シンプラル法律事務所
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競争戦略

Ⅰ-1 ある産業における競争状況を規定する5つの要因(マイケル・ポーター) 
Ⅰ 5つの要因      新規参入の脅威
売り手の交渉力
買い手の交渉力
代替製品/サービスの脅威
⑤ 既存の競争相手
これらの要因が当該産業の収益性を決定する。
要因が強い⇒低い収益可能性。
要因が弱い⇒高い収益可能性。
企業戦略の目的は、①これらの要因から最も防御でき、②有利に影響を与えることができるポジションを見つけること。
そのために、各要因を規定する要素の探求が大切。
1 新規参入の脅威 
  新規参入の脅威は、①参入障壁と②新規参入者が予想する既存の参加者の反応に基づく。
6つの主要参入障壁 ① 規模の経済(生産量の増大による単位あたりの生産コストの低減)
ex.生産、リサーチ、マーケティング、サービスにおけるスケールメリット。
⇒参入者に①大規模参入か②費用面での不利かの選択を強いる。
② 製品の差別化
ブランドの確立⇒参入者に顧客ロイヤルティの克服を強いる。
広告、顧客サービス、当該産業でのファーストランナー、製品差別化⇒ブランド強化。
③ 資金の必要性
競争のために多大な投資を要する場合。
④ 規模と関係のない費用面での不利
経験曲線、技術・ノウハウ、原材料へのアクセス、インフレ前の価格での購入、政府の補助、有利な立地等による優位。
経験曲線:経験により単位当たり費用が低減するという考え方。
・ 経験曲線は費用についての障壁⇒その障壁としての意味は、競争にとって費用がどれだけ重要であるかによる。
・ 全く新しい経験曲線を作り出すイノベーションによって無効となり得る。
(既存業者を飛び越え、新しい経験曲線に立つことができる。)
⑤ 流通ルートへのアクセス
卸売/小売が制限されており、既存の競争者がそれらと密接な関係を結んでいる場合。
⑥ 政府の政策
許認可や原材料へのアクセス規制。
環境汚染規制や安全規制等を通じて間接的に参入障壁に影響を与え得る。
●参入を躊躇する場合
・ 過去に新規参入者を撃退
・ 反撃のための十分な手段(現金、借入余力、生産能力、流通や顧客へ影響力)を持つ。
・ シェアの維持又は産業全体の過剰能力のため値下げが予想される場合。
・ 産業の成長力が弱く、新規参入により全ての参加者の財務状況が悪化。
●参入障壁の変化
① 状況の変化により参入障壁は変化する。(ex.特許の失効、オートメーションと統合による規模の経済の増大。)
② 産業の大きなセグメントにおける戦略的判断が参入障壁に大きな影響を与える。
2 強力な売り手と買い手
売り手や買い手は、値上げ/値下げ、商品/サービスの品質低下/向上により、当該産業の利益を奪う。
売り手が力をもつ場合
・ 少数の売り手が独占。
・ 製品の独自性/差別化。
・ 切替費用(switching cost)。
・ 代替製品と競合しない。
・ 買い手の事業の統合可能性。
・ 売り手にとって重要な買い手でない場合。
買い手が力をもつ場合
・ 集約/大量購入する場合。
・ 売り手の固定費が大きく稼働率を高めたい場合。
・ 製品が標準製品で差別化されていない場合。(⇒他の売り手への乗換えが容易)
・ 買い手の製品の部品であり、製品コストに占める割合が大きい場合。
・ 買い手の収益性が低い場合。
・ 当該製品が買い手の製品/サービスの品質にとって重要でない場合。(⇒買い手の製品/サービスの品質にとって重要。)
・ 当該製品が買い手に利益をもたらさない場合。(⇒買い手に利益をもたらす。)
・ 売り手の事業の統合可能性。
・ (買い手が)小売店の場合、消費者の購入判断に影響を与えることができる場合。
戦略的行動
・ 力の弱い売り手/買い手を見つける。
・ 同一産業内でも弱いセグメントが存在する。
(ex.買い替え市場は価格に敏感ではない。)
・ 低コストかユニークな製品の場合のみ、強力な買い手に対して平均以上の利益を獲得できる。
・ 売り手/買い手の力を創造する要因の変化に従い、当該グループの力は変動する。
3 代替製品
代替製品/サービスは、価格に上限を設けることで収益を制限する。

代替製品が戦略的に注目されるべき場合。
① コストパフォーマンスでのトレードオフを改善する場合。
② 高い収益力を有する産業によって生産される場合。
4 競争相手
競争の激しさに影響する要因
・ 規模と力が同じ競争者が多数存在。
・ 産業成長が鈍く、成長指向のメンバーがシェア争いを促進する場合。
・ 製品/サービスが差別化されず、切替費用もない場合。
・ 固定費が高く、製品が陳腐化しやすい場合。(⇒値下を誘引する。)
・ 生産能力の過剰。
・ 高い撤退障壁。
・ ライバルが戦略、起源、個性を異にする場合。
戦略的シフトを通じて状況を改善させ得る。
・ 切替費用/製品差別化の増大。
・ 成長の早いセグメントでの販売努力。
・ 固定費が低い市場への集中。
・ 高い撤退障壁を有する相手との競争を回避し、厳しい価格競争を回避。
Ⅱ 戦略の形成     1. 当該産業での競争要因を把握する。
2. 戦略的側面における、会社の強さと弱さを理解する。
3. アクションプランを作成する。
(1) 競争要因に対して最も防御できるポジションに会社をおく。
(2) 競争要因のバランスに影響を与え、会社のポジションを改善する。
(3) 競争要因の背後にあるファクターの変化を予想し、(競争相手が認識する前に)新たな競争バランスへのより適切な戦略をとることにより、産業変化を利用する。
1 会社のポジショニング
既存の産業構造に会社の強みと弱みをマッチさせ、競争要因に対して最も防御できるポジションに会社をおく。
・ 競争要因に対する防御の構築。
・ 最も要因が弱いポジションを探す。
・ 会社の能力と競争要因を理解することにより、競争すべきエリア(勝てるエリア)と競争を回避すべきエリア(勝てないエリア)を明らかにする。
ex.ドクターペッパーの例
ソフトドリンク業界の参入障壁:①ブランド、②大規模マーケティング、③ボトラーネットワークの利用。

l 最大販売飲料セグメント(コーラ飲料)の回避(競争回避)
l 特定風味の少数ラインの維持(製品差別化)
⇒製品ラインでの競争回避
l 異なった風味を利用し、全てのラインを稼動させたいコークとペプシのボトラーに相乗り(参入障壁の回避)
⇒流通における競争回避
l 唯一の風味の独自性を強調する強力な宣伝(ブランドと顧客ロイヤルティの確立)
⇒マーケティングで競争

規模の経済は存在せず、ドクターペッパーは小さいシェア(6%)で成功。
2 バランスに影響を与える
競争要因のバランスに影響を与え、会社のポジションを改善する。
ex.
マーケティングにおけるイノベーション⇒ブランド同一性の向上/製品差別化。
巨大設備への投資や垂直統合⇒参入障壁への影響。
3 業界変化の利用
競争要因の背後にあるファクターの変化を予想し、(競争相手が認識する前に)新たな競争バランスへのより適切な戦略をとることにより、産業変化を利用する。

ex.
製品ライフサイクル⇒ビジネスが成熟するにつれ、成長率の変化、製品差別化の衰退、垂直統合の傾向。

戦略的視点における最も重要なトレンドは、当該産業での最も重要な競争要因に影響し、新しい要因を最前列におし出すもの
Ⅲ 多面的競争 成長・存続への鍵は、競争相手から攻撃されず、売り手/買い手、代替製品からの侵食をうけにくいポジションを確立する。
そのための方法は多様(ex.顧客との関係強化、実質的又は心理的な製品の差別化、統合、技術的リーダーシップの確立)

 Ⅰ-2 戦略とは何か(マイケル・ポーター)
  Ⅰ オペレーション効率は戦略ではない 1 オペレーション効率は必要であるが十分ではない
すぐれた利益を実現するには、①顧客により大きな価値を提供するか、②価値をより低いコストで実現する。
それらをもたらすのは差異性
そのための2つの手法が、①オペレーション効率と②戦略。

コスト/価格における差異は何百もの活動によりもたらされる。⇒活動(Activity)が、競争優位の基本ユニット。
全体的な優位は会社の(一部ではない)全ての活動からもたらされる。

オペレーション効率:
類似の活動をライバルよりうまく行なうこと。
インプットを効率的に利用する実践。(ex.欠陥の削減・より良い製品の素早い開発)

戦略:
異なる活動を行ない、または②類似の活動を異なる方法で行なうこと。

オペレーション効率の追及
l TQM、時間ベースの競争、ベンチマーキング、継続的改善、権限授与、マネジメント改革、ラーニングオーガニゼーション。
l 専門家にまかせる方が効率的⇒アウトソーシング。

オペレーション効率の追及では不十分
l オペレーション効率競争⇒生産性フロンティア(ベストプラクティスの集大成)を外側にシフトさせる⇒相対的な優位につながらない。(その果実は顧客や供給者が得る。)
l ベンチマーキング・アウトソーシング⇒同一化。
2 日本企業の戦略の欠如 ① 相互に模倣
② 全ての製品/サービスの提供
⇒差異性の喪失。
オペレーション効率の優位性を失うにつれ利益が縮小。
Ⅱ 戦略はユニークな活動に基づく    競争戦略は異なることに関する。
ユニークな価値を提供するため、慎重に、異なるセットの活動を選択することである。
サウスウェストエアライン:
低価格便利なサービスの提供。

l 中規模都市及び大都市の2番手の航空間のみのサービス
l 15分での発着作業
Ø 長い実働時間
Ø 少ない航空機で頻繁な発着
l 座席指定・食事・手荷物転送・高級クラス設定についてのサービスを行なわない。
l 自動発券⇒エージェント不要
l 特定のルート(長距離回避、中規模都市の空港)
l 航空機の統一⇒低コスト(メンテナンス)
イケア:

低価格スタイルを求める若い購入者
(サービスより低価格を求める購入者。)
l クリアな全商品の展示
l 低価格・モジュール・組立家具の開発
l 顧客による持ち帰り
Ø セルフサービスモデル
l チャイルドケア
l 特殊な時間帯に開店
1 新たなポジションの発見
  戦略的競争:
既存のポジションから顧客を導き、新たな顧客を市場に導く、新たなポジションを発見するプロセス
 ● 専門店:多様な製品を扱うデパートからシェアを奪う
メールオーダー:(見過ごされていた)便利さを求める顧客を獲得
イケア:無視されまたは十分にサービスされていなかった顧客グループ
他分野からの参入者による新たなポジションの創造
サーキットシティ(電化製品小売)の中古車市場への参入
l 車の改装
l 製品保証
l 値引きなし
l 社内ファイナンスの利用
(社会)変化により新たなポジションが開かれる場合。
l 新たな顧客グループや購入機会
l 新たなニーズ
l 新たな流通チャンネル
l 新技術
l 新たな機械や情報システム
新規参入者は、既存の活動とのトレードオフに直面しない。
2 戦略的ポジションの源泉   (相互に排他的でなく、しばしば重なり合う)戦略的ポジションの3つの源泉●●
●種類ベースのポジショニング(特定の製品/サービスの選択に基づくポジショニング)
特有な活動により特定の製品/サービスをより良く提供できる場合に意味がある。
ex.
Jiffy Lube International:自動車オイル
・ 自動車オイルに特化(修理、メンテナンスは行わない。)
・ そのvalue chain(活動と競争優位の結びつき)は、低コストでの素早いサービスを提供する。

Vanguard Group:ミューチュアルファンド
・ 成果が予測できコストがかからない普通株、社債、マネーマーケットファンドを提供。
・ 継続的な相対的成果を求める投資アプローチ。
・ 売買高を抑え、コストを抑える。
・ 頻繁な売買を抑えるようアドバイスし、必要資金を抑える。
・ 一貫した低コストアプローチ
ニーズベースのポジショニング(特定の顧客グループのニーズに特化するポジショニング)
ニーズを異にする顧客グループ(ex.価格に敏感、異なる製品特性、情報・サポート及びサービス量)が存在し、特有な活動によりそのニーズをより良く満たすことができる場合に意味がある。(それを満たす最善の活動が異ならなければ、ニーズの違いは有意義なポジションとはならない。)
ex.
イケア:ターゲット顧客の家具についての全てのニーズを満たす。

Bassemer Trust Company:500万ドル以上の投資資産を有する顧客をターゲット。
・ 少数の顧客を担当⇒個人に対応したサービス
・ 顧客の場所でのミーティング
・ 特有のニーズへの対応(投資管理、不動産管理、オイル/ガス投資の監視、競走馬や飛行機の説明)
・ ローン不要
その顧客層において最も高いリターンを達成。
アクセスベースのポジショニング(異なる方法でアクセスできる顧客セグメントに基づくポジショニング) 彼等へのアクセスのための最善の活動が異なる場合。
(ex.インターネットvs.インターネット以外)
ex.Carmike Cinemas
20万人以下の都市でのみ映画館を運営
・ 定型の低コスト映画館でok
・ すぐれた情報システムと管理方法⇒1人のマネジャー
・ 集中購入、安い賃料/人件費、固定費2%(業界平均は5%)⇒コスト優位
・ 小規模都市⇒個性的マーケティング(常連客。個人的つながりで客を集める。)
・ 支配的な地位⇒フィルムを選択でき、配給者と有利な交渉。
  ポジションは広くも狭くもあり得る。
狭いポジショニング(ex.イケア)は、より広いターゲットをもつ競合者によって、必要以上のサービスを提供されたり、十分なサービスを受けられない顧客グループをターゲットにする。
特定分野での選択⇒専門店の優位。
多くからの選択⇒百貨店の優位
Ⅲ 維持できる戦略:ポジションはトレードオフ(一方を得るためには他方を犠牲にしなくてはならない)を必要とする。   ポジションの模倣:①ポジションを変える(reposition)、②両方の追求(straddle)
トレードオフは両方の追求(straddle)を不可能にする。
航空会社は①食事を提供する(費用が上がり、離陸準備時間がかかる)か②食事を提供しないかを選択できるが、非効率性を伴うことなくその両方を選択することはできない。
①をする⇒②にとって非効率
②をする⇒①にとって非効率
トレードオフが生じる3つの理由

①イメージ/評判における矛盾:
2つの相容れないものを提供⇒信頼を失い、顧客を混乱させ、評判を傷つける

②活動自体から生じるトレードオフ:
異なるポジション⇒異なる製品構成・設備・従業員態度・技術・経営システムを必要とする。(オーバーデザイン又はアンダーデザインされた活動では、価値は破壊される。)

③内部調整/管理における制約:
ある方法での競争を選択⇒組織的優先順位が確定。
(全てのものを全ての顧客に提供⇒従業員は明確な枠組みなしに日々の判断を行う⇒混乱)

Continental は2つの方法(低コストルートとフルサービスルート)で競争しようとして失敗。

調和(fit)は、競争優位と持続性を高める。 
    ポジションの選択⇒①いかなる活動を行なうか、②各活動の設定、及び③いかに活動を相互に関連付けるかが決まる。
ex.サウスウェスト(便利さと低価格)
l すばやい発着作業⇒頻繁な出発と高い稼働率⇒便利さ+低コストのポジショニング
Ø 給料の良いゲート・地上作業員
Ø 柔軟な組合規則
l 航空機の運行を妨げる活動を行わない(食事・座席指定・荷物移動を行なわない)
l 航空機の運行を遅らせる混雑する空港とルートを回避
l ルートの厳選⇒航空機の統一

その競争優位は、活動間の調和と相互補強から生じる。
l 他の活動が履行方法ゆえに、ある活動のコストが下がる。
l ある活動の顧客への価値が、他の活動により強められる。
1 調和の種類   調和(fit)は、競争優位の中心的な構成要素。
ポジションの独自性を強め、トレードオフを拡大する⇒最も価値有る調和(fit)は、戦略特有のもの。
●   (相互に排他的でない)3種類の調和(fit)
各活動と全体戦略との整合
ex.Vanguard:全ての活動を低コスト戦略に整合させる。
取引高の最小化、高給マネジャー不要、ファンドの直接販売(コミッション不要)、広告制限(広報・口コミに依拠)、費用削減連動賞与。

整合性⇒
① 活動の競争優位の蓄積
② 戦略を関係者(顧客、従業員、株主)に伝えやすくする
③ 目標を1つにして導入を高める
活動間の強化 Neutrogena:
①薬局でのマーケティングと②(皮膚科医が推薦する石鹸を提供したい)一流ホテルでのマーケティングが相互に強化し、マーケティングコストを下げる。

Bic Corporation:
①店頭販売、②テレビ広告、③パッケージ変更の相乗効果 
努力の最適化
Gap(カジュアル衣料の小売)
入手可能性(product availability)の最大化を目指す戦略
定番商品を3つの倉庫から毎日補充→①在庫保有と②倉庫からの補充の活動を最適化。ショートモデル・サイクル実施コストを抑制。

l 活動間の調整と情報交換により重複と無駄な努力をなくす。
l 製品デザイン選択⇒アフターサービスを低減させ、顧客によるメンテナンスを可能にする。
l 供給者/販売チャンネルとの調整⇒エンドユーザー研修など、会社内での活動を削減。
競争優位は活動の全体システムから生じる。
⇒低価格、顧客サービスの独自の概念、提供される価値の特別な概念等、多くの活動に浸透するテーマの観点から考えるべき。
2 調和と維持可能性 活動間の戦略的調和⇒
① 競争優位にとって重要
② 競争優位の持続可能性にとって重要
(←全体を模倣することは困難。)
③ オペレーション効率改善のインセンティブ
(←活動の効率性は他の活動に影響する。)
模倣困難⇒最高の活動システムを構築した者が全てを獲得⇒同じポジションでの2番手でいるより新たな戦略的ポジションを見つけるべき。
戦略的ポジショニング+トレードオフ⇒各活動の構築及び統合方法を決定。
Ⅴ 戦略の再発見   戦略への脅威は、外部(ex.技術変化、競争者の態度)から以上に内部(ex.誤った考え方、組織的失敗、成長願望)から生じる。
1 選択の失敗 全てを追求:
ハイパーコンペティションの予想⇒競合社の全てを真似し、全ての新たな技術を追求する。
オペレーション効率の専念:
・具体的に測定可能なパフォーマンスの改善は魅力的。
・オペレーション効率に集中し、戦略の必要性を理解しない。
世間の常識:
全ての顧客ニーズに奉仕し、流通チャンネルからの全ての要請に対応しなくてはならないという誤解
組織の現実:
・選択するリスクをとるより選択しない方が好まれる。
・自分達が知らないことを知っていると考え、ライバルを模倣
・権限を与えられた従業員は、全体的視点とトレードオフを意識しないまま、あらゆる改善を指向。
2 戦略との再結合 時間経過・成長圧力・製品追加・新たな顧客グループへのサービス提供・ライバルの活動の模倣⇒明確な競争ポジションの喪失
核となるユニークさの検証
・ 最も特徴的な製品/サービスは何か
・ 最も収益性のある製品/サービスは何か
・ 最も満足している顧客は誰か
・ 最も収益性のある顧客、チャネル、購入機会はどれか
・ 価値連鎖において最も異なり効果的な活動は何か 
堆積した外皮を取り除き、基礎となる戦略的ポジショニングに焦点を絞る。
3 成長トラップ 成長願望は戦略に最も悪影響を及ぼす。
l 成長のための妥協は、会社が本来の製品/ターゲット顧客について有していた競争優位を侵食する。
l 同時にいくつかの方法での競争⇒混乱を招き、組織的動機付けと集中を侵食する。
(売り上げは増えるが、利益は減ってしまう。)
4 収益性のある成長 戦略を維持し強化する成長アプローチ。
l 戦略的ポジションの(拡大ではなく)深化に集中する。
ライバルにとって不可能又はコストがかかる特性/サービスの提供による既存の活動システムの強化(補完的活動故に可能又はコストがかからない活動、特性、競争形式を見つける。)
ポジションの深化は、会社の活動をより異ならせ、調和(fit)を強め、戦略を(それを評価する)顧客に伝達する。
l グローバリゼーション⇒絞られた戦略のためにより大きな市場を開く。

l 業界内部での拡大による成長を目指す場合は、独自のブランドと活動を有する独立部門を設ける。(デザイン・製造・販売・顧客サービスの共通化⇒同一化は避けられない)の罠に陥る。)
5 リーダーシップの役割 経営者の役割の中核は、戦略の定義
l 会社の独自のポジションを定義/伝達し、トレードオフを作り、活動間のフィットを作る。
l どの産業変化及び顧客ニーズに対応するかを規定し、会社の独自性を維持する。
l 戦略から行なうべきでない活動に対してNOと言う。
l 継続的にオペレーション効率を改善する一方、フィットとユニークさ強める努力を継続する。
l 新たなポジションの選択は、新たなトレードオフを発見し、新たな補完的活動システムを維持可能な優位に転換することによるべき。

