピュータ、パソコン、コンピュータと電話交換機のけつごうをもたらすことになった半導体の出現⇒2回目の開放期。
1回目の敗者は参入せず。
生き残った者の多くも、2回目に参入しないか、いやいや遅れて参入。
例外は1回目のラウンドのまぎれもない商社IBM。
    第2:知識によるイノベーション開放期が混みあってきた⇒イノベーションを行う者の生き残りの確率が小さくなった。
開放期における新規参入者の数は、今後増える一方。
産業構造は産業によって大きく異なる。
技術、資金、参入の容易さ、市場のローカル度によって変わる。
それぞれの産業にはそれぞれ特有の構造がある。
産業によっては、大企業、中企業、小企業、専門家した企業など多様な企業がありうる。
but
コンピュータ産業や近代銀行業のような知識に基づく産業の場合、市場は1つになる。
グローバル市場。

知識によるイノベーションを行なう者のうち、その産業が成熟し安定するまで生き残れるものはあまり多くはない。

@グローバル市場+A通信の発達
⇒開放期における新規参入者の数は大幅に増加しつつある。
⇒整理期がくれば死亡率は昔よりもはるかに高くなる。
そして、整理期は必ずくる。
いずれが生き残り、いずれが死ぬか、いずれが生き残ることも死ぬこともできずにいるかは、わからない。予測をしても無駄。
規模の大きさは成功を保障しない。
いかなる産業が重要な産業となるかは容易に予測することができる。
歴史を見る限り、開放期と呼ぶ爆発的ブーム期を経験した産業はすべて重要産業となっている。
問題は、それらの産業において、どの企業が生き残り、どの企業は主要ば地位を占めるにいたるか。
   
  ◆ハイテクのリスクと魅力
    投機熱を伴う開放期のあとに厳しい整理期が続くというパターンは、特にハイテク産業で表れやすい。
←ハイテクは脚光を浴び、多くの新規参入と投資を引き付ける。期待も大きい。
    ハイテクよりも靴屋や時計のような事業で金持ちになった人の方が多い。
靴屋メーカーは、10億ドル企業に育つことを期待されない。健全経営の同族会社で終わることを失敗とはしない。
but
ハイテクは、中ぐらいの成功には何の価値もないという伸るか反るかの勝負。
⇒ハイテクにおけるイノベーションには大きなリスクが伴う。
ハイテクは、かなり長い間利益をあげることができない。
コンピュータ産業は1947年から48年にかけて始まったが、産業全体として見る限り、30年以上も経った80年代初めまで収支が合わなかった。

IBMはかなり早くから利益をあげた。
but
産業全体で見れば、これらわずかの数のコンピュータ・メーカーの利益は、世界の電機メーカーがコンピュータ・メーカーへの脱皮という試みに失敗してこうむった膨大な損失をはるかに下回っている。
コンピュータ以前のハイテク、すなわち19世紀の鉄道、1880年から1914年にかけての電機と自動車、1920年のラジオ局にも起こった。

調査、技術開発、技術サービスに多額の資金を注ぎ込まんければならない。
ハイテク企業は、現状を維持するためであっても、常に速く走らなければならない。
⇒整理期が訪れたとき、ごく短期の嵐を乗り切るのに必要な資金的余裕さえ残していない企業がほとんど。

他の産業に比べ、ハイテク産業が、特に資金的な見通しを必要としながら、その見通しが困難。
    整理期を生き残るための処方は1つしかない・・・マネジメント。
ドイツ銀行:ゲオルク・ジーメンスが世界で最初のトップマネジメント・チームを構想し、それを実際につくりあげた。
デュポン:1920年代の初め、体系的な組織構造や長期計画、それに情報システムを世界で最初につくりあげた。
アライド・ケミカル:1人の天才によって恣意的にマネジメントされていた。
but
最近のコンピュータ産業における整理期に生き残れなかった大企業のほとんどは、GEやジーメンス等第1級のマネジメントをもつとされていた大企業
自動車産業の整理期において間違ったマネジメントが行なわれていたフォードが、辛うじてではあったにせよ、生き残った。

マネジメントもまた、生き残りの条件ではあっても、それだけで何かを保証するわけではない。
    知識によるイノベーションが成功するには機が熟していなければならない。
世の中に受け入れられなければならない。

このリスクは、知識によるイノベーションに特有のもので、その特有の力と裏腹の関係にある。
他のイノベーション:
すべて既に起こった変化を利用する。
すでに存在するニーズを満足させようとする。
but
知識によるイノベーション:
イノベーションそのものが変化を起こす。
それはニーズを創造することを目的とする。
顧客が受け入れてくれるか、無関心のままでいるか、抵抗するかを事前に知ることはできない。
例外は、癌の治療薬等。
知識によるイノベーションに対する王侯の感受性の鈍さを示した挿話。
プロイセン王「ベルリンからポツダムまで乗馬を楽しめるというのに、金を払って1時間しか乗れないものを使う者などいないであろう」
コンピュータが現れた1948年当時、企業がそのような代物を必要とするようになることを予測した者は1人もいなかった。
but
その権威たちが、その数年後の1955年には、コンピュータが10年以内に学校教育に革命をもたらすと予測。
    ドイツ人にとって、電話の発明者はアレキサンダー・グラハム・ベルではなく、フィリップ・ライス。
ライスは1861年に音を電送。言葉さえほぼ電送できた。
but
彼はその後開発を進めなかった。
←当事の社会には電話を受け入れる余地はなく、関心もなく、望む声もなかった。
人々の大半は電報があれば十分としていた。
but
15年後、ベルが電話の特許をとるや直ちに熱い反応が見られた。
最も歓迎したのがドイツ。
15年の間に、南北戦争と不仏戦争⇒電報では十分ではない。
but
重要なのは、なぜ受け入れ方が変化したかではなく、
ライスがある科学関係の大会でその装置を実演したとき、当時の権威ある人たちのすべてが、社会はそれを全面的に受け入れるであろうと断じたにもかかわらず、それが間違っていたこと。
社会の受容度に関わるリスクをなくすことはできないし、小さくすることさえできない。
市場調査は役に立たない。
←存在しないものについて調査をすることはできない。
世論調査などは役に立たないどころか有害でさえある。
知識によるイノベーションを行うのであれば、それが受け入れられるかどうかについては賭けてみるしか道はない。
科学や技術の分野における新しい知識に基づくイノベーションこそ、リスクの最も大きなイノベーション。
ホットな分野であるほどリスクは大きくなる。
今日ならば、それは、パソコンでありバイオ。
    華やかならざる分野のイノベーションは、単に時間的な余裕があるというだけでも、リスクははるかに小さい。
社会的なイノベーションにおいても、リスクはそれほど大きくない。
知識によるイノベーションは、ほかのイノベーションよりも多きなリスクがつきもの。

そのリスクは、それが世に与えるインパクト、そして何よりわれわれ自身の世界観、われわれ自身の位置づけ、そしてゆくゆくはわれわれ自身にさえ変化をもたらすことに対する代価。
but
それらハイテクのイノベーションに伴うリスクさえ、イノベーションの機会としての新しい知識を、予期せぬ成功や失敗、ギャップの存在、あるいはニーズの存在と結合させることによって大幅に小さくすることができる。
そのとき社会がイノベーションを受け入れるかどうかは、すでに確定している。
容易かつ確実に調べることができる。
しかもそのとき、イノベーションを完成させるうえで必要な知識もかなりの精度をもって規定することができる

今日、開発研究なるものに人気がある理由。
開発研究:
システム的思考と自己規律が必要。
組織的かつ目的的であることが不可欠。
    新知識によるイノベーションを行なう者が多くのことを要求される。
他のイノベーションとは要求されるものがまったく異なる。
直面するリスクが異質。
そもそも時間が敵。
but
リスクが大きければ、リターンも大きい。
他のイノベーションでも富を手に入れることはできる。
but
新知識によるイノベーションは名声まで手にすることができる。
     
☆第10章 アイデアによるイノベーション  
  ◆あまりの曖昧さ 
    アイデアはイノベーションの機会としてはリスクが大きい。
成功する確率は最も小さく、失敗する確率は最も大きい。
この種のイノベーションによる特許のうち、開発費や特許関連費に見合う稼ぎがあるものは100に1つもない。
使った費用を上回る稼ぎがあるものは500に1つ。 
    アイデアによるイノベーションのうち、いずれに成功のチャンスがあるか、いずれに失敗のリスクがあるかは誰にもわからない。
ex.
なぜスプレー式のエアゾール缶は成功したのか。似たような発明が1ダースほどあったのに、なぜそれらは失敗したのか?
なぜあの万能スパナが売れて、ほかんものは消えたのか?
なぜジッパーは、あれほど引っ掛かりやすいにもかかわらず、広く受け入れられ、ボタンに取ってかわったのか。
    ただの1つのアイデアで成功し、それでやめる人がいる。
ex.ジッパーの発明者。ボールペンの発明者。
他方、40の特許をもちながら1つも成功しない人は大勢いる。
    企業家たる者は、単なるアイデアによるイノベーションに手をつけるべきではない。
つまるところ、ラスベガスでも毎週誰かがスロットマシーンで大儲けしている。
だが、スロットマシーンで遊ぶ彼や彼女にできる最善のことは、あとでは困るほど金を注ぎ込まないようにすることぐらい。
    計画的に行動する起業家は、明確な目的意識をもって、イノベーションのための7つの機会を分析する。それら7つのj機会についてだけでも、個人として、あるいは企業家として、さらには公的機関として、なすべきことは十二分にある。
とうてい利用しきれないほどある。
     
  ◆その騎士道 
    アイデアによるイノベーションを促すうえで社会がなしうることはほとんどない。
理解し得ないものを奨励することはできない。
しかし少なくとも、社会は、そのようなイノベーションを邪魔したり、罰したり、困難にしたりしてはならない。
     
☆第11章 イノベーションの原理  
  ◆イノベーションの原理と条件 
    イノベーションの方法として提示し論ずるに値するのは、目的意識、体系、分析によるイノベーションだけ。
成功したもののうち90%はそのようなイノベーション。
@目的意識をもち、A体系を基礎とし、かつそれを身につけて、初めてイノベーションは成功する。
    イノベーションの原理:「なすべきこと」
    第1:イノベーションを行なうには、機会を分析することから始めなければならない。
イノベーションのための7つの機会を徹底的に分析。
イノベーションの分野が異なれば、機会の種類も異なる。
時代が変われば機会の重要性も変わる。

