シンプラル法律事務所
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東日本大震災法律相談Q&A

東日本大震災法律相談Q&A
(日本弁護士連合会 災害復興支援委員会がベース)
■非常災害特別措置法(特定非常災害の被害者の権利利益の保全を図るためにの特別措置に関する法律)
■非常災害特別措置法(特定非常災害の被害者の権利利益の保全を図るためにの特別措置に関する法律) 目的 特定非常災害が発生した場合に、以下の特例について規定(1条)。
@行政上の権利利益に係る満了日の延長
A履行されなった義務に係る免責
B法人の破産手続開始の決定の特例
C民事調停法による調停の申立ての手数料の特例
D建築基準法及び景観法による応急仮設住宅の存続期間の特例
具体的措置

平成23年3月13日、「平成23年東北地方太平洋沖地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令(政令第19号)」が、制定、公布。
本政令は、同日より、施行。

@

@ 特定非常災害の指定

本政令第1条は、平成23年東北地方太平洋沖地震による災害を、特定非常災害特別措置法第2条第1項の「特定非常災害」として指定。
同地震が発生した平成23年3月11日を、「特定非常災害発生日」と定めた。
A

A適用すべき措置の指定

本政令第2条は、平成23年東北地方太平洋沖地震に対して適用すべき措置として、
@行政上の権利利益に係る満了日の延長に関する措置(同法第3条)、
A期限内に履行されなかった義務に係る免責に関する措置(同法第4条)、
B債務超過を理由とする法人の破産手続開始の決定の特例に関する措置(同法第5条)
を指定。
B

B行政上の権利利益に係る満了日の延長に関する措置

本政令第3条は、行政上の権利利益に係る満了日の延長に関する措置について、延長期日を平成23年8月31日とした。
具体的な措置の内容は、個別の各府省等の告示により指定⇒各府省官庁のHP等で要確認。
運転免許証の有効期間の延長(国家公安委員会告示第6号(平成23年3月18日))、無線局の免許の有効期間の延長(総務省告示予定)、在留資格に伴う在留期間の満了日の延長(法務省告示第123号(平成23年3月16日))、保険医療機関又は保険薬局の指定の有効期間の延長、飲食店営業等の許可の有効期間の延長、薬局の開設の許可の有効期間の延長、医薬品の販売業の許可の有効期間の延長、指定介護老人福祉施設の指定の有効期間の延長(厚生労働省告示第56条(平成23年3月17日))、漁業権の存続期間の延長(農林水産省告示予定)、宅地建物取引業の延長の有効期間の延長、マンション管理業者の登録の有効期間の延長(国土交通省告示予定)、一般廃棄物収集運搬業及び一般廃棄物処分業の許可の有効期間の延長(環境省告示予定)等
C

C期限内に履行されなかった義務に係る免責に関する措置

本政令第4条は、法令にもとづく届出等の義務が、本来の期限までに履行できなかった場合であっても、それが特定非常災害によるものであることが認められた場合には、平成23年6月30日までに履行すれば、行政上及び刑事上の責任を問われない。
具体的には、薬事法にもとづく薬局の休廃止等の届出義務が、届出期間までに履行できなかった場合などが想定。
D

D債務超過を理由とする法人の破産手続開始の決定の特例措置

本政令第5条は、特定非常災害によりその財産をもって債務を完済することができなくなった法人に対しては、支払不能等の場合を除き、平成25年3月10日までの間、破産手続開始の決定をすることができないと定められた。
■土地・建物所有者
■土地・建物所有者 要点 損害との因果関係(瑕疵が原因で損害が生じたこと)の問題。
売主の担保責任 瑕疵の存在を知ってから1年(除斥期間)以内であれば解除・損害賠償請求その他の権利行使ができる。
「損害賠償請求権を保存するには、少なくとも、売主に対し、具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の算定の根拠を示すなどして、売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要がある。」(最高裁H4.10.20)
尚、引渡時から10年の消滅時効の適用あり。(最高裁H13.11.27)
住宅品質確保促進法:
@住宅の「構造耐力上主要な部分」及び「雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるもの」(雨漏防止部分)における瑕疵を対象
A瑕疵修補請求権も担保責任の効果に含めた(修補に代わる損害賠償請求も可能)
B担保責任の期間を引き渡し時から10年間とし、買主に不利な特約を無効とする片面的強行規定とした(20年以内で期間を延長する特約は可能。同法97条)。
but
買主が瑕疵を知ってから1年間の除斥期間(566条3項)はそのまま適用⇒Bは民法167条1項の消滅時効の適用に関する最高裁判決の判示と結果的に同じ。
民法 第570条(売主の瑕疵担保責任)
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

民法 第566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3 前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。.
請負人の瑕疵担保責任 @瑕疵修補請求権
A損害賠償請求権
B解除権(土地の工作物の請負の場合は解除権なし)
仕事の目的物の引渡時から1年
引渡しを要しない請負は仕事終了時から1年
(1年以内に瑕疵が発見され注文者が責任追及の意思を明確に告げる必要。)
土地の工作物の場合の特則:
@土地の普通の工作物または地盤の瑕疵にnついては引渡後5年
A石造・土造・れんが造・コンクリート造・金属造その他これらに類する構造の工作物については10年(638@)
工作物責任 民法 第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
境界 境界は客観的に定まる。
地震によって動かなかった固定点よりの測量、分筆図、地積図、境界標などから確認。
登記済証の紛失 @登記済権利書の紛失
A登記識別情報(所有権)にかかるもの
不動産を売買したり担保に入れる等、権利関係の変動を伴う場合
登記官による「事前通知制度」か司法書士、弁護士、公証人による「本人確認制度」
Q1 地震により,隣の土地との境界の塀が倒壊。
A 自己の敷地内⇒自己負担で自由に塀を作ることができる。
境界上に塀を作る⇒原則としてその隣人と等しい割合の費用負担で作る。
Q2 隣家のブロック塀が建築工事の瑕疵により地震で倒壊したため,自宅が壊れた。
A 震度5程度の地震でブロック塀が倒壊⇒ブロック塀を所有する隣家やブロック塀を工事した請負業者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求することが考えられます。
Q3 塀の工事中に地震により塀の一部が壊れた。

請負業者と交わした契約書の規定が優先。
規定なしで、建直し可能⇒業者の負担で立て直してもらう。
建て直し不可能⇒工事にかかった費用を含め支払い義務なし。
Q4 昨年一戸建てを購入しましたが,今回の地震で私の家だけ壁に大きな亀裂。

売主,建設業者,建築設計者,売買仲介業者等に対する損害賠償請求
建設業者に対する瑕疵修補請求
契約の目的を達成できないほどの大きな亀裂⇒契約を解除できる場合もあり。
A (変更後)
大きな地震や,津波により生じた住宅の倒壊・損壊等の損害については,通常,欠陥(瑕疵)には当たらないため,原則として事業者の責任を追及することはできません。
ただし,震度が低い地域において,損傷等の原因が引渡時の瑕疵による場合は,売主,建設業者に対する損害賠償請求や,建設業者に対する瑕疵修補請求などが考えられるほか,契約の目的を達成できないほどの大きな亀裂の場合は,契約を解除できる場合もあります。
新築住宅として取得して引き渡しから10年(契約で20年まで延長されている場合もあります)以内であれば,売主に対する瑕疵修補請求も可能です。
Q4−2 新築住宅を取得した際,住宅瑕疵担保責任保険に加入していると請負事業者(販売事業者)から聞かされましたが,保険金を受け取ることはできますか。
A 住宅瑕疵担保責任保険とは,事業者が住宅の欠陥(瑕疵)の修補等の責任(瑕疵担保責任)を負う場合,それに要する費用に対して保険金が支払われる制度です(平成20年4月1日以降に新築された住宅には住宅瑕疵担保責任保険が付されているものがありますのでご確認ください。)。
大きな地震や,津波により生じた住宅の倒壊・損壊等の損害については,通常,瑕疵には当たらないため,原則として保険金の支払い対象とはなりません。
ただし,震度が低い地域において,損傷等の原因が引渡時の瑕疵によると思われる場合には支払い対象となる場合があります。また,事業者の倒産時には,直接消費者に保険金が支払われますので,住宅瑕疵担保責任保険法人と相談してください。
Q5 平成12年4月1日以降に新築建物の売買契約,請負契約を締結。それ以前と比べて瑕疵担保責任に関して何か違いあり?
A 平成12年4月1日以降の新築住宅の売買契約,請負契約については,消費者保護の観点から民法の瑕疵担保規定の特例として住宅品質確保促進法の適用を受ける。
具体的には,瑕疵担保期間が引渡し後10年に延長され,取得者に不利な特約を無効とし,売買契約について民法で認められていない瑕疵修補請求が認めらています。
Q5 地震で被害を受けた部分を補修したいが,どの程度の補修が必要なのか,どんな事業者に頼めばいいのかを相談できるところはありませんか。
A 2011 年3 月31 日から,被災住宅の修補について,相談,診断及び事業者の紹介を行う窓口を国土交通大臣指定の住宅相談窓口である「住まいるダイヤル」に開設しています。
1.どの程度の補修が必要なのか
2.費用はどれくらいかかるのか
3.どんな業者に頼めばいいのか
4,どんな支援制度(補助・融資)があるのか等
といった被災者のさまざまな悩み・相談に無料で対応しています。
希望する相談者には,現地(自宅)へ専門の検査員を派遣し修補内容,金額の見積等具体的なご相談に対応するほか,被災地の主要都市に現地相談窓口を開設し,対面での相談も受け付けています。
受付窓口:「住まいるダイヤル」0120−330−71210時〜17時(日・祝日を除く)
Q6 地震により,周辺の地域全体の土地にゆがみが生じ,隣の土地との境界標が私の土地に食い込んでいる。
境界線がずれている⇒地域全体で話し合う必要。
測量費用が多額になるなど話し合いがつかない場合は調停手続を利用
地域全体の問題として,土地の一部買取などの方法も検討する必要が生じる場合もあり。
■マンション区分所有者
■マンション区分所有者 Q7 地震でマンションの共用部分が被災。

滅失
:建物の全部または一部が確定的に効用を喪失している状態,すなわち,社会通念上建物の使用上の効用が喪失している場合。
損壊
:滅失に至らない程度の損傷。
共用部分の損傷の程度により修復の手続,その費用の負担者,修復に反対した者の取り扱いなどに違いがあります。
Q8 マンションの共用部分の滅失の内,小規模滅失,大規模滅失,全部滅失とはどこが違うのか。

小規模滅失
:建物の価格の2分の1以下が滅失した場合。
大規模滅失:建物の価格の2分の1を超えて滅失した場合。
全部滅失:1棟のマンション全体が建物と言えない状態に損壊した場合。
Q9 共用部分の損傷の程度修復する場合の区分所有者の決議の要件を教えてください。

損壊したところを修繕する場合は,区分所有者の総会の普通決議により行う。
小規模滅失普通決議によって復旧。
大規模滅失特別決議により4分の3以上の賛成がないと復旧工事ができない。
決議に賛成しなかった区分所有者,〜所有する区分所有権を賛成者に買い取らせて区分所有関係から離脱できる。
全部滅失敷地共有者全員の同意がないと建物の再建はできない。
Q10 損壊や小規模修繕に必要な総会の普通決議の要件は?

普通決議区分所有者の頭数と議決権の過半数で決する。
1人で複数の専有部分を所有していても頭数としては1人として数え,議決権は,建物の専有部分の床面積の割合で決まります。
但し,区分所有法上,各マンションの規約において違う定めをすることも認められていますので,各マンションの規約をご確認ください。
Q11 大規模滅失の場合の特別決議の要件は?
区分所有者の頭数および議決権のそれぞれ4分の3以上の多数での決議が必要となります。
Q12 大規模滅失の場合に特別決議に反対した区分所有者の買取請求とは?
大規模滅失の復旧は多額の費用がかかる⇒決議に賛成しなかった区分所有者に費用の分担をさせることは妥当ではない。⇒
決議に賛成しなかった区分所有者は,決議のあった日から2週間を経過した後に,決議に賛成した区分所有者に対して自分の所有している専有部分と敷地利用権を時価で買い取るように請求できる権利が認められる。
Q13 マンションが被災したため建替えをしなければならないが、その手続き?
A 被災の程度にかかわらず特別多数(区分所有者及び議決権の各5分の4以上)の賛成があれば建替えは可能。
決議事項,決議に至るまでの手続については細かい法律の定めがあります。
Q14 建替えの決議が成立した場合,決議に賛成しなかった人の権利?
A 建替えに賛成した区分所有者等によって買取請求が行われます。
Q15 マンションを建替えるための自主再建方式とは?
自主再建方式
建替え参加者(決議に賛成した区分所有者など)が主体となって,建設会社等と契約し,被災マンションを取り壊し,新しいマンションを建てる方法。
Q16 マンションを建替えるための全部譲渡方式とは?
全部譲渡方式
デベロッパー(開発・分譲業者)が,建替え参加者の持っている区分所有権,敷地所有権を一旦全て譲り受け,建物の取り壊しと新たにマンションを建設し,改めて建替え参加者に新築マンションを分譲する方法。
Q17 マンションを建替えるための自主再建方式,全部譲渡方式以外に他に方法は?
A 平成14年に建替え円滑化法ができた。
この法律による場合は権利変換などのメリットがあるものの,手続が複雑との指摘もある。
この法律を使わないで従来の手法で建替え手続を行うことも可能です。
Q18 マンションの建替えの決議をたが,建替えの実行に当たり,専有部分の抵当権者や賃借人はどうなりますか。
抵当権者や賃借人の同意がないと建物の取り壊しは不可。
建替え円滑化法による建替えの場合は権利変換により抵当権・借家権を新たに建てたマンションに移行することができる。
Q19 数棟のマンションが建てられている団地型のマンションが被災し,修復,復旧を必要とする場合,単体型とは違う点は?