Ⅰ-3 情報がいかに競争優位をもたらすか(マイケル・ポーター) 
論点 説明
情報技術の内容 コンピューターより広い概念
  • ビジネスが作り出し利用する情報
  • ますます収斂し関連する情報加工技術
  • コンピューターに加え、データ認識装置、通信技術、工場オートメーション、その他関連ハードウェア/サービス
    を含む。
情報革命は3つの方法で競争に影響 産業構造を変え競争ルールを変える。
②ライバルをしのぐ新たな方法を与えることで、競争優位を創造する。
③(しばしば会社の既存のオペレーションから)全く新しいビジネスを生み出す。
戦略的重要性 ① 情報技術の影響  会社が製品を作り出す全体プロセスに影響する。
製品それ自体(物理的製品、サービス、情報)を新たなものにする。 
収益性を得るには 収益性:ビジネスが創造する価値>価値活動の履行コストの場合。
⇒ライバルに対して競争優位を得るには、①低コスト又は②差別化とプレミアム価格を導く方法で価値活動を行う必要がある。
価値連鎖(value chain) リンケージにより結びついた相互依存的な活動のシステム。
価値連鎖の概念は、会社の活動を、技術的・経済的に区別された価値活動(value activities)に分ける。
価値活動の9つの分類  主たる活動(製造・マーケティング・購入者へのデリバリー・販売後のサポート/サービス)
 ①内部ロジスティクス
 ②オペレーション
 ③外部ロジスティクス
 ④マーケティングと販売
 ⑤サービス

サポート活動(主たる活動のためのインプット(材料・人材・技術等)とインフラ(ジェネラルマネジメント・法務・会計・サポート)を供給)
 ⑥企業インフラ
 ⑦人事管理
 ⑧技術開発
 ⑨調達 
リンケージ ある活動が行われる方法が他の活動のコストや効率性に影響する時に存在する。
  • 最適化されるべき異なる活動の履行において、しばしばトレードオフを生み出す。 (ex.高価な製品デザインと原料がアフターサービスコストを削減し得る。)会社は、競争優位を得るために、その戦略に従って、かかるトレードオフを解決しなくてはならない。
  • 活動の調和を求める。(ex.オンタイムデリバリーは、オペレーション、外部ロジスティクス、サービス活動の調和を必要とする。)
    それを認識し組織的境界をまたぐトレードオフを解決することは難しい⇒リンケージのマネジメントは競争優位の強力な源泉となる。
競争優位と価値連鎖 リンケージは、企業内部の価値活動を結びつけるだけでなく、その価値連鎖とその供給者や流通の価値連鎖の間の相互依存を作り出す。⇒外部へのこれらのリンクを最適化/調和することで競争優位を創設し得る。(ex.チョコレートを液状で供給させることにより加工手順を省略。供給者によるジャストインタイムデリバリー。)
会社、供給者及び流通はかかるリンケージの認識と活用を通じて利益を得る。 
コスト又は差別化における競争優位は価値連鎖の機能。
会社のコストポジションは、ライバルとの比較における、全ての価値活動の総合履行コストによる。
会社の活動の多くは、差別化に貢献する。 
競争範囲 4つの方向性:
①セグメント範囲
②垂直的範囲
③地理的範囲
④産業範囲
競争範囲は競争優位を創造するための強力な道具となる。

広範な範囲⇒異なる産業セグメント、地理的範囲、関連産業に資する価値連鎖間の相互関連の開発を可能にする。

  • コーディネートされた戦略による全国的/世界的競争は地域的/国内的ライバルに対する競争優位を生み出す。
  • 広範な垂直的スコープにより、外部の供給者を利用するよりも多くの活動を内部で行うことの潜在的利益を得る。
狭い範囲⇒低コスト又は差別化を達成するために特定のターゲットセグメントのために価値連鎖をあつらえることができる。狭い範囲の競争優位は特定の製品種類、購入者又は地域に最も適するよう価値連鎖をカストマイズすることから生じる。
戦略的重要性②  情報技術による価値連鎖の変容  価値連鎖に浸透し、価値活動が行われる方法価値活動間のリンケージの性質を変容させる。競争範囲に影響し、製品が買い手のニーズを満たす方法を作り変える。 
価値活動の9つのカテゴリー全ての影響する。(ex.コンピューターによる情報処理による処理速度、コスト、正確性の向上。バーコードによるデータ記録。)

主たる活動
 ①内部ロジスティクス:ex.自動化倉庫
 ②オペレーション:ex.柔軟な製造
 ③外部ロジスティクス:ex.自動注文処理
 ④マーケティングと販売:ex.テレマーケティング 遠隔端末
 ⑤サービス:ex.遠隔端末 修理車両のスケジューリング

サポート活動
 ⑥企業インフラ:ex.プランニングモデル
 ⑦人事管理:ex.自動従業員スケジューリング
 ⑧技術開発:ex.コンピューターによるデザイン マーケットリサーチ
 ⑨調達 :ex.オンライン調達
価値活動の物理的加工要素も変容させる。(ex.コンピュータ制御による機械ツール) 
会社内外において活動間のリンケージを開発する能力を増進
。(ex.顧客にターミナルを供給し、顧客による注文、受領、インボイスの用意を容易化。注文処理の効率化。) 
競争範囲に影響
  • 離れた場所における価値活動の調整が可能に。(ex.オンラインによる海外の供給者とデザインを行う。)
  • ビジネス間の相互関係を創造し、競争しなければならない産業を拡大。
情報技術による製品の変容  製品は①物理的要素と②情報要素の双方を有する。 
新たな技術革新⇒
①物理的製品とともにはるかに多くの情報提供が可能に。
(ex.サービスデータベースによるサービスサポートでの差別化。運送会社の貨物の現在場所についての情報提供。)
物理的要素を有さない製品提供を可能に。
製品のパフォーマンスを増進し、その情報コンテンツを高める。
競争の性質を変化させる  産業構造を変化させる  5つの競争要因:①買い手②供給者③新規参入の脅威④代替製品の脅威⑤既存の競合者間の競争
①買い手②供給者
  • インターネットによる情報提供⇒買い手の力の向上
  • 請求と見積もりの自動化⇒買い手の力を増大
  • リンケージに影響⇒供給者と買い手との間の交渉関係に影響
③新規参入
  • 複雑なソフトウェアへの投資を要請する情報技術⇒参入障壁を作り出す
  • オートメーションに大規模設備が不要⇒参入障壁の低下
④代替製品
  • コンピューターによる柔軟なデザイン/製造システム⇒高度な特性を素早く、容易かつ安価に製品に組み込む⇒代替製品の脅威
  • 情報データベース⇒雑誌購入費の回避(代替製品)
⑤競争
  • 新たな技術による固定費増加⇒競争激化
その他:
  • 会社のラインをまたぐ情報システムの構築⇒産業の境界自体の変化 
  • オートメーションと柔軟化の両立⇒競争パターンを変化
  • 製品デザインの価格下落と多様な価値活動にとっての柔軟性の増大⇒カストマイズ化による小規模市場への対応
  • 情報技術⇒個人的相互作用を減少させサービスを日用品化⇒専門的サービス産業を魅力のないものにする。
競争優位の創造  価値活動自体に影響し、競争分野における変化を促進することにより、会社が競争優位を得ることを可能にする。
費用低下:
  • 情報制御システムによる低コスト組立工程
  • 保険会社の数の最適化による仲介費用の減額
  • 販売員をテレマーケターに⇒販売費用は減少、売上は2倍
  • カジノでの顧客評価システム
差別化の促進:
  • 新たな情報技術による製品のカスタマイズ化
  • 製品パッケージに多くの情報を含める
  • アメックスは旅行のアレンジと個人支出のモニタリングサービス
競争分野の変更:
  • 活動を地域的、全国的及び国際的に調整する能力を増進⇒競争優位を創造するためより広範な地域範囲の力を解き放つ。
  • 産業間の相互関係を創造⇒双方の産業構造に大きな影響。
    (ex.コンピューターとテレコミュニケーション技術の結合)
  • 総合企業は、以前には専門企業のみ可能であった方法で、その提案を細分化できる。
新たなビジネスの創出  ①新たなビジネスを技術的に可能にする。(ex.メリルリンチのキャッシュマネジメントアカウントは新たな情報技術を要した。)
②新製品への需要を創造することにより新たなビジネスを生み出す。
③情報技術は古いビジネスの中に新たなビジネスを創造する。その価値連鎖に情報処理が組み込まれる会社は外部に販売できる過剰能力/スキルを有し得る。
④そのオペレーションの副産物として情報を創造し他に販売。
情報時代における競争  情報革命が創造する機会を利用するための5つの手順  ①情報集中の評価
製品及びビジネスユニットのプロセスにおける既存の又は潜在的情報集中の評価。
  • 価値連鎖における高度な情報集中の潜在性
  • 製品における高度な情報収集の潜在性
    ⇒情報技術投資を行う優先的ビジネスユニットの特定。
②産業構造における情報技術の役割の決定
情報技術の5つの競争要因への影響を検証。
会社は、いかに構造的変化に対応するかを理解するとともに、産業変化を導く方法を求めるべき。
③情報技術が競争優位を創造する方法を確認しランク付ける
情報技術は、価値連鎖の全ての活動に影響を与えるとともに、活動間の新たなリンケージを生じさせえる。
コストと差別化の観点から、最も影響を受け得る価値活動を検証
  • コストの大きな部分を占めるか差別化にとって重要な活動で、重要な情報処理部分をもつもの。
  • 会社内外の他の活動を重要なリンクを有する活動。
  • 情報技術がいかに競争分野における変化を可能にするを検証。
  • 製品の検証。(情報・情報技術の組み込み。)
④いかに情報技術が新たなビジネスを生み出すかを研究する
  • ビジネスにおいて生み出されるいかなる情報を販売できるか。
  • 新たなビジネスを始める情報処理能力が存在するか。
  • 情報技術は会社の製品に関係する新たなアイテムの製造を可能にするか。
⑤情報技術の利用計画を策定する
①~④は情報革命を利用するアクションプランにつながるべき。
組織はシステム開発についての責任を広範に組織に配分する必要。
職能を超えるリンケージを開発。
情報サービスマネジャーは、情報技術の管理より、システム開発におけるアシスタントと指導を行うとともに、組織全体における多くのアプリケーションの構造と基準の調整を行うべき。 


Ⅰ-4 衰退産業のための撤退戦略(マイケル・ポーター) 
前文 衰退が企業のコントロールを超える場合、マネジャーはエンドゲーム戦略を開発しなくてはならない。

第1に、衰退産業の環境が適切かどうかを決定する構造的条件(これらは競争に影響する)を描写する。
第2に、衰退企業にとってのエンドゲーム戦略の選択肢を議論する。
エンドゲーム戦略の選択のためのいくつかの原則を結論する。

産業を去るにあたり、42の会社は利益を出したか大きな損失を蒙らなかったが、19の会社は大きな損失を蒙った。
42の成功した企業のうち39は4.1の図に示される戦略マトリクスに従い、失敗した19の企業のうち16は戦略マトリクスに反して行動した。

→マトリクスに従えば、成功の確率は92%を超えるが、従わなければ成功率は約15%。

何が競争を決定するか

縮小する産業の売上は衰退局面を不安定にする。
増大する競争プレッシャーが衰退時の収益性を侵食する程度は、
どの程度参加者が撤退する用意ができており、
残る企業が縮小する売上にどれだけ耐えようとするか
に依拠する。

需用条件

需要が衰退する多様な原因

  • 技術的優位が低コスト又は高品質の代替製品を生み出す。(ex.計算尺に対する電卓、皮に対する合成樹脂)
  • 買い手の縮小(ex.ベビーフード)や問題への直面(ex.鉄道)。
  • ライフスタイルや嗜好の変化(ex.葉巻、帽子)
  • 原料又は補完製品のコスト上昇(ex.Recreational vehicle

衰退原因は企業が将来需要衰退市場の収益性をいかに予想するかの決定に影響する。
企業の需要への期待
需要が衰退するプロセス及び
残存市場セグメントの性質は、
エンドゲームにおける競争環境に大きく影響する。

不確実性

それが正しいかどうかにかかわらず、競合者の需要認識は競合者のエンドゲーム戦略に影響する。

  • 需要の活性化又は平準化の予測→ポジション維持に努める→売上が縮小した場合熾烈な競争となる。(ex.ベビーフード)
  • 需要衰退の予想→生産能力の削減が秩序だって行われる。(ex.ソーダ灰の場合)

企業による衰退予想は、産業におけるそのポジション及びその撤退障壁に影響を受ける。
(利害関係が強く撤退障壁が高い場合、需要予想はより楽観的になりやすい。)

衰退率とパターン

急激かつ無軌道な衰退→競争の激しさを増す。
産業崩壊のスピードは企業の生産能力削減方法に依拠する。

  • 顧客にとって重要な製品であるが代替製品が利用できる(ex.ソーダ灰)
  • 産業において、主要な生産者が撤退を決定→顧客がオリジナル製品の継続的入手可能性に疑問→需要は抜本的に低下し得る。
  • 早期の撤退宣言は衰退に大きな衝撃を与える。
  • 生産量の縮小はコストと価格を上昇させる→時の経過とともに衰退は加速する傾向となる。
残存需用ポケット構造

残存する需要ポケット(ex.プレミアム品質の葉巻)の性質は残存する競合者の収益性に大きく影響する。

  • 残存ポケットが好ましい構造を有する場合、衰退は良いポジションを確保する競合者にとって収益的となり得る。(ex.プレミアム品質の葉巻需要は価格に敏感でなく、ブランドに忠実→プレミアム葉巻の製造会社は高いリターンを得る。)
  • 固定費が高く価格競争に服する日用品の場合、残存製造者にとって収益的とはならない。(ex.エチレンにとって代わられるアセチレンの場合。)
  • 買い手が価格に敏感でなく(ex.テレビの取替用の真空管需要)、又は交渉力が小さい場合、残存者は利益を得ることができる。(売上が縮小すれば、固定費に直面する会社は値上げしなくてはならない。→顧客が価格に敏感でないことが重要。)
  • 残存需要ポケットの潜在収益力はまた、売上を失った企業の攻撃から守る移動障壁を有するかに左右される。
撤退障壁

撤退障壁が高いほど、衰退期において、産業は受け入れにくいものとなる。
ビジネスの基本的側面の多くが撤退障壁となり得る。

耐久的かつ専用的資産

固定資産であれ運転資産であれ、資産がビジネス、会社又は地域に特化する場合、清算価値の低下が撤退障壁となる。(←通常、衰退ビジネスの資産の使用を希望する買い手はいない。)
ex.アセチレンとレーヨン産業の場合、工場を、帳簿価格より大幅に低い価格で、投機家か絶望的な従業員グループに売却。

会社がオールオアナッシングの撤退判断かサイトやラインの縮小か判断をしなくてはならない場合、専門的資産の問題はより深刻となる。
資産の清算価値が低ければ、帳簿上損失はでるがビジネスを売却する場合に実現される価値を超えるキャッシュフローを得ることは可能である。いくつかの会社がこの分析を行い、衰退産業に残る場合、能力の過剰は拡大し収益マージンは押し下げられる。
買い手の範囲を広げることにより、専門的資産から生じる撤退障壁を下げることができる。(海外に市場を見つける。)
産業の衰退が明らかになるにつれ、専門的資産の価値は低下する。
(ex.カラーテレビのための需要が強い1960年代初頭にRaytheonが真空管製造資産を売却した際、産業がたそがれにあることが明らかとなった1970年代初頭に処分しようとした会社よりも高い清算価値を取り戻した。)
高い撤退コスト

ビジネスを去るにあたっての必要となる費用は撤退障壁を引き上げる。

  • 労務整理
  • 施設の除去
  • 会社が去った後も過去の顧客にスペアパーツを供給する必要。
  • 長期契約を破棄する場合のキャンセルペナルティの支払。
  • 他の会社に代わって契約を履行させるためのコスト負担。

他方、ビジネスを捨てることにより、汚染コントロール設備、代替的燃料システム又はメンテナンス支出等の投資を避けることができる。
これらは利益を出すことなく投資を増やし、衰退の見通しを促すため、これらの要請は撤退を促進する。

戦略的考慮

多角化した企業は、戦略的理由から衰退産業に残ることを選択するかもしれない。
これらの理由は以下を含む。

相互関連
  • ビジネスグループ(ex.ウィスキーと他の蒸留酒)の一部であり、それからの撤退が企業の全体戦略を傷つける場合。
  • 会社のアイデンティティやイメージにとって中心的である場合。(ex.General CigarAllied Leather
  • 撤退が主たるディストリビューションチャンネルや顧客との会社の関係を傷つけ、または会社の購買力を低める場合。
  • 資産を新市場へ移行する能力に左右されるが、撤退が共用していた工場その他の資産を無駄にする場合。
金融市場へのアクセス
  • 撤退が企業の金融的信用性を低下させ、買収候補や買い手に対する魅力を引き下げる場合。
  • 撤退するビジネスが大きいものであれば、それが経済的に正当化される場合でも、撤退が収益成長を傷つけ、何らかの形で資本コストを生ぜしめるかもしれない。(金融市場は、一度の大きな損失には過剰に反応するが、他の収益性あるビジネスに埋もれた長期間のオペレーション損失は無視しがちである。)
  • 多角化企業は、撤退判断の消極的なキャッシュフローインパクトを緩和するために、除去による税務控除を利用できるかもしれないが、除去は金融市場に影響を与える。but最近、将来性のないビジネスの損失をとる会社は、前向きなサインとして、好意的にみられる。
垂直統合

会社が垂直統合される場合、撤退障壁は衰退原因が連鎖全体に関係するかその1つにのみ関係するかに基づく。
ex.