7つの機会のすべてを分析することが重要。
分析は常に体系的に行わなければならない。
機会を体系的に探さなければならない。
     
    第2:イノベーションとは、理論的な分析であるとともに知覚的な認識。 
⇒外の出て、見て、問い、聞かなければならない。
このことは、いかに強調してもしすぎることはない。
イノベーションに成功する者は、右脳と左脳の両方を使う。
数字を見るとともに人を見る。
機会を捉えるには、いかなるイノベーションが必要かを分析をもって知る。
しかる後に、外に出て、顧客や利用者を見て、彼らの期待、価値、ニーズを知覚をもって知る。
イノベーションに対する社会の受容度も知覚によって知る。
顧客にとっての価値もそのようにして知る。
自らのアプローチの仕方が、やがてそれを使うことになる人たちの期待や習慣にマッチしているかも知覚によって知る。

やがてこれを使うことになる人たちがそこに利益を見出すようになるには何を考えなければならないかとの問いを発することができる。
   
    第3:イノベーションに成功するには、焦点を絞り単純なものにしなければならない。
1つのことに集中、さもなければ焦点がぼける。
単純でなければうまくいかない。
(新しいものは必ず問題を生じる。複雑なものは、直すことも調整することもできない。)
成功したイノベーションは驚くほど単純。
イノベーションに対する最高のほめ言葉は、「なぜ、私には思いつかなかったか」
新しい市場や新しい使用法を生み出すイノベーションでさえ、
具体的に使途を定めなければならない。
具体的なニーズと成果に的を絞らなければならない。
     
    第4:イノベーションに成功するには、小さくスタートしなければならない。
具体的なことだけに絞らなければならない。
ex.
レール上を走りながら電力の供給を受けるというイノベーション⇒電車を生み出す。
マッチ箱に、常に50本という同数のマッチ棒を詰めるというイノベーション⇒マッチ入れのオートメ化⇒それを行なったスウェーデンのマッチメーカーに対し、半世紀近くに及ぶ市場の独占をもたらした。
×大がかりな構想、産業に革命を起こそうとする計画。
〇限定された市場を対象とする小さな事業としてスタート。

@イノベーションが最初の段階からほぼ正しいという程度以上のものであることは稀。
Aさもなければ、調整や変更のために時間的な余裕がなくなる。
     
    第5:最初からトップの座を狙わなければならない。
最初からトップをねらわない限り、イノベーションとはなりえず自立した事業ともなり得ない。
さもなければ、競争相手に機会を与えるだけに終わる。
     
  ◆イノベーションの3つの「べからず」 
    第1:凝りすぎてはならない
←普通の人が使えることが必要。
凝りすぎたイノベーションは必ず失敗する。
     
    第2:多角化してはならない
「なすべきこと」の1つとして的を絞ることと同義。
イノベーションには核が必要。
(核は技術や知識に限らない。市場であることもある。)
核とすべきものから外れたイノベーションは雲散する。
     
    第3:イノベーションを未来のために行なってはならない。現在のために行なわなければならない。
医薬品の開発研究では10年を要することも珍しくない。しかし、今日、医療上のニーズが存在していない医薬品の開発研究に着手する製薬会社はない。
     
  ◆イノベーションを成功させる3つの条件 
    最後に、イノベーションには3つの条件がある。
    第1:イノベーションは集中しなければならない。
イノベーションには、他の仕事と同じように才能や素地が必要である。
だが、イノベーションとは、あくまでも意識的かつ集中的な仕事
勤勉さと持続性、それに献身を必要とする。
これがなければ、いかなる知識も創造性も才能も無駄となる。
    第2:イノベーションは強みを基盤としなければならない。
イノベーションほど、自らの強みを基盤とすることが重要なものはない。
←イノベーションにおいては、知識と能力の果たす役割が大きく、しかもリスクを伴う。
相性も必要。
←何事もその価値を心底信じていなければ成功しない。
さもなければ、忍耐強さを必要とし、かつ欲求不満を伴う厳しいイノベーションの仕事はできない。
    第3:イノベーションは、つまるところ経済や社会を変えさせなければならない。
消費者、教師、農家、眼科手術医の行動に変化をもたらさなければならない。
プロセス、すなわち働き方や生産の仕方に変化をもたらさなければならない。
市場にあって市場に集中し、市場を震源としなければならない。
    有名な企業家のコメント:
私が知っている成功した人たちの共通点はただ1つ、それはリスクを冒さないということです。
彼らはみな、冒してはならないリスクを明らかにし、それを最小限に使用としています。
そうでなければ、成功はおぼつきません。
リスク志向であったならば、不動産や商品取引、あるいは画家になっていたと思います。
    昨日を守ること、すなわちイノベーションを行わないことのほうが、明日をつくることよりも大きなリスクを伴う。
イノベーションは、どこまでリスクを明らかにし小さくできるかによって、成功の度合いが決まる。
どこまでイノベーションの機会を体系的に分析し、的を絞り、利用したかによってきまる。
まさに成功するイノベーションは、予期せぬ成功と失敗、ニーズの存在に基づくものなど、リスクの限られたイノベーション。
あるいは、新知識の獲得によるイノベーションのように、たとえリスクが大きくとも、その大きさを明らかにできるイノベーション。、
イノベーションに西欧する者は保守的でる。
彼らはリスク志向ではなく、機会志向である。
     
★第2部 企業家精神  
☆第12章 企業家としてのマネジメント  
  ◆企業家のための手引き 
    3種類の組織(企業・公的機関・ベンチャー)のいずれにおいても、
企業家精神にあふれたリーダーと凡庸なリーダーとの格差は絶大。
but
企業家精神の成功例もまた豊富。

企業家としての原理と方法のいずれについても、
診断と処方のいずれについても、
体系的に提示することは十分に可能。
☆第13章 既存企業における企業家精神(p125)
  ◆企業家たること 
    企業家としてイノベーションに成功した大企業の例は多い。
米国:
ジョンソン&ジョンソン
3M
シティバンク

ドイツ:
ヘキスト

スウェーデン:
ASEA
but
大企業の場合、ある分野では企業家としてイノベーションに成功し、ある分野では失敗している。
GE
RCA
    規模の大きさは、イノベーションや企業家精神の障害とはならない。
大組織の官僚的体質や保守的体質は、イノベーションと企業家精神にとって深刻な障害となる。butそれは中小の組織においても同じ。
最も企業家精神に乏しく最もイノベーションの体質に欠けているのは、むしろ小さな組織。
    障害は既存の事業そのものであり、特に成功している事業。
but
大企業や中堅企業は、小企業に比べるとこの障害をかなり容易に乗り越えている。
既存の工場、技術、製品ライン、流通システムは、マネジメントに対し絶えざる努力と不断の注意を要求。
日常の危機は常に起こり、延ばすことはできない。
直ちに解決しなければならない。
既存の事業は常に優先する。(p127)
新事業:
小さく、取るに足りず、将来性も確実ではない。
イノベーションに成功するものは、小さく、シンプルにスタートする。
@既存の製品の改善があり、手直しがある。
A市場と最終用途の拡大がある。
B逆に、新製品のリードタイムは長い。

現在成功している製品やサービスをもっている企業は、10年後もその収益の4分の3を今日の製品やサービス、あるいはその延長線上の製品やサービスから得ている可能性が大きい。
今日の製品やサービスが継続的に収益をもたらしてくれない⇒イノベーションに必要な投資もできない。
既存の企業:
すでに存在する事業、日常の危機、若干の収益増へと、その生産資源を振り向けてしまいがち。
←昨日を養い、明日を飢えさせる(=死に至る)誘惑にかられる。

イノベーションを行なおうとしない企業は歳をとり衰弱していく。
急激な変化の時代、企業家の時代にあっては、衰弱のスピードは急速。
ひとたび後ろ向きになれば、向きを戻すことは至難。
既存の事業はイノベーションと企業家精神の障害となる。
問題はまさに過去及び現在の事業の成功、現在の健全さにある。
    常時イノベーションに成功している既存の企業、大企業や中堅企業の例
⇒既存の事業がもたらす障害が克服可能であることを示す。

ジョンソン&ジョンソン、ヘキスト、ASEA、3M・・・。
    企業家精神は仕事。
意識的な努力、学ぶことが必要。
企業家的な既存の企業⇒企業家精神の発揮を自らの責務とし、そのため自らに規律を課す。そのために働き、実践する。
企業家精神の4つの条件:
@イノベーションを受け入れ、変化を脅威でなく機会とみなす組織をつくりあげる。
企業家としての厳しい仕事を遂行できる組織をつくる。
企業家的な環境と整えるための経営政策と具体的な方策のいくつかを実践。

Aイノベーションの成果を体系的に測定。少なくとも評価する。

B組織、人事、報酬について特別の措置を講じる。

Cいくつかのタブー(=行なってはならないこと)を理解する。
     
  ◆企業家精神のための経営政策(p129)
    ×いかにしてイノベーションに対する障害を克服するか
〇いかにしてイノベーションを当たり前のこととし、それを望み、その実現のために働くようになるか
日常業務とまではいかなくとも、日常的な仕事の1つとする必要。

企業家精神のためのマネジメントと具体的な方策が必要。
  ●第1段階:
すでに活力を失ったもの、陳腐化したもの、生産的でなくなったものの廃棄を制度化.
スタッフ活動についてはもちろん、1つひとつの製品、工場、技術、市場、流通チャネルの継続の可否について3年毎に判定。
    もし手がけていなかったとして、今日これからこの製品、市場、流通チャネル、技術をてがけるか?
答えがノー
⇒その製品、市場、流通チャネル、スタッフ活動に資源を浪費するのをやめるにはいかにすべきかを問う。
廃棄が不可能の時も、
少なくともそれ以上の労力はかけないようにする。
人材と資金という生産資源を、すでに過去となってしまったものに投じてはならない。
いかなる有機体といえども、老廃物を排泄しないものはない。
さもなければ自家中毒を起こす。
製品やサービスが近いうちに廃棄されることを知ることほど、関係者の心をイノベーションに集中させるものはない。
廃棄が原則⇒誰もが進んで新しいものを求め、企業家精神をかきたて、自ら企業かとなる必要を受け入れるようになる。
  ●第2段階:
顧客、サービス、市場、流通チャネル、工程、技術にはいずれもライフサイクルがあることを前提として現状を把握すること。(p132)
but
分析から得られるものは診断医すぎない。
その診断にさえ判断が必要。
さらには、事業、製品、市場、顧客、技術についての知識が必要。
分析に加えて経験が必要。

高度の分析手法を手にしただけのビジネススクール出たての若者が、コンピュータを駆使して事業、製品、市場について意思決定が行われるという考えはまやかし。
企業のレントゲン写真と名付けたこのライフサイクル分析にしても、正しい答えを自動的に出すためではなく、正しい問いを知るための道具にすぎない。
分析とは、企業内のあらゆる知識と経験に対する挑戦であり、問題提起である。
  ●第3段階:
いかなるイノベーションを、いかなる領域において、いかなる期限で行なう必要があるかを明らかにする
@製品、サービス、市場、流通チャネルを列挙し、それぞれがライフサイクルのどこに位置しているかを分析
Aあとどれだけの期間成長するか、市場にありつづけるか、いつ成熟し衰退していくか、どれくらいの速さで陳腐化するかを分析
B既存の事業にのみ限定して最善を尽くしていった場合、やがて企業全体がどのような状態になるかを明らかにする