修復
:団地内の管理組合の集会決議で行い,組合を構成する区分所有者で費用を分担。
復旧:当該被災建物の区分所有者のみの決議と費用で行われる。
なお,「修復」は,規約により,専用部分のある区分所有建物を団地か棟別かどちらの管理組合の管理物かによるため,規約を確認することが必要です。
Q20 団地型マンションが被災した場合の建替えの手続は?
通常の建替え決議に加えて土地の共有者による承認決議が要求。
団地内の全ての建物を一括して建替える場合には一括建替え決議という方法を利用することができる場合もあります。
Q21 被災によりマンションが倒壊し全部滅失再建のための手続は?
A 民法の原則に従えば,土地の共有者全員の同意がなければ建物の再建はできまない。
政令で指定された災害により滅失⇒土地の共有者の特別多数決議により再建の決議ができる。
■借地関係
■借地関係 借地要点 再築 建物滅失⇒借地権は消滅せず⇒「再築禁止特約」がない限り、地主の承諾なくとも、借地人は再築できる。
地主は異議を言っておくべき。
対抗要件 建物所有を目的とする借地権は、@借地権の登記又はA借地上の建物の登記で、第三者に主張できる。
借地上の建物全壊⇒借地上の建物の登記は失効⇒原則借地権の登記がない限り、新しい土地所有者に対して借地権を主張できない。
but
全壊した建物に関する所在、家屋番号、種類、構造などの登記事項、全壊した日時、新しい建物を建てる旨、及び自分の住所氏名を記載した立て看板を立てた上で、滅失の日から2年以内に新しい建物を建築し、かつ、当該建物の登記をすることで、新しい土地所有者に対しても借地権を主張できる。(借地借家法10条2項)
罹災都市借地借家臨時処理法が適用⇒政令が施行された場合、建物が滅失した借地人は、政令が施行された日から5年間は、新土地所有者に対して借地権を主張できる。
借地借家法 第10条(借地権の対抗力等) 
借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
2 前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。.
増改築・再築禁止特約 再築について地主の承諾が得られない場合⇒裁判所に対し、地主の承諾に代わる許可を与えるよう申し立てる。
借地借家法 第17条(借地条件の変更及び増改築の許可)
建物の種類、構造、規模又は用途を制限する旨の借地条件がある場合において、法令による土地利用の規制の変更、付近の土地の利用状況の変化その他の事情の変更により現に借地権を設定するにおいてはその借地条件と異なる建物の所有を目的とすることが相当であるにもかかわらず、借地条件の変更につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、当事者の申立てにより、その借地条件を変更することができる。
2 増改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。

借地借家法 第18条(借地契約の更新後の建物の再築の許可)
契約の更新の後において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造することにつきやむを得ない事情があるにもかかわらず、借地権設定者がその建物の築造を承諾しないときは、借地権設定者が地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができない旨を定めた場合を除き、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、延長すべき借地権の期間として第七条第一項の規定による期間と異なる期間を定め、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。
2 裁判所は、前項の裁判をするには、建物の状況、建物の滅失があった場合には滅失に至った事情、借地に関する従前の経過、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。)が土地の使用を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。
再築後の存続期間 旧借地法が適用される借地権の場合:
@再築された建物が、残る借地期間を越えて存続。
賃貸人が速やかに異議を述べない⇒
借地期間は従前の建物が全壊した日から30年(鉄骨造などの堅固な建物を建てた場合)または20年(木造などの非堅固な建物を建てた場合)に延長される。(旧借地法7条)
もともとの借地期間がそれより長い場合は、借地期間は延長されず、もとの期間のまま。
A賃貸人が速やかに異議を述べる⇒借地期間は延長されず、もとの期間のまま。
新借地借家法が適用される借地権の場合:
@定期借地権⇒期間に影響なし。

A普通借地権の場合:
賃貸人が新築を承諾⇒承諾後20年存続(借地借家法7@)
残存期間が長かったり、20年より長い存続期間を合意した場合、その期間存続。

借地人が賃貸人に対し、事前に賃貸人に残存期間を超えて存続すべき建物を新築する旨の通知をし、賃貸人から2カ月以内に異議が述べられなかった場合、20年間、借地期間が延長(同条2項)。

異議が述べられた⇒存続期間は元のまま。
政令で罹災都市借地借家臨時処理法が適用⇒存続期間が10年間に満たない場合、10年間の期間延長がありえる。
旧借地法 第7条〔建物滅失後の再築〕
借地権ノ消滅前建物カ滅失シタル場合ニ於テ残存期間ヲ超エテ存続スヘキ建物ノ築造ニ対シ土地所有者カ遅滞ナク異議ヲ述ヘサリシトキハ借地権ハ建物滅失ノ日ヨリ起算シ堅固ノ建物ニ付テハ三十年間、其ノ他ノ建物ニ付テハ二十年間存続ス但シ残存期間之ヨリ長キトキハ其ノ期間ニ依ル

新借地借家法 第7条(建物の再築による借地権の期間の延長)
借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失(借地権者又は転借地権者による取壊しを含む。以下同じ。)があった場合において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造するにつき借地権設定者の承諾がある場合に限り、借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から二十年間存続する。ただし、残存期間がこれより長いとき、又は当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間による。
2 借地権者が借地権設定者に対し残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造する旨を通知した場合において、借地権設定者がその通知を受けた後二月以内に異議を述べなかったときは、その建物を築造するにつき前項の借地権設定者の承諾があったものとみなす。ただし、契約の更新の後(同項の規定により借地権の存続期間が延長された場合にあっては、借地権の当初の存続期間が満了すべき日の後。次条及び第十八条において同じ。)に通知があった場合においては、この限りでない。
借地権譲渡 建物あり⇒賃借権の譲渡の許可の裁判を利用。
建物全壊⇒これを利用できない⇒賃貸人の了解を得る必要。
又は、簡易な建物を建てて、許可の裁判を利用。
Q22 借地上の建物が地震で全壊。借地権は?
借地権は原則として消滅しない。
建物が全壊した場合には借地権は消滅する旨の特約も無効です。
Q23 借地上の建物が地震で全壊。建物を再築するのに賃貸人の承諾は必要?承諾料を要求されたら支払わなければいけないか?
賃貸人の承諾なく再築することが可能
承諾料の支払義務はなし
賃貸人との権利関係の安定と借地期間の延長の確保の観点からは賃貸人の承諾を得ることに努力すべきです。
Q24 再築禁止特約がある場合には再築は?
A 原則として再築は可能です。
Q25 借地上の建物が地震で全壊したので建物を再築しようと思いますが,鉄筋コンクリートの建物を建築することは許されるか?
A 契約上認められていない限り,原則として鉄筋コンクリートの建物を建築することは不可。再築を強行すれば借地契約を解除される恐れあり。
Q26 借地上の建物が地震で全壊したので再築。旧借地法と借地借家法のどちらの法律が適用?
借地借家法施行前(平成4年8月1日前)に成立した借地契約⇒旧借地法。
借地借家法施行後に成立した借地契約⇒借地借家法。
Q27 再築後の借地期間は?
A 平成4年8月1日前に成立した借地契約か否か,賃貸人の承諾ないし異議の有無,堅固な建物か非堅固な建物かなどにより期間が異なる。
Q28 地上の建物が地震で一部損壊。修理に賃貸人の承諾は必要?
A 原則として賃貸人の承諾なく修理可能。
但し,修理制限特約(一定の修理・修繕について賃貸人の承諾を必要とする特約)に合理性が認められるものは有効⇒信頼関係を破壊するような修理は特約違反を理由として契約が解除される危険性がある。
通常の修理・修繕まで禁止,制限する特約は無効と考えられる。
Q29 地震で一部損壊した借地上の建物を取り壊して再築できる?
A 建物の全部滅失,一部滅失に差異はなく,借地人は一部損壊した建物を取り壊して再築することもできます
Q30 地震により借地上の建物が全壊しましたが,知らないうちに土地所有者が土地を第三者に売却し移転登記も完了してしまいました。借地権を第三者に主張できますか。
建物が全壊して消滅した場合,建物の登記による借地権の対抗力も喪失
建物を特定するために必要な事項,その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の見やすい場所に掲示しておけば,建物の滅失があった日から2年間は対抗力が認められる。
但し,2年以内に建物を建築し且つ建物の登記をすることが必要です。
Q31 借地上の建物の賃借人ですが,建物が地震で全壊したときは借家権は消滅する?
A 原則として借家権は消滅
再築後の建物についても借家権を主張できまない。
再築建物について改めて借家契約を締結する必要。
Q32 地震で建物が損壊。損壊した建物を取り壊して建物を再築しようと思うが,借地上の建物に設定されていた抵当権者との関係は?
A 建物が地震で滅失した場合は建物に設定された抵当権は消滅し,再築した建物には抵当権の効力は及ばない。
滅失に至らない建物を取壊し⇒抵当権は消滅しますが,抵当権者から損害賠償請求される可能性。
Q33 旧借地法のもとで成立した借地上の建物が地震で全壊しましたが,賃貸人から再築建物については借地借家法上の定期借地権として契約するように求められこれに応じてしまいました。定期借地契約は有効なのでしょうか。
A 新たに締結した定期借地契約は,旧借地法の更新に関する規定を潜脱するもので無効。
Q34 借地上の建物が全壊したので地代の減額を請求したい。
A 借地上の建物が全壊してもそれだけでは地代の減額を請求することはできない。
地震により,地代が経済事情の変動等により又は近傍類似の土地の地代等と比較して不相当となったときは,地代の減額を請求することができる。
Q35 地震により借地している土地に地割れができ使用に障害。復旧工事は?
A 復旧工事は賃貸人の負担であり,借地人は費用を負担する必要なし。
復旧不可能で契約の目的を達成できない⇒借地契約は履行不能により終了
■借家関係
■借家関係 借家要点 建物滅失⇒借家契約は終了
罹災法適用⇒強力な権利取得。
建物滅失せず⇒罹災法は無関係⇒元の賃貸借が継続
⇒家主に修繕義務あり(民法606条)
修繕が完了し住めるようになるまでの期間中、家賃の支払義務は発生しない(住める場合は、壊れた程度に応じて家賃の減額請求)。(民法611@、借地借家32条)
家主が修繕しない⇒借家人は自ら修繕した上で、それを家主に請求できる(民法608@)。請求に応じない⇒家賃と相殺できる。
建物が滅失したが、賃借人が行方不明で、動産が残っている場合。
勝手に処分すると、後で損害賠償請求される可能性

当該賃借人に、本件土地についての明渡請求訴訟を提起し(居場所不明の場合「公示送達」)、明渡を認める判決を得て、強制執行として動産を撤去が、法的には安全。
Q36 地震やそれに伴う火災で借家が滅失した場合,建物賃貸借契約はどうなるか?どの程度まで損傷した場合に滅失か?
A 賃貸借契約は履行不能により終了するのが原則。
罹災都市借地借家臨時処理法の適用がある場合には,様々な優先賃借権が認められる可能性がある。
建物が滅失か否かの基準については,
@建物の損壊の程度(賃貸借の目的となっている主要な部分が消失して賃貸借の趣旨が達成されない程度に達したか否か)と
A経済的観点(修復が通常の費用では不可能か否か)の両方の面から判断する必要。
Q37 修理中であったり,避難勧告が出たりして,借家に住めない場合も家賃の支払をしなければならないか。
A 賃借物の使用が客観的に不可能である場合,家賃の支払義務は生じないと考えられます。
Q38 地震で借家が一部損壊。修理をすればまだ居住可能で、居住を継続したいのだが、大家は修理に多額の費用がかかることから建物を取り壊したいとして退去を求めてきた。
A 出て行かなければらないかは,建物の損壊の程度,修繕にかかる費用と修繕によってのびる耐用年数,立ち退きによって受ける賃借人の不利益,家賃の額,立退料支払いの有無とその金額,など,様々な要素の総合判断で決まるため,一概には言えない。
ただ,慌てて出ることはせず,大家との間で,本当に取り壊しが妥当なのかどうか,再築はあるのか,再築後の建物に入居できるのか,立退料等の補償は得られるのか,など,細かく話を詰める必要がある。
Q39 地震で借家が一部損壊した場合,修理を大家に要求できるか?大家が修理をしてくれない場合,家賃は減額されるか?
A 損壊の程度,内容にもよるが,@必要な修繕であり,A修繕が可能な場合には,大家に対して修理を請求できる。
大家が修理をしてくれない場合,使用収益できない割合に応じて賃料の一部支払を拒むことができる。
Q40 借家が地震で一部損壊したことから,大家に修理をしてもらうことになったが,大家に,修理の期間中一時建物を明け渡せと言われている。応じなければならないか?
A 修理に必要な範囲で,一時退去に応じる必要があります。
Q41 地震で借家が一部損壊。契約書の中に,借家人が全て修繕するという特約があるが,大地震が原因でも借家人が修繕する必要がある?
特約自体は有効と思われますが,その負担する修繕義務の範囲については,天災による修繕まで含むものと解すべきでないという考え方も有力。
Q42 地震で借家が全壊し,大家と話し合って引っ越すことにしました。
敷金の返還を求めたところ,契約書に,「地震等の不可抗力により居住不能となったときは敷金は返還しない」という特約があることを理由として応じてくれない。敷金は戻ってこないのか?
不可抗力による居住不能の場合にも敷金を返還しないという特約は無効⇒敷金の返還を求めることができる。
■罹災土地臨時借地借家法
■罹災土地臨時借地借家法  罹災土地臨時借地借家法の概要

今回の震災も政令により同法が適用されることが予想される(平成23年3月14日政務三役会議で適用の方針決定)。

政令により罹災都市借地借家臨時処理法が適用されることになった場合、滅失した建物の借家人は強い権利を取得することになる。

優先借地権

滅失した建物の借家人は、土地の所有者に対して、当該政令施行の日から2年以内に申し出ることによって、相当な条件で借地権を優先的に取得することができる(同法第2条第T項)。
この場合、土地の所有者は、3週間以内に拒絶しないと承諾したものとされる(同法第2条第U項)。
土地の所有者は、自らその土地を使用する必要性があるなどの正当事由がない限り、拒絶できない(同法第2条第V項)。

借地の保証金、地代について当事者間に協議が整わないときには、裁判所が鑑定委員会の意見を聴いたうえでこれらを定める(同法第15条)。
マンションのように借家人が多数いて、数人が借地の申出をして、その土地の割当について当事者に協議がつかないときには、判断が困難ではありますが、裁判所が割当をする(同法第16条)。
優先借家権

滅失した建物の借家人は、その建物が建っていた土地に新たに築造された建物について、借家の申出をすることによって相当な借家条件でその建物を優先的に賃借することができます(同法第14条)。

借家条件についての協議が整わないとき、借家の申出が多数あり全員が割当を受けられないときの問題は、優先借地権の場合と同じ。
借地権優先譲受権

滅失した建物の借家人は、その建物が建っていた土地が借地である場合には、当該政令施行の日から2年以内にその借地人に申出ることによって、その借地権の条件にて優先的に譲り受けることができます(同法第3条)。

この借地権の譲渡については、土地所有者は自動的に承諾したものとみなされてしまう(同法第4条)。
この借地権譲渡の対価について協議が整わないとき、又は複数の者がこの借地権の譲受けを申出て、当事者間で調整がつかないときの問題については優先借地権の場合と同じ。
Q43 被災者がそれまで住んでいた場所にできるだけ住み続けられるよう被災者を保護する罹災都市法がある。この罹災都市法は,いつどのような経緯で制定されたのか?
A 罹災都市借地借家臨時処理法(罹災都市法)は,昭和21年(1946年)に,罹災都市における借地借家人の生活の安定を図る応急的な復興対策を目的とするものとして制定された。
Q44 罹災都市法には4つの要点があると聞きました。それは何ですか。