  • アセチレンの場合、陳腐化は(アセチレンを直接原料として用いる)下流の化学ビジネスを過剰にし、撤退かどうかの判断は連鎖全体を含まなくてはならなかった。
  • 対照的に、下流のユニットが代替製品のため陳腐化した原料に依拠する場合には、代替製品の外部の供給者を見つけるようモチベートされる。この場合、上流ユニットを捨てる決断が行われる。

垂直統合された会社のほとんどは、最終的な進むか進まないかの判断に直面する前に「解体」する。

情報ギャップ

会社において、①あるビジネスが他のビジネスと関連し、②資産を共用し、③買い手―売り手関係にある場合、マネジメントはその実績について信頼できる情報を得ることが困難であり得る。
ex.コーヒーパーコレーターユニットが他の家電製品を有するプロフィットセンターの一部である場合、パーコレーターユニットの業績を正確に把握せず、そのビジネスの破棄についての検討に失敗するかもしれない。

経営上の抵抗

マネジャーの執着及びビジネスへの傾倒は感情的な撤退障壁を創造する。
単一ビジネスの会社の場合、撤退はマネジャーの職を失わせ、そのプライドへの打撃、「あきらめ」たことの汚名、長年続いたアイデンティティの切断、及び転職にマイナスとなる失敗シグナルといった個人的な問題を創造する。
多角化企業における不健全な部門のマネジャーにとって、剥奪を提言することは困難であるため、中止する際の決断の責務は通常トップマネジメントにかかる。しかし、特に、不健全な部門が会社の歴史的なコアの部分であり現在のCEOによって始められ又は取得された場合、トップマネジメントにおいてすら、当該部門での忠誠は強力である得る。
ビジネスを捨てる経験は、撤退に対する躊躇を低減させる。技術的失敗と製品代替が通常の化学産業、製品寿命が短い産業、又は新たなビジネスが古いビジネスにとってかわるハイテク企業において、エグゼクティブは感情的な判断から離れ、健全な撤退判断に慣れることができる。

社会的障壁

職業への政府の懸念が高く、その対価が他のビジネスからの譲歩その他の禁止的条件となるため、特に外国において、ビジネスの撤退はほとんど不可能となる場合がある。
撤退は住民の職を奪い地域経済を損なう。(ex.カナダのパルプ産業で製紙工場の閉鎖は町全体の閉鎖を意味する。)

資産処分

会社が資産を処分する方法は衰退産業の収益性に影響し、競合者にとっての撤退障壁を創造又は破壊する。
ex.大きな工場を廃棄せず企業家グループに安く売却すれば、残された競合者は元の所有者が残るよりも被害を蒙る。

エンドゲームの不安定さ

①売上の減少と②能力過剰のため、エンドゲームの参加者は熾烈な価格競争を行いがちである。異なったゴールと見通しを有し、高い撤退障壁を有する、集団に属さない競合者がある場合、又は市場が不適切な場合、攻撃が生じやすい。
産業の衰退に伴い、ディストリビューターの力が増加する一方、供給者(コストを引き上げ又はサービスを低下させる)にとって重要でなくなり得る。
ex.葉巻ビジネスにおいて、嗜好品である葉巻にとって棚のポジショニングは成功にとって重要であるところ、小売と取引するのはディストリビューターである。ウィスキー取引においても、製造者は最高の卸売業者を得るために激しく争う。

他方、産業が重要な顧客である場合、供給者は衰退への抵抗を助けるかもしれない。(ex.パルプ製造者はレーヨン産業がコットンと争うのを助けた。)
おそらく、最悪の環境は、大きな企業リソースを有する1又は複数の弱まった会社がビジネスに残る場合に生じる。その弱さのため、彼等は値下げ等の絶望的な行為を行い、他の企業をして同様の対応を強いる。

衰退ビジネスのための戦略的選択肢

衰退産業のための戦略の議論は通常、①譲渡又は②収穫戦略に焦点を置くが、マネジャーは同様に2つの他の選択肢・・③リーダーシップと④ニッチ・・を検討すべきである。
これらの4つの戦略は、その目的だけではなくその投資に対する示唆においても大きく異なり、マネジャーはそれらを別々にまたは場合により連続的に追及し得る。

リーダーシップ

マーケットシェアリーダーシップ戦略に従う会社は、衰退産業に残る少数の会社の1つとなることにより、平均以上の利益を収穫するよう努める。

会社がこのポジションを獲得したら、引き続く産業売上のパターンに基づき、通常ポジションの維持か管理された収穫戦略へと転換する。基本となる前提は、リーダーシップを達成することにより、衰退プロセスにコントロールを発揮し不安定な価格競争を避けることができるため、会社はより収益的となり得るということである。

資本は凍結され利潤又は清算を通じての回収に抵抗するため、ゆるやかな又は縮小する市場への投資は危険である。しかしながら、この戦略の下では、産業におけるその支配的ポジションは企業にコストリーダーシップか(仮に衰退時に再投資した場合でも資産の回収を可能にする)差別化を与えるべきである。

マネジャーは、いくつかの戦術を通じ、リーダーシップポジションを達成することができる。

  • 他の企業がすみやかに撤退することを確かにする。(ex.H.J.Heinz and Gerber Products は価格、マーケティング及びその他の分野においてマーケットシェアを確立しそれを追い出すという競合者の希望を打ち砕く積極的な競争的行動をとった。)
  • 競合者の撤退障壁を下げる。(ex.GTE Sylvania は、競合者の製品ラインを当時のレートより高い価格で取得することによりマーケットシェアを確立した。American Viscose は競合者の製造設備を購入し廃棄した。GEは競合者の製品のためスペアパーツを製造した。Rohm & Haas は競合者の長期契約を引き継いだ。Proctor-Silex は、彼等が製造オペレーションを止めることができるよう、競合者のためにプライベートラベル製品を生産した。)
  • 信頼できる市場情報の開発と開示。衰退が不可避であることを確信させ、競合者が産業の見通しを過大評価し居残る可能性を低くする。
  • 他の競合者に新たな製品やプロセス改善への再投資のニーズを生じさせることにより、ビジネスへの残留をよりコストのかかるものとする。
ニッチ

この集中戦略は、安定的な需要が継続するかゆるやかに衰退し、高いリターンを可能にする構造をもつ衰退産業のセグメントを見出す。その後、他のセグメントから資金を引き上げる一方、このセグメントにおいて強いポジションを獲得するために動く。選ばれたセグメントからの競合者の撤退障壁を引下げ、そのセグメントの収益性についての不確実性を解消するため、リーダーシップ戦略に列挙されたいくつかの行動をとり得る。

収穫

収穫戦略において、計画的に資本を引き揚げ、最大のキャッシュフローを得ることを求める。キャッシュフローを増加させるため、マネジメントは、過去の営業権の利益を収穫しながら、①新たな投資、②設備のメンテナンス並びに③広告及びサーチを削減する。他の一般的な収穫戦術は、④モデル数、⑤販売チャンネル、⑥小規模顧客並びに⑦デリバリータイム(それによる在庫削減)、修理スピード又は販売アシスタンスについてのサービスの削減を含む。

収穫戦略の会社は、しばしば、供給者と顧客の信頼維持が困難であるため、いくつかのビジネスは十分に収穫できない。さらに、従業員の維持とモチベーションに問題を生じさせるため、マネジャーの管理者としてのスキルがテストされる。これらのため、収穫は危険な選択肢であり、しばしば称される万能薬から程遠い。
収益戦略をとるマネジャーは、最終的には、ビジネスを売却又は清算する。

すみやかな譲渡

収穫後に売却し又は他の戦略に従うより、早期にそれを売却することにより、ビジネスからその投資をより多くを回収できると考える。早期にビジネスが売却される程、将来の需要についての潜在的購入者の不確かさは大きくなり、国内外で資産の購入者を見つけることができる可能性が高くなる。

いくつかの状況において、衰退前又は成熟時(ex.DuPontがアセチレンビジネスで行った。)にビジネスを破棄することは好ましい。

産業の衰退が明らかになれば資産の買い手は強力な交渉ポジションにたつ。
but売り手もその将来予測を誤るリスクを負う。

すばやい譲渡は、会社を、顧客関係及び相互依存等の撤退障壁に直面させる。
but早期出発のためのプランニングは、マネジャーがこれらの要因の影響をある程度緩和することを可能にする。(ex.
Westinghous Electric が真空管について行ったように、代替品の継続的供給が必要な場合、会社は残留する競合者がその製品販売をアレンジすることができる。)

衰退産業における競争を形作る特性利用可能な戦略を理解し、マネジャーはそのポジションがどうあるべきかを問うことができる。
産業構造は適切かつ潜在的収益性のある衰退局面を支持するか。
競合者が直面する撤退障壁は何か。誰がすばやく撤退し誰が残るか。
会社の強さは需要の残存ポケットに適するか。
競合者のこれらのポケットにおける強さは何か。彼等の撤退障壁はいかに克服し得るか。

戦略の選択にあたり、マネジャーは産業における残存機会をその企業ポジションに適合させる必要がある。産業発展における強さと弱さは、必ずしも、エンドゲーム(そこでの成功は、残存する需要ポケットとかかる需要への競争に資するための条件に左右される。)において重要とは限らない。

表4-1は、衰退企業のための戦略的オプション示す。

低い不確実性と低い撤退障壁等のため、産業構造が秩序だった衰退となるであろう場合、強い会社は、残存するマーケットセグメントが有する価値に従い、リーダーシップを追求するかニッチを守ることができる。

会社が傑出した強さを有さなければ、それは収穫か早期の譲渡を行うべきであり、その選択は、収穫の可能性とビジネスを売却する機会に基づく。

高い不確実性と高い撤退障壁又は不安定なエンドゲーム競争に導く条件のため産業環境が好ましくなければ、リーダーシップを達成するための投資は収穫を生み出さない。(●リーダーシップには投資が必要。)

会社が存続するマーケットセグメントにおいて強さを有す場合、守られたニッチに縮小するか収穫するか又はその双方を試みることができる。

会社が強さを有さない場合、その撤退障壁が許す限り素早く撤退すべきである。踏みとどまれば、高い撤退障壁とより大きな力を持つ他企業はそのポジションを攻撃する。

表4.1 衰退産業環境の魅力に影響する構造的要因

構造要因

環境的魅力

好ましい

不適切

需要条件

衰退スピード

非常に遅い

急速又は無軌道

衰退の確実性

確実に予測できる

非常に不確実な不安定なパターン

持続する需要ポケット

いくつか又は主要なもの

ニッチの不存在

製品の差別化

ブランドロイヤルティ

日用製品

価格安定性

安定し、価格プレミアムが可能

不安定で、コスト以下の価格

撤退障壁

再投資要請

なし

高く、しばしば強制的でかつ資本的資産を巻き込む

生産資産の耐久性

なし、ほとんど古い資産

大きい、大きな新しい資産と廃棄されない古い資産

資産の再販売市場

転換又は販売が容易

市場は無く、廃棄に大きな費用がかかる

共用施設

少ない。単独の施設。

大きなかつ重要なビジネスと関連する。

垂直統合

少ない

多い

「単一製品」競合者

なし

いくつかの大企業

競争決定要因

顧客産業

断片的、弱い

強力な交渉力

顧客の切替費用

高い

低い

規模の非経済

なし

大きい

異なった戦略グループ

少ない

おなじターゲット市場にいくつか

              残存ポケットに競争優位有り           残存ポケットに競争優位なし

                                                                      (●撤退しか有り得ない。)

好ましい産業構造

リーダーシップ

ニッチ

収穫

早期の譲渡

好ましくない産業構造

ニッチ

収穫

早期の譲渡

この簡単な枠組みは第3の方向・・企業のビジネスに留まる戦略的必要性・・によって補なわれる必要がある。例えば、他のユニットとの関係がより積極的なスタンスを支持するように他の要因がリーダーシップを示しても、キャッシュフロー要請が判断を収穫又は早期の譲渡へと歪めるかもしれない。正しい戦略を決定するため、会社はビジネスの戦略的ニーズを評価し、それに従いエンドゲーム戦略を修正すべきである。

通常、エンドゲーム戦略に早期にコミットすれば有利である。例えば、会社が当初からリーダーシップ戦略をとること知らせれば、他の企業にビジネスを止めさせることを促すだけではなく、リーダーシップの確立にむけての時間を得る。

しかしながら、しばしば会社は競合者がその方針を決めるまで、収穫によりその時間に耐えることを求めるかも知れない。リーダーが撤退するのであれば、会社は投資への準備を行い、リーダーが留まるのであれば、収穫又は譲渡する計画を持つかもしれない。しかしながら、いずれの場合であれ、成功する会社はエンドゲーム戦略がそのために選択されるのではなく、自ら選択すべきである。

会社が産業状況を予想できれば、成熟局面の間に次の手段を講じることにより、そのエンドゲームポジションを改善できるかもしれない。(しばしば、かかる移行はその時点では戦略的ポジションにおいて安くつく。):

  • 企業の全体戦略にとって明らかに有益でない限り、撤退障壁を生じさせる投資その他の活動を最小化する。
  • 異なる原料を受け入れ又は関連製品を製造できるよう、資産の柔軟性を増加する。
  • 産業が衰退の状態にある時、耐久性のある市場セグメントに戦略的重点を置く。
  • これらのセグメントにおいて顧客のスイッチングコストを創造する。
チェックメートの回避

4.1図におけるポジションの発見は、衰退の間の厳しいオペレーション問題との直面においてしばしば短期に変更される多くの微妙な分析を必要とする。多くのマネジャーは、衰退は特別なものとみるため、産業構造に整合的な戦略を策定する必要性を見落とす。衰退産業についての研究は、収益力のあるプレーヤーに共通するその他の要因を明らかにする。

衰退を認識する

後知恵において、会社にその衰退産業の見通しについて楽観的すぎたと警告するのは容易であるが、いく人かのエグゼクティブは衰退の見通しを客観的に見ることができなかった。彼等の産業についての認識が大きすぎるか、代替製品の認識が狭すぎる。高い撤退障壁はマネジャーによる環境の認識に影響する。悪い予兆は苦痛であることから、人はよいサインを求める。

衰退プロセスへの対応について最も客観的である会社は、代替産業における参加者でもある。彼等は、代替製品の見通しと衰退の実態についてより明らかな認識を有する。

消耗戦を回避する

高い撤退障壁を持つ競合者間の争いは通常惨事を招く。競合者は、他の会社の動きへの対応を強いられ、大きな投資損失なくしてポジションを生み出すことはできない。

明確な強さなくして収穫しない

衰退局面において産業構造が非常に好ましい場合でなければ、明らかな強さがないのに収穫を試みる会社は通常崩壊する。いちどマーケティングかサービスが悪化し、又は会社が価格を引き上げると、顧客はすばやくそのビジネスを他にやる。収穫過程においてビジネスの再販売価値は消失するかもしれない。収穫の競争的及び管理的リスクのため、マネジャーはこの戦略を選択する明確な正当性を必要とする。

衰退を潜在的な機会として評価する

衰退産業はしばしば、GERaytheonが真空管について発見したように、良好なポジションを占めるプレーヤーにとって驚くべき収益性を有する。産業の衰退を問題ではなくチャンスとしてみるとともに客観的な判断を行うことができる企業は、報酬を獲得することができる。


Ⅰ-5 競争優位から企業戦略へ(マイケル・ポーター) 
前文

1960年代以来CEOは多角化の考えに取り付かれてきた
but
企業戦略とは何であり、会社はいかにそれを考案すべきかについて合意が得られていない。

戦略の2つのレベル
ビジネスユニット(又は競争)戦略及び
企業(又は全社)戦略

企業戦略は、①どのビジネスに参入すべきであり、②いかに一連のビジネスユニットを扱うべきかという2つの問題に関係する。

企業戦略は、企業をビジネスユニット部分の合計を超えるものにする。
but
これまでの企業戦略は失敗。(ほとんどの買収企業を保有せず譲渡している。)

ジャンクボンド等によりどの企業も買収の対象となり得る。

企業はより企業戦略を理解する必要。

実体

企業戦略の成功又は失敗を示す適切な証拠はない。

×多くの研究は買収前後の株価を比較。
vs.短期の市場の反応は多角化の長期的成功を判断するには不十分

平均80の新事業(new industry)と27の新分野(new field)に参入し、
新規参入の70%が買収により、22%が新規設立、8%がジョイントベンチャーによる。

IBMExxonDu Pont及び3M 新規設立に重点をおき、

ALCO StandardBeatrice及びSara Leeはほとんど買収によってのみ多角化を行った。

平均すると新事業での買収の過半数が手放され、新分野での買収の60%超が手放された。14の会社は、新分野における全買収の70%超を手放した。

関連性のない買収の場合、平均74%を手放している。
(問題を直視しないため保有している場合もある。)

評価に株主価値を用いるのは不可能。
(←多角化されなかった場合の株主価値はわからない。)

これらの買収で利益を得たのは、株主ではなく、弁護士、投資銀行、売主であった。

多くの部門から無作為に抽出。

年次報告書、10Kフォーム、F&Sインデックス、ムーディーズ、自己の判断及び当該産業における一般知識、一部企業についての照会結果。

成功を計るために指標として、参入が維持されたかどうかを採用した。
(←原則として会社は成功したビジネスを譲渡又は廃止しないという仮定。)

多くの参入は5年以内に譲渡されている。
損失/利益が開示されている比較的少数の譲渡において、過半数で損失を報告。
多くは5年以内に手放されているが、平均保有期間は5年から10年を若干超える程度。

企業戦略の前提        競争はビジネスユニットのレベルで生じる。

競争するのは、会社ではなく、そのビジネスユニット

各ユニットを成功に導くことに注意を向ける。

成功する企業戦略(全社)競争戦略(ビジネスユニット)から生じそれを強化するものでなくてはならない。

       多角化は必然的にビジネスユニットに費用と制約を生ぜしめる。

明確な費用/制約と隠れた費用/制約。

ビジネスユニットは、その決断をトップマネジメントに説明し、計画その他の企業システムとの調整に時間を費やし、親会社の指針と人事政策を遵守し、直接的な株式保有の下従業員の動機付けを差し控えなくてはならない。

       株主は容易に多角化できる。

市場価格で株式を購入でき巨額の買収プレミアムを回避

株主は企業より容易にその投資を分散できる。

実質的利益を提供することによりビジネスユニットに価値を加え株主が真似できない方法で多角化することにより株主に価値を加えないと、企業戦略は成功できない。

不可欠なテスト

多角化が株主価値を創造することとなる条件:3つの不可欠なテスト
         魅力テスト(attractiveness test):
多角化のために選ばれる産業の構造的魅力
         参入コストテスト(cost-of-entry test):
参入コストが将来利益を使い果たさないこと。
         より良くなるテスト(better-off test):
会社又は新たなユニットが他方とのつながりにおいて競争優位を得る。
これらのテストを無視する時、戦略結果は壊滅的になる。

産業がいかに魅力的か

産業の収益率は、その基本構造による。(「How Competitive Forces Shape Strategy」参照)

投資に対する平均収益率が高い魅力的産業は①参入障壁が高く、②供給者買い手の交渉力は高くなく、③代替製品/サービスは少なく、④競合者間の競争が安定しているため、参入が困難である。

新たな産業が費用を上回る収益を生み出す構造を有さない限り、多角化は株主価値を生み出さない。

良くない構造の産業に参入する場合、①産業構造を改革するか、②産業平均を上回る利益を生み出す維持可能な競争優位を得る必要がある。

会社が魅力テストを無視し貧弱な構造の産業に参入して失敗する理由
     当該産業が自分のビジネスと密接に調和することについて漠然とした信念
     低い参入コスト(所有者が売却を切望するため、買い手は有利な立場に有り得る。)
but価格が低くても、一時的利益は継続的に貧弱なビジネスを相殺しない。
     急速な成長その他の単純な指標を産業の魅力と誤解する。
but
急成長する産業(パソコン、ビデオゲーム、ロボット工学等)に参入する多くは、当初の成長を潜在的長期利益として誤るため燃え尽きる。

産業はハイテクであるために収益性があるのではなく、その構造が魅力的である場合にのみ収益性がある。

参入コストテスト

参入コストが将来利益を使い果たさないことが必要。
(←参入コストがその期待収益を上回る場合、多角化は株主価値を作らない。)

     買収の場合
市場の効率化(情報の流通、投資銀行等の積極的活動、高額の買収プレミアム、ジャンクボンド等の金融手段による新たな買い手の市場参入)→市場を反映しない低価格での購入は難しい。

ex.Philip Morris Seven-Upの簿価の4倍超を支払った。→買収前のROIを維持するには利益が4倍を超えなくてはならない。butソフトドリンク産業での洗練された市場において、マーケティング力において少ししか価値を付加できず手放した。

     新規設立の場合
新規設立においても会社は参入障壁に打ち勝たなくてはならない。
but
魅力的産業は、その参入障壁が高いために魅力的。→コスト負担は潜在的利益を上回るかもしれない。

心を動かす新たなビジネスの発見→参入費用テストを無視して失敗する。

ビジネスは良くなるか       新たなユニットに競争優位を持ち込むか
      新たなユニットから競争優位を得なくてはならない。
ex.新たなユニットが、関連するユニットの流通システムを通じて製品を販売できる。
  • 新たなユニットに対する利益が1度しか生じない場合は、その利益が実現したらユニットを売却して会社の資源を解放すべき。(←新たな価値を付加できない。)
  • 株主が行えること(リスク分散)は企業戦略の基礎とはならない。(リスク分散はその副産物にすぎない。)
  • 会社の規模は株主価値と異なる。(規模拡大を目指す中その役割を見失う。)
  • 多角化の要点は、株主価値低下の回避ではなく、株主価値の積極的創造である。
企業戦略の概念

いずれの企業戦略も以上の3つを満たさなくてはならない。
but
それらを満たすことは困難→ほとんどの多角化は失敗する。
これまで実行されてきた企業戦略の4つの概念

       ポートトフォリオマネジメント(portfolio management)
       構造改革(restructuring)
       スキルの移転(transferring skills)
       活動の共有化(Sharing activities)

相互に排他的ではないが、それぞれが株主価値創造のための異なるメカニズムに依拠し、異なる方法で経営し組織化することを求める。

①②:ビジネスユニット間のつながりに依拠しない。
③④:ビジネスユニット間のつながりに依拠する。

これらの概念のいずれかを無視することは、失敗への近道である。

ポートフォリオマネジメント

有能なマネジャーとともに健全かつ魅力的な会社を取得する。
有能なポートフォリオマネジャーは、通常そのビジネス範囲を限定し、トップマネジメントが必要とする特定の専門技術に限定する。

