シンプラル法律事務所
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論点の整理です(随時増やしていく予定です。)
労災保険給付 | ||||
療養 (補償)給付 |
療養の給付 | 要件 | 業務災害又は通勤災害による傷病について、労災病院又は労災指定医療機関等で療養する場合。 | |
給付内容 | 療養の現物給付、すなわち労災病院又は労災指定医療機関等で被災労働者に無料で療養の給付を行うこと。この場合被災労働者は無料で療養を受けられ、療養に要した費用は直接医療機関等に支給される。 | |||
時効 | なし | |||
療養の費用の支給 | 要件 | 業務災害又は通勤災害による傷病について、労災病院又は労災指定医療機関以外の医療機関等で療養する場合。 | ||
給付内容 | 療養の費用の現金給付、すなわち労災病院又は労災指定医療機関以外の医療機関等で療養した場合、療養に要した費用全額を被災労働者が支払い、その相当額を被災労働者に現金で支給。 | |||
時効 | 治癒した日の翌日から5年 | |||
休業(補償)給付 | 要件 | 業務災害又は通勤災害による傷病に係る療養のため労働することができず、賃金を受けられない日が4日以上に及ぶ場合に支給。 | ||
給付内容 | 休業4日目から給付基礎日額の6割の給付。 その他、2割の特別支給も。 |
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休業補償給付又は休業給付: |
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待機期間: 休業のはじめの3日間は待期期間といい、業務災害による休業の場合は、事業主がこの間労働基準法の定めるところにより、平均賃金の60%の休業補償を行う。 通勤災害による休業の場合は事業主の補償義務はない。 |
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休業特別支給金: 1日につき給付基礎日額(被災労働者が所定労働時間の一部について労働した場合は、給付基礎日額からその労働に対して支払われる賃金の額を控除した額)の100分の20に相当する額です。 |
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給付基礎日額 | 直前3か月の賃金総額をその期間の日数(休日含む)で割った金額。 | |||
時効 | 賃金をもらえなかった日ごとにその翌日から2年。 | |||
障害(補償)給付 | 障害(補償)年金 |
障害補償年金又は障害年金は、障害等級表の第1級から第7級に該当する障害に対し、別表1の給付基礎日額に相当する額が支給される。 |
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障害(補償)一時金 | 障害等級表第8級から第14級に該当する障害に対し、別表2の給付基礎日額に相当する額が一時金として支給される。 | |||
障害特別支給金 |
障害補償給付又は障害給付の受給者に対し、次表に掲げる障害特別支給金が一時金として支給される。 |
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障害(補償)年金前払一時金 |
業務災害又は通勤災害による傷病が治癒した直後においては、被災労働者が社会復帰等を行うに当たって一時的に資金を必要とすることが多いため、障害(補償)年金を受給することとなった方は、1回に限り、年金の前払いを受けることが出来ます。 |
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障害(補償)年金差額一時金 |
障害(補償)年金を受けている方が死亡した場合に、すでに支給された障害(補償)年金及び障害(補償)年金前払一時金の額の合計額が障害等級に応じて定められている額(別表6の左欄の額)に満たないときは、その差額に相当する額の障害(補償)年金差額一時金がその遺族に対し支給される。 |
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時効 | 治癒した日の翌日から5年 | |||
遺族(補償)給付 |
遺族(補償)給付は、労働者が業務災害又は通勤災害により死亡した場合、その遺族に対し支給される。 |
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遺族(補償)年金 | 遺族補償年金又は遺族年金は、遺族の数に応じ、毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の6回に分けて支払われる。 | |||
遺族(補償)一時金 | 労働者が業務上の事由又は通勤災害により死亡した場合で、労働者の死亡の当時、遺族(補償)年金の受給資格者がないときには給付基礎日額の1,000日分が支給される。 遺族(補償)年金の受給権者が最後順位者まですべて失権した場合に、受給権者であった遺族の全員に対して支払われた年金の額及び遺族(補償)年金前払一時金の額の合計額が給付基礎日額の 1,000日分に達していないときには、その給付基礎日額の1,000日分とその合計額との差額が支給される。 |
