シンプラル法律事務所
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消費者法講義

 消費者法講義(第5版)
★第1章 消費者問題と消費者法
 
     
     
     
★第2章  消費者契約の過程T ・・・契約の成立と意思表示の瑕疵(p34)
  ◆第1 はじめに 
  ◇1 消費者契約救済の法理 
  ●(1) 契約の拘束力否定型
    ア:契約の成立の否定
イ:錯誤、詐欺・強迫等意思表示の無効・取消し(民法95条・96条)
    ウ:不当勧誘行為に基づく意思表示の取消し(消契法4条、特商法9条の3、割賦販売法35条の3の13など)エ:消契法(同条8条〜10条)による不当な契約条項の無効、特商法、割販法等による違約金条項等の無効
    オ:公序良俗違反による法律行為の無効(民法90条)
カ:取締法規違反の法律行為の効力否定(民法90条・91条)
    キ:未成年者取消し(民法5条)
    ク:契約解除
@債務不履行解除(民法541〜543条)
Aクーリング・オフ(特商法9条、割販法35条の3の10など)、初期契約解除(電通業法26条の3、放送法153条の3)
B中途解約(特商法40条の2・49条など)
C過料販売解除(特商法9条の2・24条の2、割販法35条の3の12)
  ●(2) 履行義務調整型
    ア:信義則(民法1条2項)による給付義務の調整
@請求権行使の否定
A請求の減縮
B義務調整
    イ:抗弁の対抗(割販法30条の4・35条の3の19、特商法58条の15)
    ウ:契約条項(約款)規制
@消契法、特商法、割販法等による契約条項の無効(前記(1)のエ)
A解釈型
B信義則援用型 
  ●(3) 損害賠償請求型 
    ア:債務不履行(民法415条)
イ:不法行為(民法709条)
  ●(4) 履行請求型 
    事業者に対する契約上の債務の履行請求
   
  ◆第2 問題の所在と事例 
  ◇1 問題の所在 
     
  ◇2 事例 
  ■(1) 契約の成否 
  ●事例1: 
 
  ●事例2 
     
  ■(2) 錯誤 
  ●事例3 
     
  ●事例4 
     
  ●事例5 
     
  ●事例6 
     
     
  ◆第3 契約の成否(p40)
  ◇1 契約の成否に関する事例1・2の検討
  ■(1) 事例1の@判決(本荘簡裁)(p40)
    英会話教材のアポイントメント商法
    @説明はもっぱらアクションクラブ(海外旅行に安く行けるという会員制クラブ)のこと
A教材テープの売買については目的物、代金額、支払方法とも説明がなかった
B被告(消費者)も海外旅行クラブ入会申込と思い込んでいた
C販売担当者も被告の思い違いを知っていたふしがある

取引観念から見て立替払契約締結の形態から著しく逸脱しているので、契約が不成立。
    「被告(消費者)がお持ち以外をしていることを(販売会社の社員が)知っていたふしがある」と認定。

消費者の真意は英会話教材の購入契約ではなく、海外旅行に安く行ける会員になる契約の申込み⇒販売業者の承諾の意思表示(契約書による英会話教材の売買契約の承諾)とは合致しないと考えたと見ることができる。
    真意と表示の不一致は、契約の不成立ではなくて錯誤の問題
表示(契約書)から推測される真意からみれば、契約の本質的部分についての意思の一致はある⇒契約は有効に成立して、錯誤の問題にする方が、表示から推断される意思(表示上の効果意思)と真意(内心的効果意思)との不一致をもって錯誤とみる民法の原則(意思主義と表示主義の折衷的立場)には忠実。
  ■(2) 事例1のA判決(秋田地裁)(p42)
    契約の成立を認めた。

@説明の中で英会話を憶える必要のある旨の話があった
A被告の面前で商品、代金、支払方法を記入
B
C
D

表示から推測される真意と契約の本質部分の意思表示には食い違いがない(=英会話教材の売買契約とその代金支払いのための立替払い契約であることは認識して意思表示)