売上げや市場シェアあるいは収益性について、現実に起こるであろうものと目標とのギャップを明らかにする。
少なくとも、、このギャップを埋めるだけの企業家的な成果が必要。
既存の事業が陳腐化する前にギャップを埋めなければならない。
イノベーションに確実性はない。失敗の可能性は大きく、遅れる可能性はさらに大きい。
予想を超えた努力が必要となり、確実にいえることは、最後の段階になって必ず問題や遅れが出る。

目標とするイノベーションの成果の大きさは、実際に必要な規模の3倍以上にしなければならない。経験上、それでも大きすぎることはない。
  ●第4の段階:
@廃棄の制度化
A既存の事業、製品、サービス、市場、技術についてレントゲン写真による診断
Bイノベーションの必要性の把握

イノベーションの目標と期限について企業家としての計画を立てる。
そのような計画があって初めて、イノベーションのための予算は適切なものとなり、
いかなる能力の人材をどれだけ必要とするかかが明らかになる。
@実績のある人材を配置し、
A必要な道具、資金、情報を与え、
B曖昧さのない明確な期限を設けて、
初めて計画を立てたことになる。
それまではよき意図と期待があるにすぎない。
    以上が
企業家精神のための「経営政策。
企業とそのマネジメントが、新しい事業に貪欲となり、イノベーションを健全かつ正常な活動と見るようになるための経営政策。
j企業のレントゲン写真(@既存の事業、製品、サービス、市場の分析と診断)を基礎とする
⇒既存の事業が新しい事業の犠牲になり、あるいは既存の製品、サービス、市場に附随する機会が単に新しいだけのものの魅力の犠牲になることを防ぐ。
企業のレントゲン写真は意思決定のための道具

@既存の事業に資源を振り向けることが可能に
A明日の事業と新しい製品、サービス、市場を創造するうえで必要なものを決定することが可能に
Bイノベーションの意図を実現することが可能に
既存の企業が企業家精神を発揮するには、
@自らの製品とサービスが競争相手によって陳腐化させられるのを待たず、自ら進んで陳腐化していかなければならない。
A新しい事業の中に、脅威ではなく機会を見出すようマネジメントしなければならない。
B今日とは違う明日をつくり出す製品、サービス、プロセス、技術のために、今日仕事をしなければならない。
     
  ◆企業家精神のための具体的方策 
    既存の企業において企業家精神を発揮するには、マネジメント上いくつかの具体的な方策がある。
    第1:マネジメントの目を機会に集中させる。
人は提示されたものは見るが、提示されていないものは見逃す。
企業家精神が当たり前となるには、イノベーションの機会に注意を払わせるための特別の仕組みが必要。
報告書に第1頁を2つつける。
@問題を列挙(これまでと同じ)
A業績が期待や計画を上回った分野を列挙。
←事業における予期せぬ成功は、イノベーションの機会の兆候。
2つの会議を開く
@問題に集中する会議
A機会に集中する会議
    ある中堅医療メーカー:
第2月曜と最終月曜の月2回
第2月曜:問題を検討。
最終月曜:目標を上回った分野や予期せぬ市場からの受注を取り上げる。
自社の成功は、主として第2の会議による。
そこで培われた機会を探す癖がもたらした企業家的な姿勢のほうが大きな意味を持つ。
     
    第2:マネジメント全体に企業家精神を浸透させるための方策
半年に1度、事業部担当、市場担当、製品ライン担当のマネジメントの人間を3,50人集め、2日間に及ぶ戦略会議を開く。
初日の午前中:過去1年間企業家的なイノベーションにおいて優れた業績をあげた部門のマネジメントが報告。
特に、成功の要因を報告。
何を行ったか、いかに機会をみつけたか、何を学んだか、そして現在いかなるイノベーションの計画をもっているかを報告。

ここでも、実際に会議でなされた報告よりも、その戦略会議に参加した者の姿勢や価値観に与える影響のほうが重要だったという。

企業家的な企業では、優れた独自の仕事ができる人材や部門を特定し、脚光を当て、何をして成功したか、ほかの人がしていない何をしたか、ほかの人がしている何をしなかったのかを聞く。
     
    第3:企業家的な会社では、トップマネジメントが自ら開発研究、エンジニアリング、製造、マーケティング、会計などの部門の若手と定期的に会っている。
トップ側が:
みなさんの話しを聞きたい。
みなさんの考え、特にこの会社のどこにチャンスがあり、どこに問題があるかを聞きたい。
新事業、新製品、新市場についての考えを聞きたい。
もちろん、わが社やわが社の方針について、あるいは業界や技術や市場におけるわが社の地位についての質問があれば何でも聞いて欲しい。
トップ側の時間の負担⇒若手25人から30人と午後や夜の時間を過ごすのは、トップ1人につき年2、3回でいい。
but
この種の会議は必要。

@下から上へのコミュニケーションの機会
A若手が狭い専門分野から離れ、企業全体を見る絶好の機会
Bトップマネジメントが何に関心をもち、それがなぜであるかを理解できるようになる
Cトップの側も、若手の価値観、ビジョン、関心を理解できるようになる。
D会社全体に企業家的なものの見方を浸透させることができる。
but
この種の会合でなされる提案について、1つだけルール化しておく必要。
製品やプロセス、市場やサービスについて何か新しいことや新しい仕事の仕方を提案した者に、提案の具体化について責任を持たせる。
しかるべき期日までに、会合を主宰したトップと参加者全員に対し提案の具体化について報告。
さらに、
@その提案を実施すると何が起こるか、
A提案が意味をもつためには何をしなければいけないか、
B顧客や市場について何を前提としているか、
Cどれだけの資金と人材が必要か、
Dどれだけの時間が必要か、
Eいかなる成果を期待できるか
を明らかにする。

最も重要な成果は、組織全体に企業家的なものの見方、イノベーションへの受容性、さらには新しいものへの貪欲さが浸透すること。
     
  ◆イノベーションの評価 
    企業自ら業績評価にイノベーションの成果についての評価を組み込まなければならない。
企業家的な成果を評価⇒初めて企業家的な行動が生まれ、人も組織も期待に沿って行動する。
but
自らの業績評価にイノベーションの成果を入れている企業は驚くほど少ない。
      第1:1つひとつのプロジェクトについて成果を期待にフィードバックする
⇒自らの計画能力と実行能力の質と信頼性を知ることができる。
開発部門のマネジメント:
プロジェクトに着手するとき、
@いかなる成果を期待するか、
Aいつまでに成果を期待するか、
Bいつ進捗状況を評価すべきか、
を考える。
そして、必ず成果と期待を照らし合わせなければならない。
⇒自らの得意や不得意を知ることができる。
開発研究だけでなく、イノベーションに関わるあらゆる活動について行なう必要。

@自分達の得意を知っておく
A人というものはうまく行なえることは、いくらでもうまく行なえる
B好ましくない傾向を知っておく
ex.
必要な時間を過小評価する傾向であり、過大評価する傾向。
開発研究の規模を過大評価しながら、その成果を製品やプロセスにつなげるうえで必要な資源を過小評価する傾向。
新しい事業が軌道に載ろうとしているときに、マーケティングや販売促進の手を抜き、それまでの努力を無駄にする傾向。
ある世界的な大銀行の1つは、自らの成功の要因の1つとして、
新市場への新sg仏、あるいは機械リースやクレジットカードなど新しい事業への進出について、常に成果を期待にフィードバックさせてきたことを挙げる。
⇒いかに早く成果を期待できるか、いつ、どれだけの人材と資金を動員すべきかを正しく把握することができるようになった。
このようなフィードバックは、イノベーションだけでなく、あらゆる種類の試みについて行なう必要がある。
成果を期待にフィードバック

@再検討が必要になることを示す兆候は何か
A問題が起こりそうであっても実際にはうまくいくことを示す兆候は何か
B予想よりも時間がかかることを示す兆候は何か
を知る上で必要。
    第2:イノベーションに関わる活動全体を定期的に点検していく
企業家精神を発揮するには、数年ごとに自らのイノベーションをまとめて評価
@どのイノベーションに力を入れ推進するか
Aどのイノベーションが新しい機会をもたらすか
Bどのイノベーションが期待どおりに進んでいないか
Cそのイノベーションをどうするか、諦めるか、期限付きでさらに努力するか
ある大手医薬品メーカー:
年に1度、トップマネジメントがイノベーションに関わる活動をすべて点検
あらゆる新薬開発プロジェクトについて、
@望ましい方向に望ましい形で進んでいるか
A製品ラインに加えられるか
B他社にライセンスを打った方がよいか
C諦めた方がよいか
を検討。

マーケティングに関するイノベーションについても点検
競争相手のイノベーションについても点検

開発ン研究費やその他のイノベーションにかけている費用は他社並み
but
その実績は群を抜いている。
    第3:イノベーションの成果全体を、イノベーションに関わる目標、市場における地位、企業全体の業績との関連において評価
ex.
5年ごろに、主な部門のすべてに対し、この5年間わが社を変えるようないかなる貢献を行ったか、これからの5年間どのような貢献を行うつもりかを問う。
but
イノベーションの成果は定量化できるのか、いかにすればできるのかという問題は残る。
イノベーションの成果が簡単には測定できない場合、あるいは厳密には測定すべきでない場合がある。
ex.
やがて癌の治療につながるかもしれない発見と、週3顔の通院を不要にする医薬品の開発
重要な取引先を失わないための新サービスと、数年後にトップの地位を与えてくれるかも知れない新製品
のいずれが重要?