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遺族特別支給金 |
労働者の死亡当時の最先順位の遺族(補償)年金の受給資格者又は労働者の死亡当時に遺族(補償)年金の受給資格者がないときに支給される遺族(補償)一時金の受給権者に支給され、その額は、300万円(遺族特別支給金の支給を受けることができる遺族が2人以上ある場合には、300万円をその人数で除して得た額)。 |
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遺族特別年金 | ボーナスなどの特別給与を算定の基礎とする遺族特別年金は、遺族(補償)年金の受給権者に対して支給される。 | |||
遺族特別一時金 |
ボーナスなどの特別給与を算定の基礎とする遺族特別一時金は、遺族補償一時金又は遺族一時金の受給権者に対して支給される。 |
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遺族補償年金前払一時金 |
労働者が死亡した直後は、いろいろと一時的な出費が必要となることが多い⇒障害(補償)年金の場合と同様、受給権者が希望すれば、遺族(補償)年金をまとめて前払いする前払一時金の制度が設けられている。 |
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時効 | 死亡日の翌日から5年 | |||
葬祭料 (葬祭給付) |
内容 |
葬祭料又は葬祭給付は、労働者が業務上又は通勤の事由により死亡した場合に支給される。 |
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葬祭料又は葬祭給付を受けることができる者は、葬祭を行う者。 「葬祭を行う者」とは、必ずしも現実に葬祭を行った者であることを必要とせず、葬祭を行ったと認められればよいと解されている。 |
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葬祭料又は葬祭給付の額は、315,000円(注)に給付基礎日額の30日分を加えた額。 その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合には、給付基礎日額の60日分。 |
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時効 | 死亡の翌日から2年 | |||
傷病(補償)年金 | 傷病(補償)年金 | 労働者の業務上又は通勤による負傷又は疾病の療養開始後1年6か月を経過した日、又はその日以後において、当該負傷又は疾病が治らず、それによる障害の程度が労災保険法施行規則別表第2の傷病等等級表定める傷病等級に該当し、その状態が継続している場合に、その障害の程度に応じて支給。 | ||
傷病(補償)年金が支給されることとなった場合には、当該被災労働者に対して、従来行われていた療養(補償)給付は継続して行われるが、休業(補償)給付は支給されなくなる。 |
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傷病特別支給金 | ボーナスなどの特別給与を算定の基礎とする傷病特別年金は、傷病(補償)年金の受給権者に対して支給される。 | |||
介護(補償)給付 |
介護(補償)給付は、業務災害又は通勤災害により被災し、障害の状態が重度のため、常時介護又は随時介護を受けている方に対して、その介護費用の実費補填として支給される。 |
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二次健康診断等給付 |
労働安全衛生法に基づく健康診断のうち、直近のもの(一次健康診断)において、脳血管疾患及び心臓疾患に関連する一定の項目について異常の所見があると診断された場合に、労働者の請求により、二次健康診断及び特定保健指導が給付される。 |
労災ポイント | ||
仕組み | 強制加入 | 1人でも労働者を雇用していたら強制適用。 (農林水産業の一部個人事業者等は任意加入) |
保険料は全額が事業主(会社)負担。 | ||
会社が労災の届出も保険料の納付もしていなくても、労働者が申請すれば補償は受けられる。 | ||
対象 | 派遣、アルバイト、外国人労働者も対象。 | |
退職や会社の倒産後も補償は続く。 | ||
自営業者は対象外。(一定の要件を満たせば、都道府県の労働局長に申請して「特別加入」もできる。) | ||
会社役員も労働者に入らない。 (労働者と同じような働き方の実態があれば、対象になることもある。) |
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給付 | ⇒労災の主な給付と時効へ | |
健康保険などより手厚い。 健康保険:医療費は3割負担が基本。 労災:原則無料で治療が受けられる。 |
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働けなくなった場合、給付基礎日額の60%に特別支給金20%の計80%が支給される。 これらは非課税⇒元の給料に近い額がもらえる。 (健康保険の傷病手当金は、収入の3分の2で期間は1年半まで) |