契約成立の判断としては、表示の面で主要な部分に一致があれば契約成立と考える従来の立場に沿ったもの。
    錯誤も否定

被告は海外旅行に関する興味は乏しかった⇒海外旅行に安く行けることは契約締結の同機にはなっていない⇒「動機の錯誤」ではない。
    結局信義則を根拠に立替払い請求を否定。
@販売意図を秘して何か特典が得られるかのような錯覚を起こさせる言葉で関心を引き、会社まで呼び出している
A海外旅行等の話ばかりして、真の目的である本件商品、その立替払いの内容について必要事項の説明をしていない
B執ように申込書の署名を求め、困惑した相手の意思を押し切って署名させた
C相手方にとって全く必要のない高額商品の立替払契約の申込書に署名させた
@A:消費者へ誤認を与えるような働きかけ
A:説明義務違反的な考え方
B:勧誘の執よう製の指摘で、威迫・困惑行為的な勧誘
C:不要、高額な商品の押し付けで、Bと共通

これらのっ事情は、消費者の契約締結の場面において、事実の認識を歪めたり、契約価値に対する判断を歪めるもの⇒本来は意思表示の瑕疵の問題として処理されるべきもの。
but
これらの行為によって形成された消費者の意思表示の態様が、民法の錯誤や詐欺、強迫の要件を満たすまでには至らない程度の意思表示の瑕疵に止まる
⇒やむをえず信義則を持ち出して、不当な事情を複数拾い上げて、「合わせて一本」という評価により、違背だと判断。
  ■事例2の判決(門司簡裁) 
    教材セットの立替払い契約は不成立
@説明会では教材はすべてコーキ(販売会社)が準備すると説明
A社内事務手続のための説明して契約書等を作成させた
B契約書には被告(消費者)の住所、氏名欄の外は、すべて空白だった
C契約書等の控えも渡していない
Dクレジット会社からの確認の電話にも被告(消費者)は購入していないと返事している

記名・捺印を騙し取られて申込書の偽造をされたのと同一。
@教材は学習教室開設者が用意する必要はなく、販売会社側で用意するという口頭説明
A社内の事務手続に必要だとして契約書に署名・捺印させられているし、契約書には売買の目的物の記載もなく、契約書の控えも渡されていない

契約書に署名、捺印がされているとしても、教材の売買契約であるとは表示上でも示されていないと判断するのももっとも。

表示の上からも消費者の真意は教育セットの売買とはみられない⇒意思の一致がなく契約は不成立。
     
  ◇2 契約の成立 
  ■(1) 契約成立の意味 
  □ア 権利義務の発生根拠 
     
  ■(2) 契約成立の要件(p46)
    法律行為が本来の効力を生じるには
@成立要件(要件事実的には権利発生要件)と
A有効要件(要件事実的には権利発生阻害要件、権利消滅要件)
契約の場合の成立要件:
契約当事者間で意思が合致していること(合意の存在)
有効要件:当事者の意思表示に欠缺や瑕疵がないこと
    「意思の合致」により契約が成立
第1:契約の成立には意思の合致以外の要素は不要
第2:契約は意思が合致しさえすれば、直ちに契約が成立し、その瞬間から前記の契約の拘束力が生じる

消費者契約において勧誘の方法や内容が取引通念から逸脱していたとしても、これらの事情は「契約の成立」には影響を及ぼさない。
    「意思の合致」:
「表示のレベル」で意思の合致があれば契約が成立する。
一致の範囲:
「契約の本質的な部分」に関する一致、すなわた本来の給付に関する一致であれば足りる。
〜当事者の「真意」には重点が置かれていない。
     
  ◆第4 意思表示の瑕疵(錯誤・詐欺) 
  ◇1 錯誤に関する事例3ないし事例6の検討 
  ■(1) 事例3の判決(名古屋高裁) 
     「海外旅行を安くすることができる」という「動機」に錯誤があり、クレジット会社側がこれを認識。
この錯誤は「意思表示の重要部分の錯誤」として契約無効。
    「給付の質」についての評価の勘違い⇒「性状の錯誤」⇒錯誤無効が認められるのは例外的。
but
事業者の勧誘によって
「英会話教材等の売買契約」と「格安海外旅行等の割引が受けられる会員契約」という2つの契約の結びつきが強められ、その給付の質の評価を誤らされた
⇒契約締結における消費者の「動機」が事業者側に明らか。
一方の契約の重要性についての勘違いであっても全体として「意思表示の重要部分」に錯誤があると見ることは可能。
 