既存の借地権の保護として,
@対抗要件の特則,
A存続期間の延長があり,
借家人の保護として,
B罹災借家人の敷地の優先賃借権及び借地権の優先譲受権,
C罹災借家人の建物優先賃借権がある。
Q45 借地上の建物が地震で滅失。借地が売却されても,新所有者に対して借地権を主張できるか?
政令施行の日から5年間は,登記なしで対抗力が認められるため(10条),その間新所有者に借地権を主張できる。
Q46 震災時借地権の残存期間が1年しかなく,建物を再築しても直ぐに約束した賃貸借期間が満了してしまう。このような場合において,借地権の存続期間の点で,建物を再築する借地人を保護する規定はない?
A 借地権の残存期間は,政令の施行された日から起算して10年間に延長されます(11条)。
Q47 地震で滅失した建物の所有者で借地権者が借地権を譲渡したいとき,土地所有者が承諾しない場合にはどうすればよいでしょうか。
簡易なコストのかからない建物を建てた上で,土地所有者の承諾に代わる裁判所の許可を求めるしかありません。
建物が建っている⇒賃借権の譲渡の許可の裁判を利用できる。
建物が全壊⇒利用できない⇒賃貸人の了解を得ない限り、他に借地権を譲渡することはできない。

借地人:建物が全壊していないと主張・簡易な建物を建てる。
賃貸人:建物は全壊。簡易な建物を建てて譲渡することはできない。
Q48 罹災都市法によって罹災地の既存借地権が消滅させられることはある?
A 罹災都市法12条によって,土地所有者からの催告によって既存借地権が消滅させられる場合がある。
Q49 罹災都市法における借家人の保護の要点は何ですか。

@滅失した建物の借家人は,政令施行の日から2年以内に,借家の敷地の所有者に申し出ることにより,他の者に優先して,相当な借地条件でその土地を賃借できる(2条)。
A滅失した建物の借家人は,政令施行の日から2年以内に,借家の敷地の借地権者に申し出ることにより,他の者に優先して,相当な対価でその借地権の譲渡を受けることができる(3条)。
B滅失した建物の借家人は,その敷地に新たに建築された建物について,その完成前に申し出ることにより,他の者に優先して,相当の借家条件でその建物を賃借することができる(14条)等です。
Q50 土地所有者に借地権設定の申出をして,借家人が借地権を取得したいが,どのような要件が必要か?
(1)申出をする者(罹災都市法2条1項本文)
罹災建物が滅失した当時におけるその建物の借主
(2)申出の相手方(1項本文)
罹災建物の敷地又はその換地の所有者
(3)申出の期限(1項本文)
政令施行の日から2年以内
(4)申出の内容(1項本文)
建物所有の目的で賃借すること
(5)申出の条件(1項但書)
@土地を権原により現に建物所有目的で使用するものがいないこと
A土地上の建物の建築に許可を要する場合には,その許可を得ていること
(6)土地所有者から3週間以内に拒絶の返事がないか(2項),拒絶の返事があっても拒絶に「正当事由」が認められないこと(3項)なお,申出自体は,(1)〜(5)の要件を充たしていれば,有効な申出として認められます。
Q51 どのような人が借地権の取得(ないし譲渡)の申出をできるのか?申出をする相手の土地所有者とは?
A 罹災都市法2条,3条で借地権の取得ないし譲渡の申出ができるのは,罹災建物の滅失当時の借主です。
申出の相手方は,申出の時点の土地所有者になります。
Q52 敷金の返還を受けると借地権取得の申出はできなくなるか?「合意解約」した場合はどうか?
A 敷金の返還を受けていても,罹災都市法2条の要件を充たせば,借地権取得の申出ができる。
借家人が上記申出権を有することを認識した上で,それを放棄する趣旨で「合意解約」をしたことが明らかでなければ(「今後,借地借家の申出をしない」など),安易に借家人が上記申出権を放棄したものとして借地権取得の申出を認めないとすべきではないと考える。
Q53 優先借地権の申出をしたいと考えているが,既に土地を使用しているものがいると,申出ができなくなるか?
A その土地を正当に使用する権限を有するものが,建物所有の目的で現に使用している場合は,優先借地権の申出をすることはできない。
Q54 借地権取得の申出の要件とされる「土地に建物を築造するについて許可を必要とする場合」(2条1項但書後段)というのは,どのような場合をいうのか?
A 建築基準法84条の建築制限,都市計画法53条による建築制限,土地区画整理法76条などの制限のある場合に許可が必要となる。
Q55 優先借地権の申出をしたのですが,土地所有者が拒絶できる「正当な事由」とは,どのような場合でしょうか。
A 土地所有と借家人それぞれの土地を使用する必要性の程度,利用価値の大小,他に居住可能な住居を有しているかなどを総合して判断する。
Q56 借家人が借地権取得の申出をしたときに,借地権を取得できるのはいつでしょうか。
A 土地所有者が承諾したときか承諾ありとみなされるときに借地権を取得できます。
Q57 借地権取得の申出により,借家人が取得した借地権の内容はどのようなものですか。
A 期間は10年とされ,更新が可能です。その他の借地条件は当事者間の話し合いで定めますが,協議が整わない場合は調停,裁判となります。
Q58 罹災都市法2条により借地権を取得するには,どの程度の資金が必要?
A 毎月の地代の外,一時的に必要な資金として建物建築資金権利金あるいは敷金が必要
Q59 罹災法2条により成立した土地賃貸借について,地代,権利金等が決まっていない段階では,いつまでに,いくらを支払わなければならないのでしょうか。
A 原則として借地権が成立した時期から,合意にもとづく金額を支払うことになりる。
金額について争いがある場合は,後に裁判によって決まるまでは相当と考える地代を支払う必要がある。
Q60 土地に地主の借入金のために抵当権が設定されていた場合,罹災法2条により借地権を取得して建物を建てた後に土地が競売されると,建物は収去させられるのでしょうか。
A 法定地上権に成立に関する最近の有力な考え方によれば,建物を収去する必要性が高いものと考えられます。但し,競落人の新築した建物に罹災法14条により優先借家権の主張ができることになります。
Q61 借地権者に借地権譲渡の申出をして,借家人が借地権を取得できるためにはどのような要件が必要?
A 原則として,罹災建物の滅失当時の借主が,政令施行日から2年以内に,借地人または転借人に対しそれを譲り受ける旨の意思表示をする。
Q62 罹災法3条により借地権の譲渡が成立した場合,譲渡価格や賃料その他の借地条件はどうなるのですか。また,いつ支払うのですか。
A 借地条件は存続期間以外,従前の契約条件を引き継ぎますが,譲渡価格は当事者間の協議により決め,協議が整わないときは裁判所が決定することになります。
Q63 土地所有者は,借家人が借地権設定の申出をするかどうかを催告し申出権を消滅させることはできませんか。
A 催告により借地権の申出権を喪失させることはできません。
Q64 罹災法2条,3条により借地権が成立した後,借家人が土地の使用を開始しなかった場合にはその借地権が消滅することがありますか。
A 正当な理由なく1年間建物所有の目的で土地の利用が開始されない場合,土地所有者は賃貸借契約を借地権の譲渡人は賃借権譲渡契約を解除することができます。
Q65 借家に複数の借家人がいた場合,そのうちの1人から借家の敷地全体の借地権設定の申出をすることはできるのでしょうか。
A 他の借家人が既に建築を開始していない場合は,敷地全体の優先借地権の取得を申し出ることができます。
Q66 借家に複数の借家人がいた場合,複数の借家人から優先借地権取得の申出があると,どうなりますか。
A 複数の申出があった場合,早く申し出た者が優先するか,あるいは競合を認め,当事者間の協議,あるいは裁判所の割当による決定となる申出者の範囲をどこまでとするかについては,争いがあります。
Q67 優先借地権取得申出者,借地権の優先譲受権申出者が複数競合した場合の裁判所による割当とは,どのようなものですか。
A 競合した申出者間で協議が整わない場合,裁判所が土地の状況,各借家人の経済状態,土地の有効利用など一切の事情を考慮して誰にどの範囲の借地権を設定するかを決定することです。
Q68 罹災都市法14条に基づいて借家人が借家権を取得できるためには,どのような要件が必要ですか。

@罹災建物が滅失した当時における当該建物の借主が申出をすること,
A上記借主以外の者によって,その建物の敷地又は換地に最初に築造された建物についての申出であること,
B建物完成前に申出をすること,
C相当な借家条件で賃借すること,
D申出から3週間以内に,正当事由に基づく拒絶を受けないこと,が必要となります。
Q69 罹災都市法14条により借家人が優先借家権の申出をするかどうかを,建築主から催告することはできませんか。建物完成まで待っているほかないのでしょうか
A 催告は可能ですが,催告後一定期間経過後に優先借家権が消滅するという制度は存在しません。ただし,催告が,優先借家権の申出を拒絶する正当事由を判断する一資料として機能する可能性はあります。
Q70 中高層建物が再築された場合,罹災都市法14条の借家申出はどのようになりますか。
A 中高層建物が再築された場合も,罹災都市法14条の優先借家権申出を行うことが可能です。ただし,同一建物内で複数区画の割当てを行うことから,通常建物の場合とは異なる問題が生じます。
Q71 罹災都市法14条の申出により借家権がすでに成立した場所について,さらに他の者から申出があった場合にはどうなるのでしょうか。また,建物所有者がすでに他の者に賃貸して引渡ししている場合にも,借家権の主張ができるのでしょうか。
A 優先借家権がすでに成立した場所についても他の者は優先借家権の申出をすることができ,両者は申出が競合する場合として,罹災都市法16条1 項により処理されます。優先借家権の申出後に他の者に対して家屋が賃貸され引き渡された場合も,優先借家権者は借家権の主張をすることができます。
Q72 罹災都市法の適用に関して,裁判所への申立てはどのようにするのですか
A 罹災都市法に基づき,借地等の所在地を管轄する地方裁判所等に対して非訟事件の申立てを行うか,民事調停法に基づき,借地等の所在地を管轄する簡易裁判所等に民事調停の申立てを行うことになります。事案の性質によっては,一般の民事事件と同じく,地方裁判所に訴訟を提起しうる可能性もあります。
■債務の処理・破産等
■債務の処理・破産等 Q73 地震で家屋が倒壊したのですが,住宅ローンの支払義務だけは残ってしまうのですか。
A 家屋が倒壊しても,住宅ローンの支払義務はそのまま残ります。ただし,地震保険に加入している場合は,その保険金が住宅ローンの支払いに充当されます。
Q74 地震で家屋が倒壊,損傷したのですが,住宅ローンが残っています。地震で収入は減り,復旧費等支出がかさむのですが,既にある住宅ローンについて,金利の減免や支払の猶予をしてもらうことはできるのですか。
A 法的に,当然に,金利の減免や支払猶予を受けられるわけではありません。ですが,住宅金融公庫他金融機関において,内部基準を設けて,これらの措置を講じている場合もある。
Q75 地震で抵当権の設定されている家屋が倒壊してした。倒壊した家屋に設定されていた抵当権はどうなるか?金融機関から増担保を請求されるのか?また,住宅ローンの期限の利益は?
家屋の滅失により抵当権は消滅します。しかし,金融機関において,一般に増担保を請求するという運用は執られていないことが多いようです。また,一般に期限の利益を喪失させるという運用は執られていないことが多いようです。
Q76 地震で家屋が倒壊,損傷したため,新築,補修等したいのですが,どのような制度があるのですか。公助(公的支援),共助の制度について教えてください。
A 公助制度としては,自治体による融資制度,被災者生活再建支援法に基づく支援制度,災害救助法に基づく応急修理制度などがあり,共助制度として,兵庫県では,兵庫県住宅再建共済制度が発足。
Q77 地震で家屋が倒壊,損傷したため,家屋の建替資金,補修資金を捻出するために,新規融資を受けられないか?
A 阪神大震災,新潟県中越地震の際には,住宅金融公庫等の政府系金融機関のほか,民間金融機関でも,通常よりも低利で,据置期間の延長,一定期間の支払い猶予措置等の軽減措置を講じた新規融資をすることがあった。
被災地の自治体の中にも,特別融資等をしたところがあった。
Q78 自宅のローンが相当額残っていますが,地震で自宅が全壊。その上,勤務先も地震のため廃業することになり,現在収入が全くありません。再就職をしたいのですが,自宅の倒壊で怪我をしてしまい,治療中で就職活動を開始できる見通しも立っていない。このような状態ではローンを返せません。どうしたらよいでしょうか。
A 借入先金融機関が救済措置を設けた場合,これを受けることも考えられますが,返済の見通しが全く立たない場合には,破産手続開始・免責許可の申立てをし,財産債務を清算することを考えるべきでしょう。
Q79 自宅のローンとその他に借入があります。幸い地震で自宅が損傷するということはありませんでしたが,勤務先が大きな被害を受けて廃業することになってしまい,やむを得ず別の会社に再就職することになりました。しかし,再就職ということで,給料が以前よりかなり安くなってしまったため,今までどおり返済をしていくことはとてもできません。自宅を手放さずに,返済金額を少なくする方法はないでしょうか。
A 住宅資金貸付債権に関する特則を利用して,小規模個人再生手続あるいは給与所得者等再生手続をとることを検討してみて下さい。
Q80 地震により,会社所有の建物や機械が壊れるなどして資産額が減少し,現存する債務総額を下回ってしまった場合,会社は破産するしかないのでしょうか。阪神・淡路大震災のときに特別な取り扱いがされたと聞いていますが,その内容を教えてください。
A 阪神・淡路大震災のときは,大震災の被害により債務超過に陥った法人に対して債権者が破産の申立てをした場合,裁判所は大震災の日から2年間破産宣告(改正破産法における破産手続開始決定に相当)をすることができないとして,2年間の猶予措置がとられました。
■金融取引等
■金融取引等 Q81 地震のため取引先の入金がなく手形(小切手)のための当座預金が枯渇した。救われる方法は?。
不渡処分を猶予する制度がありますから,これを最大限利用して,最終的に不渡処分・銀行取引停止処分を受けないようにする努力ができます。
Q82 地震があった場合,手形交換所の取引停止処分に何らかの特例は?債務免除は?
A 不渡処分や取引停止処分の猶予があるが,債務免除はない。
許された猶予期間内に不渡処分を受けないようにする必要がある。
Q83 銀行が地震のため営業ができていません。小切手を発行しても大丈夫でしょうか。
A 手形交換所は,地震に伴う特別措置として,呈示期間を経過した小切手(手形も同じ)についても地震の影響によるとの客観的な事情が認められれば小切手(手形)交換呈示を行います。
Q84 銀行が地震のため営業ができていない。受取手形の割引も取立もできない。どうしたらいい?
A 銀行は遠からず再開されます。そこで,直ちに受取手形を持ち込み,自己振出の手形の不渡猶予処分を得て,最終決済に持ち込むことです。
Q85 大地震の発生した場合の手形などの支払呈示はどうなりますか。
A 手形交換所では,震災に伴う特別措置として,呈示期間を経過した手形・小切手についても,地震の影響によるとの事情が認められれば手形交換呈示を行います。
Q86 手形貸付を受けているが,いつもの期限書き換えの日が間近に迫っているが,地震のためにそれどころではありません。大丈夫でしょうか。
A 手形貸付を受けている銀行に具体的な事情を説明をして書き換えをすることを明らかにして待って貰うしかありません。
Q87 地震よって受取手形と手形帳が行方不明となりました。この場合どうしたらいいのでしょう。
A 受取手形は公示催告手続・除権決定を得て,受取手形を無効にして,元の原因債権で支払いを求めます。手形帳は,将来不正な利用があった場合に防御するために,遺失届を警察に出しておき(遺失物法1条参照),遺失届の受理証明をもらい,銀行にも遺失届けをします。
Q88 リース契約のコピー機が壊れてしまった。契約は?
A リース契約の場合には多くの場合,特約条項により地震等の場合にも月々のリース分割金あるいは規定損害金を支払う必要があるとされます。
Q89 株券が地震でなくなった。どうしたら?
会社法223条で定める株券喪失登録の請求をします。具体的手続きは法務省令である「会社法施行規則」47条(株券喪失登録請求)に定められています。
Q90 証券の売買したところで,地震に見舞われ,取引が成立したのかわかりませんし,仮に取引が成立していたとしても,現在はその支払いの方法がわかりません。どうしたらいいのでしょう。
A 手形・小切手の決済に関する手形交換所による特別措置と同様な措置がとられると思われます。
■保険(生命保険・地震保険)
■保険(生命保険・地震保険) Q91 災害で父が死亡しました。生命保険を契約していたのですが,基本的な仕組みが分からないので説明して下さい。また,証券を紛失し内容が分からないのですが,どうすればいいですか。
A 生命保険契約は,一般的に,終身保険・定期保険・養老保険などの主契約と災害割増特約などの特約とで構成されています。紛失してしまった場合には,証券の再発行を請求することができます。
Q92 保険金を請求したいのですが,必要書類が分からないので教えて下さい。また,災害の場合には,簡易な手続で保険金を支払ってもらえる場合があるのですか。また,災害の場合には保険金が支払われない場合があると聞いたのですが本当ですか。
A 一般的には,請求書,被保険者の除籍謄本等,受取人の戸籍抄本・印鑑証明書,医師の死亡診断書ないし診断書,保険証券,不慮の事故を証明する書類等が必要です。なお,災害が起こった場合には,必要書類を省略するなどによる簡易な手続が設けられる可能性があります。また,各種の給付金について,地震等の場合には保険会社は保険金を削減して支払うか,または支払わないことができるとの定めがありますので,具体的な災害時に支払われない可能性もあります。
Q93 災害により生命保険料が払えないのですが,保険料が免除されることはありますか。また,一定期間の猶予をもらえる場合はあるのでしょうか。保険会社が,立て替えてくれる場合はありますか。
A 契約内容によって,免除される場合がありますし,一定の期間保険料の支払いを猶予する特別措置が採られる可能性があります。また,反対の申し出をしていない限り,解約返戻金の範囲内で自動的に立て替えてくれます。
Q94 保険料が払えないと保険契約はどうなってしまいますか。
A 契約は失効しますが,復活という制度があります。
Q95 地震保険の契約をしていますが,どのような場合に保険金が支払われるのでしょうか。また,火災保険では,地震による火災は補償されるのでしょうか。地震による火災が延焼した場合はどうですか。火災保険の契約をせずに地震保険だけを契約することはできますか。
地震保険は,地震若しくは噴火またはこれらによる津波を直接または間接の原因とする火災,損壊,埋没または流失による損害を補償するもので,居住用建物または生活用動産が,全損,半損または一部損となった場合に保険金が支払われます。
Q96 火災保険では,地震による火災は補償されるのでしょうか。地震による火災が延焼した場合はどうですか。火災保険の契約をせずに地震保険だけを契約することはできますか。
A 地震による火災の場合も,地震による火災が延焼した場合も,火災保険だけでは補償されません。地震保険は火災保険とセットで契約する必要があります。
Q97 地震保険の対象はどのようなものでしょうか。
A 地震保険の対象は居住用建物と生活用動産に限定されています。
Q98 地震保険で支払われる保険金はどのようにして決まるのですか。
A 地震保険契約で定めた保険金額と,損害の程度(「全損」,「半損」,「一部損」)によって決まります。
Q99 地震保険の保険金額とは何ですか。また,どのようにして決められるのですか。