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遺族給付も手厚い ⇒遺族年金と合わせて妻や子供の生活が十分に補償されるケースも多い。 |
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申請 | 労働者や遺族が規定の書類を添えて職場を管轄する労基署に請求書を提出。 | |
請求書には、申請内容を事業主が証明する項目も含まれるが、事業主が記載を拒否しても申請はできる。 | ||
認定 | 医師との信頼関係が大切。 | |
因果関係について医師の診断書などが重要になる。 (ex.交通事故後の手足のしびれ等) |
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業務災害 | @業務遂行性(仕事中) A業務起因性(仕事との因果関係) が必要。 |
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×休憩時間中の私的な行為 ○業務時間中にトイレで怪我 ×任意参加の社員旅行での事故 |
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怪我だけでなく、病気も対象になる。 腰痛も状況次第で認定される。 |
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労基法の施行規則に具体的な病名などが列挙される。 それ以外でも「業務に起因することが明らか」と認められれば対象になり得る。 |
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「脳・心臓疾患」は、「発症前のおおむね6か月の過重負荷」などの認定基準が決まっていて、この基準に基づき判断される。 | ||
通勤災害 | @住居と仕事場との往復 A仕事場から他の仕事場への移動 B単身赴任先と帰省先との間の移動 |
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○昼休みにいったん家に帰る途中 ×友人宅に遊びにいってそこから出勤した場合 ×通勤経路から大きく外れ(逸脱)たり、通勤の寄り道(中断) ×帰宅途中に映画をみTあ場合、映画館の中や映画館からの帰宅途中 |
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逸脱や中断が「日用生活上必要な行為で最小限度のもの」なら、その後の移動は再び通勤とみなされる。 | ||
「日用生活上必要な行為で最小限度のもの」 厚労省令で、 @日用品の購入 A選挙権の行使 B病院での治療 C要介護状態の配偶者や子などの介護 |
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通勤経路にある自動販売機でジュースを買う等、「ささいな行為」は逸脱や中断とはみなされず、その間も通勤とされる。 | ||
不服申立 | @労災が労基署で認められない(労災申請は年50〜60万件) ⇒ A都道府県の労働者災害補償保険審査官に対し、労災に関する決定を知った日の翌日から60日以内に申立てる。(2009年には1892件。審査官が容認するケースは1割以上。) ⇒ B厚労省内の審査会に申立。 |
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交通事故で労災 | 先に対人賠償保険などによる賠償を受けた場合、二重保障にならないよう労災との支給調整がなされる。 | |
調整の対象になるのは本体部分のみで、上積み部分に相当する遺族特別支給金300万円などは申請すれば受け取れる。 |
詳細 | ||
規定 | 労基法75条〜88条 | |
基本的性格と特徴 | 労働者保護を図るために労災補償制度が立法化された。 | |
@使用者の無過失責任。 ← 労働災害は企業の営利活動に伴う現象である以上、企業活動によって利益を得ている使用者に当然に損害の補償を行わせ、労働者を保護すべきであるとの考え。 |
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A(一定の)逸失利益、休業補償、医療費等の損害のみが対象となり、衣類等の物的損害や慰謝料は対象とならない。 | ||
B賠償額の定額化 「雇用の過程で雇用に起因して生じた事故による負傷・死亡」や一定の職業病(一定の業務に従事する者の一定の疾病)について、使用者は労働者に当然に一定額の補償をなすべきこととされた。 |
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労災補償制度は、労災保険制度によってより十全なものとなる。 国家(政府)が保険制度を管掌(運営)し、使用者は義務としてこれに加入して保険料を納め、労働災害にあった労働者がこの保険によって災害についての補償を受ける。 |
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労災補償制度の発展 | 労基法上の労災補償制度 | 労基法は「第8章 災害補償」において、労働者が業務上負傷し、疾病にかかり、また死亡した場合は、使用者は次の保証を行うことを規定。 |
@療養補償: 負傷又は疾病について療養を行い、またはその費用を負担するもの(法75条)。 |