必要なことは測定ではなく判断。
それは主観ではなく、定量化できなくとも、判断さえ出来れば、推測ではなく知識に基づいた行動が可能になる。
既存の企業にとって、特に重要な意味をもつ問い:
イノベーションにおいてリーダーシップをとっているか?あるいは、リーダーシップを維持しているか?
@リーダーとして受け入れられること
A基準の設定者として認められること
B従わされるのではなく先頭に立つこと

既存の企業の企業家精神に関わる最も重要な基準。
     
  ◆企業家精神のための組織構造 
    これらの経営政策+具体的な方策
⇒イノベーションと企業家精神が可能になる。
    but
@イノベーションを行うのは人
A人は組織の中で働く

イノベーションを行うには、そこに働く1人ひとりが企業家になりうる構造が必要。
企業家精神を中心に諸々の関係を構築。
報酬、報奨、人事を企業家精神に報いるものにし、企業家精神を阻害するものにしてはならない。
    新事業は、既存の事業から分離して組織しなければならない。
企業家的な事業を既存の事業を担当する人たちに行わせない。

@既存の事業は、それに責任をもつ人たちから膨大な時間とエネルギーを奪う。
A今日の危機に対しては今日対処しなければならない。
既存の事業を担当する人たちは、それらの事業の拡大、修正、調整しかできいない。
⇒新事業は別の人達に担当させなければならない。、
    新事業の核となる人は高い地位にあることが必要。
専任である必要はない。
but
それは明確に定められた仕事であって、権限と権威をもつ者が全責任をもつものでなければならない。
そのような人は、
企業そのものを企業家企業家的たらしめるための経営政策、
すなわち、
@廃棄の制度化
Aレントゲン写真による企業診断
Bイノベーションの必要度の把握
についても担当。

イノベーションの機会についての体系的な分析も担当。
若い人たちとのインフォーマルな会合から出てくる提案の評価にも責任をもつ。
    イノベーションに関わる仕事、特に新事業、製品、サービスの開発を目的とする仕事は、原則としてすべて既存のマネジメントではなく、このトップに直結させなければならない。
既存の事業に責任をもつマネジメントのもとに、そのような仕事を置いてはならない。
ロボった産業におけるトップの地位を失った大手の工作機械メーカーの失敗例。
新事業の息の根をとめることを防ぐ唯一の方法は、それらものを初めから独立した事業としてスタートさせること。
P&G、ジョンソン&ジョンソン、3M:
いずれも新しい事業を初めから独立した事業としてスタートさせている。
目標を達成し達成し事業として一本立ちするか中止になるまで、専任のプロジェクト・マネジャーを置いている。
このプロジェクト・マネジャーは、研究、生産、財務、マーケティングの専門家を必要なときに必要なだけ動員することができる。
    新事業やイノベーションに関わる仕事を独立させて行なうもう1つの理由:
負担を軽くする。
新事業:既存の事業のシステムとは異なるシステム、ルール、評価基準が必要。
ある大手化学品メーカーの例。
    報酬と報奨に関しては、何を行うべきかを明らかにするほうが難しい。
行なうべきことは、かなり矛盾している。
新しい事業に、担えるはずのない負担を負わせてはならない。
but
担当する人たちを、しかるべき報酬によって動機づけなければならない。
新製品や新市場あるいは新サービスの開発に成功し事業として発展
⇒3Mやジョンソン&ジョンソンのように担当副社長や事業部長に任命し、相応の地位やボーナスあるいはストックオプションを与えるようにすべき。

かなりの報酬
but
企業にとってh成功報酬にすぎない。
税制次第であるが、
新事業による利益の一部を担当者に直接与える。
ex.
新事業を独立した企業とみなし、その株式の25%分を与えて後日その持ち分を買い取ってもいい。
but
それだけでは十分ではない。
イノベーションを担当する人たちは、たとえ失敗しても元の仕事、元の報酬に戻れるようにしておかなければならない。
挑戦に罰を与えてはならない。
     
  ◆評価測定の方法
    イノベーションの収益パターンは、既存の事業とは異なる
⇒評価測定の方法も異なるものにしなければならない。
    新事業:
長い間、往々にして数年間は利益も成長ももたらさない。
資源を食うだけ。
but
突然成長し、開発に要した資金の50倍以上を回収する。
さもなければ、イノベーションとして失敗。
イノベーションは、小さく始まり、大きく実を結ぶ。
そのためには、大きな新事業を生むべきものとして始めなければならない。
    イノベーションがもたらすべきものについては、過去の経験からのフィードバックによってのみ知ることができる。
「イノベーションのための期間をどの程度見るべきか」
「資源の投入のタイミングは、いつが適切か」
「最初から人材と資金を大量に投入すべきか、それとも最初は担当者を1名とし、1人か2人の助手をつけるだけにすべきか」
「それでは、いつ規模を拡大するか」
「いつ、開発段階から利益をあげる事業に発展させるべきか」

答えは本の中にはない。
主観や勘、あるいは理屈では答えられない。
but
真に企業家的な企業は、自らの産業、技術、市場におけるイノベーションのパターン、リズム、タイムスパンを知っているもの。
ex.
イノベーション思考の銀行:
海外で子会社を設立するにあたって、少なくとも3年は投資を続けるべき
4年目で単年度の収支を合わせ、6年目の中ごろまでに、投資した資金をすべて回収する必要
6年経っても投資が必要⇒そのイノベーションは失敗であり撤退すべき
リース業などの新しいサービスへの進出についても、期間はやや短いが同じサイクルがある
P&G:
新しい製品は、開発に着手して2、3年は市場で売れるようにしなければならない。
その1年半後にはリーダー的な製品となっていなければならない。
IBM:
新しい製品は5年で市場に出している。
発売後1年で急成長しなければならず、2年目のかなり早い時期には、市場トップの地位を得て利益をあげ、3年目の速い時期には資金を回収し、5年目には売上げのピークに達し、以降はその水準を維持。
その頃には、次の新製品が陳腐化させ始める。
    これらのことを知るには、自社と競争相手のイノベーションの実績を体系的に分析しておく必要。
イノベーションの成果を期待にフィードバックさせ、企業家としての業績を定期的に評価しておく必要。

イノベーションからいかなる成果を期待すべきであり、期待できるかを理解して、初めてイノベーションのための活動をコントロールすることが可能になる。
新しい事業を担当する部門と、その管理者の仕事ぶりを評価することもできるようになる。
いずれの活動を推進すべきか、見直すべきか、廃棄すべきかを決定できるようになる。
    創業者だけではダメ。
企業家的マネジメントを組織構造の中に確立する必要。
ex.P&G、ジョンソン&ジョンソン、マークス&スペンサー
     
  ◆企業家精神のための人事 
    イノベーションと企業家精神の原理と方法は誰でも学ぶことができる。
ほかの仕事で成果をあげた者は企業家としての仕事も立派にこなす。
    既存の企業において企業家として優れた仕事をする人たちは、通常それ以前に日常のマネジメントでも能力を示している人達。
⇒イノベーションを行うことと、既存の事業をマネジメントすることの両方を行なえる。
    企業家精神とは個性の問題ではなく、行動、原理、方法の問題。
大企業を辞めた後、第2の人生として企業家の道を選ぶ中高年が急増。
     
  ◆企業家精神にとってのタブー 
    最も重要なタブー:
管理的な部門と企業家的な部門を一緒にすること。
企業家的な部門を既存の管理的な部門のもとに置いてはならない。 
    大企業が企業家として成功するのは、多くの場合、自らの人材によって新しい事業を手がけたとき。
互いに理解し合える人たち、信頼しあえる人たち、仕事の進め方を知っている人たち、パートナーを組める人たちと仕事とをしたとき。
もちろん、企業全体に企業家精神が浸透していること、

企業全体が、
イノベーションを望み、
イノベーションに手を伸ばし、
イノベーションを必然の機会としてみていること
が前提。
組織全体が新しいものに貪欲になっていなければならない。
    既存の企業がイノベーションを行なうことができるのは、市場や技術について卓越した能力をもつ分野。
新しいものは必ず問題に直面⇒そのとき、その事業に通暁していなければならない。
多角化は市場や技術について既存の事業との共通性がな限り、うまくいかない。
たとえ共通性があったとしても、多角化はそれ自体に問題がある。
    ベンチャーを買収することによって企業家的になろうとしてはならない。

買収は、買収先の企業にかなり速い段階からマネジメントを送り込まない限り成功しない。
    この急激な変化の時代にあって、イノベーションを行い、成功し、繁栄したいのであれば、企業家的なマネジメントを自らの組織に構築しなければならない。
企業家的な企業としてマネジメントしなければならない。
     
☆第14章 公的機関における企業家精神  
◆    ◆イノベーションを行なえない理由
    公的機関にとって、今日のような社会、技術、経済の急激な変化は、
企業にとって以上に脅威であって、しかも機会である。
but
公的機関がイノベーションを行なうことも、最も官僚的な企業とくらべてもはるかに難しい。
    公的機関において、イノベーションと企業家精神を阻害するのは、公的機関そのものに内在する固有の力学。
似た例が、企業内の公的機関ともいうべき企業のスタッフ部門。
・自らの王国を築くことに長けている
・より多くの同じ種類のことを行なおうとする。
・すでに行なっていることをやめることに抵抗する。
自らの地位を確立したスタッフ部門があえてイノベーションを行うことはほとんどない。
    公的機関で、既存の事業がイノベーションの障害となりやすい原因
@成果ではなく予算に基づいて活動する。
他のもの(=納税者や寄付者)の稼ぎから支払いを受ける。
予算は活動が大きいほど大きくなり、公的機関の成果は業績ではなく、獲得した予算によって評価される。
活動の一部を切り捨てることは自らの縮小を意味し、それは地位と権威の低下を意味する。
失敗を認めることはできず、目標の達成さえ認めることができない。
A公的機関は非常に多くの利害関係者によって左右される。
活動の成果が収入の原資となっていない⇒あらゆる種類の関係者が拒否権をもつ。
事業を開始した瞬間から廃止や修正を拒否する関係者を抱える。
新しい事業は、自らをしじしてくれる関係者をもつ前に既存の事業の関係者から反対される。
B最も大きな障害として、公的機関は善を行なうために存在する。
それを費用対効果の対象とはみなさない。

経済の世界では、すべてが相対的。
公的機関の活動は、倫理の問題であって、費用対効果の問題ではない。
    目標が最大化⇒目標は決して達成されることがない。
達成に近づくほどいっそうの努力が求められる。
最適値を超える⇒得られる成果は指数関数的に小さくなり、必要となるコストは指数関数的に大きくなる。
    公的機関は、イノベーションや新しい事業を、自らの基本的な使命、存在、価値、信念に対する攻撃として受けとる。
⇒公的機関におけるイノベーションが、既存の機関からではなくベンチャー的期間から生まれる理由。
    but
公的機関の中には、既存の大組織を含め、イノベーションを行っているものも多い。
ex.
アメリカのあるカトリック司教区の例:あらゆる活動を一般信者に任せた。

アメリカ科学振興協会の例:科学的リーダーとしての地位を維持しつつ国民的組織へと脱皮。
機関紙「サイエンス」

アメリカ西海岸の大病院の例:自ら進んでイノベーションを行い、変化の先頭に立ち、宿泊中心の格安の助産センターを設置し、外来の外科センターをつくり、地域の小病院をチェーン化。

