シンプラル法律事務所
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日米親権法の比較研究(山口亮子)

★★第T部 アメリカ法
★第1章 アメリカにおける親の権利  
☆第1節 親の権利議論 
  ◆2 制定後の法改正の経緯と概要
     
     
☆第2節 家族のプライバシー権  
     
     
☆第3節 家族のプライバシー権の限界  
     
☆第4節 子どもの権利  
     
★第2章 離婚後の単独監護者決定基準の変遷  
☆第1節 「子どもの最善の利益」概念の誕生  
  ◆1 母親優先の原則 
    17世紀の植民地時代のアメリカ:
家庭内のあらゆる権限は父親に属し、女性は無権限。
    子どもが乳幼児から10歳前後のテンダー・イヤーズ(tender years)と呼ばれる間は、母親に幼児の養育と世話をするという性質が発達してくる⇒母親が監護者となることが子どもの利益にかなう。
⇒母親に監護権を付与し始めた。
  ◆2 母親優先原則の否定 
    @女性が社会的平等と子どもに対する責任を公平に分担する流れ⇒
監護に関するテンダー・イヤーズ・ドクトリンの観念は、母親を家事や子どもの養育を行う者として固定化し、父親は外に出て性亜kつの糧を得る者というステレオタイプの役割を形成し、女性を依然として伝統的な女性の役割に縛りつけ家に閉じ込めてしまう。
A父親が離婚後に監護者となるという勝ち目のない争いに対して不満。
    1973年ニュー・ヨーク州最高裁判所において、テンダー・イヤーズ・ドクトリンを州憲法の平等保護条項に反する。(p40)
1981年アラバマ州最高裁判所:テンダー・イヤーズ・ドクトリンが子どもの利益にかなうと推定することは、コモン・ロー時代の父親の子どもに対する絶対権と何ら違いはない。(p40)
     
☆第2節 「子どもの最善の利益」基準  
    両親の様々な要素を比較衡量し、子どもに好ましい状態を提供できる親を単独監護者として決定しようとする、いわゆる「子どもの最善の利益基準」
    1973年「婚姻および離婚統一法」
子どもの最善の利益を考慮するために掲げる要素
@子どもの監護に関する一方または双方の親の希望
A監護者についての子どもの希望
B子どもと一方または双方の親、兄弟姉妹、および子どもの最善の利益に重要な影響を及ぼすそれ以外の者と子どもとの相互関係
C子どもの家庭、学校および地域に対する適応性
D関係当事者全員の精神的および身体的健康
     
  ◆1 考慮対象から外れる要素 
  ◇(1) 母性優先 
     
  ◇(2) 有責性 
     
  ◆2 考慮対象となる否定的要素 
  ◇(1) 虐待・ネグレクト・DV 
    全国少年・家庭裁判所裁判官協議会:1994年にDVに関する模範法(Model Code)を作成。
子どもの監護権の判断に当たり、裁判所がDVを認定⇒加害親に単独監護権、共同法定監護権、および共同身上監護権を付与することは子どもの最善の利益でないと推定する規定。
    but
1980年第に急速に広がった共同監護法
性的虐待はその証明が困難
     
  ◇(2) 性関係・・・同性愛、同棲 
     
  ◆3 考慮対象となる肯定的要素 
  ◇(1) 子どもの選好 
     
  ◇(2) フレンドリー・ペアレント・ルール 
    1970年代後半より全米に広がった共同監護の影響
⇒単独親権者を決定する要素においても、各州法に「どちらの親が子どもを非監護者に頻繁かつ継続して会わせようとするかを考慮すべき」とする規定が入る。
    離婚時に暫定的単独監護権が付与されていた母親が無断で転居し、その住所を父親に知らせなかった⇒父親の訪問権を妨げた。
事実審裁判所は:母親の単独監護権を否定し、共同法的監護権を父母に付与して身上監護権を父親に変更。
控訴裁判所:親子の交流の重要性⇒「監護者が訪問権を妨げることは、非監護者への監護権を移す正当な根拠となる」⇒親子の交流に好意的でない母親よりも、友好的な関係を築こうとする父親を監護者として認める判断。(p51)
     