参入コストテスト
すぐれているが低く評価される会社を見つける。(取得されたユニットのためにはほとんど行われない。)

より良くなるテスト
企業は取得されるユニットに競争優位を与えなくてはならない。

高度に自立的なビジネスユニットを通じてのオペレーションは、健全なビジネス戦略を発展させるものである必要。

ポートフォリオマネジメントは機能しない。

  • 市場の効率化により、実体より低く評価される会社は少ない。
  • 健全な戦略は容易に資本を集め、企業は資金を提供する親会社を必要としない。
  • 評価による付加価値は低い
  • ユニット毎に戦略を異にすれば、ユニットのパフォーマンスを弱らせるかもしれない。(多くの成功例は、ユニット相互関係の価値と企業の同一性の重要性を示唆する。)
  • マネジメントの複雑さ。(多くの異なるユニットを監督し、より多くを付加する圧力の下、マネジメントは間違い始める。)
  • 多角化した会社の一部であることの必要コストにより、会社全体のROIは低下する。
  • cf.米国市場における「コングロマリットディスカウント」(←その価値はユニットの合計より低くなる。)
構造改革

ビジネスユニットの積極的改革者。(ポートフォリオマネジャーは評価者。)
新たなビジネスは必ずしも既存のユニットに関係しない。
必要なのは実現されていない潜在力である。

問題があるが潜在力のある企業を探す

①ユニットマネジメントチームを変更し、戦略を入れ替え新技術を導入
②不要な関連のない部分を売却し、買収コストを減らす価値を付加できない段階でユニットを売却する。

(●現在価値を上げる。当初からの将来の利益見込みは現在価値を上げない(考慮済み)。利益(現在及び将来)の上昇させることにより、株主価値は創造される。)

魅力テストターゲットとなる産業を選択する
参入コストテスト:買収会社を選択(問題があるがその潜在力は明らかにされていない→低価格
より良くなるテスト競争優位を作り出す

最良の会社は、会社を買収するだけではなく改革する。
(買収を新たな全体的戦略ポジションに統合できなければ、名前を買えたポートフォリオマネジャーにすぎない。)

規模拡大への執着

最大の落とし穴は、構造改革により業績のよくなったビジネスを手放せるかどうか。
(ユニットへの再投資の必要性と通常のビジネスリスクが、構造改革による利益を相殺する。)

上手な英国の改革者

Hanson Trust

ターゲット:

  • ローテク会社
  • 魅力的な構造:顧客と供給者の力は低く、競合社との競争は穏やか
  • マーケットリーダーで資産を有するbut貧弱なマネジメント

コスト低減

  • 将来のキャッシュフローの現在価値を低く評価
  • 改善できないビジネスの売却により購入金額の引き下げ

→最初の6ヶ月で買収費用の3分の1を取り戻す。
ex.
Imperial Group の21億ポンドの買収価格のうち、Courage Breweries Elders への売却により14億ポンドを取り戻した。

構造改革:

  • 低コストと厳しい財務管理

平均25%の人件費を削減し、固定費を削減し、資本支出を引き締める

部門毎の1年の財務予算をつくり、成果と結び付いたボーナスとストックオプションの利用により、資産を手放すインセンティブを与える。

スキルの移転

①ポートフォリオマネジメント、②構造改革

各自立的ユニットを通じての価値の創造

③スキルの移転、④活動の共有化

ビジネス間の相互関係
を利用

買収の理由として説明されるシナジーは他の理由により行われた多角化の事後的な説明にすぎない場合が多い。
ex.車は電子工学であり、Hughes は電子工学に関係するという説明でなされたGMによる買収

明確に定義されたシナジーでさえしばしば実現に失敗する。

  • ビジネスユニットは、しばしば協力ではなく競争する。
  • 組織的障害

ビジネス間の相互関係は重要
(金融サービス、コンピューター、オフィス用品、エンターテイメント及びヘルスケアなどの分野において、従前は別個であったビジネス間の相互関係は戦略の中心的関心)

技術的/競争的発展は多くのビジネスを結び付け、競争優位について新たな可能性を作り出す。

出発点となる概念・・価値連鎖(value chain)
全てのビジネスユニットは、価値活動(value activities)(競争を可能にする活動)の集積。
ユニットが競争優位を得るのは、全体としての会社ではなく価値活動のレベル。

価値活動の9つのカテゴリー 1.主たる活動:製品又はサービスを作り出し、それを配達又は売却し、アフターサポートを提供する。

    市内へのロジスティクス
     オペレーション
       市外へのロジスティクス
       販売活動
       サービス
2.サポート活動:主たる活動を可能にするインプットとインフラを提供する

⑥ 会社インフラ
⑦ 人事管理
⑧ 技術開発
⑨ 調達

価値連鎖は、シナジーを創造する2種類の相互関係を定義する。
       スキルの移転能力
       活動の共有能力
ex.販売部隊やロジスティクスネットワークの共有

各ビジネスユニットは別個の価値連鎖
but
活動方法についての知識はユニット間で移転される

ex.化粧品ビジネスユニットからせき止めシロップ販売ユニットへの、ポジショニング概念宣伝技術、包装ノウハウについてのアイデアの移転。
ex.マニュアル化

類似の買い手や販売ルート(類似の関係者)、類似の価値活動(当局関係や調達)、価値連鎖の配置における類似性(多様な場所でのサービス組織の管理)、類似の戦略概念(低コスト)

スキル移転(知識の共有)の機会が生じる

(●スキルを移転できる基盤が必要。(それがコアとなる。))

類似性の一般性

ほとんどのビジネス間で、いずれかのレベルで類似性を創造でき多角化の罠に陥る。
but
単なる類似性では十分ではない。

スキル移転が競争優位を導くための、ビジネス間の類似性についての3つの条件

1.ビジネスに関係する活動が、専門技術の共有が有意義となるのに十分に類似すること。(The activities involved in the businesses are similar enough that sharing expertise is meaningful.)

広汎な類似性(例えば、強力な宣伝や金属を曲げるような一般的な重要な加工技術)は多角化にとって十分な基礎ではない。

2.スキル移転が競争優位にとって重要な活動に関係すること。
当局関係や消費財ユニットにおける不動産などの付随活動におけるスキル移転は有益かもしれないが、多角化の基礎ではない。

3.それが移転されるユニットにとってスキルが競争優位の重要な源泉となること。

移転される専門技術やスキルは、競合者を超えるのに十分高度かつ価値あるものである。
スキル移転について
  • スキル移転は、移転されるユニットの戦略やオペレーションを実質的に変化させる積極的プロセス
  • 変化への明確な見通しが必要(多くの場合、スキルが移転されるであろうという漠然とした期待)
  • スキル移転のための意識的活動が必要(ex.重要な人員の割当、高度なマネジメントの参加とサポート、インセンティブ)
  • 価値ある専門技術をユニットを超えて結集
  • 1度の又は継続的であり得る

スキル移転が1度の場合、新たなスキルを注入する機会を使い果たせば、ユニットは売却されるべき。(←もはや株主価値を創造しない。)
but

適切に選ばれたビジネスへ多角化した会社は、多くの方向にスキルを移転することができる。

  • ユニット間のやりとりを促進する組織構造
  • ターゲット産業における会社を足がかりとして取得し、その上に自らの専門技術を確立することは検討の価値あり。

    自社参入によるリスクを減らすとともに、プロセスを加速する。
活動の共有

ex.物流システムや販売部隊の共有

共有化→コスト低減競争優位but深刻な組織的抵抗→単純なポートフォリオマネジメントへ後退

  • 規模の利益/利用効率の向上/学習曲線の低下→コスト減少
    ex.GEによる宣伝、販売及びアフターサービスの共有化
  • 差別化への潜在力の増大
    ex.注文処理システムの共有化により、買い手が評価する新たな特性とサービスを可能にする。
  • 差別化コストの引下げ
    ex.サービスネットワークの共有化→高度な遠隔サービス技術を経済的に可能にした。

共有化は競争優位にとって重要な活動に関係しなくてはならない。
ex.輸送費用がかかるオムツとペーパータオルについての、P&Gの配送システムの共有。
×経費のみの共有機会に基づく多角化はほとんどない。

活動の共通化に伴い生じるコスト(それをカバーする利益が必要。)

調和コスト(活動のデザインと成果の調和)
ex.2つのビジネスユニットの製品を扱う販売員はその制約を受ける。

規模の利益を享受できない→調整費用が利益を奪う。

共有化のため活動をデザインしなおす→調和費用は軽減される。
ex.共有化された販売員への遠隔コンピューター端末の提供

このような考えなしにビジネスユニットを詰め込めば、共有化コストを悪化される。

技術発展、規制緩和及び競争→活動の共有化から優位を得る機会は増大
ex.多くの産業への電子技術と情報システムの導入

新規設立は買収より統合しやすい。
新規産業に参入する足がかりとして買収し、他のユニットとの共有化を通じてユニットを統合することができる。

P&GDue Pont及びIBM

活動の共有化により多角化する会社の例
それぞれが多角化した分野はしっかり関連したユニットの集積。

活動の共有化モデルは、ビジネスユニット間の協同が促進される組織的状況を必要とする。
×高度に自立的なビジネスユニット
そのための水平的メカニズム

  • 強い企業同一性の認識
  • ビジネスユニット戦略の統合の重要性を強調するミッションステートメント
  • 各ビジネスユニットの業績を超えるものに対して報酬を与えるインセンティブシステム
  • ビジネスユニットを超える対策本部etc.

共有化により継続的メリット→優位さテスト
共有化により、参入コストを減らす→参入費用テスト
活動供給化の広範な機会がある場合でも、会社は魅力テストを満たさなくてはならない。

もてなしへの価値の追加

マリオットは、
       レストランビジネス
       航空機での食事提供
       施設のための食事サービスマネジメント
       ホテル産業
       空港でのレストラン、スナックバー、売店
       グルメレストラン(×)
       クルーズ船(×)、テーマパーク(×)、旅行代理店(×)、安モーテル、retirement center

食品サービスともてなしにおける高度なスキルを利用した多角化。

  • 6000を超える標準化したレシピ
  • 詳細にマニュアル化されたホテル手順
  • 共有された食品調達/配送システム→他のホテル会社より、食品サービスにおいて50%高い利ざやを稼ぐ
  • ビルディング、土地、建物デザインについての統合された不動産ユニット

共有化の見通し

新規設立小規模な買収による最初の参入

企業買収による拠点の地理的拡大と、フィットしない部分の処分。

マリオットの失敗(表面的類似性にかかわらずスキル移転に失敗
       グルメレストラン(←標準化されたメニューは有効でなかった)
       テーマパーク
       クルーズ船

ホテルと中価格レストランの慎重に秩序だったマネジメントより、エンターテイメントと華やかさに基づく。
       旅行代理店
ホテルの重要な顧客と競争しなくてはならず、共有すべきスキルや機会を持たなかった。

企業戦略の選択

各企業戦略概念→異なる方法で株主価値を創造することを可能にする。

①その役割と目的を明確に定義し、②各概念が必要とするスキルを有し、③戦略とフィットする方法で多角化を管理するよう組織化し、④適切な資本市場環境にあれば、会社はいずれの概念によっても成功することができる。
but
ポートフォリオマネジメントは限られた環境においてのみ適合する。

企業戦略は今回限りの選択ではなく、発展するビジョンであるべき。
会社は長期的に好ましい概念を選択し、それに向かって進まなくてはならない。

疑わしい仮定に依拠しない→
①活動の共有化と②スキルの移転は価値の創造に向け最善の道筋を提供する。

各企業戦略概念は相互に排他的ではない。
会社は①スキル移転や②活動の共有化と同時に③構造改革概念を採用することができる。

  • ビジネスユニットがスキルを交換できる場合、活動の共有化戦略はより強力である。
  • マリオットのケースが示すように、会社は2つの戦略を同時に追及するとともに構造改革のいくつかの原則をとり入れることができる。
  • スキルを移転し活動を共有化する産業を選ぶとき、会社はまた、産業構造を変化させる可能性を調査し得る。
  • 会社がその戦略の基礎を相互関係におく場合、その基礎を不慣れな産業における会社の変化におく場合よりも株主価値を創造する広範な基盤を有する。

企業戦略を①スキルの移転か②活動の共有化に基づかせることが健全である。
成功する多角化企業の特色

  • 関連性のない買収をほとんど行わない(「関連性がない」とはスキルを移転しまたは重要な活動を共有する明確な機会のないこと。(5-3の表を参照。))
  • 成功する買収者は、関連性を有する分野に参入する。
    ex.P&GIBMは、それぞれ18と19の相互に関係がある分野で運営し、スキルを移転し活動を共有する多くの機会を享受する。
  • 最良の買収成果を有する会社は、平均以上に新規設立と合弁事業を用いる傾向。(5-3の表によると合弁は買収と同じくらい危険であるが、新規設立は異なる。)

成功する会社は新規設立によりしばしば非常に良い結果を出す。
  ←合弁買収統合の問題が生じる。

活動プログラム

企業戦略の指針を成功する多角化へ転化するため、
    既存のビジネス企業が付加する価値を客観的に認識しなくてはならない。
    かかる評価を通じて企業戦略を理解
    当該ビジネスに必要なスキルと活動の開発とともに将来の多角化を導くべき

企業戦略選択のアプローチ
(●優先順位は①活動の共有、②スキル移転、③構造改革の順)

1.既存ビジネスユニット間の相互関係の認識

活動を共有
し又は既存のビジネスユニットにスキルを移転する全ての機会を認識。

既存のユニットの競争優位を増進させる方法を見つけるだけではなく、多角化の可能な道筋を検討する。

2.企業戦略の基礎となるコアビジネスの選択

成功する多角化は企業戦略の基礎として機能するコアビジネスの理解から始まる。
コアビジネスは魅力的産業に存在し、維持可能な競争優位を達成する潜在力を有し、他のビジネスユニットと重要な相互関係を有し、多角化が生じる基礎となるスキル又は活動を提供する。
会社は最初に、マネジメントを向上させ、戦略を国際化し、技術を革新することにより、コアビジネスの基盤を健全にする。(既存ユニットの地理的拡大の場合は成功する確率が高い。)
コアビジネス以外のユニットを処分→他に配置し得るリソースを開放する。
3.コアビジネス間の相互関係を促進し将来の関連する多角化の基礎を置く水平組織メカニズムの創造
  • 強い企業同一性の認識
  • ビジネスユニット戦略の統合の重要性を強調するミッションステートメント
  • 各ビジネスユニットの業績を超えるものに対して報酬を与えるインセンティブシステム
  • ビジネスユニットを超える対策本部etc.
4.活動の共有を可能にする多角化の機会を追及する

この企業戦略概念は最も注目されるべきである。(但し、会社の戦略は3つのテストの全てを満たさなくてはならない。)
会社は強力な販売チャンネルや世界レベルの技術設備等、共有の最強の基盤となる既存のビジネスユニットにおける活動の一覧を作成→潜在的なビジネスエリアの発見。
足がかりとして買収を利用し又は内部の力を利用し統合問題を最小化するために新規設立を用いることができる。
5.活動の共有機会が限られ又は使い尽くされた場合、スキルの移転による多角化を追及する

その不確かさのため、会社はスキル移転のみに基づく多角化を避けるべきである。

それはむしろ、活動を共有したその後の多角化への一里塚として認識されるべきである。
目的は関連し相互に強めるビジネスユニットの集積を作ることである。
6.それがマネジメントのスキルにフィットし又は企業の相互関係を造る機会が存在しない場合構造改革戦略を追及する

十分に経営されていない会社を見つけ、取得したユニットに適切なマネジメント能力とリソースを配置できる場合、構造改革戦略を用いることができる。
7.株主がポートフォリオマネジャーとなれるよう配当を支払う

不安定な土台に基づく多角化により株主価値を破壊するよりも配当を支払う方が良い。
会社がその収益力を示すことができなければ、いくつかの会社が配当しない理由として述べる税金への配慮は、多角化の正当な理由とはならない。
企業テーマの創造

企業テーマを定義することは企業が株主価値を創造することを確実にする良い方法である。

統合化。(相互関係)
ex.「C&C」テーマを有するNEC
NECはコンピューターとコミュニケーションを結合することにより、そのコンピューター、半導体、遠隔通信及び電子技術ビジネスを統合する。

各ビジネスユニットの競争優位を真に強める企業戦略は企業買収者に対する最高の防衛である。
多角化のテスト企業戦略の明確な選択に焦点を絞ることにより、会社の多角化路線の結果は大きく異なり得る。


Ⅱ-3 いかに国際企業は乗り越えるか(マイケル・ポーター) 
前文

国際企業は、①マルチドメスティック競争者(各拠点がそれぞれの国内市場において独立して競争することを許す)から②国際的組織(その製品及び市場ポジションの全体的世界システムを競争に対抗させる)へと変化すべきであり得る。

国際企業は、国をまたぐ製造スケールエコノミクスから外国競合者のキャッシュフローの源泉に至るまで、レバレッジポイントを支配しようとする。重要製品や主要市場での値下げ等により、競合者の対応をより高額かつ難しいものとする。その目標は①競合者の効率性の破壊②自らの効率性を改善である。

全ての企業がグローバル戦略を立てるべきではない。グローバル競争はリターンが大きい反面リスク(ex.巨大投資の要請)も大きく、基本方針とオペレーションの変化が要請される。グローバルな競争は多国籍ビジネスのマネジメントについての新しいアプローチを要請し、しばしば次を可能にする。

  • ゼロ又はマイナスのROIを伴う投資プロジェクト
  • 拠点間で大きく異なる財務目標
  • ある市場においてオーバーデザインされ又は低価格を設定される製品ライン
  • 国毎のマーケットポジションを、世界的ポートフォリオの相互依存的な要素であり、収益性により増減すべきものとして見る視点。
  • 人件費が高い国と低い国の双方における製造施設の建設

マルチドメスティックビジネス

グローバルビジネス

  • 規模の経済が競争優位を生み出さない
  • 市場間で大きく異なる製品
  • 高い輸送コストや政府障壁
  • 地域的活動(ex.インストール、配送)の強調
  • サービスビジネスのようにリードタイムが短い場合
  • 特定の市場に密接に結びつく研究開発費


ドメスティックベースで競争
ex.多くの非耐久消費財ビジネス(Proctor & Gamble)、低技術の組立企業、多くの巨大資源加工産業及び卸/サービスビジネス

ユニットコスト、評判又はサービスの観点から、世界規模のボリュームにより大きな利益が得られる(その利益がボリューム増のためのコストを上回る。)場合

ボリューム増加の優位性は、①大きな製造施設からだけではなく、②効率的なロジスティックネットワークや③より大量配送ネットワークからも生じ得る。
世界規模のボリュームは、研究開発への高レベルの投資にとって有利となる。
(ex.製薬又は航空機など高いレベルの研究開発を必要とする多くの産業はグローバル。)

今日グローバル産業・・自動車やテレビ等・・は、かつてはそうでなかった。→会社はマルチドメスティックからグローバル競争へのシフトを引き起こす競争的相互連関の変化の潜在性を見なくてはならない。

そのビジネスがグローバルとなる潜在性を持つがグローバルになっていない場合、次の3つの質問に答えるため、効果的にイノベートできるかどうかを問うとともに、そのイノベーションの競争への影響を理解しなくてはならない。

  • いかなる戦略的イノベーションがグローバル競争を引き起こすか。
  • グローバル戦略の優位性を確立するため、競合者の中での最高のポジションにあるか。
  • リーディングポジションの確立のため、いかなるリソースがいかなる期間必要であるか。
グローバル産業とは何か

戦略的観点から、多国籍企業(そのホームカントリー外に重要なオペレーションと市場利益を有する企業)が競争する産業は2種類・・①マルチドメスティックと②グローバル・・あり、その経済的意味と成功のための要件を異にする。

マルチドメスティック産業

グローバル産業

  • 市場毎に競争的チャレンジをとらえ、別個の戦略を追求
  • 各拠点は自立的なオペレーションを伴い、戦略的に独立。
  • 本部は世界的に財務管理とマーケティング(商標を含む)方針を調整し、研究開発と部品製造のいくつかを集中する。しかし、戦略とオペレーションは分散される。
  • 各拠点はプロフィットセンターであり、市場機会に相応して収益と成長に貢献することが期待される。
  • 他の多国籍企業及び地域的競合者と市場ベースで競争する。

ex.家庭用品のProctor & Gamble、制御装置のHoneywell、アルミニウムのAlcoa及びブランド食品のGeneral Foods

  • 競合者に対し、製品及びマーケットポジションの全体的世界システムを作る。
  • 各国の拠点は、オペレーション及び戦略において相互依存的。(ex.ある拠点は、その製品ラインの一部の製造に特化し、他と製品を交換する。)
  • あるマーケットの収益目標は、世界システムのコストポジション/効率性又は主な競合者に対する相対的ポジションへのインパクトにより異なる。
  • マネジメントは他の多国籍企業と世界的に争う。戦略を集中し、オペレーションの多様な側面は経済と効率性により分散又は集中させる。会社は、世界システムの効率性に対するマイナスを回避しつつ、地域市場ニーズへの対応を追求する。

マルチドメスティック/グローバルのラベルは各産業/産業セグメントに適用され、全体的産業グループには必ずしも適用されない。(ex.電気機器産業において、スチームタービンジェネレーターや巨大電気モーター等の重機はグローバルであるが、低圧の建設制御及び電気備品はマルチドメスティック。)

成功するグローバル競争者

3つのグローバル企業の成功。

  • 競争をグローバルなものと捉え、統合的な世界規模ベースの戦略を形成
  • 各産業での競争ゲームのルールを変える戦略的イノベーションを開発。(イノベーションは統合的世界システムの開発を支える梃子として機能するが、イノベーションの実行には十分強力な市場ポジションが要請される。)
  • その戦略を競合者よりも積極的かつ効率的に実行した。
  • 競合者の反応を評価し、それに対する障壁を作った。
  • 新たに競争するために必要な財務資源とコミットメントを有し、統合的システムをマネジメントする組織構造を有する。

キャタピラー:製造におけるイノベーション
エリクソン:技術におけるイノベーション
ホンダ:マーケティングにおけるイノベーション

キャタピラーのケース:
コマツとの競争

キャタピラートラクター社は大規模な建設機器をグローバルビジネスへと転換し、有力な日本の競合者に直面しながらも、そのビジネスにおいて世界的リーダーシップを達成した。

その困難性。

  • 建設機器は国により仕様が異なる。
  • 機械は輸送費が高く、地域配送・・ユーザーファイナンス、スペアパーツ在庫及び修理施設を含む・・が要求され、高度な地域的マネジメントが要請される。

2つの障壁。

障壁1:グローバルな配送システム。
会社は、全世界での米国海軍設営隊員へのサービスのため、独立のディーラーシップを設立→スペアパーツから高収益のキャッシュフロー提供し、新たなユニット在庫を可能にする。→グローバルな配送システムの確立.