地震保険の保険金額は,保険契約において保険会社と合意する金額で,全損の場合に支払われるべき金額です(ただし支払われる金額は時価を限度とします)。
地震保険の保険金額は,主契約である建物または家財の火災保険の保険金額の30 %〜 50 %の範囲内とされています。ただし,建物については5000万円,生活用動産(家財)については1000万円が限度です。
地震保険で支払われる保険金は,この保険金額と,損害の程度(「全損」,「半損」,「一部損」)によって決まります。
Q100 地震保険において,全損,半損,一部損はどのように判断されますか。
A これらの区分については法律と約款に基準が定められています。
Q101 区分所有建物(マンション)の区分所有者が地震保険保険契約を締結することはできますか。
A 区分所有者も地震保険契約を締結できます。ただし,その場合の方法は,管理組合が共用部分について一括して火災保険契約を締結しているかどうかによって違いがあります。
Q102 警戒宣言の発令後に地震保険に加入することはできますか。
A 警戒宣言発令後に新たに地震保険に加入することは原則としてできません。
Q103 り災証明,被災建築物応急危険度判定とはそれぞれどのようなものですか。
被災建築物応急危険度判定は,二次災害を防止し,住民の安全の確保を図るために余震等による二次災害の危険の程度の判定・表示等を行うもので,ステッカーを貼付して表示されます。り災証明とは家屋の被害程度を市町村長等が証明するものです。
被災建築物応急危険度判定とり災証明は,調査の視点・内容が異なります。
■不在者の財産管理など
■不在者の財産管理など Q104 災害により,親類の者が行方不明になっていました。その者の財産管理は誰がどのようにしたらいいのでしょうか。
A 行方不明になった親類の者に法定代理人がいる場合,あるいは,自ら財産管理人を定めていた場合には,その法定代理人あるいは財産管理人が財産を管理します。しかし,そのような場合は稀であり,それ以外の場合には,申立てにより家庭裁判所が選任した財産管理人が財産管理をします。
Q105 災害により父親が行方不明のまま安否も全く分かりません。父の財産について相続は開始するのでしょうか。
認定死亡失踪宣告が下されていれば相続は開始しますが,そうでなければ相続は開始しません。
Q106 地震に関連して隣の家や塀が倒れ,怪我(又は死亡)をしてしまいました。この場合に,治療費等の損害賠償請求はできますか。また,何らかの給付や援助を受けられる場合がありますか。
損害賠償請求については,一定の要件を満たせば,請求できます。また,生命保険に加入していれば,保険金や各種給付金が受けられますし貸付けを受けることができます。さらに一定規模の災害であれば,「災害弔慰金の支給等に関する法律」に基づく給付や援助を受けることができます。
Q107 地震で自宅が倒壊し,自宅に保管していた権利証を消失してしまったのですが,自宅の土地を売却することはできますか。
A 権利証を消失した場合には,売却時の所有権移転登記申請に当たり,新しい事前通知制度あるいは本人確認情報制度を利用することにより対応できますので,手間はかかりますが土地の売却は可能です。
■消費者問題
■消費者問題 Q108 自宅に屋根の修理業者が来て,災害支援のため格安の値段で屋根の修理をするといわれ,屋根用パネルと壁面用パネルの張替工事契約をしましたが,後で調べると相場の3倍の値段だったことが分かりました。契約を解除することができますか。
A 屋根,壁面パネルの修繕は,特定商取引法の役務に該当しますので,修繕契約の内容に不満があれば,同法で要求される書面を受け取った日から8日以内であれば,その理由如何にかかわらず,「クーリング・オフ」の権利を行使し,契約を解除することができます。クーリング・オフを行使できない場合でも,詐欺取消し,消費者契約法違反に基づく取消し等が考えられます。
Q109 自宅を尋ねてきた工事業者から地震で壊れた瓦屋根等の補修の点検無料といわれて頼んだら技術料を請求されました。支払わなければならないのでしょうか。
A 技術料を請求されても代金を支払う法的義務はありません。
Q110 水道局の職員のような制服を着た人が自宅にきて,震災によって水道管が破損し水道水が汚染されているといわれたので,浄水器を購入しました。しかし,後で近所の人に聞いたところ,水道管は破損していないことが分かりました。浄水器のお金を返してもらえますか。このような業者は処罰されないのですか。
A 特定商取引法によるクーリング・オフ,消費者契約法による契約取消し,錯誤による契約無効,詐欺による契約取消し,不法行為に基づく損害賠償等によって代金の返還を求めていくことが考えられます。
Q111 震災後,痴呆の症状が進んできた高齢の父の家に突然業者が訪問し,震災によって建物の基礎部分が壊れていないか無料点検すると言われて,床下を点検してもらったところ,その後,高額な床下工事の契約をさせられて業者が工事を行っていきました。どうしたらよいでしょうか。
A 特定商取引法によるクーリング・オフ,消費者契約法による契約取消し,錯誤による契約無効,詐欺による契約取消し,公序良俗違反による契約無効等によって代金の返還を求めていくことが考えられます。
また,認知症により意思能力が無かったとして契約無効にできます。
なお,その後に,成年後見制度の活用や日常生活自立支援事業などの地域における見守りなどの体制整備も必要です。
■労働問題
■労働問題 Q112 既に採用内定を出しているのですが,その後の震災により一部の事業所が損壊し採用内定者を実際に採用するのが困難な状況になりました。採用内定を取り消すことはできますか。
A 整理解雇に準じた厳しい要件を満たす必要がありますが,地震により企業規模縮小を余儀なくされた場合には,採用内定の取消も客観的に合理的で社会通念上相当と是認される可能性が高いと思われます。
Q113 震災を理由に労働者が欠勤しております。欠勤をしていても給与を支払わなければならないのでしょうか。
A 解雇はできませんが,給与を支払う義務も原則としてありません
Q114 私(労働者)は震災が原因で欠勤せざるをえない状況です。欠勤により懲戒処分等の不利益処分を受けないか心配なのですが。
A 震災を理由として欠勤したとしても,それを理由に不利益処分を受けることはありません。
Q115 私(労働者)は震災により怪我をし,3 ヶ月以上欠勤が続いており,今後も治療にどれだけの期間が必要か不明の状態です。先日会社から就業規則に則り今後は休職扱いとしさらに6ヶ月間以上欠勤が続けば自然退職になると言われました。私は,会社の同方針に従わなければならないのでしょうか。
A 休職扱いそのものは受け入れざるをえませんが,完治と言えなくても一定程度治癒した場合には,会社に復職を求めることは可能です。
Q116 震災により会社の資金繰りが悪化し,決まっている給料日に従業員に対し給与の支払いをできそうにありません。どうしたらよいでしょうか。従業員一律の一時的な賃金の引き下げは可能でしょうか。
A 給与の支払いが遅れても労基法上の処罰を受けることはありませんが,遅延損害金を付して給与を支払う義務があります。従業員一律の賃下げも給与規程の合理的な変更であれば可能です。
Q117 私(労働者)は震災のため纏まった金銭を臨時的に必要な状況になってしまいました。会社に対し今月の給与を前倒しして支払ってもらいたいのですが。
A 使用者は,労働者が出産,疾病,災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては,支払期日前でも,既往の労働に対する賃金を支払わなければなりません(労働基準法25条)。
Q118 震災のため人手を欠き出勤可能な従業員につき時間外労働及び休日出勤を命じたいのですが。
A 行政官庁の事前許可ないし事後承認を条件に時間外労働及び休日出勤を命じることはできます。ただし,割増賃金を支払う必要があります。
Q119 使用者から震災を理由に一時帰休(レイオフ)を命じられました。会社からはその間給料が減額になるかまたは全く支給できないかもしれないと言われました。どうしたらよいでしょうか。生活が成り立たなくなるので,その間アルバイトをしたいのですが,就業規則上の兼職禁止条項に違反することになってしまうのでしょうか。
A 一時帰休がやむをえないものであれば,同命令に従わざるをえません。使用者に損害が生じるような態様でなければ,アルバイトをすることは問題ありません。
Q120 震災により会社の資金繰りが悪化し,一部の従業員を解雇したいと考えているのですが。
整理解雇4要件を満たせば,解雇は可能です。
Q121 震災により会社が倒産してしまいました。労働者の立場はどうなりますか。
A 震災に便乗した計画倒産などでなければ,解雇はやむを得ません。ただし,未払賃料等については一般債権に優先して弁済を受けることができますし,労働者健康福祉機構から立替払いを受けることができます。
■租税特別措置
■租税特別措置 Q122 地震で被災した人に対する税法上の減免措置について教えて下さい。所得税について減免措置はありますか。
A 「災害被害者に対する租税の減免,徴収猶予等に関する法律」(災害減免法)による減免,所得税法による雑損控除,資産損失の必要経費算入などの措置があります。
Q123 所得税以外の税金(法人税,相続税,贈与税等の国税,地方税を含む)について減免措置はありますか。
A 法人税については,@被災資産の評価損の損金算入,A災害損失金の繰越控除が認められます。
Q124 地震で被災した人に対して,税法上,減免措置以外の救済はありませんか。
A 申告期限・納付期限の延長,納税の猶予,延滞税の免除などの措置が認められています。
■外国人の人権
■外国人の人権 Q125 被災による負傷で,長期の看護が必要になってしまいました。母国に住む親族に面倒を看てもらいたいのですが,親族の来日及び長期滞在は可能でしょうか?
看護する家族が取得できる在留資格の種類によって,結論が異なってくるものと思われます。
Q126 震災でパスポートなどを無くしてしまったのですが,どうすればいいですか?
A 警察署で紛失証明書を発行してもらった後,在日大使館や領事館に連絡をして,パスポートの再発行の申請をする必要があります。
Q127 震災で外国人登録証などを無くしてしまったのですが,どうすればいいですか?
A 紛失,盗難または滅失により登録証明書を失った場合には,その事実を知ったときから14日以内に,その居住地の市町村の長に対して登録証明書の再交付を申請する必要があります(外国人登録法7条1項)。
Q128 震災及びその後の混乱で,手続せぬまま在留期間の更新期限が過ぎてしまいました。退去強制手続がとられてしまうのでしょうか?
許可申請の特別受理が認められる可能性があります。
Q129 私は,留学生として来日していますが,震災により財産がすべて消失してしまいました。生活のためにとりあえず働く必要がありますが,可能でしょうか。
A 原則として,資格外活動許可申請をする必要があります。
Q130 震災によって,働いていた工場が操業できない状態になったということで,突然,解雇されてしまいました。これまで,給料から,保険関係の支払はしていたようですが,雇用保険給付は受けられるのでしょうか。私の在留資格が,当該仕事をしていることが条件であった場合でも,問題なく,受給できるのでしょうか。
A 雇用保険には加入をしていた場合は,外国人であっても雇用保険給付は受けられることになります。在留資格の点ですが,平成16年に入管法が改正され,「在留資格取消制度」が新設されたことから,一定の注意が必要です。
Q131 震災によって,働き口がなくなりました。生活保護を受けたいと思うのですが,在留資格がある場合とない場合とで,受給に違いがあるのでしょうか。
A 行政の取扱いでは,多くの場合,外国人に対する生活保護についても,居住地の市町村の福祉事務所で認定をしています。ただ,その取扱いは,あくまでも法律上の権利として保障されたものとは言えません。さらに,在留資格のない外国人に対しては,大変厳しいものがあると考えられます。
Q132 震災によって私又は親族がケガをしてしまいました。外国人である私も国又は地方自治体から医療費の援助を受けることはできますか。
A 災害救助法に基づき医療を受けることができますが,これは支払った医療費に対し援助を受けられるものではありません。また,医療費の自己負担部分を免除する等の施策が行われる可能性がありますが,阪神大震災においては,外国人については健康保険に加入していることが要件とされ,健康保険に加入していない外国人は,免除を受けることができませんでした。この時,免除を受けられなかった外国人に対し,県より補助がなされましたが,今後の震災において,必ずしも同様の施策が行われるとは限りません。
Q133 震災によりケガをしてしまいました。外国人である私にも国又は地方公共団体から見舞金が支給されることはありますか,あるいは,親族が死亡した場合弔慰金が支給されることはありますか。
A 見舞金・弔慰金のいずれについても外国人であっても支払を受けることができます。しかしながら,日本国内に住所を有していることが要件とされているため,在留資格にない人には支払われないことになります。阪神・淡路大震災の際には,NGO団体から民間弔慰金が支払われたとのことですが,今後必ずしも同様に民間弔慰金が支払われものとは限りません。
Q134 震災によって住居が消失してしまいました。私も仮設住宅に入ることはできますか。また,住居とともに日用品も消失してしまった場合,日用品の支給を受けることはできますか
A 外国人であっても入居条件を充たせば,仮設住宅に入居することができます。ただし,手続き等は日本語で行われるため,困難を伴う可能性があります。また,住居又は家財に損害を負った場合に貸付けを受けることができますが,日本国内に住所を有することが要件とされており,在留資格のない外国人は貸付けを受けることは難しいです。
Q135 母国に帰ろうと思うのですが帰国費用が調達できません。帰国費用の援助を受けることはできますか。
A 国あるいは地方公共団体から外国人に対する帰国費用の援助の制度はありません。しかし,民間団体の援助を受けることができる可能性があります。
Q136 震災に関する義捐金が集められていると聞きました。私たちにも支払われることはありますか。
A 日本赤十字社等から義捐金が支給されるものと思われます。しかし,支給にあたっては,被災地に居住していたことの証明及び身分証明書を提出することが求められ,在留資格がない等の理由によりこれらの書類を取得することが困難な場合には,支給を受けられない可能性があります。
Q137 震災によって,いろいろと困ったこと,どうしたらよいのかわからないことがでてきました。ただ,私は在留資格がないので,警察などに相談したりすることはできないのではないかと心配しています。私たちでも安心して相談できるような情報提供場所または手段について教えて下さい。
A 阪神・淡路大震災の際の例からは,外国人の生活相談に応じるボランティア活動の支援を受けることが可能ではないかと思います。
Q138 日本に来て,わずかの間に被災をしたため,日本語がよくわかりません。通訳をしていただきたいのですが,だれに,どのように依頼したら確保できるのでしょうか。
A 各国の大使館や,外国人を支援するためのボランティア団体へ積極的に赴くようにして行くべきでしょう。
■高齢者・障害者の人権
■高齢者・障害者の人権 Q139 自治体は,地域防災計画を策定しなければならないということですが,どういうことを定めるものですか。
A 多岐にわたりますが,当該地域に係る防災に関し,防災上重要な施設の管理者の処理すべき事務又は業務の大綱を定めるほか,防災施設の新設又は改良や,防災のための調査研究,教育及び訓練その他の災害予防,情報の収集及び伝達,災害に関する予報又は警報の発令及び伝達,非難,消火,水防,非難,救助,衛生その他の災害応急対策並びに災害復旧に関する事項別の計画や,これらの措置に要する労務,施設,設備,物資,資金等の整備,備蓄,調達,配分,輸送,通信等に関する計画などを定めることとなっています。
Q140 地域防災計画上,高齢者,障がい者などの災害時要援護者について,どのような配慮がなされていますか?
A 高齢者,障がい者などの災害時要援護者について,どのような配慮をするかについては,各自治体が決定することですが,国の災害対策基本計画では,災害時要援護者への施策として,次の指針を定めていますので,各自治体も,この指針に沿った地域防災基本計画の策定を行うことが望まれます。