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A休業補償: 療養による休業中に平均賃金の100分の60を支給するもの(法76条)。 |
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B打切補償: 療養開始後3年を経過しても負傷または疾病がなおらない場合、平均賃金の1200日分を支払えば、その後は療養補償および休業補償を行わなくてよい(法81条)。 |
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C障害補償: 負傷または疾病がなおったとき、身体に残った障害に対し、障害の程度に応じて、平均賃金に別表第1の日数を乗じた金額を補償するもの。(法77条) |
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D遺族補償: 業務上の死亡につき、遺族に対し平均賃金の1000日分の補償をするもの。(法79条) |
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E分割補償: 使用者が支払能力のあることを証明し、補償を受けるべき者の同意を得た場合には、障害補償または遺族補償に替え、平均賃金に別表3に定める日数を乗じて得た金額を6年にわたり毎年補償することができる。(法82条) |
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F葬祭料: 業務上の死亡者の葬祭を行う者に対し、平均賃金の60日分を支給するもの。(法80条) |
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労基法と同時に制定公布された労働者災害補償保険法は、一定の規模・業種の事業を強制適用事業とし、これら事業における労基法上の労災補償責任を填補する労災保険制度を規定。 労基法はこれを受けて、同法に規定する災害補償事由について労災保険法に基づいて給付が行われるべきである場合においては、その価額の限度において使用者は補償の責を免れると規定。(労基法84条1項) |
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労災保険法の発展 | @強制適用事業の拡大: 昭和47年4月からは前事業が強制適用事業となる。 |
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A保険給付の内容が改善され、労基法の補償を大きく上回る。 昭和35年改正: 長期傷病者補償制度が創設され、傷害補償費の一部(障害等級1〜3級)が年金化。 昭和40年改正: 遺族年金制度が導入され、障害補償給付の年金化の範囲が拡大(等級7級まで)。 その後: 年金額の充実、スライド制の導入、保険財政への国庫負担(補助)の導入、労働関係にない者(中小事業主・一人親方)への労災保険の適用拡大、リハビリテーション等施設給付の拡大、介護補償給付の創設等 |
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B通勤途上災害に対し、業務災害並みの補償を行う制度が労災保険法に規定 | ||
⇒ 労基法は実際上限られた機能しかもたず、労災保険法が労基法にかわって労災補償の大部分の機能を担うにいたっている。 |
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C石綿健康被害救済法: 労災保険給付の対象とならない市民(石綿関連工場の付近住民等)を想定した救済制度の他、同法は、石綿を取り扱う業務に従事してい中皮腫や気管支または肺の悪性新生物に罹患し死亡したにもかかわらず、労働保険の時効期間(死亡後5年)が過ぎたため労働保険給付を受けられなくなった労働者の遺族に対して、労災保険法上の遺族補償給付(年金または一時金)に準じた特別遺族給付(年金または一時期)を支給。(法59条以下) |
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適用事業 | 政府が管掌し(労災2条)、労働者を使用する全事業が適用事業となる(労災3条)。 (国の直営事業、非現業の官公署、特定独立行政法人等例外あり。) 中小事業主、自動車運送の個人事業者、一人親方などは労働者ではないが、任意的な特別加入制度が認められる。 |
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労災保険関係の成立 | 強制適用事業については、事業を単位として、事業が開始された日に労災保険関係が自動的に成立する。(労保徴3条) | |
事業主が保険関係成立の届出や保険料納付を行っていた場合でも、補償の対象となる。(政府が事業主から保険料を遡及的に徴収する) 事業主が故意重過失により届出を怠った期間中、又は保険料を納付しなかった期間中に生じた事故や、事業主が故意重過失により生じさせた業務災害が原因である事故について保険給付が行われたときは、一定限度で保険給付に要した費用を当該事業主から徴収することができる。(労保徴31条1号) |