ガールスカウトの例:隊員、活動、ボランティアの3本柱についてイノベーションを行った。
マイノリティの子ども達が全隊員の5分の1に
女性の専門職や経営管理者が一般化⇒主婦や看護婦に加えてキャリアウーマンを役割モデルとして訓練プログラムの内容を変えた。
ボランティアとしての仕事を、働く母親にとって自分の子どもと楽しみつつ、その成長に手を貸すための魅力ある機会とした。
幼い自分の子どもに十分な時間を割けない働く母親たちのために、就学前の女の子を隊員とするスカウト。
⇒隊員とボランティアを増加。
     
◆    ◆公的機関の企業家原理 
    成功例⇒公的機関がイノベーションを行ううえで必要な企業家原理:
    第1:公的機関は明確な目的をもたなければならない。
自分たちは何をしようとしているのか?
なぜ存在しているのか?
個々のプロジェクトは目的のための手段であり、一時的なもので、短命なもの。
    第2:公的機関は実現可能な目標をもたなければならない。
×空腹の根絶
〇飢餓の減少
最大ではなく最適の水準をもって規定⇒初めて「達成した」ということができる。
    第3:いつになっても目標を達成することができない⇒目標そのものが間違い。
目標は、大儀ではなく費用対効果に関わるものとしてとらえなければならない。
×目標を達成できない⇒さらに努力すべき。
    第4:機会の追及を自らの活動に組み込んでおく。
変化を脅威ではなく機会としてみる。
    政府機関での成功例:
120年前、ネブラスカ州リンカーン市:
先進国で初めて、公共輸送、電力、ガス、水道などの公的サービスを市営に
女性市長ヘレン・ブーサリスのもとに、この10年間で、ごみ収集やスクールバスなどの公的サービスを民営化⇒コストを大幅削減するとともに、サービスを改善。
市が予算を組み、競争入札によって民間の事業者に委託。
競争⇒サービスの質、効率、信頼性を向上させるとともに、コスト削減を実現。
     
  ◆既存の公的機関におけるイノベーションの必要性 
    今日の先進国では、既存の公的機関があまりに大きな存在に。
⇒可能な限り営利事業に転換しなければならない。
    今後20〜30年の間、先進国経済の中心的な課題は資本形成。
資本形成に資する事業、すなわち利益をあげる事業として組織できるものを、資本を費消する事業、非営利事業として運営する余裕はない。
but
それでも、事業の多くは、社会的サービスとして残る。
⇒それらの事業を成果のあがる生産性の高いものにしなければならない。

この急激な変化の時代にあって、社会、技術、経済、人口構造の変化を機会としてとらえなければならない。
     
☆第15章 ベンチャーのマネジメント  
  ◆市場志向の必要性 
    「企業家マネジメント」というとき、
既存の組織の場合、ポイントは前半の「企業家」びあるが、
ベンチャーについては、公判の「マネジメント」にある。
ベンチャーにとって企業家精神の障害となるものは既存の事業の欠如。
    ベンチャー:
アイデアがあり、製品やサービスがある。
売上げもある。
コストはある。
収入があり利益もあるかもしれない。
but
確立された事業がない。
ベンチャーは、いかにアイデアが素晴らしくとも、いかに資金を集めようとも、いかに製品が優れていようとも、いかに需要が多くとも、
事業としてマネジメントされなければ生き残れない。

エジソンはそれが理解できなかったために、手がけた事業のすべてに失敗した。
マネジメントとはボスであることと考えていた彼は、マネジメントのチームをつくらなかった⇒彼のベンチャーは中堅企業に成長した段階でことごとく倒産寸前に追い込まれた。
彼が引っ込み、専門のマネジメントが代わるしか会社を救う方法ななかった。
    ベンチャーが成功する4つの原則
第1:市場に焦点を合わせる
第2:財務上の見通し、特にキャッシュフローと資金について計画をもつ
第3:トップマネジメントのチームをそれが実際に必要となるずっと前から用意しておく
第4:創業者たる企業家自身が自らの役割、責任、位置付けについて決断する
    ベンチャーが成功するのは、多くの場合、
予想もしなかった市場で、
予想もしなかった客が、
予想もしなかった製品やサービスを、
予想もしなかった目的のために
買ってくれるとき。

ベンチャーは、
予期せぬ市場を利用できるよう自らを組織しておかなければならない。 
コピー機の例
ジェット機の例
イノベーションを行う者自身の視野は狭くなりがち。
 DDTの例
3Mの工業用に開発した接着テープの例
局部麻酔薬の例
ユニバックとIBMの例
市場調査は間違った処方。

新しいものを市場調査することはできない。
市場に出ていないものを市場で調査することは不可能。
ユニバックの市場調査の例
コピー機の売り込みをうけた印刷機メーカーの市場調査の例
   
ベンチャーは自らの製品やサービスが、思いもしなかった市場で思いもしなかった使われ方のために、なじみの内素人の客によって買われることがあって当然との前提で事業をスタートさせなければならない。
市場志向でなければ、生み出すものは競争相手のための市場だけ。
    市場志向になることは、特に難しいことではない。
そのためには、
予期せぬ成功や失敗など予期せぬものを体系的に探さなければならない。
予期せぬものを例外として片づけず、機会として調べなければならない。
インドの会社の原動機付自転車の生産販売の例
    市場志向であるには、実験が必要。 
予想外の顧客が関心⇒実際に使ってくれる人を探し、馴染みのない人たちに無料サンプルを提供し、いかに使うかを調べる。
彼らの顧客にするには製品やサービスをいかに変えるべきかを調べる。
何らかの関心がしめされた⇒関連する専門誌に広告を載せ、協力を探す。
デュポンのナイロンのタイヤへの利用の例
    製品やサービスの意味を決めるのは客であって生産者ではないことを常に思い起こす仕組みを作っておく。
製品やサービスが客に提供する効用や価値について、絶えず疑問を投げかける。
最大の危険は、製品やサービスが何であり、何であるべきか、いかに買われ、何のために使われるかについて、客よりも知っていると思い込むこと。
予期せぬ成功を屈辱とするのではなく機会としてとらえなければならない。
企業は客のニーズを満足することによって対価を得る。
     
  ◆財務上の見通し 
    設立間もないベンチャの問題ー⇒市場志向の欠如
成長の次の段階の問題⇒財務志向の欠如と財務政策の欠落
    ベンチャーが製品やサービスで成功し急成長
but
1年半後に挫折。
挫折の原因はいつも同じ。
@今日のためのキャッシュがない
A事業拡大のための資本がない
B支出や、在庫や、債権を管理できない。
これらの3つの症状は同時に起こる。
    ×利益を重視
vs.
利益は結果としてもたらされるものであって、最初に考えるべきものではない。
利益よりも、キャッシュ、資本、管理の方が大事。
それらのものがなければ利益の数字は絵空事に終わる。
目の前の利益など1年から1年半で消える。
    成長には栄養が必要。
成長は、余剰の発生ではなく債務の発生の現金の流出をもたらす。
ベンチャーは、成長が健全であってかつ早いほど、より多くの資金上の栄養を必要とする。
    資金のマネジメントは、キャッシュフローの予測によって容易に行える。
ここでの予測:
希望的観測ではなく最悪のケースを想定した予測。
「債務は想定より2か月早く決済しなければならず、債権者2か月遅く決済される」との昔からの言葉。
ベンチャーにとっては慎重すぎることはなく、慎重すぎたとしても資金が一時的に余るだけ。
常に1年先を見て、どれだけの資金が、いつ頃、何のために必要となるかをしっておかなければならない。
1年の余裕⇒手当ては可能。
but
切迫した状況のもとで資金を調達することは、事業がうまくいっているときでも困難であり、法外なコストがかかる。
何より、重要な時期に重要な人材に寄り道をさせることになる。
再び時間と頭脳を事業に集中できるようになった頃には機会を逃している。

ベンチャーの本質からして、機会が最も大きくなるとき、資金繰りは最も苦しくなる。
    成功しているベンチャー:
自らの資本構造を超えて成長する。
売上げを40%〜50%伸ばすごとに、それまでの資本構造では間に合わなくなる
⇒資本構造を変えなければならない。
ベンチャーが成長
⇒株式公開、既存企業との提携、保険会社や年金基金からの資金調達など大きな資金源をもたなければならない。
増資によって資金を調達⇒長期の借り入れ
逆もある。
成長により、それまでの資本構造が陳腐化し障害となる。
    資金計画が比較的容易なベンチャー:
レストラン・チェーン、病因チェーン、専門店チェーンなど、各地で類似の事業を展開しているベンチャー

各事業単位がそれぞれ独自に資金繰りをすることがdけいる。

成長と拡大に必要な資金を段階的に調達していくことができる。
1つひとつの事業が成功⇒それが次の事業に対する投資家への保証と誘因に。
この方法が機能する3つの原則:
@事業単位のそれおぞれをできるだけ早く、遅くとも2,3年以内に採算に乗せる
Aマネジメント能力のあまりない人たちでも、本部からの指示なしにマネジメントできるよう事業内容を定型化
B事業単位のそれぞれが、かなり早い時期に追加資金を必要としなくなり、むしろ次の事業単位を資金的に助けられるようになる
    独立した事業痰飲として資金調達することが難しいベンチャー:
常に3年先を見越し、最大の必要資金量を想定し計画⇒必要な資金を必要なときに必要な方法で調達することができる。
but
資金源や資金構造を超えて成長⇒自らの独立はもちろん、その生命まで危険にさらすことになる。
素晴らしい製品をもち、市場で素晴らしい地位を占め、素晴らしい成長の可能性をもつベンチャーの多くが突然マネジメント不能になる。
未収金、在庫、製造コスト、管理コスト、アフターサービス、流通、その他あらゆるものをマネジメントできなくなる。
1つが制御できなくなる⇒あらゆることが制御できなくなる。
←それまでのシステムの能力を超えて成長。
but
ようやく新しいシステムができた頃には市場は失われ、顧客は不審を抱き、流通業者は信頼しなくなっている。
最悪なことに従業員がマネジメントを信用しなくなっている。
    急激な成長⇒既存のマネジメント・システムを陳腐化させる。
ここでも、40%から50%の成長が1つの段階として重要な意味をもつ。
いったん制御の能力を失う⇒取り戻すことは難しい。
but
予防することはかなり容易。
自社にとって最も重要なこと、
ex.アフターサービス、未収金、在庫、製造コストについて、財務の観点から検討。
最重要項目が4つないし5つを超えることはほとんどない。
加えて、マネジメント関連のコストについても気をつけておく。
マネジメント・コストの増大=マネジメントや事務スタッフの雇いすぎを意味。
それらの最重要項目について常に3年先を見越し、マネジメントのシステムを確保する必要。
木目細かいシステムは必要ないし、数字も大雑把でよい。
重要なのは、それらのtこを意識し、注意し、必要に応じて迅速に対応できるようにしておく。
最重要項目に注意⇒通常マネジメント上の混乱は生じない。
そのための手法は簡単に手に入る。会計の教科書に説明してあるとおり。
ただし、自らが行なわなければならない。
     