  ◆4 小括
     
☆第3節 「子どもの最善の利益」に対する批判  
  ◆1 「子どもの最善の利益」基準に対する批判 
     
  ◆2 「子どもの最善の利益」概念に対する批判 
     
     
☆第4節 主たる養育者優先の推定則  
  ◆1 判例に現れた主たる養育者優先の推定則 
    婚姻中子どもの養育を主に行っていた親が離婚後も子どもの監護者となることが子どもの利益であると推定するもの。(p55)
     
  ◆2 主たる養育者優先の推定則の根拠 
     
     
  ◆3 主たる養育者優先の推定則の適用 
     
     
     
     
☆第5節 高葛藤事例・・・ドメスティック・バイオレンスと片親疎外  
     
☆第6節 子どもの代理人制度・・・監護事件と子どもの保護手続の場合  
     
☆第7節 まとめ  
     
★第3章 離婚後の共同監護法  
☆第1節 共同監護法の成立  
  ◆1 共同監護法成立の背景 
  ◇(1) 社会的側面
  ◇(2) 親の権利の側面 
    婚姻関係に
     
☆第2節 共同監護の定義および内容  
     
☆第3節 共同監護の付与基準  
     
☆第4節 共同監護の付与と親の合意との関係  
     
☆第5節 高葛藤事例・・・ドメスティック・バイオレンスと片親疎外(p64)
     
  ◆1 DV 
     
  ◆2 PA 
  ◇(1) PASに対する批判 
     
  ◇(2) PAの特徴 
   
    PAは
@同居親による別居親に対する一連の誹謗中傷や拒絶、
A不合理な理由による別居親への拒絶
B同居親の言動に影響された結果としての子どもの別居親の拒絶
の3点すべてがみられた場合に認定される。
     
    別居・離婚後に分かれて暮らす親に嫌悪感を示す子どものうち、
親の離婚そのものや親の再婚に怒って親を拒絶したりする子どもと、
非現実的な理由で親を拒絶する子どもがいる。
KellyとJohnston:
親を遠ざける子どもの兆候には、
「両親と肯定的な関係」、「一方の親と親密な関係」、「一方の親と連盟する子」、「一方の親から疎遠にされた子」、「一方の親から疎外された子」
「疎外された子」は病的反応を示し、彼らが拒絶している親に対してする行動の強さ、広さ、および凶悪さにおいて、連盟や疎遠をはるかに超えている。
    「疎外された子」は、同居親が子どもに対し別居親の悪口、罵詈雑言を浴びせ、その結果、子どもを恐怖心や嫌悪感で満たす洗脳によりなされる。
・・・・

それまで別居親と仲の良かった子どもが突然、別居親といて楽しくなかったと言い出す。
電話で別居親と話すことを嫌がり、もう二度と話したくないと言い、会うことを徹底的に拒絶する。
・・・
そのように親を拒否していることについて、洗脳されているからではなく完全に自分の判断であると主張するのが特徴的。
   
  ◆3 DVとPAへの対応 
   
    PAの専門家は、子どものが別居親と会うことを強制されていると不満を繰り返しても、別居親はあきらめず、訪問を継続させることが片親疎外を取り消すために極めて重要である。
調査によると、子どもと拒絶された親について裁判所が訪問を増やしたところ、約400事例のうち約9割においてその親子の関係が好転し、さらに子どもの心理社会的な問題、学業成績の問題、身体症状の問題が軽減ないし消失したと報告。
     
☆第6節 子どもの代理人制度・・・監護事件と子どもの保護手続の場合  
     
☆第7節 まとめ  
     
★第3章 離婚後の共同監護法  
☆第1節 共同監護法の成立  
  ◆1 共同監護法成立の背景
  ◇(1) 社会的側面 
  ◇(2) 親の権利の側面 
  ◇(3) 子どもの利益の側面 
  ◆2 共同監護の基本政策 
     