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出向の場合 | 在籍出向の場合、出向元では休職扱いとなり、出向先の指揮命令に基づき就労することから、労災保険関係も出向先事業との間で生じるのが通常。 | |
給付手続 |
被災労働者またはその遺族の請求による行われる(労災保12条の8第2項)。 |
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支給又は不支給の決定は労働基準監督署長により行われる(労災保則1条3項)。 支給決定がなされて、被災労働者またはその遺族は政府に対し具体的な保険給付の支払請求権を取得する。 |
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決定に不服のある者は、各都道府県労働局内の労働者災害補償保険審査官に対し審査請求をすることができる。 その決定に不服のある者は厚生労働省本省内の労働保険審査会に対し再審査請求をすることができる(労災保38条)。 |
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この審査会の裁決を経た後はじめて、労働基準監督署長の決定に対し行政訴訟が可能になる(労災保40条)。 ただし、再審査請求後3カ月を経ても裁決がないとき等の場合にはこの限りではない。 |
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労災保険の不支給決定に対する取消訴訟においては、同決定が取り消されて確定すると労災保険料率のメリット制によって保険料率が引き上げられるおそれのある一定規模の事業主は同訴訟に補助参加(民訴42条)できる。 | ||
給付制限 | 労働者が故意に負傷、疾病、障害もしくは死亡(負傷等)またはその直接の原因となった事故を生じさせたときは、政府は保険給付を行わない。(労災保12条の2の2第1項) | |
労働者が故意の犯罪行為もしくは重大な過失により、または正当な理由がなく療養に関する支持に従わないことにより、負傷等もしくはそれらの原因となった事故を生じさせ、または負傷等の程度を増進させ、もしくはその回復を妨げた時は、政府は保険給付の全部または一部を行わないことができる。(同条2項) | ||
労災保険給付と損害賠償との調整 | 調整 | 使用者は、労基法の定める労災補償を行った場合は、同一事由(当該労災)については、補償をした価額の限度で民法上の損害賠償の責任を免れる(労基84条2項) 使用者は、労災保険法により労災保険給付がなされるべき場合は労基法上の補償の責めを免れる(同条1項)、被災労働者またはその遺族に労災保険給付が行われた場合にも、支払われた価額の限度で同様に損害賠償の責を免れる(同条2項)。 ⇒ 労災補償や労災保険給付の価額の限度を超える損害については、使用者は民法上の損害賠償の責を免れず、被災労働者または遺族は使用者に対して民法上の損害賠償請求をなしうる。(労災補償制度(労災保険制度を含めての)と損害賠償制度の併存主義) |
労災補償制度は、労働災害によって労働者によって生じた全損害のうち一部を簡易迅速に補償する制度として出発⇒民法上の損害賠償の範囲を網羅していない。 (たとえば慰謝料。休業補償については平均賃金の80%をこえる得べかりし賃金。労災補償については、職業その他個人的事情を捨象した障害補償の定額化がなされているため、補償額が現実損害に適応しないケースが生じ得る。(ピアニストが右手人差指先端を切断した事故の場合)) |
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既に支払われた労災補償または労災保険の給付の額は、使用者または第三者がなす損害賠償から控除されるべき。 ← 労災補償と使用者損害賠償責任の関係については、労基法が明記しており(法84条2項)、この事理は労災保険が労災補償責任を填補する制度であるところから、労災保険と使用者の損害賠償責任との関係にも及ぶ。(同項類推適用) |
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規定 |
労基法 第84条(他の法律との関係)
この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。 A使用者は、この法律による補償を行つた場合においては、同一の事由については、その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れる。 |
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代位 | 労災保険と第三者の損害賠償責任との関係については、労災保険法が、政府は保険給付をした限度で保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する、とし、また第三者からの損害賠償が保険給付より先になされた場合にはその限度で保険給付をしないことができる、と規定。(労災保険法12条の4) | |
特別支給金 | 休業特別支給金、障害特別支給金等の特別支給金は、労働災害による損害の賠償に際し損害額から控除することは許されない。(判例) ← 社会復帰促進等事業の一環として被災労働者の療養生活の看護等によりその福祉を増進させるためのもので、損害の填補の性質を有するものではない。 |