  ◆トップマネジメント・チームの構築 
    市場においてしかるべき地位を確立し、
しかるべき資金手当てを行なった
しかるべき資本構造とマネジメント・システムも確立
but
数年後に深刻な危機に陥る。
原因は常に同じ:
トップマネジメントの欠如。
←企業の成長がトップ1人でマネジメントできる限界を超えた結果。
実際に、そのときすでに適切なチームがなければ手遅れ。
対策は簡単:
トップのチームを前もって構築しておく。
@チームは一夜にしてならず、機能するには時間がかかる
A相互信頼と相互理解が必要

そのためには数年(3年)を要する。
    小さなベンチャーが堂々たるトップマネジメントチームをもつ余裕はない。
ごくわずかの人間で出てくる問題を処理していかなければならない。
方法は簡単
but
そのためには、創業者自身がいつでも自らマネジメントを行なうのではなく、いずれトップのチームに引き継ぐ決意をしておかなければならない。
トップの1人ないし2人があらゆうることを自ら行い続けるつもり⇒数か月あるいは数年後には経営危機が避けられない。
市場や人口動態などの客観的な指標によって、3年から5年後に倍の規模に成長することが明らか
⇒トップマネジメント・チームの構築が急務。
but
そのためには準備が必要。
    第1:創業者自身が、事業にとって重要な活動について主な人たちと相談しなければならない。
存続と成功がかかっている活動は何か
何が重要な活動か
を徹底的に検討。

同じ種類の事業に見えても柔道な活動として位置づけられるものがまったく異なることがある。
生産活動かもしれないし、顧客サービスかもしれない。

あらゆる組織に共通する重要な活動は2つだけ:
@人のマネジメント
A資金のマネジメント
それ以外の活動は、事業や仕事、価値観や目標を内部から見ている人たちが決めなければならない。
第2:創業者など主な人たちの一人ひとりが、自分が得意とするものは何か、他の人達が得意とするものは何かを考える、。
第3:それぞれの強みに応じて、誰がいずれの活動を担当すべきか、誰がどの活動に向いているかを検討。
⇒トップマネジメント・チームが構築。

この時、創業者といえども、人事が得意でなければ口を挟まないように慎む。
重要な仕事はすべて、能力が実績によって証明された者が担当すべき。
第4:重要な活動のすべてについて目標を定めなければならない。

製品、人的資源、資金のいずれにせよ、重要な活動に責任を負うことになったすべての人に対し、何を期待できるか、何に責任を負えるか、何をいつまでに実現するつもりかを問わなければならない。
    当初、このトップマネジメント・チームは非公式であってよい。
肩書も、公表も、上乗せの報酬も必要ない。
むしろ新しい陣容が機能し、その様子を明らかになるまで1年ほど待ったほうがよい。
その間チームの全員が、各自の仕事、協力の仕方、互いの仕事をやりやすくするために行なわなければならないことなど、多くのことを学ぶ必要。

2,3年後、いよいよトップマネジメント・チームが必要になったとき、それは存在していることになる。 
そうなっていない⇒そのはるか前にマネジメントの能力そのものが失われている。
考えられる2つのケース:
(1)創業者自身が能力と関心をもつ1つか2つの活動に没頭したままでいるケース。
それ以外の活動が見る人もないまま放っておかれれば、2年後には事業が苦境に陥る。

製品はある。創業者が、再建のために乗り込んできた人によってトップの座を追われるだけ。

(2)創業者が良心的な場合。
人と資金が重要であり、マネジメントしなければならないこと知っており、自分でマネジメントしようとする。but得意でない
⇒得意とする肝心の新製品や新技術の開発がなおざりになる。

事業は立ちゆかず売却か清算される。
    実際に必要となるはるか前からトップマネジメント・チームを構築しておく必要。
ワンマンによるマネジメントが失敗する前に、そのワンマン自身が、同僚と協力すること、人を信頼すること、さらには人に責任をもたせることを学ばなければならない。
創業者は、付き人をもつスターではなく、チームのリーダーになることを学ぶ必要。
     
  ◆創業者はいかにして貢献すべきか 
    ベンチャーのマネジメントに関して重要なこと:トップマネジメントをチームとして構築すること。
but
創業者自身にとって、それは事の始まりにすぎない。
ベンチャーが発展し成長⇒創業者たる企業家の役割は変わらざるを得ない。
    自分の役割をいかに変えたらよいか?
×何をしたいか
×自分は何に向いているか
〇客観的に見て、今後事業にとって重要なことは何か

事業が大きく伸びたとき、製品、サービス、市場、あるいは必要とする人材が大きく変わったとき、必ず自問しなければならない。
次に問うべき:
「自らの強みは何か?」
「事業にとって必要なことのうち自らが貢献できるもの、他に抜きんでて貢献できるものは何か?」

これらの問いを徹底的に考える⇒
「自分は何をしたいか」
「何に価値を置いているか」
「残りの人生すべてとまではいかなくとも、今後何をしたいか」
「それは事業にとって本当に必要か、基本的かつ不可欠な貢献か」
を問うことがdけいる。
    ニューヨークのペイス大学の例:
エドワード・モートラ博士は
1950年前後というペイス大学がまだ小さかった頃、すでに強力なトップマネジメント・チームをつくりあげていた。
そのメンバーは、それぞれが責任を負い、リーダーシップを発揮すべき担当分野をもっていた。
彼自身は総長となり、助言と支援を得るために、独立した強力な評議会を設置した。
    ベンチャーが必要とすること
創業者たる企業家が強みとすること、
その企業家がしたいと考えること
は、千差万別。
ポラロイドカメラの発明者エドウィン・ランド
創立後10数年は自らマネジメントに
but
会社が急成長⇒トップのチームをつくって彼らに会社を任せた。
自分が貢献できるのは科学的イノベーション⇒自らを研究者と位置づけ、基礎研究担当の相談役になった。
マクドナルドを構想し創業したレイ・クロック:
80歳過ぎで他界するまで社長をつとめた。
but
日常の業務はトップのチームに任せ、彼自身は「マーケティングの良心」を任じた。
他界する直前まで自分の店を毎週2,3軒は訪れ、品質や清潔さ、親しみやすさを点検。
客を観察し、話しかけ、耳を傾けた。
⇒少なくとも彼が亡くなるまで、ファウストフード業界のトップを維持するうえで必要な変革を行ないつづけることができた。
ある建材商社の若い創業者:
自らの役割はマネジメントではなく、小さな町や校外にある200か所の営業所の所長たちの面倒を見ること。
1月のうち12日から15日は、彼らの営業所長を訪れ、半日をともに過ごし、仕事や計画や目標について話し合うことを自分の仕事にした。
⇒競争相手よりも3倍から4倍の速さで成長した。
半導体メーカーとして成功しているある会社:
3人の科学者によって設立
事業によって必要なものは3つ
@経営戦略
A開発研究
B人材、特に科学技術分野の人材育成

人材育成を引き受けたのは、イノベーションに強い科学者で、その分野では学界の大物。
but
自分がマネジメントや人事に関わる仕事に向いていると考え、人材育成を担当。
「本当にやりたい仕事ではなかった。しかしそれが私の最も貢献できることだった」
    自らがいかに貢献できるかとの問いが、常に満足のいく答えをもたらすとは限らない。
創業者が手を引くこともある。
アメリカで最も成功した金融関連ベンチャーの創業者:
トップチームを作ったうえで、会社が必要としているものは何かと自問。
そして、自分自身と自分の強みを考えた。

会社が必要とするものと自分がしたいこととの間はもとより、
自分ができることとの間にさえ共通するものがない
ことを知った。

1年半をかけて後継者を育て、事業を引き継ぎ辞任した。

彼はその後、金融以外の分野でベンチャーを3つ創業し、いずれも中堅企業に育てた。
そして、そのいずれからも手を引いた。
事業をスタートさせ育てることを好んだが、マネジメントすることは好まなかった。
似たような状況でも、企業家によって達する結論は異なる。
ある有名な医療機関の創業者:
その医療機関がマネジメントと資金調達の両方が出来る人を必要としていたのに対し、
彼自身は研究者や臨床医であることを望んでいた。
but
彼は自分が資金調達を得意とし、かつ医療機関のCEOになる能力もぱることを知っていた
⇒自分の希望を抑え、CEOとしての仕事と資金調達の仕事を引き受けた。
    自分は何が得意で何が不得意かという問いこそ、ベンチャーに成功の兆しが見えたところで、創業者たる起業家が向き合い考えなければならない問題。
but
本来は、ベンチャーの創業前から考えておくべきことかもしれない。
本田宗一郎:
マネジメント、財務、マーケティング、販売、人事をパートナーとして引き受けてくれる者が現れるまで事業を本格化しなかった。
彼自身はエンジニアリングと製造以外は何もやらないことにしていた。
⇒ホンダを成功に。
ヘンリー・フォード:
本田と同じく、自分の役割をエンジニアリングと製造に限定
彼が見つけたジェームズ・カズンズはフォードにおとらず会社に貢献。
1日5ドルの日給制、先駆的な流通とアフターサービス等。
but
1917年に、脱T型とその後継者開発というカズンズの主張で彼を追い出してフォードがトップの機能を手中に⇒衰退⇒カズンズ辞任の30年後、孫のヘンリー・フォード二世が、事実上倒産した事業を引き継ぐまで続いた。
     
◆    ◆第三者の助言 
    これらの例は、ベンチャーの創業者には外部の人間の客観的なアドバイスが必要なことを教える。
成長しつつあるベンチャーは取締役会を必要としないかもしれない。
そもそも取締役会なるものの多くは、創業者が本当に必要とする相談相手にはなれない。
but
創業者は、基本的な意思決定について話し合い、耳を傾けることのできる相談相手を必要とする。
ただしそのような人間は社内ではめったに見つからない。
    創業者の判断や強みを問題にできる外部の人間が必要。
創業者たる企業家に対し、質問し、意思決定を評価し、市場志向、財務見通し、トップマネジメント・チームの構築など生き残りのための条件を満たすよう絶えず迫っていく必要がある。
これこそ、ベンチャーが企業家マネジメントを実現するための最大の要件。
    規律のないところに自由はない。
規律のない自由は放縦であって、やがて無秩序へと堕落する。
あるいは、時を置かずにして独裁へと堕落する。
ベンチャーが見通しと規律を必要とするのは、企業家精神を維持し強化するため。
成功がもたらす要求にこたえるため。
何よりもベンチャーは責任を必要とする。
企業家がこの責任を果たせるようにすることがベンチャーのマネジメント。
     