  ■(2) 事例4の判決(岡山簡裁) 
    学習塾での教育指導付の学習教材の購入契約について、後から教育指導が受けられなくなった⇒錯誤の成立。

学習塾での教育指導は、いわゆる「付帯役務」とみることができ、契約締結後にこのような付帯役務が履行されなくなったことが「錯誤」になるという判断は、民法の錯誤の理論からはかなり離れたもの。
    事例3:契約締結時点においても動機形成の前提事実が存在していなかった
事例4:契約成立時点には存在していたが後発的に不存在となった
     
  ■(3) 事例5の判決(大阪地裁) 
     
     
     
  ■(4) 事例6の判決(横浜地裁) 
     
     
     
     
     
  ◇2 錯誤・詐欺の趣旨・・・民法理論の整理 
  ■(1) 「錯誤」と「詐欺」について 
  □ア 錯誤 
     
     
  □イ 詐欺
     
  ■(2) 意思表示理論 
     
     
     
     
     
     
   
  ◆第5 交渉力の不均衡
     
★第3章 消費者契約の過程2・・・契約内容と効力 (p66)
  ◆第1 はじめに 
     
  ◆第2 契約内容の適正 
     
  ◆第3 内容の適正(履行の段階での内容の妥当性) 
     
  ◆第4 内容の適正(約款規定) 
     
     
★第4章 消費者契約法(p89) 
  ◆第1 はじめに 
     
     
   
  ◇3 消費者契約法の主な内容 
     
  ■(3) 不当条項規制 
    約款等の契約条項のうち、以下のような消費者に一方的に不利益な条項は無効
    @免責条項:
債務不履行・不法行為に基づく損害賠償責任や、瑕疵担保責任をまったく免除する免責条項(故意・重過失による損害賠償責任は一部免除の免責条項も無効)、または当該事業者にその責任の有無や限度を決定する権限を付与する条項(法8条)。
    A
    B
    C
    D一般条項:
上記以外でも、そのような契約条項がない場合に比べて、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項は無効(法10条)。
     
     
     
     
     
  ◆第2 消費者契約法の適用範囲(p94)
    第二条(定義)
この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。
2この法律(第四十三条第二項第二号を除く。)において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。
3この法律において「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう。
     
   
  ◇3 「事業者」:
法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人
〜全ての法人および法人格なき社団は、事業者に当たる。
     
     
     
     
     
     
     
  ◆第8 取消権の行使期間 
    追認をすることができるときから1年間(法7条1項)
「追認することができるとき」:
誤認の場合⇒事業者の勧誘行為が
@不実告知、
A断定的判断の提供
B不利益事実の不告知
のいずれかに当たることを知ったとき。

困惑の場合⇒
@不退去、A退去妨害などによる困惑状態から脱したとき
物理的に脱しただけでなく、心理的にも脱したことが必要。
    契約締結の時から5年を経過 (法7条1項)
     
     
   
  ◆第10 不当条項の無効 
   
  ◇2 免責条項の無効 
    第八条(事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)
次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項
三 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
四 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項
     
     
     
  ◇6 消費者の利益を一方的に害する条項の無効 
     
     
     
     
     
     
     
     
  ★第7章 販売信用・資金決済と消費者
  ◆第1 はじめに 
  ◆第2 クレジット取引の概要 
     
     
  ◆第3 割販法の適用対象
     
  ◆第4 割販法の規制の概要(p187)
     
     
     
  ◇7 抗弁の対応 
  ■(1) 意義  
    抗弁の対抗:
購入者が信用購入あっせんを利用して商品等を購入した場合、購入者は当該商品購入契約につき販売業者に対して生じている抗弁事由(無効・取消・解除等)をもってクレジット会社の支払請求に対抗(支払拒絶)することができる。
  ■(2) 趣旨 
     