     
☆第2節 共同監護の定義および内容 (p99)
  ◆1 共同身上監護と共同法定監護 
     
    カリフォルニア州の共同監護法:
共同身上監護:
親がそれぞれ相当の期間、身上監護をもつことをいう。共同身上監護は、子どもが両親と頻繁かつ継続して交流することを確保する方法で両親に共有されるものである。

両親が子どもの住居および生活をともにし、子どもの日常の世話をすること。
共同法的監護:
双方の親が子どもの健康、教育、および福祉に関する決定を行う権利と責任を共有することをいう。

親は子どもと生活をともにしなくても、子どもに関する主要な決定事項、たとえば子どもの医療や歯科治療、進学、学校教育、またはサマーキャンプやクラブ活動などへ参加等に関する決定権を共同でもつこと。
     
     
     
  ◆2 監護権から親の責任の分担へ 
     
     
     
☆第3節 共同監護の付与基準  
  ◆1 優先的(preference)規定 
     
  ◆2 推定則(presumption)規定 
    「共同監護は、子どもの最善の利益にかなうと推定する」という規定
     
  ◆3 強行的(mandatory)規定 
     
  ◆4 選択肢(option)規定 
     
  ◆5 小括 
     
☆第4節 共同監護の付与と親の合意との関係  
  ◆1 立法にみる親の合意 
     
     
  ◆2 判例にみる親の合意 
     
  ◆3 小括 
     
☆第5節 両親の協力体制の確立
  ◆1 メディエーション 
     
  ◆2 養育計画書 
     
    養育計画書の内容:
@将来における紛争のか家kつに関する取決め
A決定権限の配分、
B子どもの住居の取決め
@について:
約58%がメディエーションでの紛争解決で、裁判所、カウンセリング、仲裁によるのはいずれも10%台。
Aについて:
学校、教育、健康管理(緊急時は除く)、宗教教育によるしつけ、その他の重要決定を共同で行うか、単独で行うか、およびその理由を記載。
子どもの日常の世話および監督は⇒子どもとともに住んでいる親が決定。
緊急時の子どもの健康や安全⇒親は単独で決定。
69%が共同決定を定めている。
母親単独の決定権:27%
父親単独の決定権:4%
Bについて:身上監護のこと。

別居親の訪問権を含めた子どもの身上監護の取決めをすることになる。
ケースの20%が共同身上監護で、
子どもが一方の住居に住んでいる割合は、母親方が70%、父親方が10%
その他、子どもの扶養も取り決める。
    養育計画書には州規定に基づいて、子どもを伴った移動についての注意事項の記載があり、同居親が子どもの学校が変わる転居を望んでいる場合は裁判所の書式に従って、原則として最低60日前に他方親に通知しなければならず、相手方はそれに異議を唱えることができ、養育計画書の変更を申し出ることができる。
通知なく転居⇒裁判所侮辱に問われる。
     
  ◆3 親教育
     
☆第6節 共同監護の現在・・・立法から40年を経て  
     
     
     
     
  ◆2 共同監護の実態 
    1989年のカリフォルニア州の調査
監護決定の分布:
共同法的監護を行っている割合は75.6%
共同法的監護および共同身上監護:20.2%
母親が身上監護をもち双方が共同法的監護:48.6%
父親が身上監護をもち双方が共同法的監護:6.8%
母親が単独監護者:18.6%
父親が単独監護者:1.8%
その他:4%
     
     
     
  ◆3 共同監護法の効果(p127) 
    インディアナ州の下級裁判所裁判官について、1998年と2011年の比較:
4歳以下の子どもに、法的、身分含め何らかの共同監護が最もふさわしいと考えた裁判官
1998年:4%⇒2011年:80%
母の単独親権が最もふさわしいと答えた裁判官
48%⇒8%
5〜12際までの子どもに対し共同監護がふさわしい
4%⇒81%
4歳以下の子どもに対して共同監護がふさわしい
0%⇒87.5%
5〜12歳の子どもに対して共同監護がふさわしい
0%⇒100%
13〜18歳n子ども
0%⇒100%
共同法的監護について:
4分の1の裁判官は、紛争のある状態では上手く機能しない(1998年)⇒87%が両親が同意しなくとも、共同法的監護を付与したい(2011年)
共同身上監護:
1998年には全ての裁判官が反対⇒2011年には、子どもが双方の親と等しく過ごせるよう、より積極的に支持する傾向に
     