高齢者,障がい者,外国人等の災害時要援護者に対しては,防災知識の普及,災害時の情報提供,避難誘導,救護・救済対策等の様々な面で配慮が必要であり,このため,平常時から地域において災害時要援護者を支援する体制が整備されるよう努めるとともに,平常時には,避難誘導はもとより,高齢者,障がい者の避難場所での健康管理,応急仮設住宅への優先的入居等に努める。
Q141 私どもは社会福祉協議会ですが,高齢者・障害者の親族の方の同意を得て,作成したこれら要援護者の住所,氏名,生年月日,健康保険証の番号,介護保険証の番号,既往歴,服薬状況等の医療情報を集積した情報を管理していますが,これらデータベースとなったものを,いざという時に備えて,協力してくれるボランティアの人になど他に貸与することについて問題はないでしょうか。
A あらかじめ本人の同意を得ないで,個人データを第三者に提供できません。ただし,例外として人の生命・身体・財産の保護のために必要がある場合であって,本人の同意を得ることが困難なときには,本人の同意を得なくても,個人データを第三者に提供することができます。本問では,本人の同意を得ることが困難なときに当たりませんので,個人データを第三者に提供するには,あらかじめ本人の同意を得ておく必要があります。
Q142 私は,入居保証金800万円も預託して,終身居住可能な有料老人ホームに入居しました。ところが,この度の地震により,建物が半壊し,倒壊の危険があるため,立入禁止となっています。入居保証金を返してもらうことはできないのでしょうか?
A 少なくとも,入居保証金の未経過分の部分については返還するよう求めましょう。なお,厚労省から,契約から90日以内の退去の場合には,実費等を除いて入居保証金を全額返還しなければならない旨の通知が出ていますので(いわゆる「90日ルール」),契約から90日以内であれば全額の返還を求めましょう。
Q143 老人ホームの施設経営会社が破産した場合はどうなりますか。
A 一般的には,破産債権として,破産財団から一定割合の配当しか受けることができません。ただし,入居者基金制度とよばれる制度がありますので,その利用ができないか調べる必要があります。また,2006年(平成18年)4月1日以降に設立された有料老人ホームの場合には,入居保証金の保全措置をとることが法律で義務づけられていますので(それ以前に設立されたホームの場合は努力義務),500万円を限度として返還を受けることができます。
Q144 私は,今回の地震で今まで住んでいた借家が倒壊し,住むところがなくなりました。私は,60歳で,妻以外に身寄りはいません。高齢者の家賃債務を保証してくれる制度ができたということを聞きましたが,どのような制度でしょうか?
A 高齢者世帯の方には,高齢者居住支援センターが賃貸住宅を借りた際の家賃債務の保証人となる制度があります。また,この高齢者居住支援センターを運営する財団法人高齢者住宅財団では,高齢者世帯だけでなく,障がい者世帯,子育て世帯,外国人世帯,解雇等による住宅確保要配慮世帯の方についても家賃債務保証制度を提供しています。いずれも,高齢者や障がい者等の住宅確保要配慮者の賃貸住宅を借りやすくする制度です。その他,同財団では,高齢者の方には,自分の持ち家をバリアフリーの家にリフォームした際の借入金についての債務補償の制度も提供しています。
Q145 私は,介護保険3の等級認定を受けていましたが,今回の地震で他の地域に一時避難することになりました。一時避難先の避難所,あるいは仮設住宅でも介護保険の給付を受けることができるでしょうか。
A 一時的に別市町村等に避難した場合でも,従前からお住まいの給付市町村等からの介護保険の給付を請けることができます。
Q146 地震で家財道具が壊れ,全部使えなくなりました。新しく買い直すにもお金がありません。年金担保貸付という制度があると聞きましたが,どのような制度でしょうか?目的はどんなものでも貸付は受けられるのでしょうか?また,年金証書が見あたらないのですが,紛失してしまった場合でも貸付は受けられるのでしょうか?
A 年金担保貸付は,公的年金の受給者に対しその受給権を担保として低利で小口の資金を貸し付ける制度です。使途はギャンブルなどに使うと言うような場合はダメですが,その他は制限はありません。年金証書が必要ですので,紛失した場合は社会保険事務所などで再発行の手続をしてください。その他,地震の際の特別な貸付制度としては,災害援護資金や生活福祉資金貸付制度があります。その他,災害弔慰金・災害傷害見舞金や被災者生活再建資金が支給される場合もありますので,こちらも活用ください。
Q147 災害時要援護者支援について,法律で特別な規定がありますか。
A 災害対策基本法第8条第2項において,「国及び地方公共団体は,災害の発生を予防し,又は災害の拡大を防止するために」「実施に努めなければならない」事項として,「高齢者,障害者,乳幼児等特に配慮を要するものに対する防災上必要な措置に関する事項」を掲げています。また,災害救助法による救助の程度,方法及び期間並びに実費弁償の基準において,福祉避難所を設置することを想定した実費加算が認められ,福祉仮設住宅を応急仮設住宅として設置できることが認められています。
Q148 大規模災害が発生する危険が生じた場合や大規模災害が発生した場合に,避難が困難な高齢者,障害者等の要援護者に対し,危険を知らせて,避難をさせる必要があると思いますが,危険を知らせるための施策としては,具体的にどのようなものが考えられていますか。
A 災害対策基本法第60条に定める通常の避難勧告(避難行動を開始すべき段階)や避難指示(危険が急迫している段階)に先だって,避難に時間がかかる高齢者や障害者ら要援護者のために発令し,いち早く安全な場所に逃げてもらうための情報である避難準備情報を行うこととなりました。さらに,平成18年3月には,内閣府は「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を発表し,情報伝達が困難な災害時要援護者に対する情報伝達体制の整備に関する方策が提案されています。
Q149 要援護者に避難準備情報を出す場合,要援護者がどこにいるのか,どのように情報を伝達すればよいのかあらかじめ分かっていなければ,充分な避難支援はできないと思いますが,要援護者の情報の把握については,具体的にどのような方策が考えられていますか。
A 平成18年3月に内閣府は「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を発表し,災害時要援護者情報の共有について,市町村に同意方式との組合せによる関係機関共有方式の積極的活用,特に要援護者情報について,避難支援のための目的外利用・第三者提供に関する具体的な方策を提案しています。
Q150 多数の被災者を受け入れる避難所では,高齢者,障害者などの災害時要援護者が放置されたり,困窮することが多々あると思われます。避難所における災害時要援護者に対する支援についての施策はどのようなものがありますか。
A 平成12年3月31日に制定された災害救助法による救助の程度,方法及び期間並びに実費弁償の基準(同基準第2条第1項一,ハ)に基づき,福祉避難所の設置が認められました。また,平成18年3月に発表された「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」では,避難所における要援護者用窓口を設置し,避難所における要援護者班を組織すること,要援護者班から避難所では対応できない要援護者のニーズについて,市町村の災害時要援護者支援班への要請を行うこと,福祉避難所の設置・活用促進策などを提案しています。
Q150−2 避難所で訪問介護ヘルパーは利用できますか。
A 避難所にいる障害者は,避難所を居宅介護における「居宅」とみなして訪問介護支援が可能であると厚生労働省が通知を出しています。
Q150−3 入所施設やグループホームで暮らしていた障害者が避難した場合,どうなりますか。
A 避難先がグループホームならグループホーム支援が利用できますが,避難先がそれ以外の施設の場合は「福祉避難所」の扱いとなります。入所施設の場合も同様です。
Q150−4 震災で重度障害者になった人への「災害障害見舞金」はどのようなものですか。
A 常時介護の状態等の重度障害者になった場合,生計維持者に250万円,それ以外の場合125万円支給されます。
Q150−5 視覚障害者,聴覚障害者など情報取得に障害のある人の避難所生活で配慮すべき点はありますか。
A 災害情報,行政情報等が視覚聴覚障害者に届かないことで不安に陥ります。音声だけのアナウンスでは聴覚障害者は配給や避難勧告にも気付かず,周囲と孤立することもあります。チラシやホワイトボードは聴覚障害者に有効な半面,視覚障害者には伝わりません。
ICレコーダーなどを活用し,必要な情報を録音して繰り返し聞くことができるような配慮が必要です。
また,聴覚障害者については,プラカードを持って回って聴覚障害者がいるかどうか確認するなどの配慮が必要です。
手話通訳派遣は障害者自立支援法の地域生活支援事業に基づく市町村事業ですが,コミュニケーション支援,情報保障は人間の尊厳に直結する重要な人権ですから,少なくとも被災した人に対しては全額国庫負担の国家事業として保障するべきと思われます。
Q150−6 自閉症など発達障害者,知的障害者,精神障害者への支援は,どのようなものがありますか。
A 発達障害者,精神障害者の多くは知らない人との避難所での集団生活を苦手としています。
避難所運営者,周囲の人が配慮出来ることが大切です。社団法人日本自閉症協会が発行している「自閉症のひとたちのための防災ハンドブック」や,国立障害者リハビリテーションセンター発達障害情報センターの「災害時の発達障害児・者支援について」(URL:http://www.rehab.go.jp/ddis/)などが参考になります。
Q150−7 人工透析患者,人工呼吸器装着の重度障害者,難病患者等の支援は,どのようなものがありますか。
A 災害により必要な医療を受けられないと生命の危険に直結する重度の患者,障害者がいます。
電力事業は電気事業法に基づき国が独占的に許可して行われる公共事業である以上,計画停電を実施するにあたり,それらの患者に事前に情報提供を周知する,地域の基幹病院の停電は可能な限り避けること等が必要です。また,そのような状態の人が入院している際,コミュニケーション確保のためにヘルパーを派遣できることが,厚生労働省から通知されています。
Q150−8 生活福祉資金の貸付はどうなりますか。(Q146参照)
A 今回の震災で被災した人には特例で所得制限がありません。貸付額は原則10万円,家族の状況により20万円。
Q150−9 保険証を喪失しました。どうしたらいいですか。
A 保険証を今回の災害で喪失した人が医療機関を受診したい場合,氏名・住所等を申告すれば保険医療が受けられます。
Q150−10 介護利用料の支払いは猶予されますか。
A 今回の被災により介護等の福祉施策の利用料の支払いが困難な人は減免及び猶予が受けられると厚生労働省が通知を出しています。
■子供の人権
■子供の人権 Q151 震災による子どもの心の傷について,行政ではどのような対応の仕組みが用意
されていますか。

