シンプラル法律事務所
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論点の整理です(随時増やしていく予定です。)
借家権の評価(法律実務(澤野)73) | ||
◆ | ◆借家権とは | |
◆ | ◆借家権の経済的価値 | |
借家権は借地権のように譲渡性がない⇒市場を形成する借家権価格は認めにくい。 | ||
◆ | ◆借家権価格評価の必要性 | |
◆ | ◆借家権価格の評価 | |
イ:借家権の取引慣行がある場合、すなわち借家権に市場価値が認められる場合 ロ:建物明渡しの際の立退料など、借家人が不随意の立退きに伴い事実上喪失することとなる経済的利益等を求める場合 |
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● | イ: 借家権に市場価値が認められる場合の評価 | |
@当事者間の個別的事情を考慮して求めた比準価格を標準とし、 A自用の建物およびその敷地の価格から貸家およびその敷地の価格を控除し、所要の調整を行って得た価格を比較考量 B借家権割合が本免られる場合は、割合法による価格も比較考量 |
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● | ロ: 借家権の不随意な消滅による借家人の経済的利益の喪失の対価(補償額)の評価 | |
当該建物およびその敷地と同程度の代替建物等の賃借に必要な新規の実際支払賃料と現在の実際支払賃料の差額の一定期間に相当する額に、 賃料の前払的性格を有する一時金の額等を加えた額、 ならびに前記Aの価格を関連づけて決定 |
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◆ | ◆借家権評価の実務的手法 | |
■ | ■イ.営業用借家・・・取引慣行がある場合 | |
木造平家建店舗 床面積150u | ||
● | ●取引事例比較法 | |
◎ | ◎取引事例 | |
喫茶店(床面積100u)の営業権付借家権の譲渡事例 | ||
譲渡価格:3000万円 家主に対する承諾料:300万円 譲渡に伴い賃料が50万円から60万円に改定 造作・什器備品類:1000万円 営業権:1000万円 |
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◎ | ◎比準価格の算定(@) | |
取引価格: 譲渡価格から承諾料、造作等価格、営業権譲渡の対価を差し引いた価格 3000万円ー300万円ー1000万円ー1000万円 =700万円 |
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比準価格= 取引価格×事情補正×時点修正×地域要因比較×個別的要因比較×床面積比 700万 ×100/100 × 102/100 × 100/100 × 95/100 ×150/100 =1017万5000円 個別的要因比較:賃料改定を考慮 |
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● | ●収益還元法(A) | |
年間総収益:1700万円 必要諸経費:1100万円 造作・什器備品:1000万円 |
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純収益: 年間総収益ー必要諸経費ー造作等に帰属する利益 600万円 ー(1000万円×0.05)=550万円 |
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借家権に帰属する純収益: 純収益総額から、のれんにり生ずるもの50%、経営努力に帰属するもの30%と想定し、 借家権に帰属する純収益は 550万円×(1ー0.5−0.3)=110万円 |
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純収益が持続する期間に対応する経済的利益の現価額: 110万円×10.3797(*)=1,141万8000円 *:期間15年、利益率5%の複利年金現価率 |
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● | ●評価額の決定: 上記@Aにより算出された各試算価格はほぼ均衡を得ており、 比較考量した結果、両試算価格のほぼ相加平均価格1080万円をもって、とうがい借家権価格と決定。 |
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■ | ■ロ.居住用借家権 | |
木造平家建居宅の賃貸借 建物価格 250万円 敷地価格 3500万円 実際支払賃料 年間120万円 |
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● | ●賃料差額還元法(@) | |
◎ | 建物および敷地の経済価値に即応した適正な賃料 | |
純賃料: 建物:250万円×0.08=20万円 土地:3500万円×0.045=157万5000円 計:177万5000円 |
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必要経費等:70万円 | ||
適正賃料:177万5000円+70万円=247万5000円 | ||
◎ | 実際支払賃料: 年間120万円 | |
