シンプラル法律事務所
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民事過失の帰責構造(潮見)

  ★第1章 人身侵害裁判例に見る「加害者の過失」 (p1)
  ◆第1節 過失責任論の現況と問題性(p3)
◆    ◆第2節 交通事故裁判例にける「加害者の過失」(p6) 
■    ■T 分析の視角 
  ■U 最新の裁判例に現れた過失の判断枠組み(p10) 
  □1 全体的傾向 
    裁判例での過失の典型的な判断枠組みと記述
  行為者がとるべきであった措置を抽象的に掲げ、それと当該行為者の具体的行為とを対照させて過失を肯定。 
右折車運転者の過失:
「交差点において右折する場合、右折地点において一時停止して直進車の動静に注意し、その運行を妨害してはならないものかかわらず、一時停止を怠り、かつ、自車右側方の確認を怠り、漫然進行した過失により本件事故を発生させた」
交差点での衝突事故:
「被告は、交通整理の行われていない左方の見通しのきかない本件交差点に進入するに際し、徐行又は一旦停止して左方の安全を確認すべき注意義務を怠り、時速20キロメートルで左方の安全を確認しないで進行した過失がある」
追越しの際の衝突事故:
「前方に先行車があり見とおしがきかない状態であったのであるから、対向車両がないことを十分確認するまで追越しを控えて対抗車両との衝突を未然に防止すべき注意義務があるのにこれを怠り、・・・右前方の安全を確認しないまま前記速度(制限速度を30キロオーバー)で追越した過失により、対向して原動機付自転車で進行してきた原告に加害車前部を衝突させた」
横断歩道外の轢過事故:
「Yは、加害車を発進させるに際し、Aの動静を注視し、同人が横断を開始するか否かを確認し、あるいは同人を先に横断させてから発進すべき注意義務があるのにこれを怠り、同人が進路を譲ってくれるものと軽信して漫然と発進した過失により本件事故を惹起した」
  道路交通法規違反の運転行為があれば、直ちに運転者の過失が帰結される傾向が顕著。
合理人の標準的行動パターンにつちえも具体的記述を欠くものが稀ではないし、当該状況下における具体的危険に立ち入ることなしに、過失を導いたかのものもある。 
直新車の運転者の過失:
「交差点に侵入する際、前方左右を確認し、特に対向の右折車の有無に注意し、右折車があれば、徐行、停止、警笛をならすなどの注意をすべきところ、それら注意を怠り、漫然とかなりの速度で本件交差点に進入した過失により、本件事故を発生させた。」
横断歩道上の轢過事故:
「Yは、自動車を運転して横断歩道を通過するに際しては横断歩行者の有無及びその動静に注意して横断歩行者との衝突事故を防止すべき注意義務があるのに、これを怠り、本件横断歩道上の横断歩行者の有無及びその動静に注意しないで漫然と加害車を運転して本件横断歩道を通過した過失により、本件事故を惹起させた」
  「前方不注視の過失により本件事故を発生させた」
〜抽象的措置すら挙げずに過失を肯定
「前方不注意及び車間距離不保持の過失により原告所有の普通乗用自動車に追突し、本件自動車が破損した」
「Yは前方確認、一時停止義務を怠った過失により本件事故を発生させた」
〜概括的に過失の連結点を叙述するもの。
   
 
  □2 「加害者の過失」を否定した裁判例
  □3 「加害者の過失」を肯定した裁判例
  ■V 交通事故裁判例における「加害者の過失」論の傾向(p23)
  □1 道路交通法規違反と行為者の過失
    交通事故における過失肯定例:
追突、正面衝突、右折中の事故、横断中の歩行者の轢過など、
過失=外的不注意=道路交通法規の定める注意義務への違反と見る傾向が強い。
前後方・左右の注視・確認義務違反があったか否かを、もっぱら道路交通法規の定める具体的準則を基準として、ブレーキ操作の不適切、徐行措置をとらなかったこと、一旦停止しなかったこと、減速しなかったこと、制限速度を超えて走行したこと等の外部的行為態様につき評価し、そこから注意義務違反すなわち過失を帰結。
過失肯定例の中には、外部的行為の不適切さに言及せず、もっぱら前方等の不注視のみをもって過失を論じているものすらある。

道路交通法違反行為の抽象的危険性から直ちに過失を帰結するという価値判断を先行させ、外部的行為態様自体についての記述は過失アリとの結論を正当化するためのレトリックに過ぎないのではないか?
(過失評価の対象となる危険については、基本的に抽象的危険で足りるとされているが、抽象的危険についての注意義務違反を観念し得ないとき、あるいは一般的安全運転義務違反の有無が問題となるとき、二次的に(しかも、予見可能性とセットで)具体的危険性が考慮されている。)
  □2 予見可能性の位置づけ 
  ■W 不法行為責任体系下での意義(p25)
  □1 緒論 
  □2 基本型 
  □3 例外型 
  ★第2章 ドイツにおける過失責任原則の変遷 
     
  ★第3章 民事過失の帰責構造