★第3部 企業家戦略  
☆第16章 総力戦略  
    企業家精神を発揮するには、
企業家マネジメント、すなわち組織の内部に関わるいくつかの原理と方法が必要。
これに加えて、
組織の外部、すなわち市場に関わるいくつかの原理と方法が必要(=企業家戦略)
    企業家戦略:
@総力戦略
Aゲリラ戦略
Bニッチ戦略
C顧客創造戦略
  ◆総力による攻撃 
    南北戦争において南軍の騎兵隊将校が連戦連勝の秘密を明かしたときに使った言葉。
    この戦略で、市場や産業の完全支配は無理でも、トップの座を得る。
常にそうとは限らないが、自ら新たに大きな産業を生み出す。
最初から永続的なトップの地位を狙う。
    4つの企業戦略のうち、最もギャンブル性が高い。
一切の失敗を許さず、チャンスが二度とない辛い戦略。
but
成功すれば成果は大きい。
スイスのバーゼルにあるホフマン・ラロッシュ(当時大企業でもなかった):
新しく発見されたビタミンに掛けた。
当時、学界はそのような物質の存在さえ全面的には認めていなかった。
but
同社は誰もが欲しがっていなかったビタミの特許を取得
チューリッヒ大学からビタミンの発見者を高給で引き抜いた。
手元の資金に加え、借りられるだけの資金を集めて、新しい物質の製品化とマーケティングに投入。

ビタミンの特許消滅から久しい今日、ホフマン・ラロッシュは依然として世界のビタミン市場の半分を占め、年間数十億ドルの売上げを上げている。

同社はほかに2回同じ戦略をとった。
1930年代、科学者のほとんどが化学薬品は伝染病には効かないと考えていたときに、サルファ剤を手がけた。
1950年代半ば、科学者がありうべからざるものとしていたときに、筋組織弛緩用のトランキライザーを手がけた。
デュポン:
15年に及ぶ苦労の末、最初の合成繊維んであるナイロンの開発に成功
⇒ただちに総力をあげて大工場をつくり、大々的に宣伝し、新たな化学産業を生み出した。
    この戦略をもとにもd時どおりゼロからスタートした例
アン・ワンブ博士がワープロを構想
⇒初めから新しい産業をつくり、オフィスの仕事を変えることを目指した⇒ワング・ラボラトリーは大企業に。
ガレージの中での資金的な支援も事業の経験もなくアップル・コンピュータをスタートさせた2人の若者も、初めから1つの産業をつくり、それを支配することを目指した。
    この戦略は大事業になることを目指す必要はない。
but常に市場の支配を目指す必要はある。
3Mは、大事業になるようなイノベーションには取り組まない方針。
ジョンソン&ジョンソンも同じ。

大事業ではなく中くらいの事業に発展するイノベーションを行ってきたが、市場の支配は目指していた。
デュポンも、化学者カロザースの研究が簡単に成功するとは思っていなかったが、成功した暁には、単なる新製品や製品ラインを超えたものをつくり出すつもりでいた。
ワング博士も、その最初の広告の中で新しいオフィス環境やオフィス労働を説いていた。
    この戦略は、真に新しいものを作り出すこをと目指している
⇒外部の素人でも専門家と同じ働きをする。あるいはそれ以上の働きをする。
ホフマン・ラロッシュでは、創業者の孫娘と結婚した化学者ならぬ音楽家がこの戦略をとった。
以来、同社は化学者によってマネジメントされたことは1度もない。
代々銀行出身者によってマネジメントされている。
デュポンのトップマネジメントは科学者ではなく企業人。
    純粋に産業の内部にいた人たちもいる。
ex.ワング博士、3Mの人たち、アップル・コンピュータを設計した若者。
but
この戦略に限っては、おそらく門外漢の方が有利。
←彼らは通念を知らず、何が不可能とされているかを知らない。
   
  ◆成功への道 
    この戦略は必ず命中させなければならない。さもなければ失敗する。
ひとたび発射すれば、修正や調整はきかない。

この戦略には、徹底した思考と分析が不可欠。
明確な目標を1つ掲げ、それに全エネルギーを集中しなければならない。
しかも、成果が出始めるや、さらに資源を大量投入しなければならない。
ワングのワープロはプロセス・ニーズを見事に突いた。
ホフマン・ラロッシュは、1920年代の初め、ビタミンという新しい知識をイノベーションの機会として捉えた。
創業者の孫娘の婿の音楽家は、トーマス・クイーンが「科学革命の構造」を書く30年以上前にその本の意味するところ・・・科学上の新理論は、それまで育まれた信念と化している理論があるうちは受け入れられない・・・を理解していた。
    新しい理論は、昔ながらのパラダイムがまったく無効となるまで見向きもされない。
その間は、新しい理論を受け入れ利用する者がその分野を独り占めすることになる。
この戦略は
@イノベーションの機会についての綿密な分析があって初めて成功する。
Aそして全エネルギーの集中を必要とする。
デュポン:実用に耐える合成繊維の開発に成功するや、市場が反応するはるか前に大工場を建設し、繊維メーカーや一般消費者向けに広告、展示、見本提供の絨毯爆撃を行った。
    イノベーションが事業として成功
⇒トップの地位を維持していくための継続的な努力が必要となる。さもなければ、競争相手に市場を奪われる。
リーダーシップを握る⇒これまでよりも速く走り、イノベーションの努力をさらに大規模に続けなければならない。
開発費もイノベーションに成功した後でこそ増額。
新しい製品の利用法を開発し、新しい顧客を発掘し、新しい製品を試してもらう。
何にもまして、この戦略で成功した企業家は、競争相手よりも先に自らの手で製品やプロセスを陳腐化させていかなければならない。
次世代の製品やプロセスを開発するため、最初の成功をもたらしたと同じだけの努力と資源を投入しなければならない。

さらには、価格を計画的に下げなければならない。
高価格の維持=競争相手に傘をさしかけ、やる気をおこさせるだけ。
アルフレッド・ノーベルがダイナマイトを発明したあとに結成したカルテル:
需要が10%から20%増大するごとに価格を引き下げた。
生産増に必要な投資は償却済み⇒高収益を維持
⇒新規参入者にとって工場の新設は魅力がなかった。
デュポン
ワング
3M
も同じ方針。
     
  ◆リスクの大きさ 
    成功よりも失敗のほうがはるかに多い。
この戦略には、チャンスは1度しかない。
直ちに成功するか、さもなければ完全な失敗。
    運や偶然によって救われた例:
ナイロンの成功:
1930年代には、ナイロンのための市場はなかった。
綿糸やレーヨンと競争するにはあまりに値段が高かった。
当時、最も贅沢な繊維絹よりも高かった。
厳しい不況のさなかにあって、日本は絹をいかなる安値でも輸出するつもり。
but
ナイロンを救ったのは、日本の絹輸出にストップをかけた第二次大戦の勃発。
1950年頃日本が絹産業を再建したときは、すでにナイロンはゆるぎない地位を築き、コストと価格もはるかに安くなっていた。
3Mのスコッチテープの例。
    この戦略では成功よりも失敗のリスクが大きい
・強い意志がなければ失敗
・努力が十分でなければ失敗
・イノベーションとしては成功しても、十分な資源を投入しなければ失敗
・事業として成功しても、追加資源を投入しなければ失敗

大きなイノベーションにしか使うべきではない。 
ホフマン・ラロッシュのビタミンのように新しい医療分野を生み出すこと、あるいは
メイヨー兄弟のように診断と治療について新しい医療の方法を生み出すこと
にしか使うべきではない。
    これが使えるイノベーションの種類はごく限られている
イノベーションのの機会についての深い分析と正しい理解が必要
エネルギーと資源の集中が必要
    多くの場合、ほかの戦略をとるべき。
ほかの戦略の方が望ましい。

リスクの問題ではなく、必要なコスト、努力、資源に見合うほど大きなイノベーションの機会がそれほどはないから。
     
☆第17章 ゲリラ戦略  
    「ゲリラ戦略」=「弱みへの攻撃」
〜南北戦争における南軍将校の言葉。

企業家のための戦略としては、
@創造的模倣戦略と
A柔道戦略
  ◆創造的模倣戦略 
    ハーバード・ビジネススクールの教授、セオドア・レヴィットの造語。
    企業かはすでに誰かが行なったことを行なう。
but
最初にイノベーションを行った者よりもそのイノベーションの意味をより深く理解するがゆえに、より創造的となる。

IBM、P&G、セイコー
IBM:
開発した先駆的なコンピュータの設計を捨て、ペンシルベニア大学が開発したENIACに乗り換えて行った。
IBMは、計算事務という平凡な仕事に使えるようENIACの設計を取り入れ、生産し、アフターサービスを行なうことにした。
1953年にENIACのIBM版が世に出る⇒直ちに企業用の多目的メインフレーム・コンピュータの標準となった。

創造的模倣
    @誰かが新しいものを完成間近までつくりあげるのを待ち、そこで仕事にとりかかる。
A短期間で、顧客が望み、満足し、代価を払ってくれるものに仕上げる。
B直ちに標準となり市場を奪う。
IBMは、パソコンについても創造的模倣の戦略。
アイデア=アップル
IBMは、パソコンが経済的でなく、最適にほど遠く、金のかかる間違った製品と見ていたが、なぜかそれは成功していた。
2年後には、IBMのパソコンはアップルのリーダーの座を奪い、最も売れる製品、標準たる製品となった。
P&G
スイスの時計メーカー:クォーツ時計を開発したが、すでに従来型の時計に多額の投資を行っていた
⇒新製品を贅沢品として位置づけ、時間をかけて導入。
but
セイコーは、半導体にイノベーションの機会を見出し、創造的模倣戦略をとって、クォーツ時計を普及品として売り出した。
⇒世界のベストセラーとなり、スイスのメーカーはほとんど市場から追いやられた。
    創造的模倣:
総力戦略と同じようにトップの座を目指す。
but
リスクははるかに小さい。

@市場は確立し製品が市場で受け入れられている
Aそれどころか、最初のベンチャーが供給できる以上の需要が生まれている。

市場はすでに明らかになっている。
顧客が「何を買っているか」「いかに買っているか」「何を価値としているか」を市場調査によって明らかにすることができるようになっている。
最初のベンチャーが直面した無数の不確定要素も、ほとんどが明らかにされているか、少なくとも分析し調べることができるようになっている。
もはや、パソコンやクォーツ時計が何であるか、何をするものかを説明する必要はない。
    非ピリン系アスピリンともいうべこタイレノールなる商標名をつけられたアセトアミノフェンの例
最初:アスピリンの副作用に苦しむ患者のための薬として売られた
but
予想を上回る成功⇒創造的模倣の機会を生み出した。
ジョンソン&ジョンソンはタイレノールなる商標名をつけ一般薬として売り、市場を席捲。

創造的模倣は、先駆者の失敗を利用するものではない。
先駆者は成功していなければならない。
but
その成功の意味を理解できなかった。
アップル:
製品中心であってユーザー中心でなかった。