障壁2:大規模製造による規模の利益
建設機器の製造コストの2/3は資本集約的な大型部品・・エンジン、車軸、トランスミッション及び油圧ブレーキ・・であり、規模の経済が大きく妥当する。

①同一部品を用いる製品ラインをデザインし、②世界的需要を満たすため巨額の投資により大規模かつ最新鋭の部品製造施設を設立→多くの国における販売ネットワークをコスト優位へと転換した。

会社は、各主要市場・・ヨーロッパ、日本、ブラジル、オーストラリア等・・に組立工場を建設→
①最終製品の高い輸送コストの回避、②地域的な製品特性の追加、③地方政府との良好な関係。

コマツ(日本のトップ建設機器メーカー)の挑戦:
人件費及び鉄鋼費の優位を伴う集中施設からの高品質製品の輸出に基づく世界戦略→この10年間に、キャタピラーと競合するほとんど全ての製品ラインにおける重要な販売シェアを獲得し、世界建設機器市場の15%を獲得した。

キャタピラーとコマツの財務比較

キャタピラー

コマツ

1980年の建設機器の売上概算

72億ドル

20億ドル

1974年より1979年の平均

収益対投資比率

負債/エクイティ

エクイティに対するリターン

利益留保の%

全収入の%としてのスペアパーツ

オペレーションから利用できるキャッシュフロー

13.6%

0.

19.1

69%

30%~35%

681百万ドル

4.0%

2.1

12.2

65%

15%~20%

140百万ドル

世界的リーディングポジションを守るために必要な4つの特性

グローバル戦略

キャタピラーの統合的グローバル戦略はコスト及び効率性において競争優位を生み出す。コマツは、キャタピラーを追い越すのではなく、追いつくにすぎない。

製造への積極投資

世界規模の販売量からの規模の経済を十分に利用する、柔軟なオートメーション製造システムへの積極投資。

財務リソースへの積極的コミット

キャタピラーはリソースを他のビジネスに使ったり、過度の配当によりコマツに対する財務的優位を浪費しない→キャタピラーより収益性の低いコマツは、キャタピラーの高い投資率に対抗するには負債能力を使わなくてはならない。

日本市場における障壁的ポジション

1963年に三菱との間で合弁企業を設立。
合弁企業は市場ポジションにおいて2番手であるが、オペレーション的に日本市場のためになるとともに、戦略的にコマツの市場シェアとキャッシュフローを抑制する。

日本は世界市場の20%に満たないが、コマツのキャッシュフローの80%超を生み出す。

エリクソン:小さいことは美しいか

スウェーデンのエリクソンは、技術的ニッチの開発により、グローバル競合者として成功。

    まず大規模にオペレートしてホームマーケットを守り、効率的な規模の経済を獲得
→研究開発を助け競争的レバレッジを提供。
    スウェーデン市場は比較的小さいが、エリクソンは電子的交換技術の出現を国際市場のニッチにおいて競合者を混乱させる強力かつグローバルなレバレッジへと転換した。

電気機械時代の1960年代:電話交換機ビジネスはローカル
総インストール費用の70%はハードウェア;ハードウェア費用の70%は直接人件費、製造経費及び機器インストール。
電話システムは国毎に異なり、規模の経済は低く、コストへのインパクトにおいてボリュームよりも賃金が重要。

1960年代後半:
安い人件費と国有電話会社の供給要請に応え、電気交換生産をLDC(地域生産)へと移行。
コアとなるソフトウェアと重要部品のみを集中的に供給し、市場ベースで競争。(ヨーロッパと植民地的繋がりを有さない発展途上国、国内供給者を欠くより小さいヨーロッパ市場でスウェーデンと同じ交換システムを用いる市場に投資を集中。)

1970年代:電子交換技術の出現
コストの60%をソフトウェアが占め、ハードウェアコストの55%は生産が大きく規模に左右される電子部品。システム開発のため巨額の研究開発費が必要。
→大きな国際企業に有利で、小さな市場/システムに集中するエリクソンには対応不可能。

エリクソンの戦略的イノベーション:電子技術を小さな電話システムにも導入するモジュール技術:
許容可能なコストで多様な電話システムのニーズに対応するため、異なる組合せで用いられるモジュールソフトウェアパッケージの開発。さらに、その後のシステムは少数の新たなモジュールしか必要としなかった。

会社は急速に開発費を償却し、小さな電話システムが電子化されソフトウェアシステムの販売数が増えるにつれて加速的に規模の経済の利益を得た。
今日、ソフトウェアコストと多様性における優位を享受する。

結局、エリクソンは小さなシステムにおいてグローバルに競争することができた。

ホンダのマーケティング才能

ホンダがグローバル企業になる前に2つの二輪車産業が存在:

    アジアその他の発展途上国では、通勤のための小型/単純な二輪車の需要→価格競争。
    ヨーロッパとアメリカでは、娯楽のための大型/精密マシンの需要→小規模な市場におけるスタイリングとブランドイメージによる差別化。(ex.ハーレーダビッドソン、BMWTriumphBSA

ホンダは、中流の米国人に二輪車の楽しさを確信させる→産業をグローバルにした。
そのマーケティングイノベーションのため、1950年代後半から1960年代後半にかけてホンダの年間成長率は20%を超えた。ホンダはその後、本国及び米国からのキャッシュフローを投入してヨーロッパに進出した。

ホンダの3つのステップ:

    市場の嗜好を自らの製品特性に向け、米国及びヨーロッパの競合者の製品特性から切り離した

  • 新たな顧客をターゲットとし、宣伝、プロモーション及びトレードショウを用いてホンダの二輪車が①高価ではなく、②信頼できるとともに③使いやすいことを確信させた。
  • 流通ネットワーク・・2000のディーラー、小売宣伝者、寛大な保証とサービスサポート及び素早いスペアパーツの調達・・への大きな投資はマーケティングメッセージを後押しした。
    より上のレベルの製品ラインにより顧客を引き付け、成長を維持した。
  • 新たなバイク所有者の約半数は、12ヶ月以内により大きく高価なモデルを購入→高いブランドロイヤルティを示した。
  • フルレンジへの拡大→ドルベースのボリュームにおける自立的成長と高いマージンを可能にするモデルミックス。
  • より大きなボリュームはマーケティング及びディストリビューションコストを削減し、750ccのスーパーバイクの市場におけるポジションを改善。
  • ホンダは、よりよく製造された、より低価格の、開発コストが広範な製品ラインに分散されるバイクにより競争を打ち負かした。
    集中された生産とロジスティクスを通じての規模の利益
  • エンジンとバイク部品の販売量の増大(月に5万台以上)はよりコストのかからない製造技術を可能にする。(10年間、ホンダ工場の生産性は、ヨーロッパ及び米国のメーカーより数倍高い平均月13.1%の割合で向上した。)
  • ホンダの生産量の増大により輸送コストも低くなり、1台当たりの陸揚げコストを競合者よりもはるかに低いものとした。
  • 生産コストの低さは、ホンダの大きなマーケティング及びディストリビューション投資への資金投入を助けた。マーケティング及びディストリビューションにおける規模の経済は、生産コストの低さと結びつき、ホンダの乗用車への移行への資金の源泉となる高い収益をもたらした。
何を学ぶことができるか

各グローバルプレーヤーは産業のダイナミクスを変え、主な競合者を振り切った。
    キャタピラーは、デザインの共通化を通じて規模の経済を達成することにより、世界規模の販売量と部品収入の市場を開拓した。競合者はそのコスト/利益に対抗できず、追いつくための投資を行なうことができなかった。
    エリクソンは、市場セグメントに対応するモジュラー技術を開発することによりコスト優位を作り出した。そのグローバル戦略は、電子技術をエリクソンへの脅威から競合者への障壁へと転換した。
    ホンダはマーケティングにより世界的需要を均質化し、製造、マーケティング及びディストリビューションにおける規模の経済の潜在力を解き放った

競争の唯一の避難所は高度にブランド意識を有する、少量の専門市場である。

各ケースにおいて、当該産業はグローバル戦略をもつ企業が利用できる製品及び市場の世界的システムの潜在性を有した。
    建設機器は部品製造における大きな規模の経済を提供し、現地組立を通じて、高い輸送コストと政府障壁を中和させることを可能にした。
   エリクソンは電子スイッチのためのソフト開発における規模の経済を解き放った。モジュラー技術は地域的な製品差異と現地の供給者を使用する政府の希望に対応した。
   ホンダのマーケティング技術が主要市場での類似の特性を有する製品需要を引きあげると、製造における規模の経済は、低い輸送コストと関税障壁と結びつき、グローバルゲームへと転換した。

いずれのケースも、「世界製品」から成功したわけではない。会社は、生産コストを犠牲にすることなく地域的差異に適応した。ある主要市場でのグローバルプレーヤーのポジションは、他の市場でのポジションを強化した。
    キャタピラーのデザイン類似性と集中部品施設のため、各市場は既存の有利なコスト構造に貢献する。(●共通化と集中生産→規模の利益を最大化。)
    エリクソンの共用モジュールのためシステムが新たな国で販売される都度コスト低下につながる。
    ホンダは、各市場で販売されるユニットの集中生産から規模の経済を引き出し、米国でのマーケティングとディストリビューション経験をヨーロッパでの成功に利用した。

成功するグローバル戦略は、優れた効率性とコスト優位に加え、他方向の2つの能力を要請する。
   タイミング:成功するグローバル競合者は生産コストやディストリビューション優位を、競合者の対応をより難しく高くつくものとするレバレッジポイントとして利用する。
    財務:グローバルイノベーターは、技術であれ、施設であれ、ディストリビューションであれ、競合者より前に積極的に投資する。成功すれば、より大きなボリューム(ホンダとエリクソン)かより低いコスト(3社全て)により増大するキャッシュフローから利益を得る。グローバル企業は、投資を増加するか価格を下げるかのいずれかのために資金を使うことができ、新規の市場参入者への障壁を創造する。

グローバルプレーヤーは、将来広範な基盤に基づく成功を生み出すため、競合者の誰に対して成功しなくてはならないかを判断すべきである。
    キャタピラーは、地域的な製品供給のためだけではなくコマツを追うために極東に拠点を設けた。(キャタピラーはますます製品及び製造技術を日本から供給した。)
    エリクソンの技術における基本的出発は、明らかに、ITTとシーメンス(その広大なマーケットシェアは通常より小さいヨーロッパやアフリカ市場での優位を与える)を狙ったものであった。
    ホンダは、その主な競合者であるヤマハとカワサキが日本企業であったことから、米国とヨーロッパに新たな市場を創造した。最初にグローバルチャンスを開拓することにより有利に出発し、競合者が国際的野心を持った時にも強くあり続けた。

グローバルチェスゲームをする

グローバル競争はトップマネジメントに、そのビジネスについての考え方とオペレーション方法の変更を強いる。マルチドメスティックであった時に有効であった方針は逆効果であり得る。最も強力な手段は、世界的コストポジション又は差別化能力を改善し、主要な世界的競合者を無力化するものである。

2つの潜在的手段

   新たに産業化された国(NICs)におけるリーディングポジションの獲得。例えば、急成長するメキシコ、ブラジル及びインドネシアは世界的資本財市場の重要な部分となる。その産業がグローバルとなる潜在性を有するのであれば、これらの市場でリーディングポジションを獲得する会社はその競合者を阻止する決定的手段を講じたことになる。

これらの国は、しばしば貿易障壁が高く、自前の現地子会社を通じて市場に達しようとする企業は罠に陥りがちである。しかし、賢明なグローバル企業は、NICにグローバル調達ネットワークの重要部分となる専門的な部品製造施設を構築することにより、状況を利用する。会社は、専門施設の部品を輸出し、補完的製品の輸入と相殺する。国内及び小さい隣接市場のための最終組立ては地域的になされ得る。(主なアイテムについて複数の調達源泉を持つことはグローバル供給ネットワーク崩壊のリスクを最小化する。)
(ex.ブラジルにおけるシーメンスのサーキットブレーカーオペレーション。会社が主要部品のいくつかについて西ドイツのキャパシティを超えて成長した時、ブラジル政府からの重機産業への資本投資要請を得た。シーメンスは今日、共通部品の主要な部分をブラジルで製造し、ヨーロッパで製造される他の部品と交換し、ブラジルにおける最も低価格のリーディング製品供給者である。)

    競合者を阻止するため、その最大の顧客とともに強固なポジションを確立する。グローバル競合者はグローバル市場を支配する顧客の重要性を認識し、既存の又は将来の競合者の売上を阻止する。
(ex.世界最大の自動レコードチェンジャーメーカーのBSR(英国)の例。日本のオーディオ機器の輸出が急速に拡大していた1970年代、BSRは、日本がレコードチェンジャーのマーケティングに乗り出せば米国及びヨーロッパ市場を失うであろうことを認識した。BSRは、製品を日本仕様にデザインし直し、ディストリビューターに積極的な価格ディスカウントと在庫サポートを提示した結果、日本企業はその拡大を正当化できなかった。BSRは日本企業のレコードチェンジャー市場への参入を阻止しただけではなく、その競合者(Garrard)に先んじた。)
グローバル企業は、競合者のディストリビューターや小売業者へのアクセスを阻止するため、同様の方針を採用できる。米国企業の多くは、巨大なプライベートラベル顧客(シアーズやリーボック等)へ奉仕することを好まず、又は低価格の小売価格を無視し、競合者によるアクセスを許し、失敗した。
重要な顧客への価格決定ROIのみで決められるべきではない。グローバル競争で重要なのは、その価格の予想される参入者へのインパクトビジネスベースの確保失敗のコストである。世界的チェスゲームをコントロールする1つの方法は国毎に価格を異にすることである。
相互依存的にマネジメントする

成功するグローバル競争者は、多様な国におけるそのビジネスを、独立するポジションのポートフォリオとしてではなく単一のシステムとしてマネジメントする。

× ポートフォリオプランニング理論:
マーケットの魅力とそこでの会社のポジションの強さにより、注入すべき企業リソースの程度が決定される。会社は強いポジションを守り、弱いポジションを変え又は捨てるべき。高い収益/成長の市場を、低い収益/成長の市場より積極的に追求し、市場毎に競争するかどうかを別個に決定する。
vs.グローバル産業における国際競争には適合しない。

○ ある市場でのポジションを他の市場でのポジションに対するレバレッジとする能力に集中する。グローバルシステムにおいて、レバレッジ能力は市場の魅力と同様に重要である。会社はその弱いポジションを改善する必要は無い。

市場から獲得するレバレッジ
    市場から獲得する最も明確なレバレッジは、会社の全体コスト又は効率性に貢献するボリューム。(ex.デュポンとテキサスインスツルメントは辛抱強く、洗練された日本市場で大きな販売ボリュームを獲得し、それが他の地域における努力を支える。)
    他市場に先立つ製品イノベーションを継続的に支えるマーケット(ex.長距離ジェット航空機における米国等)のシェアの獲得。かかる市場で高いシェアを有する競合者は、常に新製品投資を正当化できる。
    地域のための効率的な大規模製造施設をサポートする市場(ex.シーメンスにとってのブラジル)
    そこでのポジションにより競合者のキャッシュフローに影響を与える。

組織:アキレスの踵

組織構造とレポーティング関係はグローバル戦略において潜在的な問題を引き起こす。
効果的な戦略コントロール→中央製品ライン組織。(←システム的利益の享受。)
効果的な地域的対応→自主性をもった地域組織。
製品ライン組織が最終的権限を有しながら、製品と地域ニーズをバランスさせる必要。

ガイドライン:
    1つの組織構造がある会社の国際ビジネスの全てに妥当するわけではない。(ex.全てのビジネスにマトリックス構造を採用すれば不必要に重くなり得る。)組織的レポーティングラインは、その市場の役割により市場毎に異なるべき。(ex.高いレバレッジを提供する市場は、本部のグローバルビジネスユニットマネジャーと密に機能するべき。しかし、グローバルシステム外のマーケットのマネジャーは、地域的レポーティングシステムに基づく一連の目標だけを要請する。)
    組織的レポーティングラインと構造は国際ビジネスの性質が変化するにつれ変化すべき。(ex.ビジネスがグローバルになる→焦点は集中化へとシフト。国が重要性を増す→グローバルマネジャーの守備範囲に入る。ビジネスのグローバル性が希薄化→地域的自治を強調。)

1つの組織的構造を全てのオペレーションに適用するという一般的傾向は、そのいくつかにとって不利となる。いくつかの米国企業において、このアプローチは当該産業が要請するグローバル戦略の開発を妨げる。(●1つが全てに妥当しない。)

財務政策の競争実現への適合

トップマネジメントが慎重でなければ、従来の財務マネジメント/実務(ex.投資判断におけるDCFリターン分析やリスク分析表等の標準的財務手法、債権者/株式アナリストが好む安定的負債/配当政策)への執着はグローバルビジネスにおける好ましい競争的反応を制約し得る。

資本の割当て
  • グローバル戦略において、投資は長期の相互依存的なキャピタルコミットメント→容易にリターン/リスクとは結び付けられない。
  • 競合者の新たな投資反応に大きな影響を与える→総支出の大きさとタイミングを意識する必要。
  • 会社が投資リターンを得るには、いくつかの国への投資からの収益が一定レベルまで蓄積する必要がある。

グローバル競争はプロジェクト評価への非機械的アプローチを要請する。成功するグローバル競合者は少なくとも2つのレベルの財務コントロールを開発:
    自立的プロジェクトのためのプロフィット/コストセンター
    相互依存的作業並びに競合者のパフォーマンス/リアクションを追跡する戦略センター。

グローバル競合者は、
    グローバル戦略投資の履行をモニターするには短期の枠組みにより、
    グローバル戦略投資とその期待収益を評価するに長期の枠組みにより
オペレートする。

負債と配当


負債/配当政策は、会社全体の統合的投資プログラムの要請により変化する。

初期段階:強力な競争ポジションの会社は、そのグローバルポジションを確立し守るために利益を留保すべき。
産業がグローバルとなり、成長が鈍化し又は利益がポジション維持に必要な再投資を超える場合:会社は収益を企業の他の部分に配分し、借入能力を他の新たなグローバル戦略等に用いるべき。