    子どもに対する共同監護の効果:
1984年から1989年にかけてカリフォルニア州の365家庭のなかの522名の10代の子をインタビューして、その心身の健康状態を調査。
両親が共同身上監護を行っているか、または共同法的監護において別居親が頻繁に訪問して子どもに関わっている場合は、離婚後に単独監護にある子どもたちより全体において満足度の高い生活を送っている。
87%の子どもたちは、別居親と会うことを求めており、
別居親が継続的に子どもに関わることで子どもの精神状態は安定し、また、子どもの経済状態にも良い影響をもたらしているとされる。
     
     
     
     
☆第7節 まとめ  
     
     
★第4章 離婚後の親子交流  
☆第1節 訪問権の権利性  
     
☆第2節 訪問の取決めと判断基準  
     
☆第3節 無断転居の制限  
  ◆1 別居・離婚時における無断転居の制限 (p141)
    別居および離婚時に両親は、子どもの監護に関する養育計画書を作成して裁判所に提出し、承認される必要がある。
裁判所が定めるその項目の中には、転居に関する事項があり、一般に監護親は非監護親の同意または裁判所の命令がない限り、無断で子どもを連れて旅行および転居をしてはならない。
←子どもの連れ去りによる監護権紛争の防止。
     
  ◆2 判例に現れる証明責任 
    監護親が子どもを連れて転居を希望することに対し、非監護親が反対して同意できない場合

監護親が裁判所に転居命令を求めるか、
非監護親が転居差止命令または監護権変更の申立て。

転居が子どもの利益にかなうか否かの証明責任を、転居を希望する監護親か、あるいは残される非監護親のどちらに課すかの基準と証明すべき要件。
     
     
     
     
     
☆第4節 訪問兼執行・・・監護親による訪問親の妨害に対する法的対応  
     
☆第5節 第三者の訪問権  
     
☆第6節 まとめ  
     
★第5章 子どもの奪取と引渡し  
☆第1節 家族による子どもの奪取の現状  
     
☆第2節 ヘイビアス・コーパスの変遷  
     
☆第3節 ヘイビアス・コーパスの手続  
     
☆第4節 子の監護事件の裁判管轄および執行に関する統一法(UCCJEA)  
     
☆第5節 裁判所侮辱による強制  
     
☆第6節 直接強制の方法  
     
☆第7節 ハーグ子奪取条約におけるアメリカ法の対応  
     
☆第8節 まとめ  
     
★第6章 養育費制度  
☆第1節 アメリカの児童扶養  
     
☆第2節 養育費履行強制制度  
     
☆第3節 養育費履行強制制度の成果  
     
☆第4節 まとめ  
     
     
     

★★第U部 日本法
★第1章 子の監護紛争の手続と判断基準  
☆第1節 序
  ◆2 制定後の法改正の経緯と概要
     
☆第2節 子の引渡請求手続  
     
☆第3節 家事事件手続における子の親権者・監護者指定の判断基準  
     
☆第4節 試験者・監護者指定における比較衡量要素  
     
☆第5節 高葛藤夫婦の親権者・監護者指定判断  
     
☆第6節 子の引渡しの実現手段  
     
☆第7節 まとめ  
     
★第2章 日本における親権議論  
☆第1節 日本における親権議論  
     
☆第2節 国家と家族との関係  
     
★第3章 親権と親固有の権利義務  
☆第1節 序  
     
☆第2節 未成年者の婚姻同意見  
     
☆第3節 普通養子縁組の代諾権と同意権  
     
☆第4節 特別養子縁組の父母の同意権  
     
☆第5節 面会交流権  
     
☆第6節 扶養義務  
     
☆第7節 親権制限  
     
☆第8節 離婚後の共同親権の可能性