@担当課は主に各都道府県の教育委員会です。
A事前の準備として,小中学校にスクールカウンセラーが配置され,教師に対する子どもの心のケアについての研修が行われています。
B震災後は避難所等にスクールカウンセラーが派遣されます。
これとは別に教育委員会又は教育事務所に申し込みをして,カウンセラーを派遣してもらうことも出来ます。
Q152 子どもが在校中に被災した場合,どのようにして子どもと引き合わせてもらえるのでしょうか。子どもが登下校中に被災した場合はどうですか。在宅中に被災した場合,学校に連絡した方がいいのですか。
A 一般論ですが,子どもが在校中に被災した場合,学校としては,まずは,子どもの身の安全を確保して,次いで,保護者への引渡しを行います。登下校中に被災した場合,学校は児童生徒の安否確認を行いますが,保護者が先に子どもの安否確認を出来た場合,すぐに学校に連絡をした方がいいでしょう。在宅中の被災でも,学校は児童生徒の安否確認,授業再開に向けた連絡等を行いますので,学校に連絡するようにしてください。
Q153 震災後,子どもの休学,転入学,授業料等,入試について,行政はどのような対応をしてくれるのでしょうか(国公立を中心に)。
A 震災直後,多くの学校は避難所として利用されるため,授業再開の準備が整うまでは休校とならざるを得ません。そして,授業再開後も通学できない生徒については速やかに転入学の手続をとるべきでしょう。転入学については,行政は手続を簡略化するなど弾力的な取り扱いを図るものと見込まれます。また,義務教育以外の学校の授業料等について,免除,減額等の措置を図ったり,入試についても,出願手続の簡略化,出願日程や入試日程の変更,入学考査料の免除,猶予など弾力的な対応,措置が図られるものと見込まれます。
■環境問題
■環境問題 Q154 アスベスト建材が使われている自己所有建物が震災により影響を受けています。@全壊・半壊で解体が必要の場合,所有者としてどのようなことをしなければなりませんか。また,A解体までは必要ではなく,補修で使い続けられる場合には,どのようなことを守らなければなりませんか。
A @所有者は,解体工事を発注するにあたり,解体事業者がアスベストの対策措置ができなくなることのないよう,解体方法,費用等について配慮しなければなりません。また,A所有者は,補修して使用し続けるときも,一定の場合には,震災により飛散するようになった吹きつけアスベストの除去等をしなければなりません。
Q155 震災により,近隣の工場から有害物質が流出しました。どのような手段をとることが可能ですか?
A 損害賠償や汚染除去を求めていくことになりますが,不可抗力であるとしてかかる請求が認められない可能性もあります。
Q156 地震により隣の建物が倒壊し,自宅敷地部分に瓦礫が残ったままになっています。自分で勝手に撤去してもよいでしょうか。また撤去費用はどちらが負担しなければならないでしょうか。
A 所有者の承諾を得ずに勝手に撤去してはいけません。費用負担については,地震により全くの不可抗力による倒壊の場合には隣地所有者に撤去費用を負担させることは難しいですが,隣家所有者に過失がある場合ないし必ずしも不可抗力による倒壊とはいえない場合には隣地所有者に撤去費用を負担させることができます。また,一定の範囲につき公費負担の制度もあります。
■津波の被害に係る問題
■津波の被害に係る問題 Q157 津波により1筆の土地の全部又は一部が水没した場合(海面下に没し,あるいは河川流水下の底地ななった場合),土地の所有権は消滅しますか。
A 土地が海面下に沈んでしまった場合に,その経緯が天災によるものであって,かつ,その状態が一時的なものであるときは,私人の所有権は消滅しません。しかし,土地が海面下に没した状態が一定期間継続し,もはや「一時的」とは言えなくなった場合には,所有権が消滅することにもなりますので,同状態を長く放置することは避けるべきでしょう。「一時的」か否かの判断は,津波の程度,被災状況,災害後の救済・復興の事情も加味して総合的に判断されるべきと考えられます。
当該土地が公有水面下にあるか否かの判例,登記実務は以下のとおりです。
最高裁は「海は,社会通念上,海水の表面が最高高潮面に達した時の水際線をもって陸地から区別されている。」と判示しています(最高裁判所昭和61年12月16日判決最高裁判所民事判例集40巻7号1236頁,判例タイムズ629号100頁)。
また,登記実務上の先例によれば,陸地と公有水面との境界は「潮の干満の差のある水面にあっては,春分,秋分における満潮位を,その他の水流水面にあっては高水位を標準として定める。」とされています(昭和31年11月10日民事甲第2612号法務省民事局長事務代理回答,昭和33 年4月11日民事三発203 号民事局第三課長回答)
Q158 土地の一部又は全部が滅失したときの登記はどうなるのでしょうか。
A 土地の所有者は,土地の一部が滅したときは地積変更登記を,また,全部が滅失したときは,滅失登記を法務局に申請しなければなりません。また,滅失登記は滅失の日から1か月以内とされています(不動産登記法42条)。土地の滅失登記は,共有者あるいは相続人の一人からでも申請することができます。また,同滅失登記は,滅失した事実に対して申請をするものですので,同土地に抵当権が設定されている場合でも,同滅失登記について,抵当権者の承諾は不要です。
なお,1筆の土地の全部または一部が,河川区域内の土地である場合は,河川管理者(国土交通大臣又は都道府県知事若しくは政令指定都市の市長で,河川法9条1項,10条1項・2項に基づき管理権限を有する者)が,土地の滅失登記を法務局に嘱託しなければならないことになっていますので,注意する必要があります(不動産登記法43条3項)。
Q159 私の土地は河川の傍らにありましたが,津波により瓦礫,建築物の残骸,土砂等が流入し,様変わりしてしまいました。このままでは利用することができなくなってしまいましたが,土地の滅失にあたるでしょうか。
A 土地としては存在しておりますので,滅失にはあたりません。
Q160 土地の一部又は全部が津波により滅失した場合,公的補償はないのでしょうか。
A 津波により土地が滅失したこと自体に対する公的補償はありません。なお,土地の固定資産税については,災害を受けた日以降に納期の到来する当該年度の税額が,申請に基づき一定の基準で減免されますので,役所の税務課等で相談してみて下さい。
Q161 津波で土地の境界が不明となってしまいました。地震により移動したのか津波により不明となったのか明らかではありません。境界はどうなりますか。
A 阪神淡路大震災の際に,地震による地殻の変動に伴い広範囲にわたって地表面が水平移動した場合に処理について,法務省の民事局通達があります。その通達よければ,原則土地の境界も相対的に移動したものとして取り扱うが,局部的な地表面の土砂の移動(崖崩れ等)の場合には,土地の境界は移動しないものとして取り扱うとの内容でした。
Q162 津波により建物の天井近くまで浸水し,部屋の中は割れた窓から入った瓦礫や建築物の残骸,土砂などでいっぱいの状態ですが,建物自体は歪んではいませんでした。この建物は全壊と言えるのでしょうか。また,床上浸水により,部屋の壁紙などが全面はがれてしまったような場合は,半壊にすぎないのでしょうか。
A 内閣府の「浸水等による住宅被害の認定について」の基準によれは,浸水により畳が浸水し,壁の全面が膨張しており,さらに,浴槽などの水廻りの衛生設備等についても機能を損失している場合等には,一般的に「大規模半壊」又は「全壊」に該当することになるものと考えられる。また,施行令第2条第1号に基づき,「半壊」であっても,やむを得ず住宅を解体する場合には,「全壊」と同様に取り扱うこととなるが,浸水等の被害により,流入した土砂の除去や耐え難い悪臭のためやむを得ず住宅を解体する場合には,「やむを得ず解体」するものとして,「全壊」と同様に取り扱うものとする,とされています。
津波の浸水によって効用を失った建物が,全壊か大規模半壊か半壊かは具体的な事実認定の問題ですが,畳が浸水したり,壁が全面はがれたり,トイレなどの水回りの機能が喪失していれば全壊あるいは大規模半壊といえます。また,その程度に至っていなくても,土砂の撤去や悪臭をさける為にやむを得ず建物を解体する場合は,全壊と同様に扱われるようです。
Q163 私の私有地上に津波で流されて来た自動車や船,瓦礫などが放置されています。誰に撤去を求めればよいですか。その費用は誰が負担するのですか。
A 原則として,物権的請求権として,妨害排除請求の相手方である船,自動車,瓦礫の所有者の負担において片付けてもらうことになります。ただし,原因が不可抗力である場合には,物権的請求権は生じないとする大審院時代の古い判例もあります。
また,そもそも津波被害の場合には,瓦礫等所有者を特定することができない事態も多いことが想定され,そのような場合には土地所有者の負担で撤去せざるをえないことになります。
また,土地所有者が撤去した場合,自力救済として不法行為責任を負う可能性がありますが,財産的価値がなくなっているなどの場合には,損害ないし違法性がないとして,不法行為責任を負わない場合も広汎に存するものと考えられます。
以上は私人間の法律関係ですが,このほかに公費による撤去が行われる可能性があります。阪神・淡路大震災では,廃棄物処理法の特例として,倒壊家屋等の解体・撤去を,災害廃棄物処理事業として所有者の承諾の下に市町村の事業として行い,その費用の2分の1を国が補助する特別措置が講じられました。
Q164 所有する船や自動車が津波で流されて,他人の家屋を壊したらしい。私に責任があるのでしょうか。
A 不法行為責任が問題となる余地はありますが,あなたに過失があるとは考えにくく,責任は生じないと思われます。
もちろん,他人の土地上に,船や自動車がそのまま残った場合は,問題が生じますが,その回答はQ163を参照してください
Q165 所有する自動車が津波で流されて見つからなくなってしまいました。登録の抹消が必要でしょうか。また,その手続きどうなりますか。
A 4月1日現在の車検証上の所有者(割賦販売の場合は使用者)に1年分の自動車税が課税されますのでその負担を避けるためには登録の抹消も検討すべきでしょう。但し,自動車税の減免措置を発表している自治体があることや,罹災証明書を提出すれば課税を留保する措置がとられる予定であるという情報もありますから,各自治体のこれらの情報を調べることが必要です。
自動車の登録抹消には永久抹消登録と一時抹消登録の2種類があります。
永久抹消登録の場合には,災害により自動車が滅失した場合として,地方自治体から罹災証明書を発行してもらい,運輸支局において当該自動車の永久抹消登録申請をすることになります。しかし,永久抹消登録は当該自動車を二度と使わないことを前提としており,後に抹消登録した自動車が発見されたとしても,再び自動車を登録して使用することはできないなどのデメリットがあります。
一時抹消登録は,一時的に自動車を使用しなくなる場合に利用する抹消登録手続です。自動車税の課税を避ける観点からは永久抹消登録と差はなく,津波で自動車が流されたような場合であっても,一時抹消登録申請は受け付けられるようですので,上述の永久抹消登録のデメリットを避けるためには,一時抹消登録を利用した方がよいといえます。
自動車の抹消登録申請をする場合には,必要な書類等として,ナンバープレートおよび自動車検査証が必要となりますが,津波で自動車の流失と共にナンバープレートおよび自動車検査証のいずれも紛失しているので,これらの提出に代えて理由書の提出が必要となります。
Q166 所有する船舶が津波で流されて見つからなくなってしまいました。登録の抹消が必要でしょうか。また,その手続きどうなりますか。
A Q165の自動車の場合と異なり,課税上直ちに登録の抹消を必要とするメリットはありません。
船舶の登録は総トン数や種類により所管が異なり,20トン以上は国交省運輸局,漁船を除く20トン未満の船舶は日本小型船舶検査機構,20トン以上の漁船は水産庁となりますので問い合わせなども間違えないようにして下さい。
20トン以上の船舶が不明であることを理由として滅失手続きをするためには,船籍港の運輸局へ「三ヶ月存否不明」の報告書などを添付して申請することになります。
漁船を除く20トン未満の船舶が見つからないとして抹消手続きをするには,通常は,紛失時から3ヶ月間程度の不明期間経過後に日本小型船舶検査機構に申請することになりますが,同機構によれば,今回の災害では簡易な手続を検討しているとのことですので問い合わせの上申請して下さい。
漁船の場合は都道府県の水産課で漁船登録を受けていますので,漁船が滅失,3ヶ月間行方不明のときなどは登録票を返還することになります。津波で流された様なときは漁船登録票紛失届の添付が要求されます。
Q167 地震によって,ローンで購入した自動車が壊れてしまいました。この場合,残代金を支払わなければならないのでしょうか。自動車をリースしていた場合はどうでしょうか。
A ローンで購入していた自動車が壊れてしまった場合,残代金の支払義務を免れることはできないと思われます。リースしていた場合も,特約が付されていれば,規定の損害金を支払う義務が生じます。自動車保険で地震や津波による危険を担保する特約が付されていることもありますが,自動車をローンで購入した場合には買主が,リースの場合にはリース業者が,このような特約が付された保険に加入していれば,損害が軽減される可能性があります。
なお,経済産業省は,平成23年3月14日付で,被災地の「地元中小企業に対するリース対象機器等の使用可能期間等を考慮しつつ,支払い条件の変更等の柔軟かつ適切な対応をするよう」社団法人リース事業会に要請しました。
Q168 地震によって,ローン購入ないしリースしていた船舶が壊れてしまった場合の法律関係はどうなるのでしょうか。用船契約の場合はどうでしょうか。
A ローンで購入した船舶が壊れてしまった場合,残代金の支払義務を免れることは難しいと思われます。リースしていた場合も,特約が付されていれば,規定の損害金を支払う義務が生じます。用船契約の場合には賃料支払義務が消滅ないし軽減し,残存部分のみで目的を達することができない場合には契約が終了すると思われますが,契約書の内容をチェックする必要があります。
Q169 どうしても戸籍謄本が必要な事情がありますが,津波で市役所が機能停止し,あるいは市役所が保管していた戸籍原本が流されたとのことで,発行してもらえません。どうしたらよいでしょうか。
A 災害で戸籍原本が滅失した場合に備えて,戸籍の副本が法務局,又は法務局の支局に保管されています。したがって,戸籍原本が滅失したとしても副本に基づいて戸籍の再製が可能です。
しかし,法務局で保管される戸籍の副本は市役所の滅失した戸籍を復活させるためのものであり,個人の請求により法務局が戸籍の謄本を発行する手続は存在しません。したがって,市役所の機能回復,戸籍の再製を待って,市役所で戸籍謄本の請求をするしかないものと思われます。
法務局も被災し,原本も副本も滅失してしまった場合に関する規定は存在しませんが,何らかの方法で戸籍の再製を認めることになるものと思われます。
■原子力被害に係る問題
■原子力被害に係る問題 Q170 原発の発電の仕組みを教えてください。
A 原子力発電も火力発電と同じように,水を沸騰させて蒸気を発生させ,その蒸気でタービンを回して発電します。火力発電は,石炭や石油を燃やして発生する熱で水を沸騰させますが,原子力発電は,核分裂しやすい物質を核分裂させ,その際に放出される熱エネルギーを利用して水を沸騰させます。
核分裂は,模式的に言えば,原子核に中性子がぶつかって,2〜3の核種に分裂し,その際に中性子が飛び出し,その中性子がさらに原子核にぶつかって核分裂を引き起こすというものです。
Q171 福島原発の構造について教えてください。
A 福島原発は沸騰水型原発(BWR)と言われるもので,大まかに言って,圧力容器を囲んで格納容器があり,格納容器は原子炉建屋の中にあり,原子炉建屋と配管で繋げたタービン建屋があります。
70気圧という高圧にした鋼鉄製の圧力容器の中に水を張り,その中に入れた核燃料に核分裂を起こさせ,その際に放出される熱エネルギーを利用して水を沸騰させて蒸気を作り,その蒸気でタービンを回して発電し,タービンを回した蒸気は,海水で冷やして(熱交換して)水にして圧力容器に戻します。核燃料は長さ4m位の燃料棒を集めた燃料集合体として数百体も圧力容器の中に入っています。
この圧力容器から放射能が漏れても外部に流出しないように,圧力容器の外側に格納容器があり,さらにこれらを納めるのが原子炉建屋です。
Q172 地震発生時に制御棒を入れて停止したというのはどういうことですか。
A 制御棒は,核分裂に必要な中性子を吸収するもので,地震が発生して一定以上の揺れを感知すると制御棒が燃料棒の間に挿入される仕組みになっています。燃料棒は4m位ありますから,地震の揺れで燃料棒の中間くらいが撓んで制御棒が入らないことも想定されますが,今回の地震では制御棒が挿入され,核分裂は停止しました。