  ■(3) 要件
  □ア 信用購入あっせんによる取引 
  □イ 商品・役務・指定権利を購入したとき 
  □ウ 販売業者に対して抗弁事由があること 
    抗弁事由:「商品等の販売につき生じた事由」(法30条の4・35条の3の19
    抗弁事由の範囲:
A:売買契約の内容となる事項あるいはクレジット契約書面等に記載された事項に限定(制限説)
〇B:口頭のセールストークや附随的特約による抗弁などを商品の販売について販売業者に対して生じた事由は原則として全て含む(無制限説)

@抗弁の対抗規定は、文言上は抗弁事由の範囲を限定していない
A口頭の約束も契約には変わりはない
B販売業者の不履行や不当行為から消費者を保護する趣旨に区別はない
  □エ 支払総額の下限 
     
     
     
     
     
     
  ◇10 不実の告知等取消し
  ■(1) 趣旨 
    抗弁対抗制度は、販売契約について抗弁事由が存在するとき、購入者はクレジット会社に対し未払金の支払いを拒絶できるが(法30条の4)、
既払金の返還に及ばない。

クレジット会社は既存契約の債権回収を考慮して、悪質加盟店を早期に排除する動機付けが弱い。

2008年改正により、個別クレジット契約を利用した特定商取引5類型の契約について不実告知・不告知があるときは、
販売契約とともに個別クレジット契約を取り消すことができる規程を導入(法35条の3の13〜16)。 
  ■(2) 法的性質 
     
     
     
     
     
     
  ◆第5 クレジット被害への実務対応(p202)
  ◇1 論点整理 
 
  未払金の抗弁対抗:
個別クレジット契約か包括クレジット契約かを問わず適用可能 
既払金返還請求ができる
クーリング・オフ、
過量販売解除
不実の告知取消し
は、個別クレジット契約を特定商取引5類型で利用した場合に限られる。
but
不実告知取消しは、消費者契約法5条を直接適用する解釈論の余地がある。
  ●販売契約に関する抗弁事由は何か? 
抗弁対抗規定は、債務不履行解除等の後発的事由も広く対象とされるのに対し、
不実の告知等取消しは契約締結時の意思表示の瑕疵に限られる。
  抗弁事由は与信対象である販売契約自体に関するものか、
付帯的なな特約や契約書面に記載のないセールストークに起因するものか
という論点。 
購入者からクレジット会社に対する応答・表示について落ち度⇒信義則違反として抗弁対抗の主張が制限されるかという論点。
     
  ◇2 個別クレジット不正利用と消費者の責任(p203)
  ■(1) 問題の所在 
     
  ■(2) 考え方 
     
    最高裁H29.2.21:
名義貸し事案について、
立替払いの契約の媒介行為を委託した販売業者が、消費者が実質的に負担するリスクの有無について誤認させた場合は、
立替払契約の締結の判断に影響を及ぼす重要事項の不実告知に当たるものであれば、
クレジット会社の認識の有無を問わず不実告知を認めることができる。

抗弁対抗規定を適用する場合においても、個別クレジット加盟店が媒介者に当たることを踏まえて解釈すべき。

消費者の抗弁対抗の主張が信義則に反するか否かを判断するにおいても、消費者と事業者との間の二者間の法律関係として捉えるのでなく、媒介者である加盟店の行為を含めて判断すべきものと判断。
     
  ◇3 クレジットカード決済における被害救済 
     
  ◇4 クレジット被害事件の処理上の留意点(第4版 p192)
     
    個別クレジット業者との間でも見解に対立

購入者から個別クレジット業者(及び販売業者)に対し、
個別クレジット契約の解除・取消しに基づく既払金返還請求、
または抗弁対抗に基づく支払拒絶の抗弁存在確認ないし債務不存在確認の訴訟を提起するか
個別クレジット業者が立替金請求訴訟を提起して購入者が応訴。
後者の場合、購入者は販売業者に対し訴訟を告知しておくことが望ましい。
     
  ◆第6 プリペイド決済・デビット決済・その他の支払方法に関する法規制の概要