過去25年間にわたるホンダの負債利用の例。
    ホンダが急成長する日本の二輪車産業において離された2番手であった1950年代半ば、会社は成長に資金を投入するため、デット・エクイティレシオは3.5倍。
    1960年までに日本市場は成熟し、ホンダは支配的になった。デット・エクイティレシオは0.5倍に低下したが、二輪車における会社の国際的拡大により再び上昇した。
    1960年代後半、ホンダは乗用車へと大きく移行し、巨大な借入れを必要とした。その時、二輪のキャッシュフローはその移行に資金を投入した。

1954年から1980年にかけてのホンダの財務方針

期間

有利負債対エクイティレシオ

戦略的側面

1954-55

3.5倍(負債がエクイティの3.5倍)

国内二輪車市場における急速な成長。ホンダはマージンの低い2番手のメーカー。

1959-60

0.5

国内二輪車市場が成熟し、ホンダは支配的な高マージンのメーカー

1964-65

0.7

ホンダは米国二輪車市場に進出。

1969-70

1.6

ホンダは国内乗用車市場への移行を開始

1974-75

1.3

世界的リセッションのため投資休止。二輪車は主なキャッシュの源泉。

1978-80

1.0

二輪車と同じく乗用車の輸出が高く収益的

どちらの戦略的道をとるべきか

国際ビジネスにおける成功への安全な処方箋は存在しない。産業構造は継続的に進化する。キャタピラー、エリクソン及びホンダのアプローチは永遠に機能するわけではない。競合者は産業トレンドを産業リーダーの強さから引き離そうとし、技術的/政治的変化はリーディング企業に再びマルチドメスティックなオペレーションを強いるかもしれない。

国際的又はドメスティックビジネスのいずれにおいても、戦略は競争結果に対して強力な力をもつ。グローバル戦略の採用にはリスクがあるが、多くの企業は、そのビジネスを計画しコントロールしオペレーションする方法を根本的に変えることにより、抜本的にそのポジションを改善することができる。グローバル戦略は、マネジャーが新たな方法で考えることを要請する。そうでなければ、会社は競争の性質を理解し、必要な投資を正当化し又は必要とされる日常行動の変化を維持することができない。

会社がグローバル戦略の実行に成功すれば成功する国際企業に加わり得る。日本企業であれ、米国企業であれ、ヨーロッパ企業であれ、その他であれ、IBM、松下、セイコー、デュポン及びミシュランのような企業を結びつける戦略的糸は、国際競争ゲームのルールが変化したことを明らかに示す。


Ⅱ-4 地域を越えての競争 世界戦略を通じての競争優位(マイケル・ポーター) 
序文

グローバリゼーション(国際取引/投資):第2次世界大戦以来会社に影響を与える最も強力な力の1つ。
①輸送/コミュニケーションコストの低下、②国境を越えての情報/技術の流通増加、③各国のインフラのより等しい成長、④貿易/投資障壁の緩和。

国際戦略の検討
×A:多国籍企業がグローバリゼーションを通じて競争優位を創造する力に焦点。

  • グローバル戦略は、多くの国へのオペレーションの広がりを伴い、スケールメリットを享受し、国際市場ニーズに適合/反応し、資本、労働力、資源及び技術等のリソースを世界中から効率的に集める強力な手段。
  • グローバル企業は国境を超越する。企業の国家的アイデンティティは境界のない戦略的枠組みにより入れ替えられるべき。

vs.
競争のグローバリゼーションを考えるとき、明らかなパラドックスに直面。

  • 会社はグローバルに競争し、原料、資本及び科学知識などのインプットは世界中を自由に移動するが、ロケーションは競争優位において重要な役割を有し続ける。
  • ①国、州及び都市の経済パフォーマンスにおいて著しい相違が存在し、世界の主な競争者は1又は2の国に基礎を置く。(競争優位の地理的集中)②グローバル企業は実際に、多くの国に活動を分散したが、その主要な製品ライン/ビジネスの最も重要な活動の大部分を特定の地域(「ホームベース」)に集中させる。

butホームベースは必ずしもホームカントリーに位置しない。

本論文は、これらのパラドックスを①国際競争の性質と②ビジネスにおけるドメスティックからグローバル戦略へのシフトの理解の枠組みに調和させる。競争優位の創造において、グローバル戦略は①地域化と②グローバルネットワークの双方の役割を統合する必要がある。

ここでの議論はグローバル競争の観点からなされるが、その原則はより一般的に適用され得る。同じ枠組みはどのレベル・・市、州又は隣接国のグループ・・におけるものでも、地域を超えた競争に妥当する。(ex.全国的な競争を求める地域競争者や地域的な競争を求める全国的競争者への適用)

3つのグローバル競合者のケース研究
デンマークにベースをおくNovo-Nordisk Group

デンマークに本部をおく、インシュリンと工業酵素の世界的なリーディング輸出者。
90%を超える収益を母国外で生み出し、ヨーロッパ、米国及び日本で強いポジションを持つ。1991年に、従業員の27%はデンマーク外に存在し、全資産の19%がヨーロッパ外に存在した。デンマーク外に7つのR&Dロケーションと9つの生産拠点を有した。製品を100カ国でディストリビュートし、43カ国でマーケティング子会社を有す。インシュリンの主原料である動物の膵臓を20を超える国で調達。世界中から資本を集め、短期借入れの83%と長期負債の54%をデンマーククローネ以外の通貨で調達する。ロンドン及びニューヨーク証券取引所で上場した。

ホンダ

日本に本部をおく、乗用車の世界的なリーディングメーカー。二輪車における世界的リーダー。1991年に収益の61%を日本外で生み出し、アジアと北アメリカにおいて強力なマーケットポジションを持つ。従業員の22%と全資産の39%が日本外に存在し、生産/組立施設を39カ国にもち、二輪車と乗用車を150カ国でディストリビュートする。世界中でインプット/資本を調達し、東京とニューヨークの証券取引所で上場した。

Hewlett-Packard

米国に本部をおく、プリンター、医療機器及びコンピューター等の製品のリーダーであるとともに、世界最大かつ多様な電子測量/テスト機器のメーカー。1991年に収益の54%を米国外で生み出し、93,000人の従業員の38%とその総資産の50%を米国外に有し、600の販売及びサポートオフィスと販売代理店を110カ国で有す。ロンドン、パリ、東京、フランクフルト、シュトゥットゥガルト、スイス及びパシフィック証券取引所で上場。

グローバリゼーションにより、その活動を広範に世界中に拡大させた。

HPのロケーション方針:

  • 直接労働による低技術の製造活動を低コストエリアにおく。(米国に較べて40~75%の節約)PCの部品組立/製造は、シンガポールで行い、電子部品製造はマレーシア行う。
  • 中程度の技術活動のいくつかを低コスト国におく。(ex.新たな電子部品の生産/プロセスエンジニアリング活動のいくつかをマレーシアにおける製造工場に移転。ソフトウェア開発/メンテナンスは、大学教育を受けたプログラマーが米国よりも40~60%低い価格で働くインド、中国、東ヨーロッパ及び以前のソビエトに下請けさせる。)
グローバル戦略の一般的枠組み

競争戦略における問題の多くはドメスティック企業/グローバル企業にとって共通。

双方にとって
成功は企業が競争する産業の魅力産業における企業の相対的ポジションの機能。産業における企業のパフォーマンスはライバルに対する競争優位(又不利)に依拠する。競争優位はライバル以上の低コスト又は差別化及びそのための追加コストを超えるプレミアム価格を支える能力に示される。いくつかの競争優位はオペレーション効率における差異から生じるが、最も維持できる優位はユニークな競争的ポジションから生じる。ドメスティック企業/グローバル企業の双方は、その産業構造を理解し、その競争優位の源泉を確認し、競合者を分析しなくてはならない。

「グローバル」戦略は、企業が国を超える際に生じる特別な問題に言及する。
グローバル戦略の必要性は産業における国際競争の性質に依拠する。(全ての産業がグローバル戦略を要請するわけではない。)
産業における国際競争の性質の連続体:

  • 一方の端はマルチドメスティック産業・・多くの(全ての)国に存在するが、ほとんどリンケージを持たずに国ベースで競争が行われる産業。(ex.ほとんどの小売、金属製造、建築及び多くのサービスを含む。)
  • 他の端は、真にグローバル産業であり、ある国でのポジションが他でのポジションに大きな影響を与える。(ex.商業航空機、消費電化製品、多くの産業機械)
  • マルチドメスティック産業では、グローバル戦略は必要ない。そこでの国際戦略は明確なドメスティック戦略であり、ユニットをオペレートする国に大きな裁量/自治を与える。
  • グローバル産業においては、企業は全ての国を同時に関係させる統合的戦略を創造しなくてはならない。

グローバル戦略における主な問題は、いついかにして世界的全体が国内部分の合計を越えるかである。

競争優位の基礎とグローバル戦略がいかに貢献するかについての理解は、企業活動の価値連鎖への解体を求める。
特定のビジネスにおいて競争する企業は別個であるが相互関連を有する一連の活動を行う。全ての活動は通常、いくつかの過程、日課、人的資源、物理的資産、技術並びに情報の創造/使用を必要とする。企業の「強さ」「適性」「能力」及び「資源」・・戦略議論における共通のフレーズ・・はそれらが妥当する特定の活動の観点から最も良く理解され得る。

価値連鎖は企業の活動をいくつかのカテゴリーに区分する。
    生産、マーケティング、デリバリー及び製品/サービスのサポートに直接関係するもの、
    インプット(生産活動で投入される財やサービス)/技術を創造、調達、改良するもの、
    資本獲得や全体的判断など全体的機能を行うもの
各活動又は経済的/組織的プロセスは、現場修理、資材受入/在庫、請求及び従業員評価/報酬決定のレベルにおいて、これらの各カテゴリーの中に現れる。行われる活動はビジネスに依拠する。

活動は、コスト又は差別化における競争優位の基礎を形成する。競争優位は、企業が全体的に低コストで必要な活動を行い、またはいくつかの活動を買手価値(buyer value)を創造しプレミアム価格を支持するユニークな方法で行うときに生じる。買手価値の創造は他方、いかに企業がそのチャンネル/エンドユーザーの活動に影響するかに依拠する。

活動における競争優位はオペレーション効率戦略の双方から生じる。オペレーション効率はベストプラクティスでの活動に関係する。これは、最もコスト効率的に購入されたインプット、管理実務(managerial practices)等の利用を含む。グローバル戦略の必要性は、一部には、グローバル調達及び知識移転等を通じてのオペレーション効率の強化にある。

企業戦略は活動配置(configuration of activities及びいかにそれらをフィットするかを定義する。異なる戦略的ポジションは、特定の製品/サービス種類を生み出し、特定の顧客グループの特別なニーズに対応し、一定の種類の顧客に最も効率的にアクセスするためのテイラリングを伴う。

  • 広範なターゲットを有する競合者は、一連の産業セグメントをまたぐ活動のシェアにより、優位の獲得を求める。
  • 狭いターゲットを有する競合者は、特定のセグメントのニーズへの活動のテイラリングにより、優位の獲得を求める。

グローバル戦略はまた、ポジションに内在するトレードオフか活動をポジションに適合させる能力に影響を与えることにより、戦略的ポジショニングに影響する。

グローバル戦略を特徴づけるのは、価値連鎖の部分を各国に拡散させる度合いである。
基本選択は2つの分野に分けられ得る。

1.配置configuration

価値連鎖における各活動をどの場所におくか。
(ex.組立とR&Dを別の国におく。ある活動を同一の場所におくか分散させるか。)

企業活動の国際的配置において、各活動の場所サイト数の選択を通じて競争優位を創造する。

活動場所:

  • 活動配置のモティベーションの1つは、活動実行における相対的優位(comparative advantage(ex.原材料や人の最もコスト効率のよいプールを有する地域)。(ex.ソフトウェアの多国籍企業のいくつかは、低コストかつ有能なプログラマーへのアクセスのため、バグ除去/ムメンテナンス活動をインドにおく。)活動により相対的優位をもつ地域は異なる→グローバル企業は地域をまたぐ競争優位をアービトレージし得る。
  • 活動配置の2番目のモティベーションは、競争/生産性優位。活動又はそのグループは、イノベーション/生産性向上のため最も魅力的環境の国に置かれる。

サイト数:
企業は、活動をある場所に集中するかもしれないし、多くの場所に分散するかも知れない。

  • 集中→スケールメリットを享受し、急速に学習曲線を低下させ得る。各活動間のよりよい調整を可能にする。
  • 多数のロケーションへの分散→輸送/在庫コストを最小化し、単一の活動サイトのリスクをヘッジし、敏感に地域市場に活動をテイラリングし、ヘッドクォーターに伝えられる国/市場条件についての学習を促進し、地域政府のプレッシャー/インセンティブに対応できる。

グローバル企業はこれらに必要な活動に限り分散すべき。他が同じであれば、多くの活動が同じ場所にあることで効率性/イノベーションは促進される。
企業は、しばしば、他の活動を集中する能力(又は地域政府からの許可)を得るために、活動を分散させなくてはならない。(ex.多くの国での地域組立工場の設立により、スケールメリットに敏感な部品の輸入が可能になり、かかる部品製造を他に集中することができる。)分散されるべき活動は、スケールメリットが小さく、他の活動と調整を必要としないものであるべき。

2.調整coordination

拡散された活動がネットワークにおいて調整されるか自立的とするかの性質と度合いに焦点をおき、地域環境に合わせてテイラーされる。

  • 販売/ディストリビューションに関係する活動等一定の活動は必然的に顧客のロケーションと結びつく。ある国で販売する企業は、自らマーケティング/販売/ディストリビューション活動を行うか他(ex.販売代理店や合弁パートナー)に依存しなくてはならない。
  • 価値活動における他の活動は、顧客から切り離すことができ、その数とロケーションについて企業が裁量を有する。
  • マルチドメスティック戦略において、会社は各国で価値連鎖全体を行い、各国の拠点は活動のその国へのテイラリングついて自主性を有する。
  • グローバル戦略において、会社は活動を選択的に異なる国におき、ネットワークの競争優位を利用/拡大するためにそれらを調整する。

グローバル戦略はまた、地域を超えた調整活動により競争優位に役立つ。
分散した活動を横断する調整方法、技術及びアウトプット判断は潜在的競争優位に貢献する。(ex.相対的優位のシフト(ex.原料価格や為替レート)に対応し、各国間で学習を共有し、異なる場所で企業に接する流動的購買者に対する企業ブランド(ex.マクドナルドやコカコーラ)を強め、当該企業の複数地域のユニットと取引する多国籍購入者に効率的にサービスし、地域的オペレーションの拡大/縮小のあめとむちを通じて効率的に政府と交渉し、競争場所の選択によりコスト効率的に競争脅威に対応する能力を含む。)
これらは、オペレーション効率か独自のポジションを強める。これらの調整の優位は、分散した各ユニットが自立的に活動しテイラリングすることに比較して検討される。分散したユニットの自主性を要請する国際戦略は、地域ニーズ/条件が多様であり、顧客が全て地域的であり、又はスケールメリットが働かない場合に有利である。実際、調整と自主性のバランスは活動によって多様である。

共通基準の設定、情報交換及びサイト間での責任配分等、地域を横断する多様な調整があり得る。

  • モデル毎の生産責任の異なるロケーションへの割当て等、各国間の責任配分を伴う調整はスケールメリットを解放し得る。
  • 情報交換を伴う調整は世界規模の学習利益を共有する。

調整により、企業は活動分散の優位を享受するが、調整失敗はその優位を減少させ得る。調整における中心的課題は、いかにかつどこで、異なる地域からの情報、技術その他の知識が統合され、製品、プロセスその他の活動に反映されるかである。ホームベースはこれらの重要な機能を担う。

分散したロケーションを横断する調整は組織的問題・・言語/文化の違い、各マネジャー/拠点のインセンティブのグローバル企業全体としてそれへの適合・・を伴う。

グローバル戦略のパターン

グローバル戦略の競争優位のいくつかはロケーションから生じ、他は全体的グローバルネットワークとそれがマネジメントされる方法から生じる。全てのグローバル戦略は、通常、会社の競争的ポジションに反映されるロケーションにおける優位から出発する。この優位により、企業は、国際市場への浸透と多国で競争することの不利を克服することができる。異なる国にベースをおく企業間の不均衡がなければ、競争はマルチドメスティックであり続ける。(●ベースの置き方による有利不利→グローバル競争となる。)

地域に基づく優位はグローバルネットワークを通じて拡大/補完される。他のロケーションの優位はまた、活動分散により享受できる。グローバル競争は、集中または分散される活動様々な活動のロケーション、及び活動が調整される方法に基づき多くのパターンをもつ。
マルチドメスティック産業においては、産業構造は各国が価値連鎖全体を含む高度に分散された配置が好ましい。かかる産業において、各国のユニットに十分な戦略的自治を認めることから強力なメリットが生じる。グローバルネットワークの競争優位が地域的フォーカスとドメスティック競合者の地域的フォーカス/知識を克服するのに十分大きい場合に、グローバル化する。

グローバル戦略はこのように、多くの形態をとる。マクドナルドのグローバル戦略は、インテルやボーイングの戦略とは大きく異なる。

9-2 シティバンク:リテールバンキングにおける配置と調整

集中(Concentrated)

  • 共通のブランドネーム
  • 製品開発
  • ソフトウェア開発
  • グローバル情報インフラ
  • クレジットカード決済システム
  • 訓練プログラム開発

分散(Dispersed)

  • 支店とATMネットワーク
  • テレバンキングセンター
  • 広告宣伝
  • 地域的プロセシングセンター

調整(Coordinated)

  • 一貫したコーポレートイメージ
  • 一貫したブランチオフィスデザイン
  • 一貫したサービスデリバリー

分権(Decentralized)

  • 地域言語/ビジネス慣行への適応
  • 規制コンプライアンス

企業は、グローバル戦略の優位を増加させ不利を減少させる戦略的イノベーションを通じて競争を再定義し得る。(ex.Becton Dickinson は、従来のグラス注射器に対し、使い捨て注射器の需要を創造し、同社は世界的リーダーとなった。他の企業は、スケールメリットを増大させる新たなアプローチの開発、又は多様なニーズに合わせるテイラリングコストを削減する製品デザイン/プロセスの発明により、グローバリゼーションの引き金を引いた。)

ロケーションとグローバル競争

競争のグローバリゼーションにより、企業は、多くの国を横断する活動の調整によってロケーションから独立した競争優位を獲得し得る。しかしながら、グローバリゼーションは、競争におけるロケーションの重要性を失わせない。サービス並びにソフトウェア、先端素材及び生命工学等の新興の分野を含む検証された数百の産業において、世界的リーダーは少数の国(しばしば1つの国)に本拠をおく。
上記の3社のケーススタディーは全てこのルールに当てはまる。

  • 世界の自動車会社の9社及び支配的グローバル二輪車企業4社は日本に本拠をおく。
  • 米国企業は、ワークステーション、PC、医療機器並びにテスト/計器機器において卓越する。
  • Novo以外のデンマーク企業も産業酵素の分野において競争力を有す。

国内におけるリーディング企業の地理的集中は、競争にとってのロケーションの重要性を示す。

米国の例。州間の自由取引、共通の言語/法律、及び多様な次元における州間の類似性にかかわらず、特定のビジネスにおいて成功する競争者は均等には分散しない。出版はニューヨークに集中し、映画/テレビ製作はハリウッドに、オフィス備品は西ミシガン、製薬はフィラデルフィアとニュージャージー、メリヤスと家庭備品はノースカロライナ、人工股関節はインディアナに集中する。全ての先進国で、程度は異なるが、類似の地理的集中のパターンが見られる。

多国籍企業による活動の地理的分散の強調は誤解を招く。会社の分散はしばしば、広範な海外活動を意味するが、これらは多様な製品分野に及ぶ。各ビジネスにおいては、活動ははるかに分散していない。

地理的分散においてより重要なのは、各国の活動種類の違いである。国際企業はその最も洗練された活動を単一の国(しばしばその母国)に集中する傾向がある。

  • Novoはインシュリン製品を世界中で販売し、いくつかのインプットをグローバルに調達するが、価値連鎖における戦略的に最も重要な活動・・製造、中核製品、プロセスR&D・・はデンマークで行う。
  • ホンダは世界中に製造/ディストリビューションを有するが、中核エンジンリサーチを含む、戦略、デザイン及び最も洗練された部品生産のホームベースは日本におく。
  • Hewlett-Packardのオペレーションは世界中で販売される16000以上の製品ラインを含むが、中核的製造、R&D及び判断を含む各製品ラインの世界的責任を特定のロケーションに集中させる。