◎ | 差額:247万5000円ー120万円=127万5000円 | |
◎ | 借家権の資産価値: 今後少なくとも5年間は上記差額が生ずることを前提とした場合の現在価値 127万5000えん×4.3295(*)=552万円 *期間5年、利率年5%の複利年金原価率 |
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● | ●割合法(A) | |
建物価格に対する借家権割合を40%、 敷地価格に対する借家権割合を借地権価格(更地価格の60%)の20%とした場合: 建物: 250万円×0.4=100万円 敷地:3500万円×0.6×0.2=420万円 合計:520万円 |
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● | ●評価額の決定 | |
上記@Aにより算出された各試算価格はほぼ均衡を得ており、 比較考量した結果、両試算価格のうち、より一般的に適正と思料される割合法に基づく520万円をもって、当該借家権価格と決定。 |
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◆ | ◆借家権価格と立退料との関係 | |
借家の立退料には、 イ.引越料、荷造費、運送費などの移転実費 ロ.狭義の借家権の対価(借家権の消滅補償) ハ.営業上の利益の対価 ニ.精神的な損失の補償 ホ.開発利益の配分 などが含まれている。 以上の借家権価格は、ロ.の狭義の借家権の対価。 |
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借家の立退料の評価(法律実務(澤野)79) | ||
◆ | ◆借家の明渡しと立退料 | |
◆ | ◆借家の立退料の内容 | |
第1:移転に要する実費: 引越しのための運送料、荷造費用、動産損料、移転通知費用 |
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第2:借家権価格: 借家人が長年そこに居住することによって、地域社会の発展や地価の上昇に寄与したことによる利益、ないしは 借家人が借地借家法によにより保護されている事実状態、すなわち法的保護利益の経済的価値 |
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第3:借家人が営業を営んでいる場合の営業権ないし営業上の利益 | ||
第4:造作買取請求における買取代金や必要費・有益費の償還額 | ||
◆ | ◆合意解約の場合 | |
移転実費、借家権価格、営業を営んでいるときは営業権ないし営業上の損失 〜借家人の被る損失の補てん |
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借家の明渡しにより家主が利益を受ける場合(建替えや再開発にyり、いわゆる開発利益が発生しる場合など)⇒その利益の一部が和解金、慰謝料等の名目で上記補償額に上乗せして支払われることがある。 | ||
◆ | ◆正当事由に基づく解約申入れの場合 | |
◆ | ◆債務不履行の場合 | |
◆ | ◆借家の立退料の具体的算定方法 | |
■ | ■合意解約の場合 | |
居住用: 移転実費+借家権価格+(開発利益等)=立退料 |
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営業用: 移転実費+借家権価格+営業上の損失+(開発利益等)=立退料 |
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30年前より借家している店舗兼居宅の場合 土地価格:3000万円 建物価格:450万円 営業純収益:月平均30万円 |
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@移転費用:引越料その他で100万円 | ||
A借家権価格: 土地:3000万円×0.6×0.3=540万円 建物:450万円×0.4=180万円 ⇒ 合計720万円 |
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B営業上の損失: 月平均純収益 30万円 他に移転することにより、1か月間休業、3か月間50%減収 ⇒ 30万円+30万円×0.5×3=75万円 |
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C開発利益: 木造低層1戸建が中層堅固6階建の店舗・事務所となるため、土地の収益性が1%から5%に上昇、借家人に対する配分額を20%とすると、 3000万円×(0.05−0.01)×0.20=24万円 |
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立退料=100万円+720万円+75万円+24万円=919万円 | ||
■ | ■正当事由に基づく解約申入れの場合 | |
正当事由が完全に充足している場合: 立退料=移転費用 100万円 |
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正当事由が不足する場合: 正当事由が50%程度不足する場合: 立退料=@+(A+B)×(1−0.5)=497万5000円 |
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■ | ■債務不履行の場合 | |