ユーザーがプログラミングやソフトウェアを必要としているときに新しいハードウェアを供給。
アセトアミノフェンを最初に売り出した者も自らの成功が意味するものを理解しなかった。
    創造的模倣戦略は他人の成功を利用。
製品やサービスを完成させ、その位置づけを行う。
通常、新しい製品やサービスは市場に導入されたままの形では何かが欠けている。
・いくつかの特性を追加する必要があるかもしれない。
・少しづつ違う市場向けに少しずつ違うものが必要とされ、製品やサービスを細分化することが求められているかもしれない。
・市場で正しい位置づけを行なうことが求められているかもしれない。
・何か欠けているものがあるかも知れない

創造的模倣は、顧客の目で製品やサービスを見る。
IBMのパソコン:技術的にはアップルと差別化できなかったが、初めからプログラムとソフトウェアを提供。
アップル:専門店というそれまでの流通チャネルに固執
IBM:専門店、シアーズ・ローバックのような大規模店舗、直営の小売店など、あらゆる流通チャネルを使い、消費者が買いやすいようにした。
IBMがパソコンの市場を手に入れたのは、技術よりもそれらのイノベーションによって。
創造的模倣:
製品ではなく市場から、
生産者ではなく顧客から
スタートする。
市場志向であり市場追随であり、新しい製品やサービスを導入した者が生み出しながら放っておいた市場を相手にする。
すでに存在している需要を満たすのであって、需要そのものを生み出すのではない。
    創造的模倣戦略のリスク:
・リスクを分散させようと、誤ってエネルギーを分散させる危険
・状況を誤解して模倣する危険
・意味のない市場の動きを創造的に模倣
    創造的模倣は、ハイテク市場で最も有効に働く

ハイテクのイノベーションを最初に行なう者は、市場志向であることがほとんどなく、技術志向、部品志向。
    創造的模倣は、鋭敏な触覚、柔軟さ、市場への即応性、そして何より厳しい仕事と膨大な努力を必要とする。
     
  ◆柔道戦略 
    1947年、ベル研究所がトランジスタを開発
当時アメリカの大手電機メーカーはトランジスタへの転換を1970年頃に行う予定
but
ソニーの盛田昭夫が、トランジスタのことを新聞で知るや直ちにアメリカへ飛び、そのライセンスを総額2万5000ドルという破格の安値でベル研究所から購入。
2年後、重さが真空管ラジオの5分の1,値段が3分の1以下という最初のポータブルラジオを世に出し、3年後にはアメリカのラ時を市場を手に入れ、5年後には世界の市場を手に入れた。

予期せぬ成功の拒否と利用の古典的な例。
アメリカの大手電機メーカー:
自分達の発明ではない⇒トランジスタの利用を拒んだ(プライドが邪魔をした)。
技術の粋を集めた高級ラジオを誇りにしていた。
日本企業は、この戦略を何度も使い、そのたびに成功してきた。
テレビ、クォーツ・デジタル時計、プログラマブル電卓
コピー機
    シティバンク:
ドイツでファミリエンバンクなる消費者銀行を設立し、数年の間に消費者金融で支配的な地位を得た。
広告で何と言おうが、ドイツの銀行は、その重々しい支店にやって来た一般の人達に対し、そっけない態度をかなりあからさまに示した。
⇒ファミリエンバンクは、わずか5年の間に消費者金融で支配的な地位を得た。
    泥棒は自らの性癖のゆえに逮捕されたことを認めない。逮捕の原因となった性癖を直さず、言い訳を探す。
自らの性癖によって市場を失った企業も、それを認めない。他の原因を言い訳にする。
ex.
日本企業の成功を低賃金のせいにする。
but
RCAやマグナボックスのように現実を認識しているアメリカのメーカーは、アメリカの高賃金と福利厚生費を負担しつつ、日本企業と競争できる価格と品質の製品を生産する。
    新規参入者に、柔道戦略を使わせ、急成長させ、トップの地位を得させるのは、先行者に共通してみられる5つの悪弊のいずれかが原因。
  第1:NIH(Not Invented Here)という態度。
自分達が考えたもの以外にはろくなものがないという傲慢さ。
⇒新しいイノベーションを鼻であしらう。
  第2:最も利益のあがる部分だけを相手にするという、いいとこ取り。
ゼロックスは大手ユーザーに的を絞った⇒他の顧客はサービスに不満をもった⇒競争相手にとって参入しやすくなっていた。
市場のいいとこ取り(=資産への依存)は、常に市場の喪失という罰を受ける。
    第3:価値についての誤解:
製品やサービスの価値は供給者がつくるものではなく、顧客が引き出し、対価を払うもの。
それ以外のものは価値ではない。
1950年代:
アメリカの大手電機メーカー:真空管を使う自分たちのラジオは、より大きくより精緻で、努力の結晶⇒価値がある。
消費者:トランジスタラジオの方が明らかに価値があった。
軽く、浜辺やピクニックにもっていき、故障することなく、真空管を取り替える必要のなかった。
しかも安かったし、音域や音質も優れていた。
    第4:創業者利益なる錯覚
19世紀初めのセイやリカード以来、経済学は、完全独占以外で大きな利益を得る方法はコストと価格との差しかないと認識。
vs.
コストと価格との差によって利益を得る試みは必ず失敗する。
競争相手に傘をさしかけてやることになる。
トップの地位を確立している者にとって大きな利益に見えるものも、実際は数年後に覇権を争うべき新規参入者に与える補助金。
創業者利益は、株価の上昇をもたらず喜ばしいものではなく、自らに対する脅威。
常に柔道戦略に門を開く。
    第5:多機能の追求:
製品やサービスの最適化ではなく最大化を求めるもの。
典型がゼロックス
みなを満足させるということは誰も満足させられないということ。
価格は高くなり、使い方や補修も難しくなる。
新規参入者:
1つの市場、例えば病院用機器を開発。
病院が必要としない機能、病院が毎日必要としない昨日は何1つつけていない。
病院が必要とする機能はすべて備えている。しかも、多目的な機器より機能がすぐれている。

研究所用、政府機関用、産業用の機器を開発し、ユーザー別機器(=最大化ではなく最適化)を図ることによって全ての市場をもっていく。
日本のコピー機メーカー
ソニーのポータブルラジオ
    柔道戦略を使う者:
トップ企業が本気で守ろうとしない海岸の一部を確保し、市場と売り上げを手に入れると次の一部を確保。
やがて島全体を確保。
それぞれの市場向けに最適の製品やサービスを設計する。
すでにトップの地位にある企業が戦いに勝つことはほとんどない。
    柔道戦略が特に成功する3つの状況:
第1:すでに地位を確立しているトップ企業が予期せぬ成功や失敗を取り上げず、見過ごしたり、無視したりする。
ソニーが利用した状況。
第2:ゼロックスがもたらした状況:
新しい技術が出現し急成長
新しい技術を市場に導入した者は古典的な独占体として行動。

地位を利用し、市場のいいとこ取りをし、創業者利益を手にする。
博愛的独占体(=正しい戦略):
競争相手が価格を下げる前に自らの製品の価格を下げる。
競争相手ではなく、自らの手によって新製品を導入し自らの製品を陳腐化する。
トップ企業がその地位を利用して大きな利益をあげようとする⇒自ら進んで柔道戦略を使う者に倒されようとする。
急成長を遂げつつある新しい市場で、トップ企業が製品やサービスの最適化ではなく最大化を目指す⇒柔道戦略の犠牲になりやすくなる。
第3:市場や産業が急速に構造変化するとき。
ファミリエンバンクが登場したときの状況。

ドイツが1950年代から60年代へと経済発展するにつれ、一般の消費者たちはそれまでの預貯金やローンを超えた新しい金融サービスの顧客となった。
but
ドイツの銀行は、昔ながらの市場に固執したまま。
    柔道戦略は、常に市場志向であり市場追随であるが、スタートは技術からであってよい。
盛田昭夫:
真空管の重さと壊れやすさのために当時の技術がニーズに応えきれていない市場、つまりポータブルラジオの市場に目を付けた。
あまり金はないが音質にうるさくない若者の市場、しかもそれまでの技術では対応できない市場。
アメリカの長距離通話割引業者:
AT&Tから直接割引を受けるほどの通話料はないが毎月かなりの長距離通話料を払っている企業を顧客とした。
それら中規模ユーザーの市場で相当のシェアを得たあと、大口ユーザーと小口ユーザーを顧客にしていった。
    柔道戦略を使うには、
業界、取引先、商慣習、特に間違った商慣習、経営政策の分析からスタートする。
その後、市場を調べ、この戦略に対する抵抗が最も小さく最も成功しそうな分野を探す。

もちろん、柔道戦略にもイノベーションが必要。
同じ製品やサービスを安価で提供するだけでは十分ではなく、既存のものとの差別化が必要。
ROLM:
AT&Tと競争して企業用電話交換機を開発したとき、いくつか小さな機能を加えた。
それは発明でもハイテクでもなかったが、AT&Tと違い、マーケティングに力を入れた。
シティバンク:
ファミリエンバンクを設立したとき、トラベラーズチェックや税務相談などドイツの銀行とは違う新しいサービスを加えた。
    総力戦略や創造的模倣戦略と同じように、柔道戦略もトップの地位を目指し、やがては支配権を狙う。
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トップ企業と正面切って争うことはしない。
少なくともトップ企業が挑戦を気にしたり、脅威とみなしたりする分野では競争しない。
柔道戦略はゲリラ戦略の1つ。
     
☆第18章 ニッチ戦略  
    総力戦略、創造的模倣戦略、柔道戦略:
市場や業界の支配はねらわなくとも、トップの地位は目指す。

隙間(ニッチ)の占拠を目指すニッチ戦略:
目標を限定する。
限定された領域で実質的な独占を目指す。
先の3つの戦略⇒競争を覚悟
ニッチ戦略⇒競争に免疫になることを目指し、挑戦を受けることさえないようにする。
先の3つの戦略で成功⇒大企業となり、目立つ存在に。
ニッチ戦略に成功⇒名をあげることはなく実をとるだけ。
この戦略のポイントは、製品としては決定的に重要でありながら、ほとんど目立たず誰も競争しにこない点。
    ニッチ戦略は3つあり、それぞれに特有の条件、限界、リスクがある。
関所戦略、専門技術戦略、専門市場戦略。
  ◆関所戦略 
  ◆専門技術戦略 
  ◆専門市場戦略 
☆第19章 顧客創造戦略  
  ◆効用戦略 
  ◆価格戦略 
◆    ◆事情戦略 
◆    ◆価値戦略 
☆終章 企業家社会   
◆    ◆われわれが必要とする社会 
◆    ◆機能しないもの 
  ◆企業家社会における個人