更なる証拠は、母国を有さない会社の原型とされるAsea Brown Boveri(ABB)から生じる。ABBは世界中に多様なオペレーションを有するが、ビジネス戦略の確立、優先開発製品の選択、及び各製品ラインにおける各国への生産割当に対するグローバル責任を特定の地理的ロケーションにおく。(ex.変圧器のリーダーシップはドイツに、電気ドライブはフィンランドに、プロセスオートメーションは米国に本拠をおく。多国籍企業は特定のビジネスの本拠をますます移転する。)

比較優位vs競争優位

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競争のグローバリゼーションと競争優位における強力な国/地域の役割との間のパラドックスは、ロケーション間の競争を支配するパラダイムが比較優位から競争優位のより広範な概念へとシフトしたことから理解し得る。

低い要素コスト(ex.人件費、原料、資本又はインフラ)や規模による比較優位はまだ存在する。しかしそれはほとんどの産業において競争優位を与えず、高い賃金を支えない。グローバリゼーションにより、企業は今日、原料、資本及び一般的な科学知識さえも含むインプットをあらゆる場所から調達し、低コストの人件費や資本を利用するために、選択的活動を海外に分散することにより、比較優位を享受し得る。グローバル企業は、オペレーション効率のためこれらを行わなくてはならない。比較優位へのアクセスのための活動分散の失敗は競争不利を導き、企業に優位を生み出さない。

同様に、ホームマーケットのサイズは世界市場に浸透する能力よりも重要でない。さらに、技術の進歩により、企業は、比較優位における弱さを減少/回避し得る。

日本企業は、無駄のない生産等のエネルギー/スペース節約イノベーションの開発により、エネルギー/土地の高いコストにかかわらず、多くの産業において繁栄する。垂直統合はますます専門的供給者へのアウトソーシングにとって代わられ、新技術はまたスケールメリットを削減する。

ロケーションの比較的優位は低コストインプットの入手可能性や市場規模ではなく、インプット使用における優越的生産性から生じる。基本的インプットは優位ではなく競争不利を生み出す。ロケーションの継続的優位は企業が生産的にオペレートできその競争方法をより高いレベルにイノベート/アップグレードできる環境の提供から生じる。イノベーションは技術だけではなく、マーケティング、製品ポジショニング及びサービス提供の方法も意味する。かかるロケーションにおけるダイナミックかつイノベーティブな企業は、他の地域におけるそのライバル(それが古い方式のオペレーションにおいて、低コストの要素やスケールメリットを享受するゆるぎない競合者であったとしても)にまさり得る。企業はインプットの調達と市場へのアクセスのため活動をグローバルに拡大するが、競争優位は、特定の製品ラインのためホームベース(戦略開発、中核生産/プロセスR&D、洗練された生産(又はサービス提供)の集積場所)に地域化されたイノベーションプロセスと生産性成長から生じる。ホームベースには、重要なスキル/技術が存在する。それは、グローバル活動により調達されたインプットと情報を統合するサイトであり、最も生産的な作業はそこに存在する。

ロケーションの競争優位

ロケーションの競争優位は、それが特定の分野における高度な生産性レベル及びその向上のために提供する環境の質に存在する。競争優位の源泉は企業の中にあると考えがちであるが、会社の優位の潜在力及び必要なインプットの多くは、その地域環境に存在する。これのみが、同じ国/地域に特定の分野で成功する企業が集中する理由を説明し得る。

成長、イノベーション及び生産性の文脈を決定する地域環境の4つの側面:
①要素(インプット)条件、②戦略及び競争の文脈、③需要条件及び④関連/支援産業。これらの4つは、特定のロケーションの会社が特定の分野での一貫したイノベーションとアップグレードを達成できる理由の説明に役立つ。

要素(インプット)条件

生産要素は競争の基本的インプットである。それらは土地、労働力、資本、物理インフラ、商業/経営インフラ、天然資源及び科学知識を含む。整備された道路/港、大学教育を受けた従業員等の一般的インプットは比較不利を回避するために必要であるが、地域的優位には十分ではない。

生産性競争における地域的優位は、スキルの集積、応用技術、物理的インフラ、規制制度、法的プロセス、情報、及び特定産業のニーズに応じた資本調達等の高品質/専門的インプットから生じる。米国では、例えば、ソフトウェアにおける優位は、高度に訓練されたプログラマーその他のコンピューター科学専門家、コンピューター関連訓練におけるリサーチプログラム、ソフトウェアライセンシング/使用に関する効率的ルール及びソフトウェア企業のためのリスク資本の専門ソース(ソフトウェアについてのベンチャーキャピタル)のユニークな集中に依拠する。Hewlett-Packardはそのコンピューター関連ビジネスにおいてこれらの優位から利益を得る。国と地域はこれらを創造しなくてはならない。これは、教育、訓練、リサーチ、データ収集及びその他の分野における専門機関に依拠し、かかる機関は地域的優位の潜在的源泉となる。

地域的優位としてより逆説的であるのは、土地の高コスト及び資源不足等の基本的インプットにおける不利の役割である。これらは、イノベーションを引き起こし専門機関の開発を刺激するため、競争優位につながり得る。(ex.オランダの気候の悪さと土地不足は、温室栽培、品種改良、及びオランダが世界輸出の60%超を占める切花技術等の分野におけるイノベーションにつながった。)反対に、労働者、借入資本及び天然資源に恵まれる地域では、企業は低い生産性でこれらの資源を使用する傾向があり、他の地域のより生産的な競合者に対する弱みを生む。

専門的インプットの集積及びそれらを創造/改良する機関の存在は、地域の外的優位又は蓄積資産となる。かかる公共資産は、企業、機関及び政府による累積投資を通じて集積する。外的優位の存在は各企業の内部コスト負担を不要にする。会社は、グローバル調達を通じて地域資産のいくつかにアクセスできるかもしれないが、その多くは遠距離からアクセス困難である。

戦略及び競争の文脈

ルール、社会規範及びインセンティブが特定の産業に適した形式での投資を促進する場合、その地域は生産性競争において優位を持つ。投資は、固定資産だけではなく、R&D、訓練及び市場開発を含む。

租税システム、知的所有権ルール及びミクロ経済/政治の安定は地域における投資環境に影響する。企業所有(corporate ownership)/ガバナンスルールも重要な影響をもつ。米国のベンチャーキャピタル/パブリックオファリングシステムは、重要な優位を形成する。例えば、機関所有及び活発な取引のため、米国企業は低成長の長期ライフサイクル分野では競争しにくい。文化要因はしばしば、多様な参加者/分野の評判とそれらへの投資に影響する。

地域的競争の激しさは地域における競争的文脈における他の重要な次元を形成する。良好な投資環境と結びつき、地域競争は地域の最も有力な優位である。母国で強力なライバルとの競争がなければ、海外でめったに成功することはない。(ex.ホンダは、世界的に競争する8社の日本の自動車会社と競争する。)地域における競合者グループ間の競争はイノベーションとアップグレードへのプレッシャーを強める。競争者間のパフォーマンス比較は迅速な改良を促進する。地域的ライバルは、類似のインプットコストとホーム市場へのアクセスに直面するため、他の方法での競争を強いられる。投資環境が貧弱な地域では競争は価格低下につながるが、地域環境が投資を後押しする場合競争はアップグレードを促進する。どの企業もホーム市場を支配できないため、国際的に競争することを強いられる。(ex.Novoは、ドイツのライバルがいたため輸出を強いられた。)強力な地域的ライバルにより、各会社は長期間先行することは難しいが、全体的地域産業は他の地域の競合者よりも急速に発展する。

需用条件

第3のタイプの地域的優位は地域市場の性質から生じる。優位は洗練された要求の厳しい地域顧客、又は他でも需要のある専門製品に対する高度な需要を有する顧客の存在から生じる。かかる買い手は会社にプレッシャーをかけ、変化するそのニーズについての情報を提供し、会社にイノベーション/高度なセグメントへの移行を促す。かかるニーズが他の地域でのニーズを先取り/形成しする場合に特に価値がある。地域需要はまた、他で無視されている産業セグメントを示す場合優位を創造する。生産性競争において、ホーム需要の特性はその規模よりもはるかに重要である。

ホームの需要条件は地域的ニーズ、洗練さのレベル、購買力、及び製品への文化的相性を反映する。政府の政策は直接/間接に、製品、安全、及び(製品/プロセスの一定の特性を義務付ける)環境規制等多様な形で需要条件に影響し得る。(ex.基準が新たな手法に対して柔軟であれば、厳しい環境/エネルギー効率規制はイノベーション/生産性改善を促進し得る。)

ホーム需要の優位は、遠方から得ることが難しい情報/インセンティブに根ざす。地域顧客はしばしば、高い透明性、コミュニケーションの容易さ及び共同作業の機会を提供する。上記の3社は全てホームでの洗練された需要から恩恵を受ける。(ex.Novoは、糖尿病治療における最も洗練された医療ケアスペシャリストに販売し、新たな治療に補償金を提供する国のヘルスケアシステムの文脈でオペレートする。)

関係/支援産業

生産性競争における最後のタイプの地域優位は、専門的供給者と関連産業の存在から生じる。専門部品、機械及びサービスの供給者並びに関連企業との近接性は必ずしもインプットへのアクセスのためではない。(それらはグローバルに調達し得る。)優位は効率性、知識及びイノベーションの促進から生じる。

優秀な地域供給者はしばしば大きな取引コストと輸入/遠距離取引による遅れを回避し、修理/問題解決を促進する。会社はまた、垂直統合のレベルについてより裁量を持つ。関連分野の地域企業はまた、R&D、ディストリビューション及びマーケティングにおける補完を容易にすることで効率性をもたらす。

地域的供給者/関連産業からの効率性のメリットよりも、イノベーションとダイナミズムにおけるメリットの方がしばしばより重要である。近くの供給者/関連産業企業は、情報流通、科学的協力及び共同開発を促進する。会社はプロセスの一部を外部に委託できるため、新製品開発のスピード/柔軟性は増大する。より一般的には、会社は供給者の技術努力に影響を与え、開発のためのテストサイトを提供し、イノベーション速度を加速できる。ホンダは乗用車/二輪車において地域供給者ネットワークから利益を得、HPも同様である。Novoは、醸造及び日用品等、デンマークにおける関連分野(それらは関連する技術、スキル及び機械を有する)から特別な優位を享受した。

需要面での優位と同じく、地域的供給者/関連産業のイノベーションにおけるメリットは遠方からは享受し難い。高度な応用技術/専門スキルは書面化、蓄積及び移転が難しい。グローバル調達は、情報の結合/技術交換の必要性の少ない原料、規格部品及び一般機器/機械にとってはベストである。そこでは、海外調達は柔軟性を減少させるかもしれないが、取引コストをより低くするとともにイノベーションプロセスへの影響は小さい。

地域供給者/関連分野企業の重要性は、地域需要条件と結びつき集積の基本をなす。集積は専門的供給者、サービス提供者、下流(ex.チャンネル/顧客)産業、情報提供者、インフラ提供者及び関連分野における企業を含む。取引協会、規格設定機関及び大学等の機関は、同様に集積の一部を構成する。集積は、集合的資産を意味し、企業が容易かつ効率的に知識、スキル及びインプットを組み合わせ得る環境を創造し、生産性/イノベーションを高める。

地域システムとしてのダイアモンド

ダイアモンドにおける4種類の地域的優位は、全体としてより重要なダイナミックなシステムを構成する。ダイアモンドの一部の生産性への影響は他の状況に依拠する。活発な地域競争は生産性の向上を刺激するが、それには、地域状況が投資をサポートし(戦略/競争の文脈)、地域購入者が価値ある製品を求める(需要条件)ことが必要である。さもないと、競争は破壊的な価格競争に陥る。同様に、熟練エンジニアの供給面での改善(要素条件)は、企業がR&D/プロセス改良に投資せず、適切な供給者ベースがイノベーションに基づく戦略を支持しなければ生産性を高めない。ダイアモンドのいずれかの弱さは産業の生産性向上の潜在性を制限する。

適切な組織的その他のリンケージがあれば、4つの地域的優位は強力に強まる。例えば、活発な国内競争は、専門的なスキル/技術の蓄積を促す。多くの競争者の存在は、大学/訓練提供者等の地域機関による産業の明確なニーズへの対応を促す。活動な地域競争はまた、地域供給者の形成/アップグレードを推進し、整備された地域市場を導く。

集積の形成/アップグレードのプロセスは必然ではない。フィードバックの輪の健全性は地域関係の強さ、情報流通のオープンさ、及び多様な企業/機関の相互反応に依拠する。地域競争/投資環境は、企業が行動するかどうかに関係するため、特に重要な役割を果たす。ダイアモンドの累積的/自己強化的性質、並びに専門機関、知識及び一定数の企業構築にかかる時間のため、特定のビジネスにおける競争において有利な地域は限られる。海外企業/専門供給者はこれらの地域への投資を行う。これらの新参者は、しばしば、弱いダイアモンドから移転してくる。例えば、製薬産業においてフィラデルフィア/ニュージャージーは、そのすぐれたダイアモンド条件及び専門的要因へのすぐれたアクセスのため、ドイツ、スイス、英国及び日本の製薬会社からの投資を惹きつける。最後に、アイデア/専門スキルをもつ個人は、最も刺激的かつ高い報酬が提供されるため、同様にこれらの地域に集まる。かかる循環は、技術的変化が過去のスキル、供給者その他の地域的優位を失わせ、または地域競争若しくは購入者の洗練さの喪失のためアップグレードへの圧力が失われる時に遮断される。

競争はますます全国的/グローバルになるが、競争優位の源泉はしばしば地域に留まる。それらは、特定の地域における高度に専門化/相互関連したスキル、応用技術、企業、供給者及び機関の集積に存在する。インプットコスト競争における地域的優位はグローバルネットワークを通じて達せられるが、生産性競争のための地域的優位は近接性を必要とする。遠方/グローバルネットワークから獲得できるものは他のライバルもアクセスでき、強固な源泉/競争優位ではなくなる。重要な地域的優位はますます、遠方の競合者が匹敵できないローカルなもの・・知識関連性/モチベーション・・に存在する。

地域を超えての競争:地域からグローバル戦略へ

グローバルネットワークの競争優位と地域の競争優位を競争戦略の概念に統合すべき。

ユニークな競争ポジションに基づきグローバリゼーションを確立する

グローバル(又は多国籍)戦略の出発点は、競争優位を導くユニークな競争ポジションである。会社は、コスト又は差別化において優位をもたない限り、新たな市場浸透のへのバリアを乗越えられない。

Novoは、インシュリン産業において明確な差別化を行った。極めて純粋なインシュリンを開発し、純粋化/デリバリー技術に道を開き、リサーチ機関、糖尿病病院及び国際医療会議のホスティングを通じて科学的優越を追求した。その差別化により、Novoは、参入した各国における医者/健康オーソリティへの製品販売を進めることができた。

この原則の結論は、会社は最も独自の優位を有するビジネス/製品ラインにおいてグローバル化すべきということである。これらの製品分野は、国際競争での最大の成功可能性を提供する。

一貫したポジショニングにより国際市場に浸透する

国際化は巨大かつ成長する国際市場を開く。グローバル戦略は、会社のユニークな戦略的ポジショニングを維持/レバレッジしながら、海外市場参入のための長期のキャンペーンを必要とする。参入可能な市場は、会社の戦略により、地域的購買力/ニーズ(これは参入市場の優先順位を導く)に基づき国毎に異なる。しかしながら、国毎に一貫した戦略の維持は会社の競争優位を強化する。ターゲット市場はしばしば、国の経済発展と企業が提供するメリットを認識させることにより成長する。

競争的ポジショニングを国毎に修正する国際化は成功しない。一貫したポジションがなければ会社は真の競争優位を欠き、その評判は蓄積されない。さらに、国毎に異なる活動を統合する努力はしばしば挫折し非効率的となる。

正しく行えば、地理的拡大は会社独自の戦略を犠牲にすることなく成長させる最高の方法である。一貫したポジションによるグローバルな拡大は会社の優位を強化する。対照的に、既存のマーケット内に戦略を広げれば会社の独自性を失う危険がある。小国に本拠をおく企業にとっての最大の障壁は、限られた市場機会を確保するため全てのセグメントに多様なものを提供しようとすることである。むしろ重要なのは、焦点を絞り、より大きな国際的機会を追求することである。

各ビジネスのための明確なホームベースの確立

企業は、戦略的に明確な各ビジネスのための明確なホームベースをもたなくてはならない。(企業のヘッドクオーターのロケーションは重要でなく、歴史的要因や利便さを反映する。)ビジネスのホームベースは戦略を設定し、中核製品/プロセス技術を創設/維持し、洗練された生産/サービス活動が蓄積する場所である。調整センターでは十分ではない。かかる活動を1つの場所におけば、容易なコミュニケーション、異なる機能の調整及び素早い決断が可能になり、急速な成長を促進する。ホームベースはビジネス単位について明確な世界的責任をもち、インプット、生産活動、情報及び他で調達された技術の調整/統合ポイントとして奉仕すべきである。

ホームベースはそのビジネスにとって最高のダイアモンドを有する地域におかれるべきである。それは、イノベーション/生産性向上のため最高の環境を提供する。NovoHewlett-Packard、及びホンダはそれぞれ、各主要ビジネスのための明確なホームベースをもつ。

  • デンマークはNovo(そして、合併前のNovoNordiskの双方)のインシュリンビジネスのホームベース。売上の95%はデンマーク外であるが、生産プロセスにおける最も重要なインシュリン浄化施設はデンマークに存在。デンマークの養豚場は当初、原料の豚の膵臓を提供した。インシュリン浄化は、大規模投資だけでなく高度に専門化した機械、熟練技術及び品質管理システムを必要とする。デンマークは、関連技術/スキルを利用する日用品/ビール産業における強力なポジションを有し、重要な機械その他の専門的インプットの供給者のホームである。Novoの中核的生産/プロセスR&Dはまた、世界レベルの糖尿リサーチ機関と糖尿病病院を有するデンマークで行われる。デンマークにおけるインシュリンの需要条件もまた進んでいる。国の豊富なヘルスケアシステムは糖尿病テスト/治療への早期の資金提供を行った。デンマークの医師は患者を看るだけでなく、食事/料理習慣における糖尿病患者の訓練プログラムの実施/モニターも行う。Novo-Nordiskの人員は、新製品の成功と糖尿患者が直面する新たな問題についてのすばやいフィードバックを得るため、医師と直接影響し合う。
  • ホンダの二輪車/乗用車のためのホームベースは日本であり、ホンダの洗練された活動のほとんどがそこで行われる。日本は、二輪車生産の76%を、乗用車生産の68%を占める。海外の工場は主に組立施設であり、日本から洗練された部品を入手する。例えば、ホンダの日本の二輪車工場は、他の地域の75,000に較べ平均396,000ユニットの能力を有する。R&Dはさらに集中されている。全ての中核的エンジンリサーチとR&D人員の95%が日本に存在する。日本外のR&D人員は、母国で仕事を始める前に、栃木リサーチセンターで2年間の訓練を受けなくてはならない。
  • 非常に多角化されているHPもまた、各ビジネスのため明確なホームベースを有する。中核的リサーチ、洗練された生産活動及び決断を含む各製品ラインについての世界的責任は特定の場所に集中される。米国のマーケティングスペースは全体の43%であるが、製造、R&D及び管理のスペースの77%を有する。ホームベースの専門知識を有するエンジニアは世界的エキスパートであり、彼等はその知識を、電子的又は定期的書面により子会社に発信する。地域子会社は、いくつかのプロセスに対応するR&D、生産の地域化及び地域的マーケティングについて責任をもつ。
異なる地域におけるレバレッジド製品ラインのホームベース

企業の生産レンジが広がるにつれ、いくつかの製品ラインのホームベースを異なる地域におくのが最適であり得る。企業は、重要な製品ラインの責任を、当該セグメントにとって最高のホームダイアモンドをもつ国に割当て、その国際活動を専門化すべきである。このアプローチは各国で広範な製品ラインの製造/R&D活動を繰り返す(イノベーションを鈍らせる非効率的アプローチ)より優れている。むしろ、各主要拠点は、それが最も有利なダイアモンドをもつモデルに専門化し世界的に提供すべきである。活動を個別に広げるのではなく、製造ラインホームベースを構成する活動グループを地域的優位をもつ国におくべき。