Q173 発電が停止したのに冷却しなくてはいけないのはどうしてですか。
A 核分裂によって,色々な核種の放射性物質が燃料棒の中に作られています。これらは,安定的核種に形を変えていくのですが,その過程で熱エネルギーを出します。これを崩壊熱というのですが,原子炉を停止しても,かなりの熱量の崩壊熱が相当の期間発生しています。これを冷却しなければ,燃料とこれを覆っている被覆管と呼ばれるものが溶けだしてしまいます。そのために,通常は,冷却のための水を循環させて,熱を取り続けます。この通常の冷却水が失われる事態には,ECCS(緊急炉心冷却システム)が作動して,一気に水を圧力容器に注入する設計になっています。
Q174 福島第1原発はどうして冷却できないのですか。
A 通常の冷却も,ECCSも,電気がなければ作動しません。今回の地震で,外部電源は喪失し,非常用ディーゼル発電も原料の重油タンクが津波で流されてできなくなり,冷却できなくなりました。
冷却されないうちに燃料棒を冠水していた水が崩壊熱で蒸気になり,燃料棒が露出して高温になり,その後海水を注入する作業が行われていますが,燃料棒を冠水させるまでの注入ができません。海水を注入するポンプのパワー不足,燃料棒が高温になっているので直ぐに蒸気になってしまう,圧力容器内の内圧が蒸気で高くなって注入が困難になっている等の原因が考えられます。或いは,圧力容器に漏れる箇所が生じているのかも知れません。
Q175 なぜ格納容器から放射能で汚染された蒸気を放出したのですか。
A 格納容器の設計基準値の圧力を超えそうになりました。格納容器が破壊されれば大量の放射能が外部に放出されるので,圧力を下げるためにそれよりは少ない放射能の放出を選択しました。
Q176 使用済み燃料プールというのは何ですか。
A 核分裂を終了した燃料棒も崩壊熱を出し続けますので,燃料棒をそこに入れて冷却するための水を張ったプールです。原子炉建屋内の格納容器の上部にあります。
Q177 4号機の爆発,火災はどうして起こったのですか。
A 燃料プールの水も常に循環させておく必要があるのですが,循環するために必要な電気が失われたために,プール内の水が使用済み燃料の崩壊熱で温められて徐々に蒸発して燃料棒が露出した,或いは,燃料プールの水が地震の揺れで波打って流出して燃料棒が露出し,露出した燃料棒が高温になり,蒸気の酸素と反応して水素が発生し,その水素が燃えました。
Q178 放射能とは何ですか。
A 放射線を出す能力を放射能といいますが,放射線そのものを放射能と言ったり,放射線を出す物質(放射性物質)を放射能と言ったりすることもあります。人体に影響を与えるのは,放射線です。
Q179 放射線とは何ですか
A 主な放射線は,α線,β線,γ線,中性子線です。
原子は,陽子と中性子から成る原子核と,その周りにある電子からできています。
元素番号と言うのは陽子の数の順番に並んでいます。また,陽子の数と中性子の数を足したものが質量数で,同じ元素番号でも異なる原子になります。例えば,ウラン235,ウラン238のように,元素と質量数で表示されます。
原子には,他の原子に変わろうとする種類が多数あり,他の原子に変わる(壊変)際に,α線,β線,γ線を出して変わります。使用済み燃料にはこの放射性物質が大量に存在します。また,核分裂の際には中性子が出ます。
これらの放射線は大きなエネルギーを持っていて,人体に作用すれば人体の細胞に影響を与えます。放射能による人体への影響と言われるものは,これらの放射線による影響のことです。
Q180 放射能の半減期とは何ですか。
A ある核種が放射線を出して他の核種に変わると元の核種はなくなりますが,ある核種が半分の量になる時間を半減期といいます。この半減期は核種ごとに時間が違いますので,放射能汚染対策等を考える際の重要な資料になります。
Q181 放射能による被害を考える場合に参考になる概念を教えてください,
A 被曝した直後に放射能の影響による障害が出る場合を急性障害といい,ある程度の期間経過後に障害が出る場合を晩発性障害といいます。
身体の外部にある放射性物質からの放射線による被曝を外部被曝といい,透過力の強い放射線が問題になります。体内に取り込まれた放射性物質からの放射線による被曝を内部被曝といい,透過力が弱い放射線でも問題になります。
Q182 放射能の程度と人体への影響の関連について教えてください。
A 放射能の量と人体への影響の関係は一義的に明確なものではありません。そこで,国際放射線防護委員会(ICRP)は,正当化の原則,最適化の原則,線量限度遵守の原則を打ち出し,放射線は利用の便益が害よりも大きい時に利用が許されること,被曝線量はなるべく少なくし,制限被曝線量値は遵守すべきであると勧告しています。レントゲン,CTは有用な目的のために使用が許されていますが,観測値とこれらの放射線量を比較して全てを語ることはできません。
人体への影響を考える放射能の単位をシーベルトといいます。1ミリシーベルトは1/1000シーベルト,1マイクロシーベルトは1/1000ミリシーベルトです。日本では,ICRP勧告に基づき,一般人の制限線量は年間1ミリシーベルト,原発関係従事者は年間50ミリシーベルトでかつ5年間平均が20ミリシーベルトを超えないこととされています。
緊急時の職業人の制限線量は100ミリシーベルトとされていましたが,急遽250ミリシーベルトに上げられました。
Q183 避難指示の根拠は何ですか,
原子力災害対策特別措置法15条3項で,内閣総理大臣は,原子力緊急事態が発生した時は,市町村長及び都道府県知事に対し,避難のための立退き又は屋内への避難の勧告又は指示を行うべきこと,その他の緊急事態応急対策に関する事項を指示するものとすると規定しています。
Q184 屋内退避,避難の目安は何ですか。
A 原子力安全委員会が「屋内退避及び避難についての指標」という指針を作成しており,予測線量が10〜50ミリシーベルトであれば,「住民は自宅等の屋内退避する,但し,中性子線又はガンマ線が放出される時は,コンクリート建屋に退避するか,避難すること」,予測線量が50ミリシーベルト以上であれば,「住民はコンクリート建屋内に退避するか,避難すること」と規定されています。
Q185 いつまで避難しなくてはいけないのですか。
A 原子力災害対策特別措置法15条4項で,内閣総理大臣は,原子力災害の拡大の防止を図るための応急の対策を実施する必要がなくなったと認めるときは,原子力安全委員会の意見を聴いて,原子力緊急事態解除宣言をするものとすると規定しています。
重要な判断資料として,その地域の放射線量がどの程度減っているかを推定しなくてはなりませんが,Q180の放射能の半減期が推定に利用されますから,どのような放射性物質がどの程度放出されたかが重要になってきます。
Q186 原子力災害の被災者にはどのような保護が与えられるのですか。
A 原子力緊急事態により国民の生命,身体又は財産に生ずる被害を原子力災害といい(原子力災害対策特別措置法2条1号),同法は原子力災害から国民の生命,身体及び財産を保護することを目的として制定されています。
緊急事態応急対策として,緊急事態応急対策実施責任者が,「被災者の救難,救助その他の保護」(同法26条1項3号),「緊急輸送の確保」(同6号),「食糧,医薬品その他の物資の確保」(同7号),「その他原子力災害の拡大の防止を図るための措置」を実施する(同条2項)と規定しています。
原子力緊急事態解除宣言があった以降には,原子力災害事後対策が実施されます(同法27条)。生活面に直接関わる対策は,「健康診断,心身の健康に関する相談,その他医療に関する措置」(同条1項2号),その他原子力災害の拡大の防止又は原子力災害の復旧を図るための措置」(同4号)が規定されています。
具体的に必要な措置は,多種多様ですから,真に必要な対策が速やかに実施されることが同法の要求するところです。
Q187 原子力損害賠償法でどこまで賠償されるのですか。
A 原子力損害の賠償に関する法律にいう原子力損害とは「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し,又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう)により生じた損害をいう」(同法2条2項)と規定されています。
原発の場合は,核分裂過程で中性子,核分裂生成物が発生し,核分裂生成物が壊変(Q179参照)する際にα線等の放射線が発生します。これらから外部被曝,内部被曝(Q181参照)したことによる損害が典型的な場合です。
核分裂過程の作用,核燃料物質等の放射線の作用には,熱エネルギーを発生させることも含まれますから,爆発によって直接被害をこうむった場合も含まれるでしょう。
避難して何年間も家に帰れなかったことによる損害は相当因果関係の範囲の問題です。
Q188 原子力事業者,原子力機器メーカーの責任を教えてください。
原子力事業者の責任については,「原子炉の運転等の際,当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは,当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。但し,その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは,この限りではない。」(同法3条1項)に規定されています。
1項本文は,原子力事業者の無過失責任を規定しています。問題は但書です。想定外の地震といえば異常に巨大な天災地変になるとすると容易に免責されてしまいます。過小評価すれば免責されるのはおかしな話です。原発の耐震設計では,極めてまれであるが発生する可能性のある地震をさらに不確かさを考慮して想定しなければならないのですから,異常に巨大な天災地変とすべきではないと考えます。
原子力機器のメーカーの責任については認めません。同法4条1項に「前条の場合においては,同条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者以外の者は,その損害を賠償する責めに任じない」と規定して原子力事業者に責任を集中しています。そして同条3項に「製造物責任法の規定は適用しない」と規定して製造物責任を認めません。原子力発電所の安全性確保に重大な責任を負っている原子力機器メーカーの責任を認めないのは法の欠陥だと考えます。
Q189 原子力損害の賠償に関する法律では,原子力事業者の責任限度は規定されていますか。
A 原子力損害賠償法3条1項但書の場合は免責されますが,免責されない場合は,原子力事業者に責任限度額はありません。同法4条3項に「船舶の所有者等の責任の制限に関する法律」の規定は適用しないと規定されています。但し,原子力事業者の確実な支払い原資は,損害賠償措置を講ずることにより担保され,一事業所当たり1200億円につき,@保険契約を締結A政府と補償契約を締結B供託の措置を講ずることとされています(同法7条)。そして,この金額を超え,かつ,被害者救済のために必要である時には,政府は,原子力事業者の損害賠償に必要な援助を行う(同法16条)と規定されています。あくまでも損害賠償の主体は原子力事業者です。
なお,原子力事業者が免責される場合は,被災者の救助及び被害の拡大防止のための必要な措置を政府が講ずることになっています(同法17条)。
Q190 民法の不法行為による損害賠償請求,国家賠償法による損害賠償請求は可能ですか。
A 原子力損害賠償法は民法の不法行為の特例を定めたものなので,原子力損害については原子力事業者の無過失責任(3条1項 Q188)が適用され,それ以外の損害について民法の不法行為責任が適用されます。
同法は,原子力損害の賠償責任を原子力事業者に集中しており(4条1項),国は事業者の責任が1200億円以内で政令の定める賠償措置額(Q189参照)を超える場合に,国会の議決による範囲内で原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行うと規定するに止めています(16条)。
Q191 放射能汚染された食品の取扱について教えてください。
A 平成23年3月17日,厚生労働省は,原子力安全委員会が作成していた「原子力施設等の防災対策について」のうちの「飲食物の摂取制限に関する指標」を急遽採用して暫定規制値とし,これを上回る食品については,食品衛生法第6条2号の「有害な,若しくは有害な物質が含まれ,若しくは付着し,又はこれらの疑いがあるもの」として食用に供されることがないよう販売その他について十分処置されたいと各自治体に通知しました。
放射性ヨウ素ならば,飲料水,牛乳・乳製品で300ベクレル,根菜,芋類を除く野菜類で2000ベクレル,放射性セシウムならば,飲料水,牛乳・乳製品で200ベクレル,野菜類,穀類,肉・卵・魚・その他で500ベクレル,乳児用の牛乳・乳製品で100ベクレルが制限値です。
1ベクレルとは,原子核が1秒間に1個の崩壊を起こす場合をいいます。
Q192 農産物の出荷制限の指示を出しておきながら,食べても人体に影響を及ぼさないという政府報道はどのように理解したらいいのでしょうか。
A 食品衛生法における今回の暫定規制値は,原子力安全委員会の「飲食物摂取制限に関する指標」を採用したものですが,その指標の作成は,I C R P 等の国際的動向を踏
まえ,甲状腺の線量年5 0 ミリシーベルトを基礎にして食品の摂取量等を考慮して策定されたものです。放射線防護の観点から遵守しなければならない基準ですので,
農作物の出荷制限は, 止むを得ない措置です。
それでいながら,人体に影響する程度の放射線量ではないというのは,混乱させるだけの広報です。人体に対する影響は明確ではなく,低線量でも人体に対する影響があることもあるので出荷制限をしているが,低線量であるほど人体に与える影響が顕在化する確率が少なくなると考えられるという程度にとどめるべきでしょう。
なお,農産物の原産地表示が全県表示であるから,制限値を超えない農産物の生産地のものも出荷制限すると広報されましたが,きめ細かい生産地表示に改めれば解消できる問題です。政府の対応は,風評被害を助長することになりかねません。
Q193 出荷制限されたことによる損害は,どこに請求したらいいのでしょうか。
A 出荷制限は,原子力災害対策特別措置法第20条3項による原子力対策本部長(内閣総理大臣を充てる同法17条1項)の指示です。これは福島第1原発から外部に放出された放射能汚染に基づく出荷制限ですから,それによる経済的損失は原子力損害(Q187)です。従って, 原子力損害賠償法により原子力事業者に請求できます。
Q194 出荷制限されていない農産物についても,同じ県の農産物だから買わないという風評被害は,どのように救済されるのですか。
A この風評被害は,放射能汚染されているのではないかと思う消費者の不安心理に基づく買い控えによる損害です。原子力損害賠償法には, 特別に風評被害を保護する規定はないので,原発の事故と風評被害の間に相当因果関係が存在するか否かの価値的判断をすることになります。相当因果関係が認められれば,原子力事業者に対し,損害を請求できます。
ある農産物が食品衛生法の制限値を超える放射能汚染されているので出荷制限されていると報道されれば,出荷制限された地域の他の農産物も放射能汚染されていると推測して買い控え行動をとることが必ずしも不合理と考えられないのであれば,相当因果関係が認められると解されます。放射能汚染の対象,内容,出荷制限の対象,意味,人体への影響等について,正確で分かりやすい広報をしていて,放射能汚染をしていると考えるのは消費者の極めて主観的な心理状態であると考えられ,消費者が買い控え行動をとることが不合理と考えられる場合には相当因果関係が否定されることもありうるでしょう。
■原子力損害賠償制度
■原子力損害賠償制度 制度概要 「原子力損害の賠償に関する法律」(原賠法)に基づく原子力損害賠償制度
@原子力事業者に無過失・無限の賠償責任を課すとともに、その責任を原子力事業者に集中し、
A.賠償責任の履行を迅速かつ確実にするため、原子力事業者に対して原子力損害賠償責任保険への加入等の損害賠償措置を講じることを義務づけ(賠償措置額は原子炉の運転等の種類により異なりますが、通常の商業規模の原子炉の場合の賠償措置額は現在1200億円)、
B賠償措置額を超える原子力損害が発生した場合に国が原子力事業者に必要な援助を行うことが可能とすることにより被害者救済に遺漏がないよう措置する等について規定
原子力事業者 原賠法では、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」における以下のいずれかの許可・指定を受けた者を原子力事業者としています。
  • 原子炉の設置許可を受けた者
  • 核燃料物質の加工の事業の許可を受けた者
  • 使用済み燃料の貯蔵の事業の許可を受けた者
  • 使用済み燃料の再処理の事業の指定を受けた者
  • 核燃料物質または核燃料物質によって汚染された物の廃棄の事業の許可を受けた者
  • 核燃料物質の使用の許可を受けた者 等
無過失責任