  • HPは多くの製品ラインホームベースを米国外におく。例えば、バルセロナに地域市場/組立のためのロケーションをおく一方、インクジェットプリンターオペレーションをバンクーバーにおく。また、新型小型インクジェットプリンターの世界的責任はシンガポールにおく。この製造ラインはバンクーバーからのプリンター技術と省スペース製品デザインについてのアジアの専門技術を結びつける。HPは、米国内でも製品ライン責任を集中する。PC及びWS(ワークステーション)の責任をカリフォルニア(ほとんど全ての世界のリーディングPC/WS企業のホーム)におき、メディカル機器をマサチューセッツ(世界的に有名なリサーチ病院/医療機器企業の集積を有する。)におく。
  • ホンダの乗用車のホームベースは日本であるが、SW(ステーションワゴン)のための製品ライン創造プロセスを米国におきはじめ、アコードSWは米国で考案/デザイン/開発された。米国はSWの最も進んだ市場であり、SWの部品供給者のネットワークを有する。カリフォルニアのR&Dデザイン施設はSWのモデル/模型を作り、オハイオのR&D施設は金属の原型を制作し、金型を含む製造ツールは米国ホンダエンジニアリングにより造られた。米国はSWについての世界的ヘッドクオーターとなり、米国のデザイナー/エンジニアは製品の開発/アップグレードを行う。米国ホンダはまた、ツードアシビッククーペの開発のため世界的責任をおう。米国ホンダは、1990年代の終わりまでに、7万台の乗用車を20を超える国に輸出する計画である。
ホームベースの優位を拡大するため活動を分散する

ホームベースは中核的活動の場所であるが、他の活動は会社の競争ポジションを拡大するため広められるべき。価値連鎖における各活動はこれらの機会について検証されるべきであり、それは次の3つのフォームの1つをとる。

① 相対的優位の獲得

低スキルの組立労働、原料、一般部品/資本等、イノベーションプロセスに不可欠でないインプットは、最もコスト効率の良い場所から調達されるべき。この方法により、グローバル競争者は、多様な場所のコスト優位を利用する。

② 海外市場アクセスの確保/改善

選択的活動を市場の近くにおくことにより、海外顧客へのコミットメントへのサインとなり、地域ニーズによりよく応えることができる。このため、多くの企業は、製品適合と規制遵守のため、いくつかのR&D活動を分散する。しかしながら、柔軟な製造システム及び情報/通信技術の向上は、地域適合のための活動分散の必要性を減少させる。技術基準のハーモナイゼーションと取引障壁の減少は同様の効果をもつ。→地域ニーズへのカストマイゼーションは、しばしば、単一の施設から最も容易に達成され得る。

いくつかの活動は、競争強化のためではなく、政府要請に応えるため分散される必要がある。例えば、日本の乗用車/消費者機器の米国での組立ての多くはかかる考慮を反映する。企業が政府の要請に応えなくてはならない時、規模が重要でない活動、又は他との調整/統合を要しない活動を分散すべきである。その目的は、効率及びイノベーションレートへの犠牲を最小にしながら政府の要請に対応することである。

③ 他のロケーションにおける競争優位の選択的利用

どんなに好ましいロケーションでも、ホームベースが専門知識/技術の全てを提供することはほとんどない。そのベネフィットにアクセスするため、グローバル競合者は活動を他のイノベーションセンターにおくことができる。しかしながら、他のダイアモンドの特性を利用するとき、ホームベースは補完されるべきであり、取って代わられるべきではない。その狙いは、イノベーション促進のためのホームにおける重要なスキル/技術の改善であるべきである。他での優位に依拠しすぎればイノベーション能力が脅かされる。

結局、企業はこれらの3種類の恩恵を得るために必要な活動のみを分散させるべきである。

Novoは価値連鎖における異なる活動において、これらの全てのモティベーションを示す。

  • 調達において、Novoはその伝統的原材料である豚の膵臓を20ヶ国から調達する。世界的調達は大規模な供給へのアクセスを可能にし、リスクをヘッジし、特定の飼育国における有利な価格/通貨変動での資本調達を可能にする。低コスト資本にアクセスするため、Novoは長期負債の83%をデンマーククローネ以外の通貨で行い、米国を含む海外エクイティ市場を利用する。市場アクセスの促進及び輸送コストを下げるため、そして場合によっては政府障壁に対応するため、Novoはインシュリン加工工場をフランス、南アフリカ、日本及び米国に分散する。これら規模に敏感でない加工工場の分散は、控えめではあるが輸送コストを削減する。しかしながら、より重要なのは、それはデンマークにおけるよりスケール/スキル依存の主要生産の集中を可能にする。
  • マーケティング/販売において、Novoは、地域的医療コミュニティ/政府のヘルスケアシステムへのアクセスを改善するため、多くの国で地域会社とマーケティングジョイントベンチャーを設立した。
  • 最後に、R&Dにおいて、Novoは、ホームで利用できない特定のスキル/技術を利用するため、デンマーク外の少数の高度に専門化したリサーチセンターを設立した。シアトルのZymotechは米国の強みである遺伝子工学の専門知識にアクセスするため取得された。同様に日本のリサーチ施設も設立された。デンマークにおける承認の遅れの後、Novoは遺伝子工学的インシュリン生産施設を承認がすみやかな日本に設立した。しかしながら、Novoはこの中核技術を海外オペレーションには移譲しない。Novo自らの遺伝子工学能力はデンマークに拡大した。米国と日本で獲得した知識をデンマークのホームベースに持ち帰り、遺伝子インシュリン製造を設立した。

ホンダもその活動を3つの理由から分散した。

  • 輸送/関税コストを削減し、安い人材を得るため、乗用車を11ヶ国で、二輪車を30ヶ国で組み立てる。
  • 日本車輸入に対する関心の向上の中継続的な市場アクセスを確保するため、ホンダは米国の施設・・2つの組立工場、エンジン/トランスミッション/サスペンション部品の製造施設、エンジニアリングセンター及びR&D施設・・に20億ドルを超える投資をした。ホンダの米国での活動は低いオペレーションコストを享受し、米国市場への製品/プロセスの適応を目的とする。イノベーションは日本に集中する。
  • 最後に、ホンダは、知識を日本のホームベース(そこでモデル開発に取り入れられる)に持ち帰る地域的デザインセンターを通じて、カリフォルニアのスタイリング専門家とドイツの高度なデザイン能力を利用する。
分散された活動を調整/統合する

分散された活動からの競争優位を得るには、活動のグローバルな調整が必要である。差別化を強めるため、調整により国を横断する一貫性と強化を得る。調整はまた、分散された活動から得られた知識/技術をホームベースで統合するために必要である。

例の3社は調整の恩恵を受けるが、Novoのケースは興味深い。Novoの原料調達は20カ国に分散されるが、価格/通貨シフトの優位を得るため中央で調整される。マーケティングにおいて、全ての子会社/エージェント/ディストリビューターは一貫したプロモーション資料を用い、Novoは一貫した販売アプローチで彼等を訓練する。Novoは、世界共通イメージを確立し、デンマークにおける糖尿病に関する医師の学会を定期的にスポンサーすることによりそれを強化する。

しかしながら、異なるロケーションを横断する調整は組織的障害を生み出す。言葉/文化/遠距離は、コミュニケーション及び共通の思考方法に反する。地域拠点は自治を求め、その活動を地域環境に適合させようとする。成功するグローバル競合者は多様な方法でこれらの障害を克服する。

  • 明確なポジショニンググローバル戦略のための明快なコンセプトを確立する。
  • 地域拠点マネジャーは、全体的グローバルポジションと地域の優位の源泉とが調和しにくいことを理解する。彼等は、グローバル戦略を侵食しない方法で地域的活動を慎重にテイラリングする。
  • 情報/会計システムが世界的に統一され、オペレーション調整/地域間の情報比較を促進し、適切なトレードオフを行う。
  • 相互理解を育み調整に人間性を与えるため、個人的関係の強化拠点マネジャー間の情報交換のため積極的努力をする。
  • 拠点のパフォーマンスに加え会社への全体的貢献に重点をおくインセンティブシステムを採用しなくてはならない。
ビジネスユニットにおける国家同一性の保持

あるビジネスにおける企業の国家的同一性は、克服すべきものではなく保持すべきものである。ビジネスにおける競争優位はしばしば企業のホーム環境の特性・・ロケーションは企業に刻印し競争方法を形成する・・から生じる。海外顧客は国家的同一性/文化/それらが示す会社の特性に価値をおく。例えば、米国人がドイツ車を評価するのは、ドイツ人は高水準のデザイン/パフォーマンス/技能を示唆するためであり、その会社が「米国」又は「グローバル」になったからではない

海外市場にアクセスするとき、企業は、その製品を地域ニーズに適合させ、地域ビジネス慣行への尊重を示すという意味において、適合しなくてはならない。しかしながら、会社はその明確なポジショニング/アイデンティティを失うべきではなく、それらは海外子会社に教え込まれるべき。例えば、ホンダでは、国際子会社の経営者として雇われたマネジャーは、その職務につく前の2年間、日本のヘッドクオーターで訓練を受ける。

グローバリゼーション手法としてのアライアンス

ビジネスにおけるグローバルネットワークの形成について理解すると、他にベースをおく企業との提携がより効率的、早急に適切な配置を達成する手段となり得る。提携は分散する活動のネットワークを確立する方法であり(目的ではない)、ホームベース外の活動を効率的にすることができる。例えば、マーケットアクセスはしばしば、地域的パートナーによって強められる。新たな地域において、インプットを調達し高度なスキル/技術を利用する能力は、パートナーの存在を必要とするかもしれない。but提携は、会社のポジショニングをぼやかし、各市場における一貫したポジショニングの妨げとなり得る。それらは調整を複雑にし、イノベーションを遅らせ得る。

最高の提携は高度に選択的である:それらは特定の活動/競争ベネフィットの獲得に焦点をおく。例えば、Novoは、各市場へのアクセスを得るため、多くの合弁事業を行う。多くの活動と市場をカバーする広範な提携は、会社自らの発展を妨げる傾向がある。それらは、ブランドの確立と製品開発の必要性に対する意識を緩和する。最高の提携はしばしば一時的な手段であり、企業が自らの強さの上に確立し、学ぶことを助ける。結局、パートナーは別の道を行くかもしれないし、完全な合併に至るかもしれない。企業はその競争優位にとって重要な資産をパートナーに依拠することはできない。

地域的優位を持つ産業/セグメントにおけるビジネスの拡大

地域的優位は、ホームベース環境が最大の優位をもたらす産業セグメントとともに、他地域のライバルに対して競争優位を得ることができる産業を示し、新たなビジネス開発はこれらの領域に集中すべきである。

生産性競争についての新たな枠組みは広範な垂直統合に対する警戒を喚起する。垂直統合はリソースを浪費するとともに硬直性を生み出すものであり、全体戦略と密接に結びついた活動に限定されるべきである。会社は、専門機械/インプットの地域的供給者との関係開発により利益を得ることがあり得る。

多角化は集積ラインに沿って行われるべきである。多角化によって、会社は自らの内部資産のみならず、供給者/リサーチセンター/スキルプール等、彼等が特別なアクセスを持つ地域独自の資産をよりよくレバレッジする。測量/テスト機器から情報システム及び医療機器までのHPの多角化はこれらの原則に従い、それぞれにおいて米国が独自の強さを有する分野である。Novoのインシュリンから産業酵素への移行も、ホンダの二輪車から乗用車への多角化へと同じく、集積ラインに従った。イノベーションはしばしば、関連技術とスキルが結びつく時産業と集積の隙間から生じる。例えば、ホンダは乗用車を始めるため、二輪車製造において育成された小型エンジン技術を利用した。それは、かかる技術と日本の乗用車集積における資産(強力な供給者ベースとコンパクトデザイン/エネルギー効率を促進する需要条件を含む)を結びつけた。

ホームベースのアップグレード

企業の競争優位の重要な部分は、企業自身に存在するのではなく、そのビジネスがベースをおく地域環境に存在する。健全な基礎を持つホームベースがなければ、生産性成長と急速なイノベーションについての能力は小さくなる。中核生産の分散や重要な部品/機械のアウトソーシングはしばしば、ホームベースの弱さを相殺し短期的にパフォーマンスを改善し得るが、長期的なイノベーション能力は脅かされる。

外部的優位の存在は、会社の戦略的議題に新しい次元を加える。企業は専門訓練プログラムを支え、そのビジネスに関係する分野での大学でのリサーチを促進すべき。地域的供給者は育成/アップグレードされるべきである。(遠方の供給者への依存は潜在的競争優位を失わせる。)企業は地域インフラ供給者がそのニーズに応えるよう導き、政府規制が生産性を高めるようにすべきである。産業団体は、訓練プログラムのスポンサー、基準/技術についてのリサーチ、並びに市場情報の収集において重要な役割を担い得る。あいにく、地域環境を重要な競争リソースと認識する企業は少ない。例えば、米国では、多くの企業はその供給者を気に留めず、教育/訓練を政府の責任と考える。

Novoは、グローバルリーダーがいかに、そのホーム環境の向上に積極的な役割を担うかを示す。NordiskNovoの合併前、Nordiskは、スカンジナビアとSteno Memorial Hospital1932年)のインシュリンリサーチプログラムをサポートするために、(1926年に)Nordicインシュリンファンドを確立した。Novoは、糖尿病についての基本リサーチを行うため、Hvidore Diabetes Hospital を設立した。糖尿病の原因と起源の調査のため、1964年にNovo Research Institute が創設された。今日、Steno Diabetes Center 及びHvidor Diabetes Hospital は、毎年、6,000の糖尿病患者を扱い、25,000の糖尿病相談を行う。Novoはまた、デンマークにおける糖尿病の国際会議を主催し、地域の専門家と世界中の専門家を結びつける。

地域競合者の存在は優位を創造する。地域競争の削減の追求は、ほとんどの環境において、誤った努力である。

必要であればホームベースを移転する

顧客の洗練さの遅れ/新たなタイプの供給者の必要性/非効率的な地域機関等の理由によりあるビジネスのホームベースの活力が低下した場合、第1の対応はホームでのアップグレードである。しかしながら、その努力が成功しなかった場合、そのホームベースを有利なロケーションに移転する必要があり得る。

ホームベースの移転は多国籍企業において頻繁に生じる。グローバル競争により会社は世界最高のライバルに直面し、資本/原料/人材へのアクセスにおける伝統的な比較優位が無効になるに従い、好ましくないホームダイアモンドの代償は増加する。しかしながら、それは新たなロケーション/文化においてインサイダーとして受け入れられなくてはならないため、それは最後の手段であるべきである。

企業がホームベース全体を移転することはほとんどない。むしろ、彼等はある製品ライン/ビジネスセグメントのホームベースを移転する。かかる移転を可能にする触媒の1つは、より活気ある地域の海外企業の獲得である。かかる獲得は新たなホームベースの重要な要素を提供し、特定のセグメント/ビジネスにおける世界的責任を負うことになる。例えば、ネスレは、その菓子ビジネスの世界的本部を、獲得したマッキントッシュ会社と結びつくイギリスに移転した。英国は、菓子を好む消費者/洗練された小売り/進んだ広告代理店/競争的なメディア企業を有し、大衆向けキャンディーにおける競争にとってスイスよりもダイナミックな環境を形成する。同様に、ネスレはそのボトルウォーターの本部をフランス(当該産業における最も競争的なロケーション)に移転した。

NovoHP及びホンダはそれぞれ、その主要なビジネスにおいて強力なホームダイアモンドを享受し続けるが、全ての企業がそのように幸運なわけではない。例えば、カナダのNorthern Telecomは、そのデジタル中央オフィス交換台のホームベースをカナダから米国に移転した。Northern Telecom 1977年に最初の地域デジタル交換台であるDMS10を米国で製造/インストールした。引き続くAT&T奪取と平等アクセスへの要請は、テレコミュニケーションサービス/機器についての米国のダイアモンドを再編し、Northern Telecom は米国でのオペレーションを劇的に拡大した。1991年までに会社は中央オフィスス交換台の世界的ヘッドクオーターを米国に移した。今日、1000人を超える人員により、この製品ラインの全てのR&D活動を米国で行い、中央オフィス交換台もNorth Carolina で製造される。

Northern Telecom の米国への移転の理由は米国のテレコミュニケーション機器ダイアモンドの強さにある。カナダに較べ、米国は独特の高度に専門化した要素(洗練されたソフトウェアエンジニアリング、コンピューター科学、テレコミュニケーションにおけるリサーチプログラム等)を提供する。米国の購入者/エンドユーザーは世界的に最も洗練され、2025の独立の交換台購入者は熾烈な競争(それはNorthern Telecom の顧客に中央オフィス交換台能力の継続的なアップグレードを促す)を行う。統合回路製造とシステムレベルソフトデザインにおける米国企業は、関連産業において強力な力を提供する。海外競合者に対する米国市場のオープンさはさらに、米国市場における地域競争をより激しくする。(テレコミュニケーション機器において、政府は地域市場を守り独占供給者を保護する傾向にある。)

もうひとつの例として、Wesson1993)は、(韓国からついて行けないことを発見した時の)HyundaiによるPCのホームベースの韓国からシリコンバレーへのシフトを描写する。競合者が世界的に安い部品を調達する中、重要な競争条件は、変化する顧客のニーズに対応する新モデルのすばやい導入と進展するディストリビューションチャンネルにアクセスする能力である。これらの分野において、米国は他の地域よりはるかに進んでいる。他の地域の洗練された優位へのアクセスのため海外直接投資が行われ、企業のホームベースを移転するまでになった。

発展途上国からグローバルに競争する

発展途上国は世界経済の成長部分であり、途上国に本拠をおく企業の多くは輸出者である。しかしながら、発展途上国のプラットフォームは、グローバル戦略への移行においていくつかの問題を生じさせる。

基本的問題は比較優位から競争優位へのシフトである。発展途上国に本拠を置くほとんどの企業は、リソース/労働集約商品の輸出又はリソース/労働コストに依拠する多国籍企業とのOEM契約を通じて国際化した。かかる輸出は主に先進経済に向けられた。他の発展途上市場(隣国を含む)に拡大する機会は要素条件の類似性のため限定され、保守的な政府政策により制約される。

伝統的な国際化を越える移行は、発展途上国に本拠を置く企業に明確な戦略を求める。自らの製品/サービス多様性、生産方法又は評判がなければ、海外市場への浸透は難しい。企業は、世界的ディストリビューション、マーケティング、調達及び製造を含むよう、その価値連鎖を広げなくてはならない。発展途上国から生じる国際戦略の最高の機会は、しばしば、その地域及び他の類似経済に存在する。比較優位に基づく先進経済への輸出が続く一方、地域ネットワークを作るため近隣市場の解放を利用しなくてはならない。国際マーケティング/ディストリビューションの知識/管理を得る一方、目標は異なる製品種類か生産手法の確立である。時の経過により、企業は、比較優位ではなく競争優位に基づき、より先進的な市場に参入するのに十分なイノベーション能力を確立しなくてはならない。

ロケーションとグローバル競争を統合する

1950年代から、グローバリゼーションは、競争戦略に対して、ますます大きな影響を与えた。統計上、企業はますます販売/オペレーションにおいてグローバルとなる。比較優位の伝統的役割は無効となり、多くの企業は国境を越える。

しかしながら、より深い検証は、競争優位の地域化を示す。この明確なパラドックスは、最高の生産性/イノベーションを作り出す国際競争の新たな枠組みにより説明される。企業は不利を回避するため多くの地域から比較優位を得るべきである。しかしながら、企業の優位は、生産性向上にとっての地域的競争優位に存在する。この枠組みはグローバル戦略についての新世代の考え・・新たな方法で地域化とグローバリゼーションを統合するもの・・を導かなくてはならない。

地域化はかつて、グローバル戦略のすばらしい利点とバランスされるべき必要悪とされた。しかしながら、ホームベースのロケーションは競争優位のルーツとみられるべきである。グローバル戦略は、比較優位を得、市場にアクセスし、特定のスキル/技術を得るための活動の分散を通じてこの優位を拡大することができる。しかしながら、この役割を担うには、分散された活動は調整されなくてはならない。競争優位における地域化の複雑な役割を理解するこの統合は、次の時代の競争を導く。