被害者からの賠償請求を容易にするという被害者保護の観点から、原賠法は、被害者が加害者に故意又は過失があったことを立証する義務を不要としています(無過失責任主義)。

責任集中 責任集中の原則とは、賠償責任を負う原子力事業者以外の者は一切の責任を負わないとするものです。これにより、被害者は容易に賠償責任の相手方を知り得、賠償を確保することができるようになります。
保険・補償 通常の原子力損害の場合の賠償に対しては、民間の損害保険会社による保険である責任保険により、賠償措置額(商用規模の発電用原子炉の場合は通常1200億円)まで保険金が支払われることになります。
民間保険会社による保険では対応できない、地震、噴火、津波の自然災害による原子力損害等の場合は、原子力事業者と政府との間の補償契約により行われる政府補償により、賠償措置額まで補償金が支払われることになります。
無限責任 原賠法では、万一原子力損害が発生した場合、原子力事業者は生じた原子力損害の全額を賠償する義務を負っています(無限責任主義)。
事業者の財力等から見て必要があれば、国が必要な援助を行うことが可能となっており、被害者の保護に遺漏がないよう措置されています。
賠償請求手続 原賠法は、民法の損害賠償に関する規定の特例を定めたものですので、原賠法に定めていない点については、一般法である民法の規定に従うこととなり、通常の民事賠償における請求手続と同様になります。
必要資料等

請求される方は、今後、東京電力が開設する被害申出窓口に、「被害申出書」を提出していただくことになりますので、現時点で分かる範囲で被害内容等を把握してください。

 その後、被害申出書を提出された方に対して、被害額の算定の確認書類を含む「被害明細書」を提出していただくことになりますので、可能な限り、実際に支出したことを証明する領収書等を保管しておいてください。

 想定される損害内容と賠償請求に際して必要になると見込まれる書類は以下のとおりです。

 ※今後、東京電力が開設する窓口において、詳細な情報提供がなされる予定です。

身体障害 @診断書
A医療機関からの領収書
B同意書:
保険会社が怪我や病気の症状を確認する必要がある場合に、医療機関に問い合わせることに対する同意書
C交通費明細書
財物損害 @損害品の写真:損害状況の確認資料。
A被害品の数量確認資料:
伝票等、被害品の数量が確認できる資料。
B被害品の単価確認資料:
伝票等、被害品の単価が確認できる資料。
C廃棄処理費用確認資料
D買い替え費用確認資料
E修理費用見積書
避難費用 @交通費明細書
A宿泊費用確認資料
検診・検査費用 @医療機関からの領収書
A交通費明細書
B検査費用の領収書
休業損害 @休業証明書:
休業によって給与所得が減額されたことを確認する資料。
A源泉徴収票
B所得証明・納税
C確定申告書証明書
〜休業証明書・源泉徴収票で損害額が確認できない場合の確認
営業損害 @確定申告書
A決算書類
B過去1年の売上実績:
帳簿等、直近の売上額等を確認する資料。
C事故後の売上実績:
帳簿等、事故後の売上額等を確認する資料。
D営業上の追加費用・代替費用:
伝票や帳簿等、事故の影響により営業を継続するために追加的・緊急的に要した費用を確認する資料。
E営業再開に伴う費用:
伝票や帳簿等、営業を再開するにあたって追加的に要した費用を確認する資料。
■生活保護
■生活保護 H23/
3/17
通知
@ @保護の実施責任
居住地を離れて避難⇒避難先の実施機関が実施責任(現在地保護)
仮設住宅への入居や扶養義務者による引き取りなど、将来における居住の蓋然性が高いと認められる場合⇒当該居住事実がある場所を所管する実施期間が実施責任(居住地保護)
A A生活保護の決定
居住地に残した資産⇒「処分することができないか、又は著しく困難なもの」として取り扱う。
資力があるとき⇒63条による費用返還義務を説明の上保護開始
B B扶養義務者、知人宅等へ転入する場合の住宅扶助
本来支給を要しない。
but
保護開始後の避難前の住居に関し、賃貸借け約が継続している場合で、必要やむを得ないときは支給して差し支えない。
この場合、早急に契約解除等の手続をとるよう指導する。
C C被災地の自治体との連絡体制
2重の保護費支給については、事後において現在地の保護の実施機関から被災地の保護の実施機関へ連絡・連携を図り調整する。
この場合も、法第63条による費用返還義務を説明の上保護を開始。
H23/
3/29通知
@ @保護費の支給事務
避難所で保護費を支給する場合、必要な保護費を遺漏なく支給。
生活実態の把握が十分できない場合も、特別な事情に配慮し、不足が生じることのないよう配慮。
体育館・公民館等の避難所における最低生活費の算定にあたり、生活扶助は居宅基準を計上。
避難所の代わりに、旅館・ホテル等を借り上げた場合については、具体的案事例に即し、個別に判断。
A A一時的に保護費の支給が困難な場合の取扱い
生活福祉資金(緊急小口貸付)の利用を検討。
Q3(避難所での生活保護費)
避難所で生活保護を受ける場合、生活保護費はいくら受け取れますか。炊き出し等の実費分を差し引かれたりするのでしょうか。
A そのようなことはならない。
避難所等において災害救助法による「炊き出しその他による食品等の給与」等を受けていたとしても、これは緊急時の給与という性格で、被災による新たな需要のごく一部を補うものに過ぎないこと、実額の算出が事実上不可能であることなどから、収入認定すべきではありません。

 この点、生活保護手帳別冊問答の問8−47「災害見舞に贈与された主食」は、「生活基盤の回復にあてられるもの(概ね一か月分の食糧費相当分)」を超えるものについて収入認定を必要としていますが、今般の災害が未曽有の規模のものであって「生活基盤の回復」には1カ月以上の相当の時日を要することが明らかですから適用の前提を欠くと解すべきです。

前出の329日付課長通知が、「体育館・公民館等の避難所における最低生活費の算定に当たり、生活扶助は居宅基準を計上すること。ただし、避難所の代わりに旅館・ホテル等を借り上げた場合については、具体的な事例に即し、個別に判断すること」としているのは、上記と同一の見解に立つものと考えられます。なお、阪神淡路大震災の際にも避難所で供与された食品等についての収入認定は行われませんでした。

Q4(義援金その他の給付金と生活保護)
1)震災後、生活保護を受給していますが、このたび、義援金を受け取りました。義援金は収入認定されて、その分保護費は減らされてしまうのでしょうか。災害救助法等に基づく給付金の場合はどうでしょうか。
2)震災後、義援金(災害救助法等に基づく給付金)を受け取りましたが、これは今後のために置いておいて、生活保護を受けることができますか。

1)生活保護受給者の義援金等の受領

生活保護を受給している者が受領した義援金は、次官通知第8−3(3)アの「臨時的に恵与された慈善的性質を有する金銭」として、収入認定の対象にはなりません。

災害救助法、被災者生活再建支援法及び災害弔慰金法等に基づいて受領した給付金も同様に収入認定除外とされるべきですが、少なくとも、次官通知第8−3(3)オの「臨時的に受ける補償金、保険金または見舞金」に該当し、「自立更生計画書」の提出によって収入認定除外とされます。受け取った給付金を生活基盤の再生のため、何にどのように使うかの「自立更生計画書」を書いて提出し、必要な費用の収入認定除外を求めて交渉するとよいでしょう。なお、被災者が置かれている困難な状況に照らせば、自立更生計画の内容や疎明の程度については柔軟かつ弾力的に対応することが求められます。

2)義援金等受領後の生活保護受給

義援金や被災者生活再建支援法等に基づく給付金を受領した者が生活保護を申請した場合には、課長通知問第8−53によって次官通知第8−3(3)オが準用されており、上記1)の後半と同様に「自立更生計画書」の提出によって認められた範囲での収入認定除外という取扱いとなります。

3)自立更生資金の預託

 上記の自立更生を目的とした恵与金、補償金等は、「直ちに生業、医療、家屋補修等の自立更生のための用途に供されるものに限る」とされていますが、「直ちにあてられない場合であっても将来それにあてることを目的として適当な者に預託されたときは、その預託されている間、これを収入として認定しない」とされています。この「適当な者」とは、課長通知第8−34で「社会福祉法人、新聞社、当該被保護者の自立更生を援助するために特に設立された団体等金融機関を除く者であって当該金銭を安全に管理しうると認められるもの」とされています。別冊問答第8−50では他に民生委員があげられていますが、それ以外にも弁護士、司法書士、社会福祉士なども当然に認められるべきです。

Q5(被災者の自動車保有と生活保護)

生活保護の申請に行きましたが、自動車は処分するように言われました。被災地の交通の便が悪く、今後の生活基盤の再建のためにも自動車は手放したくないのですが認められないのでしょうか。

A 生活保護受給者の自動車保有については、厚生労働省が、障害者が定期的に通院等する場合や、山間僻地からの通勤等の場合など極めて限定された場合にのみ認める通知(課長通知第3の9、第3の9−2及び同第3の12、生活保護手帳別冊問答集問3−14)を出しているため、厳しく制限されているのが現状です。しかし、このような通知は生活保護法に照らし違法と考えられます
 特に、今般の被災地は、移動に自動車が不可欠な地域が多く、当該世帯の自立助長のためには、処分価値が著しく高い場合(前掲日弁連意見書では当該世帯の最低生活費の6か月分程度を提言しています)を除き、原則として保有が認められるべきです。
 その方向で交渉し、自動車保有を理由に申請を却下することはできませんから、保護受給後に処分指導がされれば、それを争っていくことを検討するとよいでしょう。
Q6(避難先との世帯認定)

震災後、実家に避難して生活しているのですが、両親も年金暮らしで余裕がないため出ていきたいと思っています。生活保護申請に行くと、両親と同一世帯なので全体として保護の要否を判定すると言われました。私だけ生活保護を受けて出ていく方法はないのでしょうか。

A この点、平成211225日付厚生労働省社会・援護局保護課長通知「失業等により生活に困窮する方々への支援の留意事項について」は、「失業等により住居を失い、一時的に知人宅に身を寄せている方々から保護の申請がなされた場合には、一時的に同居していることをもって、知人と申請者を同一世帯として機械的に認定することは適当ではないので、申請者の生活状況等を聴取したうえ、適切な世帯認定を行うこと」としています。ここで書かれていることは、震災で住居を失った方にも当然にあてはまりますし、知人宅のみならず、生活保持義務関係(夫婦や親と未成熟子の関係)にない親族、きょうだい、親子宅であっても、一時的な避難先として居住している場合には、形式的に同一世帯と見ることなく、適切な世帯認定を行うべきです。
 そして、被災者の単身世帯として生活保護が開始された場合には、局長通知第641)カの「転居に際し、敷金等を必要とする場合」の解釈に関する課長通知第43012「住宅が確保できないため、親戚、知人宅等に一時的に寄宿していたものが転居する場合」に該当するものとして、転居先の敷金等の支給を認めるよう申請するとよいでしょう。
Q7(避難先からの住宅の確保)

避難所や仮設住宅から一般の民間賃貸住宅に転居する場合、新住居の敷金その他の転居費用を生活保護から支給してもらうことはできますか。

A できます。
前出の課長通知第4の30の6「宿所提供施設、無料低額宿泊所等を一時的な起居の場として利用している場合」または同8「火災等の災害により現住居が消滅し、又は居住に耐えない状態になったと認められる場合」に該当するものとして、敷金、保証金や引っ越し代等を支給してもらうことができます。
Q8(家具什器費、布団代、被服費)
 津波で家が流され、家財道具も布団も服も一切なくなってしまいました。これらの費用を生活保護から支給してもらうことができますか。
A できます。

局長通知第6の2では、「災害にあい災害救助法が発動されない場合において、当該地方公共団体等の救護」もない場合には、炊事用具、食器等の家具什器費として25,200円(特別基準40,400円)の支給が認められます。しかし、2000年までは、「限度額を超えて費用を必要とする特別の事情があると認められ、都道府県知事が承認した場合」は7万円とされており、阪神淡路大震災の際には家具什器費として7万円まで認められていましたが、現在は特別基準設定の権限は厚生労働大臣にしかないことになっていますので、今回も同様の対応が強く求められます。
 また、同様に「最低生活に直接必要な布団類」に17,300円、「日常着用する被服」に12,800円、おむつ代に21,500円なども支給が認められます。